ローソク足では何十本も上下しているのに、カギ足へ切り替えると数本の縦線だけになり、新値三本足では白・黒の短い線が階段状に並びます。どちらも時間の経過ではなく、価格が条件を満たしたときだけ線を増やすチャートです。しかし、同じ「時間を消すチャート」でも、転換を決める仕組みはまったく同じではありません。
カギ足は、あらかじめ決めた反転幅を価格が逆行すると方向を変えます。新値三本足は、直近3本など指定した本数の高値・安値を終値で突破したときに反対色へ転換します。前者は値幅、後者は直近ラインの範囲が基準です。この違いを知らずに「色が変わったから買い」「線が太くなったから上昇」とだけ読むと、設定変更や未確定表示、実際の約定価格とのずれに振り回されます。
最初に押さえる六つの結論
- カギ足は反転幅、新値三本足は直近ラインの突破で転換します。
- カギ足の太線・細線は、単純な上昇・下降の色分けではありません。
- 新値三本足の「3」は日数ではなく、比較する確定ライン数です。
- どちらも元データの時間足、採用価格、確定条件で履歴が変わります。
- 表示値を、そのまま実際の約定可能価格として扱いません。
- 入口より前に撤退水準・数量・見送り条件を決めます。
1.カギ足と新値三本足は、何を省いて何を残すのか
通常のローソク足は、1日足なら取引日ごと、5分足なら5分ごとに新しい足を作ります。カギ足と新値三本足は、一定時間が過ぎただけでは新しい線を作りません。価格が継続または転換の条件を満たしたときだけ描画が進みます。そのため、横方向の一マスを「1日」や「5分」と読めません。
TradingViewは、Kagi、Line Break、Renko、Point & Figureを価格ベースのチャートとして説明しています。元の時間間隔は計算データの粒度として使われますが、表示要素が増える直接条件は価格変化です。[出典1]
| 比較点 | カギ足 | 新値三本足 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 転換基準 | 固定値・割合・ATRなどの反転幅 | 直近N本の高値・安値突破 | 設定値を記録 |
| 描画 | 縦線と短い水平線 | 上昇線・下降線 | 表示色はサービス依存 |
| 強弱表現 | 前の肩・腰突破で太さ変更 | 直近ライン範囲の突破 | 方向と強弱を混同しない |
| 省かれる情報 | 均等な時間、細かな逆行 | 均等な時間、範囲内の終値 | 通常足で補完 |
2.カギ足の作り方――反転幅を満たすまで一本の線を伸ばす
カギ足は、価格が同じ方向へ進む間は現在の縦線を延長します。反対方向へ動いても、設定した反転幅に達しなければ方向を変えません。到達したら短い水平線を右へ引き、そこから反対方向の縦線を描きます。StockChartsの公式教材は、反転幅を固定ポイント、割合、ATRから選び、終値または高値・安値を使えると説明しています。[出典2]
架空例として、終値方式、反転幅20円で、上向きのカギ線が1,000円から1,080円へ伸びたとします。終値が1,070円や1,065円へ下がっても、1,060円以下にならなければ線は反転しません。1,060円で確定すると、1,080円の位置に水平の「肩」を作り、下向きの線を1,060円へ伸ばします。
そこから終値が1,030円へ下がれば下降線を延長します。1,045円まで戻っても20円に届かないため反転しません。1,050円以上で確定すると、1,030円の位置に水平の「腰」を作り、上方向へ切り返します。このようにカギ足は小さな逆行を省きますが、その間に何日経過したか、どのような順番で高値と安値を通ったかは、カギ足だけでは分かりません。

3.カギ足の太線・細線は、上昇線・下降線と同じではない
カギ足で特に誤解しやすいのが、線の太さです。太線は陽線、細線は陰線という単純な対応ではありません。StockChartsは、直近の肩を上抜いたときに陽線側の太線(Yang)、直近の腰を下抜いたときに陰線側の細線(Yin)へ変わると説明しています。したがって、上向きに反転した直後でも、前の肩を超えるまでは細線のまま進む場合があります。
逆に、太線で上昇した後に下向きへ反転しても、直近の腰を割るまでは太線部分が残ります。「太線だから今も上昇している」と読まず、線の向きと太さの切り替わりを別々に確認します。肩が切り上がり、腰も切り上がるなら上向きの構造です。肩が切り下がり、腰も切り下がるなら下向きの構造です。
