レイヤード(634A)のIPOを数字で読む:医療DXと株式需給(2026年9月上場)

医療DXの新規上場 レイヤードを読む

レイヤード(634A)は2026年9月25日、東証スタンダードに上場しました。公開価格は1,400円、初値は2,230円です(初値の出典:みんかぶ・フィスコ、2026年9月25日)。医療DX企業の上場と聞くと、「医療機関が増えれば契約が積み上がる」という見方をしがちです。しかし、その売上には月額利用料だけでなく、導入時の初期収入と院内サイネージ広告も含まれます。契約施設の数、施設あたりの単価、解約、導入支援、広告枠を分けると、成長率の中身が見えてきます。東証の上場会社概要と上場日に公表された会社決算情報を基に、公開価格1,400円で何を評価するのかを整理します。

上場当日の株価は激しく動き得ます。本記事は公開資料の時点を2026年9月25日に置き、取引中の初値や終値を根拠にしません。時価総額やPERも発行済株式数、潜在株式、株価の基準時点で変わります。「公募価格より高く寄ったから割高」「医療DXだから必ず成長する」という結論を先に置かず、事業実績と株式の供給を別々に点検します。

目次

何の会社か:患者の受診動線を支える事業

東証の会社概要では事業内容を「医療機関向けDX支援プロダクト事業及び広告配信事業」としています。同社の公式サイトは、受診先探し、予約、来院、診察待ち、患者説明、決済、受診後のフォローといった患者の動線に沿ったサービスを説明します。導入先は医療機関であり、患者が使う場面が多くても、患者数そのものを同社の有料契約数とみなしてはいけません。

上場日の業績予想資料はWeb問診Symview、予約Wakumy、患者管理Kakarite、電話自動応答Iver、院内サイネージMedicastarを例示します。製品を複数提供することで、既存施設への追加導入が平均単価を押し上げる可能性があります。一方、複数製品の契約を1施設で持つ場合、製品契約数と利用施設数は一致しません。どの分母を使った指標かを確認する必要があります。

顧客との接点収益につながる仕組み誤解しやすい点
問診・予約・患者管理医療機関の月額利用料患者の利用回数は有料施設数と異なる
新規・追加導入導入時の初期費用毎月必ず繰り返す収入ではない
院内サイネージ広告主からの掲載料医療機関からの月額料と顧客が異なる

売上を三つに分けると成長の見え方が変わる

レイヤードの売上を3つに分ける
継続収入
サービス利用料施設数・単価・解約を確認
導入時収入
初期費用新規導入件数に左右される
広告収入
院内サイネージ広告枠と稼働を確認
施設数の増加だけで3つの収入が同じ率で伸びるとは限りません。
出典:一次資料を基に整理した模式図です。

会社の2027年6月期予想の前提では、収入を医療DXストック収入、医療DXイニシャル収入、広告収入に分けます。2026年6月期実績は順に1,093百万円、626百万円、259百万円です。三つの表示を足すと1,978百万円で、総売上高1,980百万円と2百万円ずれます。資料の百万円表示による端数や集計上の表示差を無視して、合計を改ざんして合わせるべきではありません。

翌2027年6月期の会社計画はストック1,391百万円、イニシャル832百万円、広告250百万円、総売上高2,474百万円です。三つの表示を足すと2,473百万円で、総額との差は1百万円。こちらも開示表示の丸めがあります。全社売上24.9%増という見通しだけを見るより、ストックが27.3%増、イニシャルが32.9%増、広告が3.5%減という構造を見たほうが、どの仮定に依存するか明確です。

収入区分(百万円)2026年6月期実績2027年6月期会社計画読み方
医療DXストック1,0931,391利用施設数、単価、解約の影響
医療DXイニシャル626832導入件数、平均初期単価の影響
院内サイネージ広告259250出稿案件、枠、単価の影響
総売上高1,9802,474各区分の表示値を単純合算した数と端数差あり

数字は上場日に開示された会社資料の実績と予想です。ストック型の売上があることと、売上のすべてがストック型であることは別です。広告は景気や広告主の出稿方針、枠数の制約に左右されます。導入時の収入は新しい医療機関と既存施設での追加導入が必要です。高成長を評価するなら、毎年積み上がる部分と、その年の営業活動や広告需要で動く部分を分けます。

