GMMAをチャートへ表示すると、赤や青などで分けられた12本の線が帯のように並びます。線が多いため複雑に見えますが、見る対象は12本を一本ずつ当てることではありません。短期6本のまとまり、長期6本のまとまり、それぞれの広がり、二つの群の距離を順に観察する指標です。
GMMAはGuppy Multiple Moving Averageの略で、考案者Daryl Guppy氏の姓から名付けられました。短期群は3・5・8・10・12・15期間、長期群は30・35・40・45・50・60期間の指数平滑移動平均線(EMA)で構成します。12本を表示しても未来が見えるわけではありません。すべて過去価格から計算するため、急変には遅れ、レンジでは線が何度も交差します。
先に押さえる結論
- GMMAは12本のEMAを短期6本・長期6本に分けた移動平均リボンです。
- 短期群を「短期投資家」、長期群を「長期投資家」の代理として読みますが、実際の投資家別売買を測定しているわけではありません。
- 方向だけでなく、群内の収束・拡散と群間の距離を観察します。
- 短期群のクロスだけで売買せず、長期群、支持抵抗、出来高、イベント、実際の発注価格を確認します。
- 日足ルールなら大引け後の確定値を使い、翌営業日の窓や滑りを検証へ反映します。
- 撤退位置と許容損失から数量を決められない局面は見送ります。
1.GMMAとは――12本のEMAを二つの群として読む
GMMAを考案したDaryl Guppy氏は、株式・デリバティブのトレーダーで、著書に『Trend Trading』などがあります。氏の公式サイトは、Guppy Multiple Moving Averageを代表的な分析技法として紹介しています。[出典1] StockChartsの公式教材では、GMMAを短期6本と長期6本、合計12本のEMAで構成する移動平均リボンと説明しています。[出典2]
標準設定は、短期群が3・5・8・10・12・15期間、長期群が30・35・40・45・50・60期間です。日足なら期間は営業日の本数、週足なら週足の本数、15分足なら15分足の本数を意味します。同じ「60」でも日足60日と15分足60本では、観察している時間がまったく違います。
短期群は価格変化へ速く反応するため、短期参加者の行動を考える代理として使われます。長期群は反応が遅く、長期参加者の価値認識や保有姿勢を考える代理として扱われます。ただし、この説明は価格だけから作るモデル上の比喩です。GMMAには投資家区分別売買高、保有期間、機関投資家の注文データは入っていません。「長期群が拡散したから機関投資家が買った」と事実のように断定しないことが重要です。
| 比較点 | 短期群 | 長期群 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 標準期間 | 3・5・8・10・12・15 | 30・35・40・45・50・60 | 足種で実時間が変化 |
| 反応 | 速い | 遅い | 速さは収益性と同義ではない |
| 役割の比喩 | 短期参加者の反応 | 長期参加者の認識 | 実際の属性別売買ではない |
| 主な観察 | 急な収束・拡散・反転 | 方向・間隔・安定性 | 群間関係と併読 |

2.計算は12本ともEMA――複雑な新公式ではない
GMMA専用の一つの値を計算するわけではありません。12種類の期間でEMAを計算し、同じ価格チャートへ重ねます。期間をN、平滑化係数をαとすると、一般的なEMAは「α=2÷(N+1)」「当日EMA=当日終値×α+前日EMA×(1-α)」です。StockChartsのEMA解説も同じ係数と更新式を示しています。[出典3]
α=2÷(N+1)
EMAt=終値t×α+EMAt-1×(1-α)
3期間EMAのαは0.5、15期間EMAは0.125、30期間EMAは約0.0645、60期間EMAは約0.0328です。同じ1日の変化でも3EMAは大きく動き、60EMAは小さく動きます。この反応差を並べることで、価格変化が短期線だけの揺れなのか、長期線群まで方向を変える動きなのかを視覚化します。
