太陽誘電(6976)の株価はPER45倍で割高?上方修正後は利益率が分かれ目

花柄のブラウスとピンクのスカートで花屋前に立つ女性(イメージ画像)

太陽誘電(6976)の株価9,824円(9月7日終値)を、会社予想EPS(1株当たり利益)219.03円で割ったPER(株価収益率)は約44.85倍です。このPERを計算しようとして、最初につまずいたのは分母のEPSでした。情報サイトに表示された予想EPSと、会社資料から求めた値が一致しなかったのです。私は、数字が食い違ったときは一次資料までさかのぼり、基準をそろえるようにしています。そうして計算し直した数字で、今の株価に見合う利益の水準を逆算しました。

株価は2026年9月7日の東証終値です(9月18日終値は9,375円、株探)。約44.85倍という倍率は、上方修正の達成に加え、その先の成長まで織り込んだ水準です。通期計画には残り3四半期で営業利益率約12.2%が必要で、次の決算がその試金石になります。

同社はAIサーバー向けの電子部品需要を背景に、業績回復を進めています。8月5日には、通期営業利益予想を300億円から450億円へ50%引き上げました(出典:業績予想の修正に関するお知らせ、2026年8月5日時点)。一方、好調な受注がどの程度売上と利益へ変わるのか、株価がどこまで先の成長を織り込んでいるのかが重要です。受注の強さだけで判断せず、価格、稼働率、為替、株式数まで確認する必要があります。

目次

太陽誘電の株価は割高か?PER約44.85倍の計算の前提

株価はYahoo!ファイナンスの太陽誘電で確認した9月7日15時30分の東証終値を用います。夜間PTS(私設取引システム)の価格は計算に含めません。EPSは会社の業績予想修正資料(2026年8月5日公表)を採用します。

項目数値基準・注意点
東証終値9,824円前日比398円高、4.22%上昇
当日出来高2,742万6,700株当日15時30分の実績
会社公表の予想EPS219.03円8月5日公表、2027年3月期
本記事の予想PER約44.85倍9,824円÷219.03円
年間配当予想90円中間45円、期末45円
予想配当利回り約0.92%90円÷9,824円
100株の購入額98万2,400円手数料等を除く

確認時のYahoo!ファイナンスでは、予想EPS229.47円、予想PER42.81倍と表示されていました。229.47円は、会社予想の純利益290億円を第1四半期の期中平均株式数で割った値と計算上一致します。会社の219.03円は、7月末までの株式転換を反映した株式数で割った値に近く、差は分母の株式数の違いとみられます。本記事は一次資料の219.03円にそろえて計算します。(出典:第1四半期決算短信、2026年8月5日時点)

この違いは投資判断に無関係ではありません。同じ株価でも、分母の利益が変われば割高・割安の見え方が変わります。特に株式数が変わる企業では、純利益の増加率とEPSの増加率が一致しないため、利益総額だけで株主の取り分を評価しないことが大切です。

上方修正で変わったのは利益率の見通し

会社の通期予想は、売上高3,840億円から4,240億円、営業利益300億円から450億円、純利益180億円から290億円へ引き上げられました。純利益は親会社株主に帰属する利益です。売上の修正率10.4%に対して営業利益は50.0%増となり、利益の増え方が大きくなっています。(出典:業績予想の修正に関するお知らせ、2026年8月5日時点)

営業利益率の計画は約7.8%から約10.6%へ高まりました(決算説明資料でも同じ値です)。工場の生産が増えたとき、売上と同じ割合だけ固定費が増えるとは限りません。さらに販売する商品の構成や価格条件が改善すれば、増収以上の増益が生じます。今回の修正は、この利益率の変化を含んでいます。

ただし、利益率改善のすべてを恒久的なものとして評価することはできません。価格条件は需給で変化し、為替は外部要因です。稼働率が高い局面で利益が伸びる企業は、需要が弱まって稼働率が落ちる局面では逆方向の影響も受けます。上方修正の大きさだけでなく、その内訳を読む必要があります。

株探は今回の決算を今期経常利益の56%上方修正として取り上げています。経常利益と営業利益は異なる指標です。見出しの修正率を比較するときは、どの利益を示しているのかをそろえて確認します。