カギ足で分けて見る3要素
- 縦線の向き:直近の方向
- 肩・腰の位置:反転した価格水準
- 線の太さ・色:前の重要高値・安値を突破した状態
「太線への切り替わりを買い、細線への切り替わりを売り」とする古典的な読み方はありますが、必ず利益になる規則ではありません。横ばい相場では切り替えが連続し、価格が往復するたびに損失が出る可能性があります。設定幅を後から都合よく変更せず、通常足の支持・抵抗や出来高と組み合わせます。
4.固定値・割合・ATRで、カギ足の転換回数は変わる
| 方式 | 長所 | 注意点 | 残す記録 |
|---|---|---|---|
| 固定値 | 転換価格を予測しやすい | 株価水準・変動率の変化に追随しない | 円・ポイント数 |
| 割合 | 価格水準に比例 | 基準価格と丸めで差が出る | 率・基準価格・呼値 |
| ATR | 変動幅を反映 | 参照時点・期間で履歴が変わる | 期間・時間足・固定時点 |
固定20円は株価500円なら4%、株価1万円なら0.2%です。同じ設定を全銘柄へ適用すると感度が大きく異なります。割合方式はこの差を緩和しますが、計算の基準価格と呼値への丸めを確認します。ATR方式は変動の大きさに応じて幅を変えますが、ATRは方向を予測する指標ではなく、参照期間と平滑化で数値が変わります。
設定を評価するときは、転換回数が少ないほど優れているとも、早いほど優れているとも決めません。細かい幅は早い反面だましが増えやすく、広い幅は安定する反面撤退が遅れます。保有期間、許容損失、銘柄の流動性に合う候補を事前に決め、未使用期間で比較します。
5.新値三本足の作り方――「3日」ではなく直近3ラインを超える
新値三本足は、英語でThree Line Break chartと呼ばれます。上昇中は終値が直前の上昇ラインの高値を超えると、新しい上昇ラインを追加します。下落中は終値が直前の下降ラインの安値を下回ると、下降ラインを追加します。反対方向へ転換するには、一般に直近3本の確定ラインが作る範囲を終値で突破する必要があります。
TradingViewの公式説明では、比較に使う本数は設定で変更でき、標準的な値は3です。終値が直近3本の高値より上なら上昇ライン、直近3本の安値より下なら下降ラインを作ります。範囲内なら新しいラインを描きません。[出典3]
名称の「三本」は、3営業日待つという意味ではありません。価格が条件を満たせば短期間にラインが増え、満たさなければ何日も表示が変わりません。また、上昇の継続ラインは直前高値の更新で追加されますが、下降へ転換する条件は直近3ラインの安値割れです。継続と転換で基準が異なる点が重要です。

6.同じ終値系列でも、二つのチャートの転換日は一致しない
カギ足は、直前の極値から設定幅だけ逆行したかを見ます。新値三本足は、直近Nラインの範囲を終値で抜けたかを見ます。同じ終値系列へ適用しても、転換基準が違うため、同じ場所で色や方向が変わるとは限りません。
たとえば、上昇後の押しが20円に達すれば固定20円のカギ足は下向きへ反転します。しかし、その終値が新値三本足の直近3ライン安値より上なら、新値三本足は下降線を作りません。反対に、直近3ラインの値幅が狭い場面では、20円未満の下落でも新値三本足が転換する可能性があります。
| 相場局面 | カギ足 | 新値三本足 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 一定幅の押し | 反転幅到達で方向転換 | 3ライン範囲内なら維持 | 一方だけ反転し得る |
| 狭い持ち合い | 幅未満なら変化なし | 範囲突破で変化 | 設定感度を比較 |
| 急なギャップ | 複数水準を一度に通過 | 大きな反対線を生成 | 途中価格で約定できない |
片方が早く転換したから優秀、遅いから劣るとは限りません。早い反応はだましを増やし、遅い反応は損失を広げる場合があります。二つを同時に使うなら、「カギ足の肩上抜けを候補とし、新値三本足の上昇転換を確認にする」など役割を事前に固定します。結果を見て都合のよい方だけ採用すると検証になりません。
7.元時間足・終値・投影表示で履歴が変わる
