建設技術研究所(9621)、応用地質(9755)、いであ(9768)は、社会インフラの調査・設計や防災に関わる3社です。豪雨・地震への備えが注目される今、3社の2026年上期決算が出そろったところで、需要への期待が実際の受注や利益にどう表れているかを比べます。ただし災害のニュースがすぐ売上になるわけではありません。公募、受注、調査・設計、検収、売上計上には時間差があります。そこで受注残と営業利益率を分けて読み、先の仕事量と足元の採算を確かめます。
3社は事業構成が異なります。建設技術研究所は国内の建設コンサルティングと海外事業を持ち、応用地質は地盤・防災に加えて環境・資源などを扱い、いであは環境分野と建設コンサルタント分野の双方を展開します。利益率の大小だけで「防災への投資で最も伸びる会社」を決める比較ではありません。受注高と受注残、売上高と営業利益、案件の採算、会社予想の順に読みます。建設技術研究所の第2四半期決算報告、応用地質の決算短信、いであの決算説明資料が主な資料です。
まず「受注」と「受注残」の違いを整理する
受注高は期間中に新たに受けた仕事の金額です。受注残高は受注したものの、期末にまだ売上として消化されていない仕事の残りです。仕事を受けた時点で売上と営業利益が同額増えるわけではありません。基本式は「期末受注残=期首受注残+期間受注高−期間売上高」に近いですが、契約変更、為替、連結範囲、集計対象の違いで単純な足し算と一致しない場合があります。会社の注記で範囲を確かめます。
建設技術研究所の2026年8月13日の決算報告59ページには、2026年上期の連結受注高610億53百万円、売上高550億3百万円、期末の繰越受注残高797億42百万円が示されています。期首繰越受注残高722億31百万円も併記されています。受注残が増えたことは先の仕事量の目安ですが、その全額が翌四半期の売上になるという意味ではありません。同資料では前年同期の繰越受注残高744億5百万円であり、前年同期比でも増えています。
| 用語 | 何を測るか | よくある誤読 |
|---|---|---|
| 受注高 | 期間中に獲得した契約金額 | その期の売上高と同一と考える |
| 繰越受注残高 | 期末に売上として残る契約金額 | 翌四半期に全額売上になると考える |
| 売上高 | 期間中に収益として認識された額 | 現金入金額と同一と考える |
| 営業利益 | 売上から事業運営の費用を引いた利益 | 受注残の利益率まで確定したと考える |
いであの2026年8月20日決算説明資料には上期の受注高135億15百万円が記されています。前年同期の141億5百万円から約4%減です。ただしこの資料に3社で同じ定義の期末受注残がそろうわけではありません。応用地質の2026年8月12日決算短信でも、期末受注残を同じ集計定義で横並びにできる表を確認できません。この2社の受注残の欄に推計値を埋めず、未確認として扱います。
上期決算を同じ期間・単位で並べる
比較するのは2026年12月期第2四半期累計、すなわち1〜6月の連結業績です。下表の金額は各社の短信の百万円単位を使い、営業利益率は「営業利益÷売上高×100」で小数第一位に丸めています。建設技術研究所の利益率は6,617÷55,003=約12.0%、応用地質は1,950÷35,161=約5.5%、いであは2,217÷12,876=約17.2%です。小数表示の端数は各社開示の端数処理で変わり得ます。建設技術研究所、応用地質、いであの資料に基づきます。
| 2026年1〜6月、連結 | 建設技術研究所 | 応用地質 | いであ |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 55,003 | 35,161 | 12,876 |
| 営業利益(百万円) | 6,617 | 1,950 | 2,217 |
| 営業利益率(計算値) | 約12.0% | 約5.5% | 約17.2% |
| 上期受注高 | 61,053百万円 | 同じ定義の数値は本比較では未確認 | 13,515百万円 |
| 上期末受注残 | 79,742百万円 | 同じ定義の数値は本比較では未確認 | 同じ定義の数値は本比較では未確認 |
| 事業の広がり | 国内建設コンサル・海外など | 地質・環境・防災など | 環境・建設コンサルなど |
営業利益率の違いには、契約種類、社内で行う作業の割合、外注費、完成時期、海外事業の構成が影響します。いであの17.2%を、建設技術研究所の国内建設コンサルティングだけの利益率と比較してはなりません。表は連結対連結です。応用地質の利益率が相対的に低い点も、調査分野の特性や一時的な案件構成を分けずに「競争力が低い」と断定できません。
建設技術研究所:受注残の増加と海外事業の採算を分ける