EMAには初期値と計算履歴が必要です。サービスによって初回EMAにSMAを使うか、何本の過去データを読み込むか、分割・配当をどう調整するかが違えば、同じ期間でも小さな差が出ます。検証では銘柄、足、基準価格、調整方法、初期値、履歴長を記録します。EMA・WMAの計算と実装差はEMA・WMAの記事で詳しく説明しています。
| 期間N | α=2÷(N+1) | 群 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 3 | 0.5000 | 短期 | 当日終値の影響が最大 |
| 15 | 0.1250 | 短期 | 短期群の遅い端 |
| 30 | 約0.0645 | 長期 | 長期群の速い端 |
| 60 | 約0.0328 | 長期 | 長期群の遅い端 |
3.読む順番は「長期群→短期群→群間」
最初に長期群を見ます。6本が上向きで、短い期間が上、長い期間が下へ整い、適度な間隔を保っているなら、上昇方向が長めの平均へ浸透している状態です。反対に下向きで順序が逆なら下降方向です。線が水平に絡む場面は、明確な方向がない可能性を先に考えます。
次に短期群を見ます。価格が急伸すれば3EMAから先に上がり、短期群が扇状に広がります。上昇途中の押しで短期群が収束しても、長期群が上向きで間隔を保てば、長期方向を壊さない調整の候補です。ただし、短期群が長期群へ深く入り、長期群まで圧縮・反転するなら、単なる押しと決めつけません。
最後に二つの群の距離を見ます。短期群が長期群の上で拡散し、長期群も拡散するなら上昇の持続候補です。両群が近づく収束は、参加者の見方の差が縮んだ状態を表す代理ですが、収束だけで反転方向は確定しません。上にも下にも離れ得るため、終値での離脱、支持抵抗、出来高を待ちます。

4.四つの状態を分ける――順序・傾き・幅・距離
| 状態 | 線の特徴 | 候補解釈 | 確認 |
|---|---|---|---|
| 上昇の拡散 | 短期群が上、両群上向き | 上昇持続の候補 | 高値追いの距離、出来高 |
| 短期群のみ収束 | 長期群は上向き維持 | 押し・休止の候補 | 支持帯、反発終値 |
| 両群の圧縮 | 線が水平・混在 | 方向不明、転換準備 | レンジ離脱を待つ |
| 下向き再拡散 | 短期群が下、長期群も下向き | 下降持続の候補 | 空売り条件、踏み上げ |
目視だけでなく、三つの距離を記録する
GMMAは見た目で読むことが多い指標ですが、検証では「広がった」「密集した」を数値にします。候補は、短期群の最大値と最小値の差、長期群の最大値と最小値の差、短期群の遅い端である15EMAと長期群の速い端である30EMAの差です。それぞれを終値で割れば価格水準の違いを抑えられ、ATRで割れば銘柄ごとの通常変動に対する大きさを比較できます。帯が広いという感覚を数字にできれば、別の場面とも比べられます。見た目の強さをそのまま売買の根拠にしないために使いたいです。
例えば終値2,000円、短期群の最高値2,020円、最低値1,990円なら短期群幅は30円、終値比1.5%です。15EMAが1,995円、30EMAが1,960円なら群間差は35円、終値比1.75%です。これらは計算方法の例であり、「1.5%以上なら買い」という普遍的な境界ではありません。対象銘柄、時間足、相場局面で分布が変わるため、過去データで通常範囲を確認します。
線の順序も機械判定できます。上昇の整列候補は短期群で3EMA>5EMA>8EMA>10EMA>12EMA>15EMA、長期群で30EMA>35EMA>40EMA>45EMA>50EMA>60EMAです。しかし、完全整列を待つほどシグナルは遅くなります。一方、条件を緩めすぎるとレンジのノイズが増えます。完全整列、長期群の傾き、群間差のうち何を必須にするかを売買前に決めます。
