同じようなM字・W字を見て、一方は「ガートレー」、もう一方は「バット」と呼ばれる。さらにAB=CD、Alternate AB=CD、PRZという言葉まで出てくると、形の暗記だけでは見分けられません。違いを決めるのは、X・A・B・C・Dの各点を結ぶ値幅の比率です。
ハーモニックパターンは、複数のフィボナッチ比率が近い価格帯へ収束する場所を、潜在的な反転帯(Potential Reversal Zone、PRZ)として整理する方法です。PRZは「必ず反転する一点」ではありません。測定した条件がそろう候補帯であり、到達後の値動き、注文、撤退、数量まで決めて初めて売買規則になります。
この記事では、Scott Carney氏の公式Harmonic Trader資料でAB=CD、Alternate AB=CD、Gartley、Batの定義を確認し、計算式、見分け方、架空の数値例、PRZの作り方、注文、損切り、数量、見送り、バックテストを一つの手順にします。図表と価格例は当ブログ作成の架空例であり、実績・勝率を示すものではありません。
先に結論
- AB=CDは、基本的にABとCDの値幅が等しくなる4点構造です。
- ガートレーはB=XAの0.618、D=XAの0.786が識別の軸です。
- バットはBがXAの0.618未満、D=XAの0.886が識別の軸です。
- Alternate AB=CDはCDがABの1.27倍または1.618倍になる候補で、単独では使いません。
- PRZはDのXA戻り、AB=CD完了、BC投影などの近接帯です。許容幅を事前に固定します。
- Dへ届く前は未完成、届いただけでは未確認です。反転確認を待ちます。
- 撤退幅と滑りから一株リスクを計算し、損失予算を超えるなら0株です。
- 比率不一致、低流動性、重要イベント、広すぎるPRZでは見送ります。
ハーモニックパターンとは何ですか?
ハーモニックパターンは、価格の折り返し点をX・A・B・C・Dなどで表し、各値幅の戻り率(retracement)と投影率(projection)を測るチャート分析です。たとえばB点がXAの何%を戻したか、D点候補がXAの何%を戻すか、CDがBCの何倍へ伸びるかを別々に計算します。
歴史は分けて理解します。H.M. Gartleyは1935年の『Profits in the Stock Market』222ページで後にガートレーと呼ばれる5点構造を紹介しましたが、Scott Carney氏の公式解説は、原型に具体的なフィボナッチ比率は付されていなかったと説明しています。今日広く使われるB=0.618 XA、D=0.786 XAなどの厳密な定義はCarney氏が整理したものです。出典:Harmonic Trader公式「Gartley Pattern」。
したがって「ガートレーが1935年に0.786を定めた」と書くのは正確ではありません。古典的な形の起源と、後に体系化された比率条件を区別します。同様に、バットはCarney氏が2001年に発見・定義したパターンとして公式ページで説明されています。出典:Harmonic Trader公式「Bat Pattern」。
| 用語 | 測る対象 | 意味 | 注意 |
|---|---|---|---|
| リトレースメント | 後の値幅÷直前の値幅 | どこまで戻したか | 向きではなく絶対値で計算 |
| プロジェクション | 延長値幅÷基準値幅 | どこまで伸びたか | 起点を混ぜない |
| AB=CD | |CD|÷|AB| | 2本の推進脚の対称性 | 時間の一致とは別 |
| PRZ | 複数比率の近接帯 | Potential Reversal Zone | 反転保証ではない |
| 完了点D | パターン条件が集まる候補 | 監視開始地点 | 到達前は未完成 |
| 確認 | D到達後の価格行動 | 発注条件へ変換 | 比率とは別規則 |
まずAB=CDを正確に測る
AB=CDはハーモニックパターンの基本単位です。上昇反転候補ならAからBへ下落し、BからCへ戻し、CからDへ再び下落します。基本形ではABとCDの値幅がほぼ等しく、式は |CD|÷|AB|≒1.00 です。下降反転候補では上下を反転します。
