チャートに山が三つ並び、中央だけが高い。そこで「三尊だから下がる」と売ったのに、株価はネックラインへ届かず高値を更新した――。三尊(ヘッド・アンド・ショルダーズ)で起きやすい誤りは、形の候補を見つけた瞬間に、反転が完成したと扱ってしまうことです。逆三尊も同じで、中央の谷が深いだけでは上昇転換は確定しません。
見るべき順番は、山や谷の名前よりも、先行トレンド、左右の肩、二つの反応点を結ぶネックライン、突破の定義です。さらに、突破後に元の範囲へ戻る失敗、注文方法、撤退位置、買値に応じた数量まで決めて、初めて実行可能な計画になります。
この記事では、通常のローソク足・バーチャートにおける三尊と逆三尊を、候補・完成・注文・撤退へ分解します。図と数値はすべて当ブログが作成した架空例で、特定銘柄の実績や勝率ではありません。
先に押さえる4点
- 三尊は上昇後の三つの山、逆三尊は下落後の三つの谷が候補です。
- 中央が最も高い・低いだけでは未完成。二つの反応点を結ぶネックラインの突破を確認します。
- 左右の肩は同じ高さでなくてもよく、ネックラインも水平とは限りません。ただし許容差は事前に固定します。
- 目標値は値幅投影の計算目安です。利益や到達確率、企業価値を保証しません。
三尊・逆三尊は、何が反転した形ですか?
三尊は、上昇の途中で左肩の山を作り、いったん下げた後により高い頭を作り、再び下げてから頭を超えられない右肩を作る反転候補です。二つの谷を結んだ線がネックラインになります。右肩の後に価格がネックラインを下回ると、上昇の構造が崩れたと考える材料になります。
逆三尊は上下を反転した形です。下落の途中に左肩の谷ができ、その後の反発からさらに深い頭の谷を作り、次の下げが頭を割らず右肩になります。二つの戻り高値を結んだネックラインを上回って、初めて下落からの反転完成を考えます。
Charles Schwabの公式解説は、三つの山が日中チャートにも頻繁に見えるため誤読しやすく、確認を待たない取引が危険だと説明しています。また、thinkorswimの公式資料では、左右の肩が同じ高さである必要はなく、ネックラインも厳密な水平線でなくてよいとされています。出典:Charles Schwab「Identifying Head-and-Shoulders Patterns」、thinkorswim「Head and Shoulders」。
| 確認項目 | 三尊 | 逆三尊 |
|---|---|---|
| 先行する流れ | 上昇 | 下落 |
| 中央の頭 | 左右の肩より高い山 | 左右の肩より低い谷 |
| ネックライン | 頭の前後の谷を結ぶ | 頭の前後の山を結ぶ |
| 完成候補 | 右肩後に下抜け | 右肩後に上抜け |

横ばい相場の中でも中央が高い三つの山は生まれます。しかし、反転させるべき上昇が先にないなら、三尊という名前よりレンジ内の振動として扱うほうが自然です。どの時間軸のトレンドを反転候補とするのかも固定します。日足の三尊と5分足の三尊では、節目、保有時間、許容する価格変動が同じではありません。
左右の肩は、どこまで不ぞろいでよいですか?