時間を均等表示しないチャートでも、計算元のデータは時間区間を持ちます。日足終値で作る場合、場中に反転条件へ触れても引けで戻れば確定しないことがあります。5分足由来なら日足より細かい順序を拾いますが、取引所のティック列そのものを完全に再現するとは限りません。
TradingViewはLine Breakの確定線とは別に、現在区間の投影上昇線・投影下降線を表示できる設定を案内しています。投影は確定ではなく、元時間足が閉じる前に消える可能性があります。アラートを作るなら、投影時点か確定時点かを必ず明記します。
高値・安値を使うカギ足では、同一バー内でどちらを先につけたか不明になる場合があります。終値方式は順序問題を減らしますが、場中の急変を省きます。チャートサービスをまたいで比較するときは、名称だけで同一仕様と考えず、元時間足、価格フィールド、反転幅、比較本数、投影表示をそろえます。

8.売買サインにする前に、支持・抵抗と相場環境を見る
カギ足では肩の切り上がり・腰の切り上がり、新値三本足では上昇線の連続と直近高値の更新が上向き候補です。どちらも支持・抵抗の水準を簡潔にしやすい一方、企業業績、決算発表、増資、指数入れ替え、出来高の変化までは示しません。
チャートの形だけでは企業の変化は分かりません。短期スイングでも、価格と決算資料の両方を確認する必要があります。
トレンド相場では細かな逆行を省く利点があります。狭い往復相場では、カギ足の方向転換や新値三本足の色替わりが続きやすくなります。線が短期間に何度も反転するなら、設定が現在の変動幅に対して細かすぎる可能性があります。反対に設定が広すぎると、転換確認時には損失が大きくなります。
単独サインにせず、通常足で直近高安と窓を確認し、出来高で参加量を確認します。ローソク足、マルチタイムフレーム分析、練行足の記事と役割を分けると、表示を増やし過ぎずに済みます。
9.注文・撤退・数量を、チャートの色とは別に決める
買いの入口を「カギ足が太線になった」「新値三本足が上昇へ転換した」と定義するだけでは不十分です。どの時間足由来か、確定終値か、次の寄り付きか、指値か成行かを決めます。決算翌日に上方へ窓を開ければ、チャート上の転換価格で買えるとは限りません。
撤退を反対色だけにすると、確認までに価格が大きく逆行する場合があります。直近の腰、通常足の支持線、購入理由を無効にする価格、1回の許容損失を候補にします。イベント前、板が薄い銘柄、ストップ高・安付近では、計算どおりに損切りできない可能性も考えます。
数量は許容損失から逆算します。資金100万円、1回の許容損失0.5%なら5,000円です。買値1,200円、損切り候補1,150円なら1株当たり50円で、費用を無視した理論上限は100株です。ギャップ、手数料、滑りを見込むなら実際の数量はさらに抑えます。単元未満株を使う場合は注文方法と約定ルールを確認します。
| 段階 | 決めること | 見送り例 |
|---|---|---|
| 設定 | 反転幅・比較本数・元時間足 | 結果を見て変更 |
| 確定 | 投影か完成か、発注可能時刻 | 消える可能性のある線 |
| 実市場 | 板・出来高・呼値・イベント | 大幅ギャップ、薄い板 |
| リスク | 無効化水準・数量・注文種別 | 損失上限を超過 |
10.合成チャートの価格でバックテストしない
カギ足と新値三本足の線は、元の市場価格を条件に沿って再構成した表示です。各線の始値・終値や転換位置を、取引所でその順序どおりに約定できた価格とみなせません。TradingViewは、Renkoなど非標準チャート上でのストラテジーが合成OHLCを使い、非現実的な結果を生む場合があると警告しています。カギ足やLine Breakでも、シグナル表示と実際の注文可能価格を分ける原則は同じです。[出典4]
検証では、価格ベースチャートからシグナルが確定した時刻を取得し、それ以後の通常足やティックデータから発注・約定候補を決めます。確定に使った終値より前の価格で約定させないことが最低条件です。手数料、売買スプレッド、滑り、ストップ高・安、売買停止も反映します。
設定探索と成績評価を同じ期間で行うと過剰適合になります。反転幅や比較本数を決める学習期間、触らない検証期間、実際に発注せず観察する前向き期間を分けます。うまくいった設定だけでなく、試した全候補と不採用理由も残します。