公式Harmonic Trader資料は、C点のABに対する戻りを0.382から0.886、BCの投影を1.13から2.618として示しています。またCの戻りとBC投影には補完関係があり、0.618の戻りなら1.618の投影、0.786の戻りなら1.27の投影が代表的です。出典:Harmonic Trader公式「AB=CD Pattern」。
架空例でA=120円、B=100円なら|AB|=20円です。Cが112.36円なら、Cの戻りは12.36÷20=0.618です。等価AB=CDではCから20円下がるD=92.36円が候補となり、|CD|÷|BC|=20÷12.36≒1.618です。ABとCD、C戻り、BC投影の三つが同じD付近で整合します。
ただし「ほぼ等しい」の許容幅に世界共通の一つの数値があるわけではありません。0.5%、1%、ATRの一定割合など、銘柄の値動きと時間足に応じたルールを分析前に固定します。完成チャートを見てから許容幅を広げれば、ほぼ何でもAB=CDにできてしまいます。
| 計算 | 式 | 架空値 | 結果 |
|---|---|---|---|
| ABの値幅 | |B-A| | |100-120| | 20円 |
| Cの戻り | |C-B|÷|A-B| | 12.36÷20 | 0.618 |
| 等価CD | |AB|×1.00 | 20×1.00 | 20円 |
| D候補(上昇反転) | C-CD | 112.36-20 | 92.36円 |
| BC投影 | |D-C|÷|C-B| | 20÷12.36 | 約1.618 |
| AB=CD比率 | |CD|÷|AB| | 20÷20 | 1.00 |

Alternate AB=CDは何が違う?
相場が必ず等価AB=CDで止まるとは限りません。公式資料が示すAlternate AB=CDでは、CDがABの1.27倍または1.618倍まで伸びます。等価点を通過した後の候補を用意できますが、単独の1.27倍線・1.618倍線を反転サインにしてはいけません。
Carney氏の公式解説は、Alternate AB=CDを他のフィボナッチ水準を補完するために使い、単独では使わないと明記しています。1.27 AB=CDはBCの1.618または2.24投影と近接することが多く、ガートレーは等価AB=CD、バットは1.27 AB=CDを伴うことが多いという使い分けも示されています。出典:Harmonic Trader公式「Alternate AB=CD Pattern」。
架空例でA=120円、B=100円、C=115.72円ならCの戻りは0.786です。1.27 AB=CDのCD値幅は20×1.27=25.40円、Dは115.72-25.40=90.32円です。BC投影は25.40÷15.72≒1.616で、およそ1.618に重なります。比率の収束を計算するとは、このように別々の式が近いD候補を指すか確認することです。
| 型 | CDとAB | 典型的な補完 | 役割 | 単独使用 |
|---|---|---|---|---|
| 等価AB=CD | 1.00 | C=0.618ならBC=1.618など | 基本の対称性 | 不可 |
| 1.27 Alternate | 1.27 | BC=1.618または2.24など | 等価点超過後の候補 | 不可 |
| 1.618 Alternate | 1.618 | より深いBC投影など | 強い延長の候補 | 不可 |
| ガートレー内 | 等価が中心 | D=0.786 XA | PRZを補完 | 不可 |
| バット内 | 1.27が一般的 | D=0.886 XA | PRZを補完 | 不可 |
ガートレーの識別条件
上昇反転型のガートレーは、X安値からA高値へ動き、Bで押し、Cで戻し、Dで再び押す5点構造です。識別の中心はB=XAの0.618戻りとD=XAの0.786戻りです。公式ページは、等価AB=CD、BCの1.27または1.618投影をPRZの構成要素として示します。比率が重なると期待が高まりそうですが、反転が確定した話とはまだ別です。測った候補の場所を残し、そこから何を待つかを考えたいです。