利用施設数5,929から7,627へ、何が必要か

会社資料のKPIの説明によれば、2026年6月期の利用医療機関数は5,929施設、ARPUは207千円、期末時点の解約率は0.38%です。会社は2027年6月期に利用施設7,627、ストック収入1,391百万円を見込んでいます。施設数は1,698増、28.6%増の計画です。施設が増えても提供開始の翌月から利用施設数に加えるという計上ルールのため、期末の施設数を単純に12倍して当期のストック売上を予測することはできません。施設数の計画だけでなく、実際に使い始める月まで追うと、売上になる時間が見えてきます。

ARPUは「利用医療機関あたり平均単価」と説明されます。ただし207千円という開示の単位・集計期間を、一般的な月間ARPUだと独断して売上を逆算するのは危険です。会社が掲げるストック収入1,093百万円との整合性や計算方法を原資料の定義で確認してください。製品の追加導入と価格改定のどちらが単価の変動をもたらしたかも、その後の開示が必要です。

解約率0.38%は会社の2026年6月期末時点の開示であり、翌期の実績を保証しません。医療機関の閉院、競合サービスへの移行、電子カルテや予約システムとの連携難、現場での運用定着など、解約・導入遅れに関係する要因はあります。定義の異なる他社の月次解約率や年次解約率と、その数字を直接比較しないことが重要です。

ストック収入の要因会社資料の数字・前提次の決算で見る変化
利用施設数5,929施設 → 計画7,627施設純増、新規、解約の内訳
単価2026年6月期ARPU 207千円製品追加による上昇か、値付けの変化か
解約2026年6月期末の0.38%定義と同期間での推移
売上化導入後、利用開始可能な翌月から施設数に加算契約と運用開始のタイムラグ

イニシャル収入の成長には導入件数が必要

2026年6月期の会社公表値は、導入医療機関数1,889件、平均単価303千円、イニシャル収入626百万円です。2027年6月期は導入医療機関数2,199件、イニシャル収入832百万円を計画します。件数は約16.4%の増加、収入は約32.9%の増加という関係なので、件数だけでは全額を説明できません。会社は新規導入と既存契約先の追加導入、案件の構成や単価を予想に織り込んでいます。

導入件数に平均単価を掛けて公表されたイニシャル売上に厳密一致させることも避けます。平均単価の定義や案件のタイミング、端数が異なる可能性があります。資料が示す実績と計画をそのまま使い、単価改善の要因が次の決算で実証されるか調べます。営業人数を増やせば受注機会は広がりますが、教育やサポート人員への先行投資も増えます。導入時の障害対応が重なれば、新規契約数が伸びても利益率に圧力がかかります。顧客を増やす仕事と、導入した顧客を支える仕事。その両方の負担を読んでおきたいと思います。

イニシャル収入の検証良い方向懸念する方向
導入件数計画2,199件に沿って増える新規営業や運用開始が遅れる
追加導入既存顧客に複数製品が広がる1製品だけの利用にとどまる
平均単価製品構成が改善する値引きや小規模案件が増える
導入支援収益とサポート費の釣り合い導入対応が積み上がる

広告はサブスクリプションと異なる

院内サイネージ広告は、医療機関に置かれる画面を媒体とし、製薬企業、消費財メーカー、官公庁などの広告主からの収入です。会社資料では2026年6月期の広告案件127件、平均単価2,047千円、広告収入259百万円とされています。2027年6月期は広告収入250百万円を見込みます。広告枠には一定の上限があり、半年程度の枠について契約済み案件や具体的な商談を織り込んで計画しています。

広告が減る計画でも全社売上が増えるのは、ストックとイニシャルの増加見通しがそれを上回るためです。反対に広告需要が予想より弱くても、月額利用料の契約施設数が計画を超えれば全社の数字への影響が変わります。上場後の四半期開示では3区分の実績を確認し、会社計画からのずれの発生源を特定します。医療機関向けSaaSの契約を広告在庫と同じ価値尺度で評価しないことが肝心です。

営業利益の拡大と現金収入を確認する

上場日の開示によると、2025年6月期の売上高1,461百万円、営業利益127百万円から、2026年6月期は売上高1,980百万円、営業利益344百万円になりました。2027年6月期の計画は売上高2,474百万円、営業利益458百万円です。開示表の営業利益率は順に8.7%、17.4%、18.5%です。売上高の増加に加え、売上総利益率や販売費の比率の変化を確かめます。

同社は売上原価について開発・運用の労務費、外注費、クラウドサーバー費などを挙げています。2027年6月期は人員増、代理店経由の販売手数料、販促費も増える見込みです。会社の見通しには内製化やAI活用による効率化も含まれますが、効率化の成果が実現したと確定した数字ではありません。売上総利益計画1,686百万円と販管費計画1,227百万円を追い、実績で利益率が維持されるか判断します。