建設技術研究所は2026年上期の受注高が前年同期609億17百万円から610億53百万円へ0.2%増、売上高は前年同期507億94百万円から550億3百万円へ8.3%増でした。第2四半期決算報告の事業部門別表で確かめられます。受注の伸びは小幅でも、過去に獲得した仕事の進行によって売上は増え得ます。新規受注と売上の変化率がずれるのは、契約から売上までに時間があるためです。
受注残797億42百万円は前期末から増加しています。しかし、すべてが国土強靱化に直結する案件ではありません。資料の部門別表には流域・国土、交通・都市、環境・社会、建設マネジメント、海外が含まれます。たとえば海外事業部門の上期売上は172億77百万円で、連結売上の31.4%を占めます。防災関連という一語で海外事業や都市交通をひとまとめにすると、実態を見誤ります。
| 建設技術研究所の上期部門 | 売上高(百万円) | 売上構成比 | 確認したい点 |
|---|---|---|---|
| 流域・国土 | 13,750 | 25.1% | 河川・国土分野の受注継続 |
| 交通・都市 | 12,535 | 22.8% | インフラ更新と都市案件 |
| 環境・社会 | 8,748 | 15.8% | 環境分野と調査範囲 |
| 建設マネジメント | 2,692 | 4.9% | マネジメント案件の進捗 |
| 海外 | 17,277 | 31.4% | 海外案件の採算、為替 |
数字は会社の部門別開示から取っています。表の売上構成比を足した際の小数点以下のずれは丸めによります。受注残は部門別にも載っているので、次の決算では増えた部門とその後の売上化を追えます。ただし工事そのものを請け負う会社と設計・調査を担う会社では、ニュースに対する収益の発生条件も違います。
応用地質:売上減と利益減の理由を先に読む
応用地質の上期売上高351億61百万円は前年同期比4.5%減、営業利益19億50百万円は27.2%減です。8月12日の決算短信の連結業績を確認します。売上減より利益減の割合が大きいのは、費用構成や案件ミックスが利益に作用したことを示唆しますが、この2つの比率だけで個別案件の赤字や恒常的な悪化を特定することはできません。セグメントや原価、販管費の説明を読み、前年の比較対象が特殊だったかも見ます。
地質調査は建設や防災と関係しますが、環境、エネルギーなどの市場にも関わります。企業向けの設備投資が鈍れば、公共部門の強さがそのまま全社利益に反映されるとは限りません。反対に災害への備えが進んでも、人手と専門技術の不足、外注コスト上昇、複数案件の納期集中によって、売上増に比べ利益率が伸びない場合があります。ニュースの対象地域と受注主体、案件の発注者を確かめ、同社の売上に転じる経路を文章で説明できるか試してください。社会に必要な仕事が多くても、担う人と時間は限られます。人員と時間の制約の中で、業務の質と採算を維持できるかが確認点です。
| 確認項目 | 数値や動き | 判断の留保 |
|---|---|---|
| 上期売上高 | 35,161百万円、前年同期比4.5%減 | 事業別・地域別の寄与を見る |
| 上期営業利益 | 1,950百万円、前年同期比27.2%減 | 減収だけで説明できない費用を調べる |
| 営業利益率 | 約5.5% | 半年だけで年間採算を決めない |
| 通期予想 | 売上75,000百万円、営業利益4,200百万円 | 会社予想の更新有無を次回確認 |
通期予想は同決算短信に基づきます。単純計算では下期に約398億39百万円の売上、約22億50百万円の営業利益が必要ですが、これは会社が公表した下期単独の予想値ではなく、本記事が通期予想から上期実績を引いた計算です。季節性や案件の進行を考慮せず、実現確率を付けてはいけません。
いであ:高い上期利益率と受注減を併記する
いであの上期売上高は128億76百万円、営業利益22億17百万円で、計算上の連結営業利益率は約17.2%です。8月3日の決算短信の実績です。環境分野と建設コンサル分野の両方を扱うため、高い利益率を「防災案件の採算」と置き換えません。8月20日の説明資料には、上期受注高135億15百万円と前年同期141億5百万円が載っています。
受注高が約4.2%減った一方、当期の売上と利益は好調という組み合わせは、先に取った仕事の進捗や案件構成で起こり得ます。どの程度が前期以前の繰越案件なのか、期末受注残と合わせて判断したいところですが、3社を同一の集計方法で横並びできる受注残を本記事では確認していません。ここで「受注残が減った」と断定するのは早計です。次回の補足資料で開示範囲の更新を確認します。