特にB点の0.618は「少しずれても何でもガートレー」ではなく、構造の重要な識別条件です。DがXを越えないことも確認します。DがXを明確に越えれば、そのガートレー定義から外れます。形がM字・W字に見えるだけで名称を付けず、X・A・B・Cを固定した時点でD候補を計算します。
XAがX=100円からA=140円へ40円上昇した架空例なら、上昇反転型のD候補はA-0.786×40=108.56円です。B候補はA-0.618×40=115.28円です。このD付近へ等価AB=CDとBC投影が近接するかを確認し、離れるならガートレーの優先度を下げます。
| ガートレーの要素 | 公式定義の中心 | 架空XA=40円 | 判定 |
|---|---|---|---|
| B点 | 0.618 XA | A-24.72円 | 重要な識別条件 |
| D点 | 0.786 XA | A-31.44円=108.56円 | PRZの主水準 |
| AB=CD | 等価が中心 | AB値幅をCから投影 | Dとの近接を見る |
| BC投影 | 1.27または1.618 | BC値幅から計算 | PRZを補完 |
| Xとの関係 | DはXを越えない | 100円より上 | 越えれば定義外 |
バットの識別条件
バットも同じXABCDの外形ですが、比率が違います。公式ページではBがXAの0.618未満、特に0.382または0.50が望ましく、DはXAの0.886戻りが決定的な水準です。BC投影は最低1.618、最大2.618、AB=CDは等価を最低条件としつつ1.27 Alternate AB=CDを伴うことが一般的と説明されます。
同じX=100円、A=140円の架空例ではD=140-0.886×40=104.56円です。ガートレーの108.56円よりXに近く、押しが深いことが分かります。ただしDが深いからバットなのではなく、Bが0.618未満で、BC投影やAB=CDも整合することが必要です。
バットはXに近いPRZを使うため、「Xのすぐ手前なら損切りが近い」と短絡しがちです。急落時はXを窓で越えることもあり、ストップ注文の価格どおりに約定する保証はありません。パターンの幾何学と執行リスクを分けます。
| 比較 | ガートレー | バット | 見分ける焦点 |
|---|---|---|---|
| BのXA戻り | 0.618 | 0.618未満、0.382/0.50が望ましい | まずB点 |
| DのXA戻り | 0.786 | 0.886 | PRZの主水準 |
| AB=CD | 等価が中心 | 1.27 Alternateが一般的 | CD延長の有無 |
| BC投影 | 1.27 / 1.618 | 1.618〜2.618 | Dとの収束 |
| DとX | Xを越えない | Xの手前に近い | 越えたら再分類 |
| 歴史 | 原型1935年、比率は後に体系化 | Carney氏が2001年に定義 | 起源を混同しない |

Alternate Batは通常のバットとどこが違う?
Alternate Batは、通常のバットがD=0.886 XAでXの手前に完成するのに対し、D=1.13 XAとしてXをわずかに越えた場所をPRZの中心にします。Carney氏の公式ページは、2003年に発見したパターンで、B点はXAの0.382以下、BC投影は最低2.0、AB=CDは常に延長型で通常1.618を使うと定義しています。出典:Harmonic Trader公式「Alternate Bat Pattern」。
つまり通常のバットがX=100円、A=140円の上昇反転型ならD候補は104.56円ですが、Alternate Batの1.13 XAはA-1.13×40=94.80円です。Xを越えたから通常のバットは否定されますが、最初からB≤0.382、BC≥2.0、1.618 AB=CDがそろう別構造として計画していた場合に限り、Alternate Bat候補になります。損切り後に名称を付け替えてポジションを維持するための救済規則ではありません。