教科書の図では左右対称に見えますが、実際の価格は等間隔・等価格になりません。右肩が左肩より低い三尊は、頭を作った後の戻りが弱いと読めます。一方、右肩が頭へ近づきすぎれば、三尊ではなく高値圏の持ち合いや上昇継続の途中かもしれません。
大切なのは、結果を見てから許容差を変えないことです。「肩の差は頭からネックラインまでの値幅の25%以内」「右肩は頭を超えない」「形成期間は10~40営業日」のように、自分が検証する仮定を先に記録します。ここでの数値は設計例であり、普遍的な基準ではありません。ATRなど変動率に応じた幅を使うなら、その計算期間も固定します。
| 見た目 | 候補としての解釈 | 必要な確認 |
|---|---|---|
| 肩がほぼ同じ | 典型形に近い | 先行トレンドとネックライン |
| 三尊の右肩が低い | 戻りの弱さを示す可能性 | 安値切り下げと出来高 |
| 肩が頭へ接近 | 定義外・持ち合いの可能性 | 頭の更新なら候補を終了 |
| 形成間隔が極端に違う | 別の時間軸が混在 | 足種と期間を固定して再評価 |
傾いたネックラインは、二点を結ぶ関数として扱います
三尊では頭の前後にある二つの谷、逆三尊では二つの戻り高値を結びます。二点の価格が同じなら水平ですが、実際には傾くことがあります。線を目分量だけで延長すると、突破日によって基準がぶれます。観測時点をt、二点を(t1、N1)と(t2、N2)とすると、時点tのネックラインN(t)は次の線形補間・外挿で計算できます。
N(t)=N1+(N2−N1)×(t−t1)÷(t2−t1)
架空の三尊で、最初の谷が5日目の1,000円、次の谷が15日目の1,020円なら、一日当たりの傾きは2円です。20日目のネックラインは1,030円になります。水平線の1,000円だけを見ていると、1,015円で「割れた」と誤認する可能性があります。
ただし、線を引く二点自体が確定している必要があります。左右に数本の足を要するピボット判定を使うなら、谷ができた当日にはまだ確定していません。検証では確定に必要な将来の足を、過去の判断へ戻さないようにします。
| 方法 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| ヒゲの高安で結ぶ | 市場が実際に触れた端を使う | 瞬間的な異常値の影響 |
| 終値で結ぶ | 確定足ルールと揃えやすい | 日中の反応を捨てる |
| 価格帯で扱う | 細い線への過信を減らす | 帯の幅を事前に固定 |
支持・抵抗を一本の価格ではなく帯で管理する考え方は、支持線・抵抗線を「線」ではなく帯で考える方法で解説しています。突破後に元の帯へ戻り、今度は反対側から機能する場面は、ロールリバーサルの記事も参考になります。

完成は「触れた」「抜けた」「終値で抜けた」のどれですか?
場中にネックラインを1円超えただけで完成とするのか、終値で突破したら完成とするのか、ATRや百分率の余裕幅を加えるのかで結果は変わります。日足終値で確認するルールなら、場中の突破で先回りして約定した取引を同じ集計へ混ぜません。場中と引け後で確認できることは違います。検証では、後から完成した形を、注文時点で既に分かっていたものとして扱いません。
早く入るほど価格は有利になりやすい一方、候補が消える回数も増えます。確認を厚くするほど誤突破を減らせる可能性がありますが、買値・売値は不利になり、目標までの余地が縮みます。どちらが正しいかではなく、異なる戦略として記録します。
| 型 | 実行条件 | 利点 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|
| 右肩先回り | 頭を更新せず反転 | 価格が有利になりやすい | 未完成の失敗が多い |
| 場中突破 | ネックラインへ到達 | 早く反応できる | ヒゲの誤突破 |
| 終値確認 | 確定足で突破 | 判定が再現しやすい | 価格が離れる |
| 押し・戻り待ち | 突破後に再接近して反発 | 撤退幅を整理しやすい | 再接近せず機会消失 |
出来高は補助情報で、形の代わりではありません
三尊では頭や右肩へ進むにつれて出来高が減り、ネックライン割れで増えるという説明があります。Schwabも、突破時の出来高増加を確認材料として挙げる一方、突破しても継続は保証されないと明記しています。出来高は「売り手だけの量」ではなく、売りと買いが成立した数量です。増加だけで参加者の意図や将来方向は確定しません。
検証するなら、突破日の出来高を直前20日平均と比べるなど基準を固定します。当日を平均へ含めるか、場中の途中出来高をどう補正するかも記録します。東証上場株、米国株、先物など市場が変われば、取引時間や出来高の意味も変わるため、同じ閾値を無条件に使いません。
目標値は、頭からネックラインまでの値幅を投影します
架空の三尊で、頭の高値が1,300円、頭と同じ時点へ延長したネックラインが1,150円、突破価格が1,120円とします。値幅は150円なので、計算上の下値目安は1,120−150=970円です。逆三尊なら、頭の安値とネックラインの差を突破価格へ加えます。
傾いた線では、頭の真下にあるN(H)と頭の価格を使うのか、突破時のネックラインと頭を使うのかで値幅が変わります。検証中に都合のよい式へ切り替えず、採用式を固定します。Schwabの公式解説も、頭からネックラインまでの垂直距離を突破点へ加える方法を「利益目標を見積もる」手順として示していますが、到達保証とはしていません。
| 架空例 | 頭とネックライン | 突破価格 | 計算目安 |
|---|---|---|---|
| 三尊 | 1,300円−1,150円=150円 | 1,120円 | 970円 |
| 逆三尊 | 1,050円−900円=150円 | 1,080円 | 1,230円 |
目標へ届く前に過去の支持・抵抗、窓、決算発表があれば、そちらを先に点検します。目標値は企業の利益や資産から求めた適正価値でもありません。目標まで30円しか残っていない価格で追いかけ、撤退幅が80円なら、形が完成していても見送りが合理的です。
突破後の失敗は、どこで撤退しますか?