第1四半期の実績と通期計画には距離がある

第1四半期の売上高は938.97億円、営業利益48.18億円、純利益25.04億円です。売上高は前年同期比10.7%増、営業利益は53.3%増でした。利益は回復していますが、営業利益の通期計画に対する進捗率は約10.7%にとどまります。(出典:第1四半期決算短信、2026年8月5日時点)

この進捗率だけで計画未達と判断するのは早計です。会社が後半の生産・売上拡大を見込んでいれば、四半期ごとの利益には偏りが生まれます。一方で、残りの期間に必要な利益を把握せず、上方修正という言葉だけで安心するのも適切ではありません。

独自計算では、残り3四半期に必要な売上高は3,301.03億円、営業利益は401.82億円です。残りの期間の平均営業利益率は約12.2%が必要となります。第1四半期の約5.1%から一段と改善する計画であることがわかります。

したがって、次の決算で見るべきなのは前年同期比の増益率だけではありません。営業利益率が10%台へ上がり、残り期間の必要利益を現実に積み上げ始めているかが焦点です。受注が多くても出荷が遅れたり、費用が予想以上に増えたりすれば、通期計画までの距離は縮まりません。

AIサーバーでMLCCはなぜ必要か

MLCCは積層セラミックコンデンサの略称です。電子回路で電荷を蓄え、電源の変動やノイズを抑える役割を担います。演算を行う半導体そのものではありませんが、高性能な半導体を安定して動かすために必要な部品です。太陽誘電は公式MLCC製品ページで、材料からの開発・生産と、小型・大容量・高信頼性の商品群を説明しています(2026年9月24日閲覧)。

2枚の電極と誘電体で電荷を蓄え、内部電極を交互に左右の端子へ接続するMLCCの断面図。層間の容量が並列につながる仕組み。

AIサーバーの性能向上では、半導体へ大きな電流を安定して供給することが課題になります。同時に、半導体の近くで使える実装面積は限られています。そのため、単に個数を増やすだけでなく、小さな体積で必要な容量を確保する技術に価値が生まれます。

確認すべき点は、この技術的な要求が同社の販売額と利益率をどのように変えるかです。サーバーの台数が増えても、採用される製品の単価や同社の供給シェアが変われば、売上の伸び方は異なります。一般的な市場の個数予測を、そのまま太陽誘電の売上予想へ置き換えることはできません。

また、MLCCは仕様が多様で、すべての商品がAIサーバー向けの高付加価値品になるわけではありません。全社の売上拡大を評価する際は、どの製品・用途が伸びたかを確認します。テーマ全体の盛り上がりよりも、会社自身の製品構成がどのように変わったかが収益に直結します。

AI投資が別の部材企業へ波及する過程は、トクヤマの半導体需要と事業転換の分析でも扱っています。需要が増える場所と、企業が利益を得る場所を分けて読むことが共通のポイントです。

太陽誘電の差別化は基板内蔵と大容量化

太陽誘電は、1005サイズで22μFを実現した基板内蔵対応MLCCを商品化しています。会社は、電源回路をICへ近づける動きに対応し、高精度の外部電極などが必要になると説明しています。2025年9月4日公表の基板内蔵対応MLCCは、その具体例です。

MLCCをICと並列に電源とGNDの間へ接続し、負荷電流が急増すると一時的に放電して電圧の落ち込みを抑える回路模式図。

図の一般原理は、村田製作所の構造解説とデカップリングの解説も参照しています。図をタップすると拡大できます。

基板の中へ部品を入れる設計では、後から容易に部品を取り替えられるとは限りません。寸法、接続、信頼性を含めて顧客の設計に合うことが求められます。こうした要求へ安定して対応できれば、単に安い商品を大量に供給する場合とは異なる競争力につながると考えられます。

ただし、一つの商品の優位性から会社全体の独占的な地位を推測するのは行き過ぎです。顧客ごとに設計条件は異なり、採用するサイズや容量も同じとは限りません。「世界初」という会社の説明も、1005サイズの基板内蔵対応MLCCとして、2025年9月3日時点の会社調べという条件付きです。本記事では個別商品の技術的な特徴として扱い、現在の全市場シェアを示す表現には使いません。

差別化が収益へつながるかを確かめるには、採用に続いて量産が増え、良品を安定供給でき、利益率が改善するという流れを追います。開発の成功は出発点であり、株主にとってはその後の販売と資金回収まで確認して初めて、投資の成果を評価できます。

