新しく契約してもらうことと、使い続けてもらうこと。継続課金の事業では、この両方が売上を支えます。Sansan(4443)のBill Oneとfreee(4478)では、契約の積み上がりをどの数字で確認できるのでしょうか。ARRと有料契約・顧客数から、成長の中身を読み解きます。
二社とも、今回のARRと有料契約・顧客数の入口条件には合いました。ただし全社の通期売上も既に伸びています。これから初めて成長する会社を見つけたというより、今の成長を支える契約がどう増えているのか、その中身を読む実例になりました。
この手法が捉える先行サイン
ARRは、継続的な売上を年換算した指標として使われます。ただし、何を継続的な売上に含めるかは会社やサービスごとに定義を確認する必要があります。契約中のサービスを年換算した数値であって、その金額が確定した受注残として翌年に必ず入るという意味ではありません。解約、単価変更、従量部分の変動によって実際の売上は変わります。
同じ会社でも製品別ARRと全社ARRが併記される場合があります。特定製品のARRに全社の顧客数を組み合わせると、一人当たり売上や成長の説明が崩れます。今回はBill OneのARRにはBill Oneの有料契約の増加率を合わせ、freeeでは純粋なサブスクリプションARRと同じ範囲の有料顧客数を使います。
ARRが増えたと聞くと、利用者が増えたのだろうと思いたくなります。でも、値上げや上位プランへの変更、従量利用の増加でも動く数字です。有料顧客数も一緒に増えていれば、契約の広がりをもう少し具体的に見られます。それでも、大きな契約が減って小さな契約が増えた場合には採算が変わります。人数の先にある、誰がどんな使い方で残ってくれているのかまで知りたくなります。解約率、NRR、ARPUが同じ定義で取れるなら、次はそこを読みたいです。
今回の条件と実行範囲
基本条件は、同一サービス範囲のサブスクリプションARRが前年同期比20%以上増え、有料契約または有料顧客数も前年より増えていることです。月次解約率1%以下が確認できれば継続性の補足条件適合としますが、基本条件と補足条件を一つにしません。解約率が未確認だからといって、ARRの数値を未確認にすることもありません。
今回の試行は二社です。Sansanは2026年5月末、freeeは6月末の期末指標を確認しました。決算期が違うため対象日は同じではありません。また、全社の通期決算の増収を補足していますが、最新四半期単独の全社段階を全項目で照合する工程は今回完了していません。回復前の厳密な段階判定は保留として扱います。

そのまま使える発掘プロンプト
次の枠をまとめてコピーし、基準日時だけを調査する日時へ変更してください。これがこの記事で紹介する一つのプロンプトです。目標件数と今回の実行件数は同じではありません。
本記事の検証には2026年10月1日16時06分時点の公開情報を使用しています。対象企業を限定した試行です。
日本の上場企業から、継続課金の契約増加が業績に先行する候補を探してください。基準日時は2026年10月1日16時06分JSTです。
銘柄を先に指定せず、ARRと有料契約/顧客数を開示する企業を最低20社確認することを目標にし、実際の対象全件と不足項目を記録してください。
同一サービス範囲でサブスクリプションARR前年比20%以上増、有料契約/顧客数前年比増を基本条件にしてください。全社と製品、継続課金と従量・手数料型ARRを混ぜないでください。
月次解約率、NRR、ARPU、前四半期比を補足し、解約率1%以下が確認できれば継続性の補足条件適合としてください。未確認なら基本条件と補足条件を別判定にしてください。ARRは確定受注残ではありません。
全社最新四半期の売上前年比5%以下かつ営業利益が前年以下なら「全社回復前候補」、それ以外は「既に成長中」、欠損は「段階判定保留」としてください。
対象全社について範囲、実数、比較値、計算式、公開日、定義変更・訂正、各条件合否、業績段階、出典URLを示してください。顧客数が増えても成長加速や利益増を断定しないでください。
回答は、調査の基準日時、実行範囲、候補一覧、条件別の判定、未確認事項、出典の順で作成してください。探索対象を作る工程と、実際に資料を取得して条件を照合する工程を区別してください。目標件数に届かなかった場合は、確認件数と不足した理由を明記してください。対象の全件一覧を残し、候補だけを抜き出して網羅的な調査のように見せないでください。