三尊がネックラインを下抜けた後、価格が線の上へ戻ることがあります。逆三尊なら上抜け後に線の下へ戻ります。これはすぐに「だまし」と断定するより、自分の完成条件が否定されたかを確認します。終値で突破を条件にしたなら、終値で再侵入した時点、右肩を超えた時点、一定日数で進まなかった時点など、撤退を数値化します。
再試行を認める場合も、最初の損失を消しません。一銘柄で何回まで入り直すか、合計損失はいくらまでかを先に決めます。前の損失を取り戻す目的で株数を増やすと、同じ形の失敗へ資金を集中させることになります。
| 失敗の状態 | 事前に決める基準 | 行動例 |
|---|---|---|
| 線へ再侵入 | 終値・余裕幅 | 縮小または撤退 |
| 右肩を否定 | 肩・頭のどちらを越えたら終了か | 候補を終了して引き直さない |
| 時間切れ | 突破後の最大保有日数 | 資金拘束を解く |
| 窓を開けて逆行 | 最大損失の想定と建玉上限 | 指値待ちで損失を拡大させない |
逆指値と逆指値付き指値は、同じ保険ではありません
突破で入る場合、逆三尊ならネックラインの上に買いの逆指値、三尊の空売りなら下に売りの逆指値を置く方法があります。撤退にも逆指値を使えます。ただし、ストップ価格は約定価格ではありません。
米SECのInvestor.govは、ストップ注文は条件到達後に成行注文となり、流動性によって執行価格が大きくずれる可能性があると説明しています。ストップ・リミットなら価格を制御できますが、市場が指値を通過すると未約定になる可能性があります。さらに証券会社によって、最終売買価格か気配価格かなど発動基準が異なるため確認が必要です。資料は2026年8月18日に更新されています。出典:Investor.gov「Stop, Stop-Limit, and Trailing Stop Orders」。
| 注文 | 優先すること | 残るリスク |
|---|---|---|
| 逆指値→成行 | 条件到達後の執行 | 価格のずれ |
| 逆指値付き指値 | 許容価格の上限・下限 | 一部または全部が未約定 |
| 終値確認後の翌日注文 | 確定足の再現性 | 翌日の窓と追いかけ |
買値が変われば、株数も見送りも変わります
架空の逆三尊で、ネックラインが1,050円、確定後の購入候補が1,080円、撤退基準が1,010円、手数料・滑りの余裕が一株5円、損失予算が15,000円、売買単位が100株とします。一株の見積損失は1,080−1,010+5=75円です。
数量は、損失予算÷一株の見積損失を売買単位で切り下げます。15,000÷75=200株なので、購入資金は216,000円、通常時の見積損失は15,000円です。購入候補が1,130円へ上がれば一株125円となり、100株に減ります。1,200円では一株195円で、100株でも19,500円となるため見送ります。
| 購入候補 | 一株の見積損失 | 数量 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 1,080円 | 75円 | 200株 | 予算上限。目標・資金も確認 |
| 1,130円 | 125円 | 100株 | 数量を減らす |
| 1,200円 | 195円 | 0株 | 単元で予算超過、見送り |
この計算でも損失上限は保証されません。決算で翌朝980円から始まれば、逆指値は1,010円付近で約定できない場合があります。価格のずれを一株5円としたのは通常時の仮定で、急変時の上限ではありません。重要発表の前、売買が薄い銘柄、上場直後などは、数量を減らすか最初から見送ります。

ダブルトップ・トリプルトップと、どう区別しますか?