年度(個別)売上高営業利益営業利益率当期純利益
2025年6月期実績1,461百万円127百万円8.7%100百万円
2026年6月期実績1,980百万円344百万円17.4%239百万円
2027年6月期会社予想2,474百万円458百万円18.5%305百万円

連結財務諸表ではなく個別財務諸表に基づく点も会社の注記に示されています。2026年6月期の営業キャッシュフローは277百万円、現金・預金の期末残高は642百万円です。現金収入があるのは好材料ですが、売掛金は同期間に199百万円から284百万円へ増えています。売上が成長する中で債権が増えること自体は自然な場合もあるため、回収日数の伸びと貸倒の有無を今後追います。2026年4月30日付で1株を20株に分割しているので、過去EPSとの比較時には分割調整にも注意します。

公募・売出・OAは別の株数で数える

東証の新規上場一覧には公募600千株、売出250千株、オーバーアロットメント(OA)127.5千株、公開価格1,400円と記されています。公募は会社の新株発行、売出は既存株主が保有する株式の売却で、会社に入る資金の意味が違います。OAは主幹事が需給調整のために売り出す枠で、上限まで実施されるかなど制度上の条件があります。600+250+127.5=977.5千株という最大の表面上の株数を「全額が会社の手取りになる公募」と表現するのは誤りです。

会社の上場日決算資料は公募600,000株の発行価格1,400円、払込金額1,147.50円を別々に示します。単純な「発行価格×公募株数」は8億4,000万円ですが、会社の手取り資金とは一致しません。払込、引受手数料や関連費用、資金使途の説明を区別します。会社は既存プロダクトの機能拡張と関連サービス開発、営業・サポート体制、広報・販売費への充当を予定しています。

区分株数意味注意点
公募600,000株新たに発行する株式会社への払込額と公開価格は異なる
売出250,000株既存株主が売る株式会社への新規資金ではない
OA上限127,500株追加売出の枠実施・決済と第三者割当を確認
公開価格1,400円募集・売出の基準価格初値や当日の売買価格とは別

ロックアップは「全株主の全株が同日に出る」ではない

上場直後の需給を見る際は、主要株主の売却制限(ロックアップ)と解除条件を新規公開時の届出書・目論見書で個別に確認する必要があります。保有株数、対象株主、期間、価格条件、主幹事の同意による解除などの条件が異なれば、解除日だけを一つに決めて全株を供給株式に足すのは誤りです。ストックオプションについては、権利行使期間と上場時の希薄化株数を別に調べます。

本記事では原典のロックアップ契約条項を確証できていないため、「180日で全株解禁」「公開価格の1.5倍で売却可能」といった数値・条件は断定しません。東証の上場資料から確定できる公募・売出・OAを先に示し、主要株主のロックアップ条項は原目論見書の訂正履歴まで確認できてから銘柄ごとに判断します。期限のカウントや価格解除条件を推測で記載しないことが、IPO特有の需給分析では重要です。

需給の要素本記事で確認できたもの次に確認する資料
新株発行公募600,000株実際の払込と資金使途
既存株主の売出250,000株売出人の保有株と売却後比率
OA上限127,500株第三者割当の結果、返済方法
ロックアップ個別条件を本記事では未確証最新の訂正届出書・目論見書
潜在株式EPS予想にOAの第三者割当分は未算入新株予約権の行使条件と株数

公開価格から評価を試すときの落とし穴

予想EPSは会社公表の119円84銭です。公開価格1,400円を割ると予想PERは約11.7倍になります。これは公開価格と会社予想EPSによる単純計算で、上場後の市場株価で計算した予想PERではありません。また予想EPSは公募60万株を含む予定期中平均株式数を分母とし、OA関連の第三者割当最大12万7,500株は織り込んでいません。EPSの計算注記を読まずに他社のPERと同列に比較するのは避けます。

実績EPS106円53銭を用いれば計算値は約13.1倍となり、予想値を使う場合とは結果が変わります。さらに、株式分割を調整した2025年6月期EPS44円52銭を分母にすれば、過去の時点を基準とした高い倍率になります。期間と発行株式の扱いを明記せずに「この銘柄のPERは1つ」と言い切ることはできません。医療DXの期待で株価が動いた場合は、その日の価格を分子に入れて計算し直します。

