大きく上昇した株がいったん下げ、何週間もかけて元の高値へ戻ってきた。チャートにはきれいなカップが見える――。そこで買った直後、株価が高値を越えられず反落することがあります。カップ・ウィズ・ハンドルで最も避けたいのは、カップを見つけた時点で完成と決めることです。
このパターンは、先行上昇の後にU字形の調整を作り、右側高値付近で小さなハンドルを形成し、その上端の抵抗を突破して初めて完成候補になります。つまり、カップは土台、ハンドルは最終調整、突破は確認です。どれか一つを省けば、別のパターンや単なる戻りを後付けで呼んでいる可能性が高まります。
この記事では、形の定義、期間と深さ、出来高、ピボット、目標値、注文、撤退、数量、見送りまでを一つの計画にします。図表と数値例はすべて当ブログが作成した架空例であり、特定銘柄の実績や将来の勝率ではありません。
先に押さえる6点
- 先行上昇がないU字は、同じ意味のカップ・ウィズ・ハンドルではありません。
- カップはV字ではなく、売り圧力が時間をかけて和らぐU字が基本です。
- ハンドルは右縁付近の小さな調整で、カップ本体より浅く短いことを確認します。
- 完成はハンドル上端・抵抗帯の突破です。場中か終値かを事前に決めます。
- 目標値は値幅の投影にすぎず、到達や利益を保証しません。
- 完成しても、撤退幅・単元株・決算・流動性が合わなければ0株です。
カップ・ウィズ・ハンドルとは何ですか?
カップ・ウィズ・ハンドル(Cup with Handle)は、上昇トレンドの途中で現れる強気の継続パターンです。名称は、価格が下落して回復する部分がカップ、右縁付近の小さな下押しが持ち手に見えることに由来します。William J. O’Neilが体系化し、1988年の著書で広く紹介した形として知られています。出典:StockCharts ChartSchool「Cup with Handle」。
「強気」とは、上がると約束する意味ではありません。先行上昇の利益確定や需給調整を経た後、買い手が再び抵抗帯を上回ったという仮説です。抵抗を突破できなければ未完成であり、突破後にすぐ戻れば仮説が否定される可能性があります。
| 構成 | 観察すること | まだ言えないこと |
|---|---|---|
| 先行上昇 | 調整前に明確な上昇がある | 上昇が再開するか |
| カップ | 下落、底、回復がU字を作る | 右縁を越えられるか |
| ハンドル | 右縁付近で浅く短く調整する | 抵抗突破が成功するか |
| 突破 | ハンドル上端を事前定義どおり越える | 目標到達や利益 |

期間と深さは、方法ごとの基準を混ぜません
Investor’s Business Daily(IBD)は、同社の成長株投資法において、カップ形成を少なくとも7週間、典型的な下落率をおおむね12~33%として解説しています。一方、StockChartsは、カップが1~6か月、ハンドルが理想的には1~4週間、カップの深さは先行上昇幅の3分の1以内が理想で、荒い相場では2分の1、極端な場合は3分の2まであり得ると説明します。出典:IBD「The Basics: How To Analyze A Stock’s Cup With Handle」、前掲ChartSchool。
この二つを「7週間、かつ先行上昇幅の3分の1」と一つの普遍則にしてはいけません。IBDの12~33%は左縁高値から底までの株価下落率を表すのに対し、StockChartsの説明には先行上昇幅との比較が含まれます。分母が違えば同じ数字でも意味が変わります。使う方法、分母、測定点を記録します。
絶対的な日数や深さだけでなく、対象銘柄の通常の変動率と比べます。日々1%程度動く銘柄と10%動く銘柄では、同じ20%のカップが持つ意味は同じではありません。指数の急落期に市場全体と同時に50%下がった形を、静かな上昇相場の20%調整と同列に扱わないことも重要です。
| 項目 | IBDの解説例 | StockChartsの解説例 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|
| カップ期間 | 少なくとも7週間 | 1~6か月 | 方法と足種を固定 |