数値はまず資料の原単位で保存し、表示単位への換算と計算式を別に示してください。資料のページ番号または表名、対象期間、個別・連結、サービスや地域の範囲、比較値、資料公表日を付けてください。レンジ、速報、実績、会社予想を区別してください。元の資料に訂正がある場合は訂正対象を確認してください。PDF抽出で列や注記が崩れている場合は画像で再確認し、確認できない数値を推定で埋めないでください。
営業利益がゼロや赤字の場合は無理に増減率を計算せず、実額の変化で改善・悪化を判断してください。調整後利益を会計上の営業利益に置き換えないでください。基本条件の適合、補足条件の適合、全社の段階判定は別々の列にしてください。条件に合わない理由が取得済みの数値にある場合は不適合、必要な資料がない場合は保留、因果関係だけが不明な場合はその限定を明記してください。
最後に、候補ごとの強気・中立・弱気の確認条件と、次に取得すべき資料を示してください。これらを数値目標や株価予想として扱わないでください。この閾値は探索の仮説であり、バックテストされた投資戦略ではありません。現在の株価やバリュエーションを調べていない場合は、出遅れ、割安、上昇余地が大きいと結論づけないでください。
実際のスクリーニング結果
| 対象 | 同一範囲のARR | 有料契約・顧客数 | 継続性補足/判定 |
|---|---|---|---|
| Sansan4443・Bill One/5月末 | 147.82億円、前年比+34.9% | 有料契約数前年比+31.9% | 12か月平均月次解約率0.34%/基本・補足適合 |
| freee4478・サブスクリプション/6月末 | 343.93億→412.74億円、+20.007% | 606,533→691,225、+13.96% | 同じ範囲の解約率は今回未確認/基本適合・補足保留 |

銘柄別の解釈と未確認事項
Bill OneのARRは147.82億円、前年比34.9%増で、有料契約数も31.9%増でした。契約数とARRが一緒に伸びているところに、商売の広がりを感じます。基本条件には適合し、12か月平均の月次解約率0.34%も補足条件の1%以下でした。ただ、この0.34%は平均月次の値です。年次や最新月だけの解約率と読み違えると、続けて使ってもらえている度合いを見誤ってしまいます。
Sansanの資料には契約数の図表もありますが、今回抽出した数値で範囲の照合が不十分だった絶対数は使わず、同じサービスで確認できた前年比31.9%を掲載しています。見出しの数字と図の数字が異なるとき、都合のよい方を選んで顧客単価を計算する方法は避けます。今回の情報だけでARPUの実額を計算した結果にはしていません。
Sansanの通期全社売上は24.4%増、調整後営業利益は137%増です。調整後営業利益は会社が調整した指標で、会計上の営業利益と同じではありません。これを四半期の会計上営業利益として段階判定に使うことはできません。ただし、全社が通期では既に増収である点は明記し、成長前という見出しで扱わないようにします。8月10日の訂正は個別総資産の項目であり、今回のBill Oneの指標と混同していません。
freeeのサブスクリプションARRは343.93億円から412.74億円です。計算は(41,274−34,393)÷34,393×100=約20.00698%となり、丸める前も20%以上です。表の表示を20.0%に丸めると境界が見えにくいため、判定に使った値を残します。有料顧客数は606,533から691,225へ増え、増加率は約13.96%です。
freeeにはプラットフォームARR435.95億円、21.8%増という数字もありました。ただ、こちらは取引に関わる収益のARRを含み、今回のサブスクリプションARRとは範囲が違います。プラットフォーム全体の有料顧客数694,586も、サブスクリプションの691,225とは別です。AIに数字を整理してもらうときも、見栄えよく一つにまとめるより、この違いを残してほしいと思います。同じ商売の範囲で比べてこそ、増えた理由を考えられるからです。
freeeの全社通期売上は424.41億円、27.6%増、会計上の営業利益は10.91億円、78.6%増でした。調整後営業利益26.63億円とは区別します。同じ範囲の月次解約率は今回未確認で、継続性の補足条件は保留です。基本条件の適合だけから解約が少ない、成長が加速する、と結論づけてはいません。