いであの通期売上予想257億円、営業利益予想34億円、受注高計画261億円も同説明資料に基づきます。営業利益の上期実績22億17百万円を通期計画34億円で割ると約65.2%になりますが、上期の利益進捗率が高いだけで通期予想の上方修正を保証するわけではありません。受注の時期、完了検査、案件の原価、追加費用を合わせて読みます。
| いであの観点 | 2026年上期実績 | 通期計画との関係 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12,876百万円 | 通期25,700百万円との差は12,824百万円 |
| 営業利益 | 2,217百万円 | 通期3,400百万円との差は1,183百万円 |
| 受注高 | 13,515百万円 | 通期計画26,100百万円との差は12,585百万円 |
| 営業利益率 | 約17.2% | 上期の案件構成が下期も続く保証はない |
差額と利益率は公開値から本記事が計算したもので、下期単独の会社予想ではありません。いであ決算説明資料で前提を確認できます。
比較するなら受注の「質」と売上化の時期を並べる
受注残は便利ですが、契約金額がそのまま将来利益になるわけではありません。たとえば1億円の調査案件を受けても、追加調査や外注の単価が想定より高くなれば利益は減ります。契約の変更、委託先の確保、完了までの期間、発注者の検査などが採算を左右します。専門人員を増やす投資は中長期の能力を高めても、短期には人件費を先に増やすことがあります。
実際に投資候補として比較するなら、各社の最新の決算資料から次の順で同じ尺度を作るとよいでしょう。最初に対象期間と連結・単体をそろえ、次に受注高と受注残の集計範囲を確認し、売上計上の進み方、営業利益率、営業キャッシュフロー、期末の債権を追います。資料で開示されない欄を「0」と入力してスコア化してはいけません。未知とゼロは別です。
| 見る順番 | 増益を支える条件 | 悪化の兆候 |
|---|---|---|
| 受注 | 計画に沿った獲得、発注先の分散 | 大型案件への過度な依存 |
| 受注残 | 複数期にまたがる仕事の可視性 | 長期案件の遅延、採算悪化 |
| 売上化 | 案件の進捗と検収が計画通り | 完成遅延、計画の後ろ倒し |
| 利益率 | 原価と外注費を管理できる | 不採算案件や費用の急増 |
| 現金化 | 売掛金の回収が進む | 利益は増えても債権が積み上がる |
官公庁発注と民間発注をひとまとめにしないことも重要です。補正予算の成立は案件の可能性を高めても、個別企業の落札や採算まで決めません。工期が延びた場合には同じ受注残でも収益化の時期が変わります。地震や豪雨の被災地に関する短期の見出しから、特定の会社の売上を直接推算することは避けます。
受注増を業績の上振れと結び付ける際の確認方法は、日本電子材料・芝浦メカトロニクス・ダイヘンの比較分析でも扱っています。業種は異なりますが、売上化の時期と利益率を分けて読むための比較材料になります。
受注残が利益にならない四つのケース
受注残が増えても、採算が悪化する経路を先に確認しておくと、「数字は良いのに株価が下がった」という決算を解釈しやすくなります。第一に、固定額の契約で想定を超える外注費や人件費が発生する場合です。契約金額は変わらず原価だけが増え、受注残の額は維持されても利益率は下がります。第二に、技術者の不足や仕様変更で検査・納期が後ろ倒しになる場合です。仕事は残っていても、当期の売上にはつながりません。
第三に、急な災害対応で既存案件と人員配置が競合する場合です。新しい引き合いが増えても、すべてを同時に受注・遂行できるわけではありません。第四に、契約先や地域によって回収までの期間が延びる場合です。損益計算書では利益が出ても、売掛金や契約資産が増えれば、現金を受け取る時期は別になります。会社が営業キャッシュフローと債権の内訳を公表していれば、利益の伸びと併せて確認します。
したがって、受注残高が前年同期比で伸びたかだけでなく、受注残の回転期間を追います。「期末受注残÷直近12カ月の売上高」は簡易な目安ですが、年間を通じた季節性や大型契約の計上時期に左右されます。3社の事業範囲が違うため、同じ比率でも契約の中身は一致しません。また受注残に複数年分の案件を含む会社と短期の案件中心の会社を、単一の倍率でランキングするのも危険です。会社が契約期間の分布を示していない場合は、回転の意味を定性的に扱います。仕事が多いという安心感と、いつ終えてお金が入るかを分けておくと、次の決算の見どころが具体的になります。
| 起きること | 受注・売上・利益への影響 | 次に調べるもの |
|---|---|---|
| 原価が予想を超える | 受注残は残るが利益率が低下し得る | 外注費、案件採算、引当 |
| 検収が遅れる | 受注はあるが売上化が後ろ倒し | 売上進捗、納期の変更 |
| 人材が不足する | 新規受注を制限し得る | 採用、離職、外注先の確保 |