| 深さ | 典型12~33% | 先行上昇幅との比を重視 | 分母を混ぜない |
| ハンドル | 右縁近くの短い調整 | 理想1~4週間 | 後から期間を引き直さない |
カップはV字よりU字、ハンドルは小さく読みます
U字のカップでは、左側の下落が減速し、底付近で売買が均衡し、右側で徐々に回復します。急落後に一直線で急反発するV字は、調整期間が短く、上値の売りを十分に消化していない可能性があります。見た目が鋭いことだけで失格にするのではなく、底の滞在時間、戻り途中の押し、出来高の変化を同じ基準で比較します。
ハンドルは、右縁高値付近で生じる小さな下向き・横向きの持ち合いです。StockChartsは、ハンドルの押しをカップ右側上昇分の3分の1以内とし、小さいほど強いと説明しています。ハンドルがカップ中央付近まで深く落ちるなら、最終調整より新しい下落として扱うほうが再現しやすくなります。
ハンドルのないU字回復は「カップ」「ラウンディングボトム」の候補ではあっても、カップ・ウィズ・ハンドルと同じ完成条件にはしません。反対に、どんな小さな押しもハンドルと呼ぶと、突破価格を都合よく変えられます。開始日、上端、下端、最長期限を候補発見時に保存します。
| 見分ける形 | 先行状態 | 完成の節目 |
|---|---|---|
| カップ・ウィズ・ハンドル | 上昇後のU字+右縁の小調整 | ハンドル上端 |
| ラウンディングボトム | 下落後の丸い底が中心 | 戻り高値・抵抗帯 |
| V字反転 | 急落後の急回復 | 事前に定めた抵抗帯 |
| 単なる戻り | 長期下降が継続 | 上位足の抵抗未突破 |
深さ・ピボット・目標値を同じ価格系列で測ります
分割調整済み日足を使うなら、左縁、底、右縁、ハンドルも同じ系列から取ります。カップ深さ率は「(左縁H-底L)÷左縁H×100」、ハンドル深さ率は「(ハンドル高値Hh-ハンドル安値Lh)÷Hh×100」です。ヒゲか終値かも統一します。
架空例で、左縁1,500円、底1,125円なら、カップ深さは(1,500-1,125)÷1,500=25%です。右縁1,480円、ハンドル高値1,480円、安値1,380円なら、ハンドル深さは約6.76%です。右縁が左縁へ完全に届かなくても、ハンドル上端1,480円をピボット候補として事前に固定できます。
突破価格1,495円、右縁1,480円、底1,125円なら、カップの高さは355円です。単純な値幅目安は1,495+355=1,850円です。ただし、これは抵抗や地合いを無視した投影で、到達確率も期間も示しません。目標値に届く前でも、撤退条件を満たせば退出します。目標が遠いと、途中の弱い動きを見過ごしたくなりそうです。私なら、届くかへの期待とは別に、どこで考えを変えるかを先に残します。

| 測定項目 | 架空例 | 用途 | 限界 |
|---|---|---|---|
| カップ深さ | 25% | 調整規模を比較 | 単独で品質を決めない |
| ハンドル深さ | 約6.76% | 最終調整の大きさ | ボラティリティで意味が変わる |
| ピボット | 1,480円 | 完成判定 | 数円の線より価格帯 |
| 目標値 | 1,850円 | 期待余地を比較 | 到達保証ではない |
突破は価格を主、出来高を補助にします
Fidelityは、古い抵抗を上回るブレイクアウトを買い場の目安とし、出来高増加を確認材料として説明しています。StockChartsも、ハンドル上端を上抜き、出来高が大きく増えることを確認項目に挙げます。出典:Fidelity「Cup with Handle」、前掲ChartSchool。
ただし、出来高が平均の何%なら合格かという普遍的な値はありません。IBDのような特定手法の基準を使うなら、その計算期間と閾値をセットで採用します。独自検証なら、20日平均比、同曜日比、売買代金のどれを使うかを先に決めます。価格が抵抗を越えていないのに出来高だけで完成としません。
場中に1円だけ上回った時点で完成とするか、終値で上回るか、終値で一定の余裕幅を持たせるかでも結果は変わります。早い判定は有利な価格を得やすい反面、ヒゲだけの失敗が増え得ます。終値確認は誤反応を減らす可能性がありますが、翌日の窓上昇で買値が悪化します。検証と実行で同じ定義を使います。