実務では、通常バットの0.886 XAとAlternate Batの1.13 XAを同時に「広いPRZ」として結びません。二つはDの位置も否定条件も異なる別仮説です。Xを越えた時点で通常バット案を終了し、Alternate Bat案を事前条件から独立に評価します。
PRZを一点ではなく帯として作る
PRZは一つの比率線ではなく、複数の独立した計算が近接する価格帯です。ガートレーならD=0.786 XA、等価AB=CD、BC=1.27または1.618投影を候補にします。バットならD=0.886 XA、1.27 AB=CD、BC=1.618〜2.618投影を候補にします。
たとえば三つの計算結果が108.40円、108.56円、108.82円なら、最小から最大をPRZの核とし、呼値やATRに基づく事前の許容幅を加えます。一方、結果が105円、109円、114円に散っているなら「広いPRZ」にして救済せず、不一致として見送ります。
許容幅は価格に対する率だけでなく、値動きに対する大きさを見ます。1円の差が落ち着いた大型株では大きく、乱高下する小型株では小さいこともあります。たとえば「核の幅が14日ATRの0.4倍以内」「各水準が中央値から0.5%以内」など、検証可能な条件を一つ選びます。公式定義そのものではなく、自分の執行ルールとして明記します。
| PRZ部品 | ガートレー | バット | 計算順 |
|---|---|---|---|
| XA戻り | 0.786 | 0.886 | XとAを固定して算出 |
| AB=CD | 等価が中心 | 1.27 Alternateが一般的 | A・B・Cから算出 |
| BC投影 | 1.27 / 1.618 | 1.618〜2.618 | B・Cから算出 |
| 許容幅 | 事前ルール | 事前ルール | 率またはATRで固定 |
| D到達 | 監視開始 | 監視開始 | 反転確認は別 |
| 不一致 | 見送り | 見送り | 幅を後から広げない |
強気型と弱気型を逆に読まない
強気型はX安値→A高値→B安値→C高値→D安値と進み、D付近から上昇反転を監視します。弱気型はX高値→A安値→B高値→C安値→D高値と上下を反転し、D付近から下落反転を監視します。比率は値幅の絶対値で計算するため同じですが、注文方向と損切り方向は逆です。
強気型のD到達前に買えば、CDが1.27や1.618へ伸びる途中で捕まる可能性があります。弱気型のD到達前に空売りしても同じです。CからDへ進む脚が完成候補へ入ったこと、Dで反転確認が出たことを分けて記録します。
| 方向 | 点の並び | Dで監視 | 撤退方向 | 未完成 |
|---|---|---|---|---|
| 強気型 | X安→A高→B安→C高→D安 | 上昇反転 | PRZ・Xの下側 | Dへ未到達 |
| 弱気型 | X高→A安→B高→C安→D高 | 下落反転 | PRZ・Xの上側 | Dへ未到達 |
| 共通 | XABCDを固定 | 比率収束+確認 | 構造否定側 | 点を後から変更 |
D到達後の確認を注文条件へ変える
PRZへの初回接触で成行注文を出す方法は、反転確認を省いた先回りです。実務では「PRZ内または下抜け後に終値が帯へ戻る」「反転足の高値を次の足が越える」「出来高が直近20本中央値を上回る」など、検証可能な確認を一つか二つに限定します。条件を増やしすぎると、都合のよい取引だけを残せます。
架空の強気バットでPRZが104.3〜104.9円、反転足の高値が106.0円なら、106.1円以上を買い条件にする例があります。指値なら上限価格を決められますが未約定の可能性があり、成行なら執行を優先する代わりに価格が保証されません。ストップ注文は到達後に成行注文へ変わるため、急変時は指定水準から離れて約定し得ます。出典:Investor.gov「Types of Orders」。
利確は「ガートレーだから必ずCまで戻る」と決めません。直近の戻り高値B・C、事前に決めたリスクリワード、追随ストップなど、同じ規則を全標本へ適用します。ここはCarney氏のパターン定義ではなく、売買システム側の設計として区別します。
| 段階 | 強気型の架空条件 | 注文候補 | 失敗・見送り |
|---|---|---|---|