村田製作所・サムスン電機との競争をどう見るか

AIサーバー向けの電源部品に取り組むのは太陽誘電だけではありません。村田製作所はAIサーバーの電源供給ネットワークに関する技術ガイドを公開しています。サムスン電機もAI向けMLCCの技術動向で、小型化、大容量化、半導体近傍への実装を説明しています。

企業公式資料から確認できる取り組み投資家が比較したい点
太陽誘電材料開発、基板内蔵対応MLCC高付加価値品の量産と利益率改善
村田製作所AIサーバーの電源ネットワーク向け技術提案部品と電源設計を含む提案の広がり
サムスン電機小型・大容量MLCCと実装技術高性能品の供給と競争環境

この比較は技術の接点を示すもので、最新シェアの順位や株価の割安順位ではありません。競合の取り組みが活発であることは市場の存在を裏付けますが、将来の供給増加や価格競争にもつながります。

太陽誘電の評価では「市場全体が伸びること」と「同社が利益を確保すること」の両方が必要です。競合が能力を増やしても、製品仕様や顧客の認定が異なれば、ただちに同じ商品が供給されるわけではありません。それでも、いまの需給の良さが永続するという前提は置けません。

太陽誘電の需給は?BBレシオ1.72は強いが、売上確定額ではない

会社の決算説明資料では、コンデンサの第1四半期BBレシオは1.72でした。BBレシオは受注と売上の関係を見る指標で、1を上回れば売上に対して受注が大きい状態を示します。(出典:第1四半期決算説明資料、2026年8月5日時点)

この値は需要の強さを考える材料になりますが、「次の売上が必ず72%増える」という意味ではありません。受注から出荷までの期間、顧客の希望納期、生産能力が関係するためです。受注が増えても供給が追いつかなければ、短期の売上の増加は限られる場合があります。

さらに会社は質疑応答で、代理店から明らかに過剰な受注が入っている品目があると説明しました。今の需給環境には過熱感が見られるとも述べています(出典:決算説明会の質疑応答要旨、2026年8月10日時点)。強い受注を一方向に評価しないために重要な資料です。

投資家としては、発注が最終需要に基づくのか、納期への不安から早めに確保しているのかを意識します。後者が含まれる場合、供給が安定した後に注文が減る可能性があります。現時点でそれがどの程度含まれるかは、資料からは読み取れません。だからこそ、受注残の大きさだけでなく、出荷、納期、顧客在庫の説明を合わせて追う必要があります。

AI向け150%増は全社の成長率になるか

会社は質疑応答で、AIサーバー向けコンデンサの通期売上を前期比約150%増と見込むと説明しました。一方、全社ベースのサーバー全体の売上構成比は今期10%を上回る見通しです。前者はAIサーバー向けコンデンサ、後者はサーバー全体であり、対象が異なります。(出典:質疑応答要旨、2026年8月10日時点)

ある分野が2.5倍になっても、会社全体が2.5倍になるわけではありません。例えば売上構成比が仮に10%の分野が50%伸び、残りが横ばいなら、全社の増収率は単純計算で5%です。これは太陽誘電の実際の売上構成を置いた予測ではなく、構成比と成長率の関係を示す例です。

成長の速い分野は、売上に占める比率が高まるほど全社への影響も大きくなります。さらに利益率が高ければ、利益の構成が売上より先に変化する可能性があります。そのため、高成長分野の売上比率と採算を継続して確認する価値があります。

一方、サーバー以外の用途が弱ければ、その一部が相殺されます。太陽誘電は純粋なAI専業企業ではありません。自動車や通信機器なども含めた事業全体で、成長分野がどれだけ利益を引き上げるかを見ていく必要があります。

同じ質疑応答で会社は、第1四半期のAIサーバー向けコンデンサ売上が前年同期比約80%増で、期初の想定どおりの伸び率だったと説明しています。足元の需要は想定より強いとして、通期の伸び率は前期比約150%増の見通しです(出典:決算説明会の質疑応答要旨、2026年8月10日時点)。通期150%増の達成には、第2四半期以降に第1四半期を上回る伸びが必要です。

稼働率の上昇と価格条件が利益の鍵になる

会社は第2四半期のコンデンサ稼働率を95%前後と想定し、第2四半期以降の営業利益率が10%を上回る見通しを示しています。ただし、これは決算説明会時点の会社予想です。(出典:稼働率に関する質疑応答、2026年8月10日時点)