| 突破定義 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 場中に到達 | 早く反応 | ヒゲだけで戻る可能性 |
| 終値で上抜け | 確定足で再現しやすい | 翌日窓・機会損失 |
| 余裕幅+出来高 | 小さな往復を除外 | 高値づかみと閾値過剰適合 |
上位足・相対強度・地合いを組み合わせます
日足でカップ・ウィズ・ハンドルに見えても、週足が長期下降の戻り局面なら、継続パターンという前提が弱くなります。日足で候補を探すなら、週足の高値・安値、長期移動平均、上場来高値からの位置を別欄で確認します。足種を変えるたびに都合のよい形を選び直しません。
相対強度は、銘柄価格を市場指数や業種指数で割った比率の推移として確認できます。カップ形成中に相対線が大きく崩れていない、突破時に相対線も高値を更新する、といった条件は候補の絞り込みに使えます。ただし、指数選択で結果が変わり、将来の上昇を保証しません。
市場全体が下落トレンドなら、個別株の突破が指数の売りに押されることがあります。逆に地合いが強くても、決算悪化や増資など個別材料で形は崩れます。市場、業種、個別材料、価格パターンを一つの点数に潰さず、どの条件が未成立かを残します。
| 組み合わせ | 確認できること | 代わりにならないこと |
|---|---|---|
| 週足の上昇構造 | 先行トレンドの背景 | 日足の突破条件 |
| 相対強度 | 指数に対する強弱 | 絶対リターンの保証 |
| 出来高・売買代金 | 参加と約定可能性 | 価格の方向 |
| 決算日程 | 窓リスクの予定 | 発表内容の予測 |
注文・撤退・数量を突破前に決めます
ピボットを場中に越えたら買う計画なら、買いの逆指値を置く方法があります。逆指値は発動後に成行となる場合、急騰時に想定より高く約定します。逆指値付き指値は許容価格を制御できますが、価格が飛び越えれば未約定になります。証券会社によって発動条件や注文名称が異なるため、利用先の仕様を確認します。出典:Investor.gov「Stop, Stop-Limit, and Trailing Stop Orders」(2026年8月18日更新)。
撤退候補は、ハンドル安値割れ、突破した抵抗帯への終値での再侵入、一定日数進まない時間切れです。ハンドル安値が近すぎて通常変動で触れやすいなら数量を減らし、撤退線を都合よく狭めません。カップ底まで耐える計画は一株リスクが大きく、100株でも損失予算を超えやすくなります。
架空例で買値1,495円、撤退1,375円、手数料・滑りの余裕を一株5円とすると、一株リスクは125円です。損失予算25,000円なら、25,000÷125=200株です。100株単位なら最大200株ですが、決算で1,300円から始まれば1,375円では売れず、損失予算は保証上限になりません。
| 項目 | 架空例 | 価格が変わったら |
|---|---|---|
| 買値 | 1,495円 | 約定前に数量再計算 |
| 撤退 | 1,375円 | 買うために狭めない |
| 一株リスク | 125円 | 買値-撤退+費用を再計算 |
| 最大数量 | 200株 | 単元株で切り下げ |

失敗パターンと見送り条件を先に書きます
突破直後にハンドル内へ戻る、出来高を伴わず上値が重い、指数が支持を割る、右縁で何度も反落する場合は、ブレイクアウト失敗の候補です。いったん撤退した後で再び上抜けても、元の取引を延長せず、新しい候補として測定し直します。
決算発表や臨床試験結果など重要材料の直前、必要株数を一度に売買できない、スプレッドが広い、突破時に大きく窓を開けて目標までの余地が小さい、100株で損失予算を超える場合は見送ります。形がきれいであることは、イベントリスクや約定リスクを消しません。
| 状態 | 判断例 |
|---|---|
| カップはあるがハンドルなし | 別パターンとして監視。勝手に完成させない |
| ハンドルがカップ中央まで下落 | 旧候補を終了し、新しい下落を測る |
| 突破したが大幅な窓 | 期待余地と一株リスクを再計算 |
| 100株で予算超過 | 損失予算を広げず0株 |