| PRZ到達 | 安値が104.3〜104.9円へ入る | まだ監視 | 到達前の先回り |
| 反転確認 | 終値でPRZ上限回復 | 次足で検討 | 帯の下で引ける |
| トリガー | 反転足高値106.0円超え | 106.1円以上 | ギャップで高すぎる |
| 価格制御 | 上限107円まで | 逆指値+指値など | 未約定も記録 |
| 撤退 | 構造否定+余裕 | 注文を事前登録 | 損切りをXの下へ拡大 |
| 利確 | 事前R倍・抵抗帯 | 分割または追随 | パターン名で保証 |

撤退と数量を先に計算する
強気型で買う場合、撤退候補はPRZの下、Xの下、または構造を否定する価格へ、値動きの余裕を加えて置きます。どれを採用するかで損失幅が変わるため、バックテスト中も同じ基準を使います。Xのすぐ下が近く見えても、窓や薄い板では予定価格で売れない場合があります。
架空例として、買い約定106.20円、撤退101.80円、手数料・滑りの余裕0.30円なら、一株リスクは106.20-101.80+0.30=4.70円です。1回の損失予算が47,000円なら47,000÷4.70=10,000株です。ただし平均売買代金や板に対して大きすぎるなら、流動性上限まで減らします。
損失予算が300円で売買単位が100株なら、100株の想定損失は470円で予算超過です。この場合は0株です。PRZが狭い、バットは精密、という説明を理由に損切り余裕を削ってはいけません。決算や材料を跨ぐなら、過去のギャップを基に追加余裕を見積もるか、そもそも跨ぎません。
| 項目 | 架空値 | 計算・判断 |
|---|---|---|
| 買い約定 | 106.20円 | 確認後の実約定 |
| 撤退候補 | 101.80円 | 構造否定+事前余裕 |
| 費用・滑り余裕 | 0.30円/株 | 過去の執行から見積もる |
| 一株リスク | 4.70円 | 106.20-101.80+0.30 |
| 損失予算 | 47,000円 | 口座全体で先に設定 |
| 理論数量 | 10,000株 | 47,000÷4.70 |
| 流動性調整 | 板・売買代金で減額 | 理論数量を上限にしない |
| 最小単元で超過 | 0株 | 予算をパターンに合わせない |
見送るべき局面
第一は、BのXA戻りがガートレーにもバットにも合わず、パターン名だけを後付けしている局面です。第二は、DのXA水準、AB=CD、BC投影が広く散らばり、PRZを一つの帯と呼べない局面です。第三は、Dへまだ到達していない未完成パターンです。
第四は、決算、TOB、増資、行政処分、指数入替などの直前で、XやPRZを窓で飛び越える可能性が高い局面です。第五は、低流動性、広いスプレッド、特別気配などで、計算した価格に注文を置けない局面です。第六は、最小単元でも損失予算を超える局面です。
第七は、同じチャートに多数のXABCD候補を引き、後から当たった線だけを採用できる状態です。分析開始時点で点を固定し、失敗例、未約定、見送りも残します。良い形を探すことより、悪い標本を消さないことが検証では重要です。
| 見送り条件 | 問題 | 再検討 |
|---|---|---|
| B点が定義外 | 別パターンを名前で救済 | 新しいスイング確定後 |
| PRZが広い・不一致 | 反転候補を絞れない | 比率が近接した時 |
| Dへ未到達 | パターン未完成 | D到達後 |
| 重要イベント直前 | 窓で否定点を飛ぶ | 発表後の安定 |
| 低流動性・広いスプレッド | 想定価格で約定しない | 板・売買代金改善 |
| 最小単元で予算超過 | 損失上限を守れない | 0株または別銘柄 |
| 候補点が多すぎる | 後知恵で線を選べる | 点の固定規則を作る |
バックテストで比率の後付けを防ぐ
完成チャートで最もきれいなXABCDを選ぶだけでは、リアルタイムに使えるか分かりません。スイング高値・安値を何本の左右足で確定するか、比率許容幅、PRZの最大幅、D到達、確認足、注文時刻をコードまたは手順書で固定します。未来側の足で過去の転換点を確定したなら、その判定が利用可能になるのは未来側の足が確定した後です。