高い稼働率では、既存設備の固定費をより多くの製品へ配分できるため、利益率が上がりやすくなります。しかし、増産に伴って人員、材料、電力、物流の費用も増えます。稼働率だけが改善しても、不良率や追加費用が高まれば期待通りの利益にはなりません。

また、同じ製品の値下がりが緩やかになることと、全商品が値上がりすることは異なります。販売価格の改善を読むときは、対象となる商品や取引先、実施の時期を確認します。一部の価格改定を全社売上へ一律に掛けると、効果を過大に見積もる可能性があります。

今後、売上が計画通りに増えた場合でも、利益率が想定に届かないなら、数量以外の条件を見直す必要があります。反対に、数量の伸びが穏やかでも価格と製品構成が改善すれば、利益は強くなる場合があります。増収率と利益率を組み合わせて読むことが、この銘柄では特に役立ちます。

為替の前提は1ドル160円

会社は第2四半期以降の為替前提を1ドル160円としています。年間の為替感応度は、1円の変動で営業利益約9億円です(出典:第1四半期決算説明資料、2026年8月5日時点)。会社は質疑応答で、売上高予想の増額400億円のうち約200億円が為替影響だと説明しています(出典:質疑応答要旨、2026年8月10日時点)。

仮に年間を通じて想定より10円円高だったと単純化すると、感応度による営業利益への影響は約90億円です。450億円の会社計画に対して20%に相当するため、無視できない大きさです。ただし、すでに経過した期間、為替予約、売上や費用の変化は考慮していません。現在から10円動けば通期利益がそのまま90億円変わる、という予測ではありません。

成長株を見る際に、為替の追い風と企業固有の競争力を分ける意味はここにあります。円安で増えた利益は、円高に戻れば逆方向へ動く可能性があります。受注や価格条件が良くても、円換算の利益が期待ほど伸びない組み合わせはあり得ます。

また、円相場だけから株価の方向を決めることもできません。市場がすでに円高を織り込んでいたり、数量が上振れたりすれば、実際の反応は異なります。為替は単独の売買サインとしてではなく、EPSの仮定を点検する材料として扱います。

同じ質疑応答で会社は、増額400億円に為替影響約200億円と販売価格影響約60億円が含まれると説明しています(出典:決算説明会の質疑応答要旨、2026年8月10日時点)。両者を合わせると約260億円で、残る約140億円も全額が販売数量の増加とは開示されていません。会社は、数量増による操業度効果はそれほど大きくないとも説明しています。

設備投資420億円と在庫は現金回収につながるか

会社の通期計画では設備投資420億円、減価償却費500億円が示されています。増産に備える企業では、営業利益が出ていても、設備取得や運転資金のために現金が必要になります。(出典:決算説明資料の通期計画、2026年8月5日時点)

設備投資と減価償却は意味が異なります。設備投資は設備を取得するための支出で、減価償却は取得済み設備の費用を期間に配分する会計処理です。営業利益へ減価償却を足した金額も、そのまま株主へ配分できる現金ではありません。税金、運転資金、設備投資を含めて確認する必要があります。

在庫も同じです。将来の出荷に備えた適切な在庫は供給力を支えますが、顧客の発注が弱まれば資金が滞留する可能性があります。在庫を積み増して稼働率を維持している場合は、最終的に売上と入金へつながるかを見ることが大切です。

特に、受注が強い局面の投資が本格稼働するまでには時間差があります。その間に需給が変わる可能性もあるため、能力増強の発表だけを成長の確約と捉えないようにします。稼働開始後の売上、利益率、現金回収という順番で成果を確認すると、投資の採算を評価しやすくなります。

転換社債で株式数が増えるとEPSはどうなるか

決算短信では、転換社債型新株予約権付社債の権利行使に伴って新株が発行されたことが説明されています。第1四半期の基本EPSは19.82円、潜在株式調整後EPSは18.16円です。7月31日までに、さらに約214万株が転換で発行されました。(出典:決算短信の株式数・利益に関する情報、2026年8月5日時点)