| 重要発表前で窓を許容できない | 発表通過まで見送る |
表示条件と検証条件を固定します
同じ価格でも、線形目盛では金額差が同じ距離、対数目盛では変化率が同じ距離として表示されます。長期間に株価水準が大きく変わる銘柄では、目盛を変えるだけでカップの丸さや深さの印象が変わります。候補を記録するときは、日足・週足、線形・対数、終値・高安、分割調整の有無をセットで保存します。
株式分割や併合を未調整のまま使うと、実際にはない急落や急騰ができ、偽のカップや突破を作ります。配当込み系列と株価のみの系列でも長期比較は変わります。銘柄を横断して検証する場合は、データベンダー、タイムゾーン、上場廃止銘柄を含むか、売買停止期間をどう扱うかまでそろえます。
リアルタイム運用では、右縁やハンドルが形成中の時点で将来の高値は分かりません。完成後に最も見栄えのよい始点と終点を選ぶと、先読みバイアスになります。候補を毎日保存し、期限を過ぎた未完成形も残すことで、「完成した形だけを過去から発見する」誤りを減らせます。
| 固定項目 | 記録例 | 理由 |
|---|---|---|
| 足種・判定時刻 | 日足、終値確定後 | 場中値との混同を防ぐ |
| 目盛・価格系列 | 対数、分割調整済み | 見た目の後付けを防ぐ |
| 候補期限 | 発見日から20営業日 | 未完成を延々と引き直さない |
| データ範囲 | 上場廃止を含む全銘柄 | 生存者バイアスを減らす |
研究結果を勝率へ言い換えません
Lo、Mamaysky、Wangは、カーネル回帰で価格系列を平滑化し、複数のチャート形状をアルゴリズムで認識する研究を行いました。米国株の1962~1996年データで、一部の形状後の条件付きリターン分布に情報が含まれる可能性を報告しています。出典:NBER Working Paper 7613、Journal of Finance掲載論文。
これは、現在の日本株でカップ・ウィズ・ハンドルを買えば一定の勝率になるという証明ではありません。対象市場、期間、パターン定義、売買費用、上場廃止銘柄、データ選択、決算の窓で結果は変わります。完成後のチャートだけを集めれば成功例を選びやすくなります。
検証するなら、候補発見日、先行上昇、左右の縁、底、ハンドル開始、ピボット、期限を将来データを見る前に保存します。未完成や失敗も残し、約定できなかった注文、手数料、スプレッドを含めます。深さや出来高閾値を結果を見ながら何度も変えた場合は、別期間で再検証します。
| 記録時点 | 保存する内容 | 防ぐ誤り |
|---|---|---|
| 候補発見 | 足種、期間、深さ、ピボット、期限 | 成功例だけ選ぶ |
| 突破確認 | 時刻、終値、出来高、余裕幅 | 場中と終値の混同 |
| 注文前 | 注文種別、上限、撤退、株数 | 希望価格で約定した前提 |
| 終了後 | 約定、費用、最大逆行、終了理由 | 形の成否と損益の混同 |
まとめ:カップを見つけたら、ハンドルと突破を待ちます
カップ・ウィズ・ハンドルは、先行上昇後のU字調整、右縁付近の小さなハンドル、その上端の突破を組み合わせた継続パターンです。カップが見えるだけでは完成ではなく、先行トレンドのない丸い底、V字反転、単なる戻りと区別します。今回、私が持っておきたいのは、形を見つけた喜びと注文の根拠を分けることです。きれいなカップを選ぶだけでなく、その後の小さな調整がどう終わるかを追いたいと思います。
期間と深さは、IBD、StockChartsなど方法ごとの基準と分母を混ぜません。価格を主条件にし、出来高、相対強度、上位足、市場環境を補助条件として記録します。場中、終値、余裕幅のどれで突破とするかも事前に固定します。
最後に、買値、撤退値、費用から一株リスクを求め、損失予算から数量を逆算します。目標値は利益の約束ではなく、期待余地の定規です。決算、流動性、窓、単元株が合わなければ、形が完成していても0株を選びます。「カップができたから買う」ではなく、「条件が全部そろい、崩れたら退出できるか」で判断します。
資料確認・更新日:2026年9月24日。図表・数値例は当ブログ作成です。
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