| 売掛金が膨らむ | 会計利益と現金流入がずれる | 営業CF、売上債権、回収条件 |
年間予想と半年実績を照合するときの季節性
上期実績を単純に2倍すると、各社の通期見通しとずれる可能性があります。公共工事の調査・設計は発注や納品の時期に偏りがあり、会社によって年度末も異なります。今回の3社はいずれも12月決算ですが、個別案件の検収時期や海外案件の進捗は異なります。まず同社の前年上期と前年通期の比率を確認し、今年の上期進捗をその会社自身の過去と比較してください。他社の上期利益率をそのまま下期に掛けてはいけません。
建設技術研究所の2026年通期予想は決算短信で売上高1,050億円、営業利益105億円です。上期の550億3百万円と66億17百万円を差し引くと、通期目標に対して下期に必要な金額はそれぞれ499億97百万円と38億83百万円となります。これは公開済みの通期予想と上期実績から本記事が引いた差であり、会社が公表した下期単独見通しではありません。期ずれや新たな受注により変動します。
応用地質といであについても同じ方法で差額を示しましたが、必要な下期営業利益が小さい会社ほど直ちに「予想を上回る」とは限りません。上期に利益率の高い案件が集中しただけかもしれません。通期に近づくにつれ、採算の良い分野の継続、追加受注の獲得、年度末に向けた人件費・外注費を別々に調べます。会社が予想を変更したときは、本記事の古い数値で進捗率を計算せず、変更理由と新たな分母から作り直してください。
建設関連企業の資金調達も確認したい方は、清水建設のCBと自社株買いを分けて読む記事をご覧ください。受注や採算に加え、資金の使い道と潜在株式をどう評価するかを整理しています。
買う・待つ・見送るための点検表
「受注残が増えているから買う」だけでは数量と撤退が決まりません。投資家が3社のうちどれかを選ぶなら、企業の発注実績と市場の期待を分けます。すでに株価が将来の国土強靱化需要を織り込んでいる場合、好決算でも期待以下として売られる可能性があります。予想PERや時価総額を用いるなら、比較する株価の日付を明示し、通期予想の更新後に分母を替えます。本記事は9月25日時点の特定の株価や売買価格を推奨しません。
仮の判断例として、次回の決算で同一定義の受注高が増え、受注残が期首・前年同期を上回り、同時に営業利益率と営業キャッシュフローが維持されるなら、売上化の確度について追加調査する価値があります。逆に受注が大幅に増えても営業利益が悪化し、工期遅延や追加費用が出ていれば、買いを急ぐ根拠は弱まります。この例は売買シグナルの実績検証ではありません。
| 判断 | 事前に決める条件の例 | 次に行う確認 |
|---|---|---|
| 調査を進める | 同じ定義の受注残と利益率が改善 | 増加した部門と現金化を確認 |
| 待つ | 受注増だが利益・現金の追随が不明 | 次の決算で採算と進捗を確認 |
| 見送る | 比較したい受注残の定義が不明 | 原資料の注記と開示を待つ |
| 撤退を検討 | 想定した採算改善が崩れた | 一時要因か恒常要因かを再評価 |
資金配分は銘柄の魅力とは別に決めます。仮に許容損失を資産の0.5%、エントリーから撤退水準までの距離を10%に置くなら、手数料・ギャップを考慮する前の建玉上限は資産の約5%です。計算は0.5%÷10%で、取引推奨や成果保証ではありません。小型株の板が薄いと予定価格で売れず、実際の損失が上限を超えることもあります。決算や災害発生直後に成行で追いかける前に、流動性、注文方法、損失限度を確認します。
結論:比較表の空欄も大切な情報
3社の2026年上期連結利益率は、建設技術研究所約12.0%、応用地質約5.5%、いであ約17.2%でした。一方、同じ定義で期末受注残を数値比較できたのは建設技術研究所の797億42百万円で、応用地質といであの比較可能な値は本記事では未確認です。受注残の空欄を推計で埋めたり、他社の半期受注高を代入したりしないことが精度を守ります。次に確認すべきは、3社それぞれの最新資料で受注がどの部門に入り、いつ売上になり、どれだけ利益と現金を生むかです。空欄があるのは物足りなく感じますが、比較できない数字をそろえたふりはしたくありません。ここからは、それぞれの部門で仕事がどう利益へ進んだかを追いたいと思います。
本記事は情報提供を目的とし、特定銘柄の売買を推奨しません。投資判断はご自身の責任で行い、決算修正や資料の更新は各社の開示で確認してください。金額は各社の2026年上期決算に基づき、利益率・差額と仮の資金配分だけ本記事が計算しています。市場価格、投資収益率、勝率の実績を示すものではありません。記載の数値は、本文中に示した日付時点の決算短信・会社のIR資料などの公開情報に基づきます。最新の情報は各社の開示でご確認ください。