ダブルトップは二つの山の間の谷を割る形で、三尊は中央の頭が左右の肩より高いことが特徴です。三つの山がほぼ同じ高さなら、三尊よりトリプルトップの定義へ近づきます。名称を無理に一つへ決めるより、どの支持を割れば仮説が完成し、どこを越えれば否定かを先に示します。
二つの山・谷の完成条件は、ダブルトップ・ダブルボトムの記事で詳しく説明しています。同じチャートを人によって別名で呼べる場面があるからこそ、「ネックラインの二点」「突破条件」「撤退条件」を記録すると比較できます。
| 形 | 山・谷の特徴 | 完成の節目 |
|---|---|---|
| ダブルトップ | 近い高さの二つの山 | 間の谷を下抜け |
| 三尊 | 中央が高く左右が低い | 二つの谷を結ぶ線を下抜け |
| トリプルトップ | 三つが近い高さ | 支持帯の下抜け |
研究結果は「形を客観化できる」のであって、必勝を示しません
チャートパターンは、どの山を肩と呼ぶかが観察者に依存しやすい問題があります。Lo、Mamaysky、Wangは2000年の研究で、カーネル回帰を使って三尊などの形を自動認識し、米国株の1962~1996年データを調べました。研究は一部パターンの条件付きリターン分布に情報が含まれる可能性を示しましたが、現在の日本株で同じ設定を売買すれば利益が出るという保証ではありません。出典:NBER Working Paper 7613、Journal of Finance掲載論文。
自分で検証する場合は、形の定義、時間軸、銘柄集合、手数料、滑り、空売り料、上場廃止を含むデータを決めます。成功したチャートだけを集めず、候補で終わったもの、突破後に失敗したもの、注文が約定しなかったものも残します。
| 記録時点 | 保存する内容 | 防ぐ誤り |
|---|---|---|
| 候補発見 | 先行トレンド、肩・頭、二点、期限 | 後から形を選ぶ |
| 完成確認 | 突破時刻、終値、出来高、余裕幅 | 場中と終値の混同 |
| 注文前 | 注文種別、上限、撤退、株数 | 約定できた前提 |
| 終了後 | 約定値、費用、最大逆行、終了理由 | 形の成否と損益の混同 |
見送り条件を先に決めると、完成後の飛びつきを減らせます
逆三尊が完成しても、すべて買う必要はありません。重要発表の直前、目標までの余地が小さい、単元株でも損失予算を超える、板が薄い、先行トレンドがない、肩の定義を説明できない場合は見送ります。三尊を見つけても、空売りを使わずに保有株の買い増し停止や撤退点検へ利用できます。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 候補だけで未突破 | 監視。完成取引の成績へ入れない |
| 突破したが目標余地不足 | 追いかけず見送り |
| 数量が単元未満 | 損失予算を広げず0株 |
| 決算・材料の直前 | 窓リスクを許容できなければ見送り |
| 線を何度も引き直す | 旧候補を終了し、新候補として記録 |
まとめ:三つの山・谷ではなく、確認から数量まで読みます
三尊と逆三尊は、左右の肩と中央の頭、二つの反応点を結ぶネックラインで反転候補を整理する方法です。中央が高い・低いという見た目は入口にすぎません。先行トレンドがあり、右肩の後にネックラインを決めた方法で突破したかを確認します。私なら、山が三つという印象より、事前に引いた線を価格がどう越えたかを記録します。形の名前が自分の判断を助けるのかは、その後の失敗も含めて追いたいと思います。
ネックラインが傾くなら、二点から時点ごとの価格を計算します。値幅を突破点へ投影した目標値は、到達保証ではなく残り余地の比較に使います。突破後の再侵入、右肩の否定、時間切れを撤退条件にし、注文の価格ずれや未約定も想定します。
最後に、買値と撤退の差、費用・滑りの余裕、損失予算から数量を計算します。形が完成しても条件が合わなければ0株です。「山が三つある」から一歩進み、候補・完成・注文・撤退・数量を分けることが、後付けを減らす出発点になります。
資料確認・更新日:2026年9月24日。図表・数値例は当ブログ作成です。
免責事項
本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・売買を推奨するものではありません。チャートパターン、目標値、注文条件は将来の値動きや利益を保証しません。注文の不成立、価格のずれ、空売り特有の損失により、想定以上の損失が生じる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記載の数値は、本文中に示した日付時点の決算短信・会社のIR資料などの公開情報に基づきます。最新の情報は各社の開示でご確認ください。
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