傾きの定義も「上向きに見える」では再現できません。現在値が1日前より高い、5日前より高い、回帰直線の傾きが正など、同じチャートでも定義が変わります。日々の運用で判断を揃えるなら、採用した定義と判定時刻を記録します。線が多いGMMAほど、目視の印象を数値へ翻訳する工程が重要です。
「短期群が長期群を上抜いたら買い」という一条件では情報を捨てすぎます。クロス前の長期群が水平なら、レンジ内の一往復かもしれません。長期群が下降中なら、クロス後も上値を抑えられる可能性があります。クロス後に短期群が拡散し、長期群も傾き始め、価格が抵抗を終値で上抜くという複数の段階を分けます。
拡散幅を固定パーセントで一律評価する場合も注意が必要です。株価100円と1万円では円単位の幅が異なり、低ボラティリティ銘柄と新興株では通常の振れ幅も違います。比較するなら価格に対する割合やATRなどで尺度を揃えます。ただし、ATRで割った値にも万能な境界はありません。
5.上昇トレンドの押し目で使う具体手順
日足の買い候補なら、まず長期群6本が上向きで、価格が長期群の上にある銘柄を抽出します。次に短期群が一度収束しても長期群の下側まで崩れていないかを見ます。最後に、短期群の再拡散、押し安値、直近高値、出来高を確認します。これは「買いを確定する公式」ではなく、候補を減らす順序です。
例えば、価格が短期群へ押し、15EMA近辺で下げ止まり、終値で5EMAを回復したとします。長期群が上向きでも、翌日に決算発表がある、出来高が極端に少ない、直近高値までの余地より撤退までの距離が長いなら見送ります。逆に、支持帯と押し安値が近く、次の抵抗まで余地があり、実際の買値で損益比が残るなら注文候補になります。
エントリー価格はチャート上の終値と同じとは限りません。大引けで条件が成立しても、注文できるのは翌営業日です。好材料で窓を開ければ、損切りまでの距離が拡大します。「シグナルが出たから成行」ではなく、許容上限価格、指値、未約定時の扱いをルール化します。
6.撤退・数量・見送りをシグナルより先に決める
撤退条件は、短期群へ戻っただけなのか、押し安値を割ったのか、長期群の向きまで変わったのかで役割を分けます。3EMA割れだけなら早い一方、通常の揺れで退出が増えます。60EMA割れまで待てば遅くなり、損失幅が大きくなる可能性があります。保有期間に合わせ、価格水準を基準にした無効化条件を決めます。
資金100万円、1回の許容損失0.5%なら損失予算は5,000円です。買値2,000円、撤退1,950円なら1株当たり予定損失は50円で、費用を無視した理論上限は100株です。決算跨ぎ、板の薄さ、ストップ安、滑りを考えるなら数量を減らします。12本の線がきれいに拡散していても、損失予算を超える数量にはしません。
見送り条件を明文化すると、GMMAの見た目に引っ張られにくくなります。長期群が水平、両群が絡む、発注価格が許容上限を超える、撤退位置が曖昧、決算日が近い、板が薄い、抵抗までの余地が小さい場面は見送り候補です。良い形を探すだけでなく、悪い取引を避けるフィルターとして使います。

7.レンジと急変で起きる読み違い
レンジでは12本が収束・交差を繰り返します。短期群の上下入れ替わりをすべて売買すると、往復売買とコストが増えます。長期群が水平で、価格が一定範囲を往復しているなら、GMMAを方向サインではなく「方向がないことを確認する道具」として使います。
決算や材料で窓を開けた急変では、短期群が大きく拡散して強いトレンドに見えます。しかし、EMAは約定可能価格や板の厚さを表しません。初日の高値を追うと、翌日に窓を埋めるだけで損切り幅が膨らむことがあります。材料の内容、売買停止、値幅制限、出来高、次の決算日を別に確認します。
株式分割・併合、配当落ち、データ欠損があれば、調整前後でEMAの形が変わります。複数サービスで線が違うときは、設定ミスと決めつけず、調整価格、取引時間、初期値、履歴長を比較します。未確定足のGMMAは価格とともに動くため、日足終値ルールなら場中の一時的な形を確定記録にしません。