社債が株式に変わると、負債の負担が軽くなる面があります。一方で株式数が増えれば、同じ純利益をより多くの株で分けることになるため、一株当たりの利益への影響を確認する必要があります。財務が改善したという説明と、既存株主の一株当たりの利益が増えたかという評価は、同じではありません。

仮に純利益が20%増え、平均株式数も10%増えた場合、EPSの増加は単純計算で約9.1%です。会社の増益率だけをそのまま株価上昇率に当てはめると、この違いを見落とします。今回のように情報サイトのEPS表示と会社公表値に差がある場合は、基準と時点を明示することが特に大切です。

本記事の株価試算は会社公表EPSを出発点としています。今後、会社が新たなEPS予想を示したり、株式数がさらに変わったりした場合には、表の前提も更新が必要です。純利益の予想が変わらなくても、EPSの見通しが変わることがあります。

中期計画は売上だけでなく採算の改善が中心

中期経営計画2030(2026年5月8日公表)では、2030年度に売上高4,800億円、営業利益率15%を目指しています。ROE(自己資本利益率)15%、ROIC(投下資本利益率)10%も目標です。2030年度は2031年3月期に相当します。営業利益率15%を売上目標へ掛けると、営業利益は720億円となります。目標の為替前提は1ドル140円で、今期の前提160円より円高です。

現在の通期売上予想4,240億円と比べると、売上の目標との差は約13.2%です。一方、営業利益450億円から720億円へは60%の増加が必要です。計算上、今後の企業価値を大きく左右するのは、売上の拡大だけでなく利益率の改善だとわかります。

ただし、中期目標は会社が達成を目指す数値であり、確定した業績ではありません。目標に近づくまでの設備投資、競争、景気変動も考える必要があります。現在の株価に長期の成長を織り込む場合は、その途中で利益が一時的に減少する可能性も含めた評価が必要です。

また、営業利益720億円をそのまま純利益やEPSと同じように使うことはできません。支払利息や税金などを経て株主の利益になります。目標の営業利益率だけを取り出して、将来の株価が自動的に決まると考えないことが重要です。

半導体投資に対する市場の評価は、KOKUSAI ELECTRICの上方修正を検証した記事も参考になります。将来の需要を評価する場合でも、現在の利益と先の成長期待を分けて確認する考え方は共通しています。

太陽誘電の株価予想は?弱気・基本・強気のシナリオ

次の表は、今後1〜2年の評価を考えるため、年換算のEPSとPERを仮定した独自の感応度分析です。会社や証券会社の目標株価ではありません。基準株価は9,824円で、配当、税金、売買手数料は含めず、実現確率も設定していません。倍率はいずれも筆者の想定です。基本40倍と強気42倍は、9月7日時点の会社予想ベースPER約44.85倍をやや下回る水準に置きました。弱気30倍は、期待がはがれて評価が大きく下がる場合の想定です。

シナリオ仮定EPS仮定PER計算上の株価基準株価比主な条件
弱気160円30倍4,800円約51.1%下落受注調整、円高、利益率改善の遅れと評価倍率低下
基本219.03円40倍約8,761円約10.8%下落会社予想程度の利益を達成し、PERが40倍で評価される
強気320円42倍1万3,440円約36.8%上昇高付加価値品の拡大でEPSが増え、高い成長評価が続く

基本シナリオでもPER40倍を置いており、必ずしも低い評価倍率ではありません。それでも計算値が現在株価を下回ることから、現在の価格には会社予想の達成だけでなく、その先の成長期待も含まれていると解釈できます。これは本記事の仮定に基づく見方であり、市場参加者全員の予想を示すものではありません。

強気のEPS320円は会社予想より約46.1%高い仮定です。AI向けが伸びるだけでなく、全社の採算改善と株式数を考慮した利益増加が必要です。さらにPER42倍という成長評価が維持される条件もあります。利益が増えても倍率が下がれば、表の株価へは届きません。

弱気シナリオでは、利益の下振れと倍率の低下が重なるケースを置きました。現在の株価から大きく下がる計算になりますが、必ずそこまで下落するという予測ではありません。上値だけでなく、期待が外れた場合の価格感応度を同時に示すための試算です。

答え合わせとして、9月18日の終値は9,375円で、基準株価より約4.6%低い水準でした(株探、2026年9月18日時点)。会社予想EPSで割ったPERは約42.8倍で、基本シナリオの約8,761円と基準株価の間にあります。