11.日本株では呼値、分割調整、流動性を確認する
固定10円の反転幅は分析設定であり、取引所の注文刻みと同じとは限りません。JPXは、呼値の単位が銘柄区分と価格帯で異なると案内しています。2026年9月22日時点の制度と、2027年3月1日予定の変更も公式表で確認できます。[出典5]
転換水準が1,003.4円でも、その価格で指値を出せるとは限りません。現在の呼値へ合わせ、板と気配を確認します。低位株へ細かすぎる固定幅を使うと反転が増え、値がさ株へ小さすぎる幅を使うとノイズを拾います。売買代金が少ない銘柄では、表示上の転換後に発注しても希望価格で約定しない場合があります。
株式分割・併合、配当調整、データ訂正によって過去価格が変われば、過去の肩・腰や3ライン範囲も変わる可能性があります。調整前後の系列を混在させず、データ供給元、調整方法、検証実施日を記録します。
12.前向き検証で残す記録
カギ足は反転幅方式と数値、価格フィールド、元時間足を記録します。新値三本足は比較本数、元時間足、終値確定の定義、投影表示の有無を記録します。銘柄コード、日時、調整株価の有無、データ供給元も必要です。
シグナルが出た場合は、チャート上の転換価格と実際に注文できた価格を別欄にします。発注時刻、注文種別、数量、約定価格、手数料、滑り、無効化水準、決算日を残します。見送った場合も、ギャップ、板の薄さ、イベント、損益比不足など理由を記録します。
一定数がたまったら、勝率だけでなく平均利益、平均損失、利益率と損失率の比、最大逆行、最大有利方向、保有時間、費用控除後損益を確認します。カギ足と新値三本足を組み合わせた場合は、片方だけ、両方一致、どちらも不一致の結果を分け、追加条件が本当に改善したかを検証します。
13.実践チェックリスト
- 方式:カギ足か新値三本足かを確認します。
- 設定:反転幅、割合、ATR、比較本数を記録します。
- 元データ:時間足、終値・高安、調整価格を確認します。
- 状態:投影か確定かを確認します。
- 構造:肩・腰、直近ライン範囲、支持・抵抗を見ます。
- 通常足:窓、ヒゲ、出来高、上位時間足を確認します。
- イベント:決算、増資、指数入れ替え、権利落ちを確認します。
- 注文:板、呼値、注文種別、発注時刻を決めます。
- 撤退:反対色以外の無効化水準も決めます。
- 数量:許容損失とギャップ余裕から逆算します。
よくある疑問
新値三本足は3日間の高値・安値を見ますか?
通常は3日ではなく、直近3本の確定ラインを比較します。ラインは時間経過だけでは増えないため、3本が何日分に相当するかは一定ではありません。
カギ足の太線は上昇、細線は下降ですか?
単純には対応しません。方向転換と線の太さ変更は別の条件です。前の肩上抜けや腰下抜けで太さが切り替わるため、向きと太さを分けて確認します。
どちらが売買に向いていますか?
一律の優劣はありません。固定値幅で反転を管理したいならカギ足、直近ライン範囲の突破を見たいなら新値三本足が候補です。保有期間と損失上限に合わせ、未使用期間と前向き観察で比較します。
二つが同時に買いへ変われば安全ですか?
安全を保証しません。似た元データから作るため独立した根拠とは限らず、同時にだまされることもあります。通常足、出来高、イベント、実際の注文可能価格を確認します。
まとめ――転換の仕組みを理解し、実価格で注文を決める
カギ足は設定した反転幅、新値三本足は直近Nラインの範囲突破で方向転換を示します。どちらも時間の細かな揺れを省きますが、転換基準は異なり、同じ終値系列でも転換時点は一致しません。カギ足では向きと太さを分け、新値三本足では継続条件と反転条件を分けて読みます。
私が持ち帰りたいのは、線の名前より転換を数える条件です。同じ値動きの見せ方を変えている、と意識して通常足と付き合わせたいです。
表示が簡潔でも、投影線、元時間足、価格フィールド、調整株価、呼値、ギャップの問題は残ります。合成された線の価格で約定できたと仮定せず、シグナル確定後の通常足と板で注文を判断します。入口より先に撤退水準と数量を決め、同じ設定を前向きに記録することが、見た目の分かりやすさを実務へつなげる条件です。
参考・出典
確認日:2026年9月22日。図・価格例は編集部作成の架空例です。
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