株式では分割・併合・配当落ちを調整した価格系列、上場廃止銘柄を含む母集団、手数料・スプレッド・滑り、未約定を含めます。同じ日足で入口と損切りの両方へ触れた場合、足内の順序は不明です。下位足で順序を確認できなければ、損切りが先に成立した保守的な処理を置きます。
Lo、Mamaysky、Wangは、主観的に語られやすいテクニカルパターンを計算手順で定義し、統計的に検討する枠組みを示しました。これはハーモニックパターンの固定勝率を証明する研究ではありませんが、形を再現可能なルールへ変える重要性を示します。出典:NBER Working Paper 7613、Journal of Finance掲載版。
| 保存時点 | 固定するもの | 防ぐ偏り |
|---|---|---|
| XABC確定 | スイング判定本数・価格調整 | 未来のDを見て起点変更 |
| 比率計算 | 採用比率・許容幅 | 当たった線だけ後選び |
| PRZ作成 | 最大幅・中央値・ATR条件 | 広い帯で救済 |
| D到達後 | 確認足・注文種別・上限価格 | 最安値で理想約定 |
| 約定後 | 費用・滑り・未約定 | コスト無視 |
| 集計時 | 全失敗・見送り・上場廃止 | 生存者・報告偏り |
| 評価時 | 学習期間と検証期間 | 同じ標本への最適化 |
実務チェックリスト
| 順番 | 確認 | 満たさない場合 |
|---|---|---|
| 1 | 時間足とX・A・B・Cを固定したか | 計算しない |
| 2 | BのXA戻りが定義に合うか | 名称を付けない |
| 3 | DのXA水準、AB=CD、BC投影を別計算したか | PRZにしない |
| 4 | 許容幅とPRZ最大幅を事前固定したか | 検証対象外 |
| 5 | Dへ到達し、反転確認が出たか | 注文しない |
| 6 | 注文種別・上限価格・未約定処理を決めたか | 発注しない |
| 7 | 撤退・滑り・一株リスク・数量を計算したか | 0株 |
| 8 | イベント・流動性・最小単元を確認したか | 見送る |
| 9 | 失敗・未約定・見送りも保存するか | 成績に含めない |
まとめ:比率が重なる場所は「入口」ではなく「監視開始」
AB=CDはABとCDの値幅が等しくなる基本構造で、Cの戻り0.382〜0.886、BC投影1.13〜2.618を組み合わせます。Alternate AB=CDはCDがABの1.27倍または1.618倍へ伸びる候補ですが、他の水準を補完するために使い、単独で売買しません。細かな名前や数字を覚えるだけでは、自分の注文は決まりません。私なら、比率がそろった候補と、実際に確認できた価格の動きを分けて記録し、思った形へ後から引き直していないかも点検します。
ガートレーはB=0.618 XA、D=0.786 XA、等価AB=CD、BC=1.27または1.618が中心です。バットはBが0.618未満、D=0.886 XA、BC=1.618〜2.618、1.27 AB=CDが中心です。同じM字・W字でも、B点とD点の比率で分けます。
PRZは複数の計算が近接する候補帯で、反転保証ではありません。D到達後の確認、注文種別、撤退、滑り、数量を別に決めます。比率が合わない、PRZが広い、イベントや流動性で執行できない、最小単元で損失予算を超えるなら0株です。
資料確認・更新日:2026年9月24日。図表・数値例は当ブログ作成です。
免責事項
本記事は情報提供を目的とし、特定の銘柄・売買を推奨するものではありません。ハーモニックパターン、フィボナッチ比率、チャートパターンは将来の値動きや利益を保証しません。急変時は未約定、価格のずれ、売却・買い戻し不能などにより想定以上の損失が生じる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記載の数値は、本文中に示した日付時点の決算短信・会社のIR資料などの公開情報に基づきます。最新の情報は各社の開示でご確認ください。
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