収益の質を評価するなら、単価の持続性、解約、イニシャル収入の比率、広告枠の制約、開発とサポート費、営業現金収入を同時に追う必要があります。機関数が増えても営業利益率が悪化するなら、計画した効率化の遅れがないか調べます。反対に利益率だけが急上昇しても、開発費を抑えすぎて製品競争力が落ちていないか考えます。比較対象企業を選ぶ際も会計基準と事業構成をそろえます。

継続課金型の企業を比較するときの確認項目は、システムサポートHD・ヌーラボ・アイビスの成長性を検証したレポートでも整理しています。業種や事業構成の違いを踏まえ、契約数の増加が利益と現金収入につながっているかを比較する際にご活用ください。

目論見書の訂正と将来予想を時系列で読む

IPOの資料は上場承認時の原本だけで完結しません。仮条件の決定、発行価格の確定、売出しの条件などで訂正届出書が出ます。あるサイトの概要欄と別の日付の目論見書を突き合わせた場合、価格・株数・引受条件の時点がそろわない可能性があります。本記事の公募・売出・OAは東証の9月25日時点の一覧、収益予想は同日付の会社決算資料を採用しました。個別のロックアップや株主の持株比率については、最新訂正版の条項を本文で確認できるまで数量に算入しません。

特に「将来の売上」は既存契約に基づく確定売上ではありません。会社は営業人数や導入件数、施設の平均単価を仮定し、広告については見込み案件を積み上げています。現時点で契約済みの部分と商談中の部分、これから獲得する新規施設を区別すれば、予想の上振れ・下振れの原因を次の開示で検証できます。予想EPSに公開価格を割った倍率は、こうした前提を含む予想利益の評価である点を忘れないでください。

撤退までの値幅から株数を決める手順は、ATR・ATR%と損切り幅・株数の考え方で解説しています。上場直後は価格履歴が短いため、指標を計算できる期間と、値飛びを含む実際の損失を分けて確認してください。

注文・数量・見送りを事前に決める

IPOの上場日には取引開始まで初値が決まらないことがあり、気配値と実際の約定価格が離れる場合があります。東証の9月24日の初値決定前の気配運用案内は本銘柄の公開価格1,400円を参照し、上場日の初値決定前に成行注文を禁止すると示しています。発注する際は当日の取引所・証券会社の注文条件と板の厚さを確認してください。公開価格を見て、どんな価格でも成行で買えると想定してはいけません。

仮に許容損失を資産の0.5%、購入価格から撤退目安まで15%と置くなら、取引コストや値飛びを無視した建玉上限は資産の約3.3%です。0.5÷15という資金管理上の計算例であり、レイヤード株の推奨比率ではありません。初日の値幅や流動性次第で損切りが設定価格通りに約定する保証はなく、株数はさらに小さくする判断もあり得ます。

判断場面数字で確認すること行動例(仮定)
上場日初値、板、当日の売買規則価格が不明なら注文しない
次の四半期決算施設数、ARPU、3区分の売上、利益率予想との差を再評価
追加の需給開示OA結果、持株、ロックアップ条項未確証の解除株数を使わない
成長鈍化解約、受注、導入遅延、広告前提が崩れたら数量を縮小・撤退を検討

見送りも積極的な判断です。ロックアップ条件が確認できず株式需給の不確実性が大きい場合や、公開価格から株価が離れて収益見通しに対する評価が追えない場合、次の決算や原目論見書を待つという選択があります。短期の値動きと中期の利用施設数の増加は時間軸が違います。短期注文の撤退条件と長期の業績検証を同じ一本の指標に押し込めないでください。

結論:まず利用施設の純増と売上構成を検証する

レイヤードは2026年6月期に売上高19億80百万円、営業利益3億44百万円を計上し、翌期は売上24億74百万円、営業利益4億58百万円を計画しています。利用医療機関数は5,929から7,627へ増える前提です。評価すべき中心は、施設数の純増と単価、解約、初期導入の採算、広告の変動を切り分け、会社予想のどこが実現するかです。公募価格1,400円と初値・その後の株価を混同しないこと、ロックアップを原典未確認のまま断定しないことも重要です。私には、上場直後の値動きより、施設が増えても無理なく支え続けられる商売かという問いが残りました。次の開示では、数の伸びと採算を一緒に追いたいです。

本記事は2026年9月25日までに確認した東証・会社の公開資料に基づく情報提供で、特定の銘柄の売買を推奨しません。株価、目論見書の訂正、決算予想は変わり得ます。投資判断はご自身の責任で、注文前に最新の取引所・会社開示を確認してください。計算上のPER、資金管理の例は本記事による試算であり、利益や約定を保証するものではありません。

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