1万円・1万2,000円を正当化する利益はどれくらいか

PER40倍を前提とすると、株価1万円に必要なEPSは250円、1万2,000円には300円です。会社予想219.03円に対して、それぞれ約14.1%、約37.0%の増加が必要になります。丸い株価の節目を考える場合も、必要な利益へ置き換えると期待の大きさを把握できます。

一方、EPSが250円まで増えてもPER35倍なら株価は8,750円です。EPS300円でもPER30倍なら9,000円となります。つまり、業績の回復が正しく予想できても、購入したときの評価倍率が高ければ、株価のリターンが伴わない場合があります。

このため、太陽誘電では決算の良し悪しだけでなく、その決算が市場の期待を上回ったかが重要になります。良い決算で株価が下がる場合も、必ずしも市場が業績を無視しているわけではありません。より高い利益や強い見通しを事前に期待していた可能性があります。

期待の水準を点検する際は、自分が使っているEPSとPERを記録しておくと便利です。株価が動いた後に理由を探すだけでなく、どちらの前提が変わったのかを確認できます。これにより、一つのニュースで強気と弱気を行き来する判断を減らせます。

次の決算では何をどの順番で確認するか

まず売上と営業利益率を確認し、通期計画が前提とする収益改善へ進んでいるかを見ます。次に受注と出荷の関係を読み、受注残が売上へ転換されているかを確認します。受注指標だけが高く、出荷や利益が伸びない場合には、納期や供給の制約を見直す必要があります。

続いて、価格条件と稼働率を確認します。全社の利益率改善が数量、価格、製品構成のどれに支えられたのかによって、その後の継続性が異なります。さらに為替前提と株式数をそろえ、EPSの上振れが事業の改善によるものか、別の要因が大きいのかを点検します。

最後に、在庫と設備投資が現金回収へつながっているかを確認します。成長のための負担が一時的なものなのか、需要の変化によって長く残る負担になるのかが重要です。売上・利益・受注・現金をこの順番で読むと、好材料と注意材料を同じ判断の中へ置きやすくなります。

まとめ:PER約45倍を支えるには利益率の改善が要る

太陽誘電は、AIサーバー向けMLCCの需要拡大と高付加価値品の成長によって、利益回復を進めています。営業利益450億円への上方修正は大きな変化ですが、通期達成には残りの期間で利益率を引き上げる必要があります。受注の強さに加えて、会社が説明する過熱感と実際の出荷も確認が必要です。

私は、太陽誘電の評価を左右するのは受注の多さより、次の決算で営業利益率が10%台に乗るかどうかだと考えています。

基準株価9,824円は、会社公表EPS219.03円に対して約44.85倍です。基本シナリオのEPSとPER40倍では約8,761円、強気のEPS320円とPER42倍では1万3,440円となります。大きな上値を期待するには、利益の追加成長と高い評価倍率の維持が必要です。

今後は、AI向けの増収が全社利益へ届くか、価格と稼働率の改善が続くか、為替と株式数を踏まえてEPSが伸びるかを追います。好業績という事実と、その業績に対して払う株価を分けて考えることが、太陽誘電を現在の水準から評価するための基本になります。

関連する成長テーマは、トクヤマの半導体需要と事業転換と、KOKUSAI ELECTRICの成膜装置・上方修正分析もあわせてご覧ください。

更新履歴

2026年10月5日:「太陽誘電(6976)の強みは『小さな部品』の中にある|AI給電の進化と400億円上方修正の中身」(2026年9月18日公開)の記事を統合しました。

⚠ 免責事項・データの時点

本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

株価試算の基準は、2026年9月7日の東証終値9,824円(Yahoo!ファイナンス・株探)です。業績と予想は、2026年8月5日公表の決算短信・業績予想の修正・決算説明資料と、8月10日公表の質疑応答要旨によります。中期目標は2026年5月8日公表の中期経営計画2030です。PERと配当利回り、株価シナリオのEPSと倍率は筆者の計算・想定です。答え合わせの株価は2026年9月18日時点(株探)です。9月7日から9月24日までに、会社の新たな適時開示は確認していません。

2026年9月7日更新。2026年9月24日:出典と日付、答え合わせ(9月18日時点)、倍率の根拠、EPS表示の差の理由を追記し、文章を改訂。業績・株価試算の数値は変更していません。

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