8.他の指標と組み合わせるときの役割分担
| 道具 | 主な役割 | 組み合わせ方 | 重複・注意 |
|---|---|---|---|
| 価格・支持抵抗 | 実際の節目 | 離脱と撤退の基準 | 線を一点の壁にしない |
| 出来高 | 参加の増減 | ブレイク時の変化確認 | 大商い=上昇ではない |
| ATR | 通常の値幅 | 距離・損切りの尺度 | 方向は示さない |
| RSI・MACD | 勢いの別表現 | 役割を限定して補助 | 価格由来情報の重複 |
GMMAとMACDはいずれもEMAを使うため、二つを並べれば完全に独立した確認になるわけではありません。RSIも価格から計算します。確認項目を増やすほど良いのではなく、トレンド、価格の節目、値幅、出来高、イベントという異なる役割を割り当てます。
上位足との組み合わせも有効です。週足GMMAで長期環境を確認し、日足GMMAで押しや再拡散を観察できます。ただし、週足の未確定値は週の途中で変わります。時間軸の役割分担はマルチタイムフレーム分析で整理しています。
9.バックテストは「きれいな帯」を後から選ばない
GMMAを検証するときは、上昇・下降・レンジを見た後で都合のよい条件を付け足さないことが重要です。「長期群が上向き」をどの線で判定するか、「拡散」を何で測るか、「短期群が長期群へ入った」をどの終値で確定するかを先に数値化します。
日足終値で条件成立なら、同じ終値で必ず約定したと仮定しません。次の取引可能時点から損益を計算し、手数料、税、スプレッド、滑り、値幅制限を含めます。同一足で利確と損切りの両方に触れた場合の優先規則も事前に決めます。
銘柄集合には上場廃止銘柄を含む当時の母集団を使い、生存者バイアスを抑えます。標準12本以外の期間を大量に試し、最も成績が良い組み合わせだけを採用すると過剰適合しやすくなります。設定期間、評価期間、前向き観察期間を分けます。
評価は勝率だけでなく、平均利益、平均損失、期待値、最大ドローダウン、売買回数、保有期間、年別・相場別の偏りを確認します。GMMAは線が多いため説明を後付けしやすい指標です。再現できる定義と記録が、見た目の説得力より重要です。
よくある疑問
12本すべてが順番どおりなら買いですか?
強い上昇状態の候補ですが、買い価格が高すぎる場合があります。抵抗までの余地、撤退距離、決算、出来高、翌日の窓を確認します。
短期群は本当に短期投資家の売買を表しますか?
直接測定していません。短いEMAを短期反応の代理、長いEMAを長期認識の代理として読むモデルです。投資家属性別の事実として扱いません。
GMMAは何分足でも使えますか?
計算はできますが、短い足ほどノイズ、スプレッド、滑り、取引時間の影響が大きくなります。日足と同じ成績を想定せず、対象足で検証します。
線の色に決まりはありますか?
本質は短期群と長期群を区別できることです。サービスごとに色は違うため、自分の設定画面で期間と色を確認します。
まとめ――12本の線ではなく、二つの群の変化を読む
GMMAは、3・5・8・10・12・15期間の短期EMA群と、30・35・40・45・50・60期間の長期EMA群を重ねた指標です。読む対象は一本のクロスではなく、群の順序、傾き、収束・拡散、二群の距離です。12本の線から結論を増やすより、二つの群の関係を一つの問いで読む方が使いやすそうです。線の多さに安心せず、価格と自分の撤退条件へつなげて考えます。
短期群と長期群は市場参加者の行動を考える代理であり、実際の投資家属性を測るデータではありません。確定足、支持抵抗、出来高、イベント、実価格を確認し、撤退と数量を決めてから注文します。方向が不明、価格が遠い、損益比が残らない局面では、線がきれいでも見送ることが大切です。
参考・出典
確認日:2026年9月22日。図解と数値例は編集部作成の概念例です。
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