結果を読むときの注意点
ARRは期末時点の指標として示されることが多く、期中平均の売上とは時間の性質が異なります。期末に大きな契約が入ればARRが上がっても、その期の売上への寄与は小さい場合があります。逆に期中の解約や割引が、その後の売上に影響することもあります。ARRと売上の差は、計上時期や定義を確認して読む必要があります。
顧客獲得のための広告費、人員、販売代理店への手数料が増えれば、契約が伸びても利益の伸びが弱くなる場合があります。また、有料顧客の増加と無償利用者の増加は別です。今回の基本条件が捉えるのは継続課金の広がりであり、顧客を増やす効率や資金回収の良さまで確認した結果ではありません。次は営業キャッシュフローや顧客獲得費用に関する開示も読みます。
このページの結果は、公開資料を取得できた企業で手法を試したものです。日本の上場企業をすべて確認した結果ではありません。プロンプトの中には最低20社を目標にする指示がありますが、それは読者が改めて探索するときの作業条件です。この記事の実行件数とは分けています。調べていない企業が条件を満たさないという意味にもなりません。
候補という言葉は、次の資料を読む対象という意味で使います。買う順番や予想リターンを示す順位ではありません。現時点の株価、出来高、時価総額、予想PERを横断比較する工程は今回の結果に含めていません。事業の改善が見えても、その期待が株価に十分織り込まれている可能性があります。業績の先行指標があることと、株価の上昇余地があることは、別々に検証する必要があります。
結果の読み方は二段階です。まず、その手法に固有の入口条件を満たすかを確かめます。その後、全社の業績がまだ回復前なのか、既に伸びているのかを確かめます。入口の指標が良くても全社が既に成長していれば、成長の持続を調べる対象になります。全社決算の比較が不足している企業を、回復前という言葉で埋めることはしません。
全社の段階判定には、最新四半期の売上高が前年同期比5%以下、営業利益の実額が前年同期以下という条件を置きます。この境界は発掘作業のための仮説です。利益が赤字の場合にも実額を比べ、前年より赤字が縮小していれば利益は改善していると扱います。赤字が続いているという理由だけで、回復前の条件に自動的に入れません。調整後利益しかない場合や、通期しか確認していない場合は、その制約を書きます。
表の「適合」は資料と設定条件の照合結果であり、将来予測が当たったという評価ではありません。「保留」は、必要な項目や因果関係が未確認という意味です。「不適合」は、取得済みの数値が設定した条件から外れるという意味です。保留を不適合に置き換えると開示の少ない企業を機械的に排除し、不適合を候補に置き換えると条件を後付けで緩めることになります。三つを分けて記録することで、次回の更新も追いやすくなります。

AIで再実行するときの手順
プロンプトを使う前に、調査基準の日時を指定します。決算日だけでは、同じ日に午前と夕方で取得可能な資料が変わることがあります。AIに最新とだけ依頼すると、更新前のキャッシュや前年の資料を拾っても気付きにくくなります。基準日時、資料の公表日、数字の対象期間を別々の欄に残すと、どこが古くなったのかを確認できます。
次に、検索できるAIで公式IR、決算短信、決算説明資料、適時開示を順に確認します。検索結果の短い説明は資料を見つける入口として使い、数字の根拠には本文の表を用います。会社が提出した資料を取引所や開示配信サービスで読む場合も、掲載主体の説明記事と会社自身の開示資料を区別します。取得できない資料は未取得と記録し、ほかの数値から逆算して確定値のように扱わないことが必要です。
AIの回答は、結論だけで受け取らず、元の実数と計算式まで確認します。百万円の数字を億円に直す場合は100で割ります。前年比120%という表記は20%増であり、120%増ではありません。また、20%から30%への変化は10ポイントの差です。単位や比率の取り違えは候補の判定そのものを変えるので、目立つ数字だけでなく閾値の近くにある数字も確認します。
資料に訂正があった場合は、対象の項目が修正されているかを読みます。訂正があるというだけで全表を破棄する必要はありませんが、旧版と新版の数字を混ぜることもできません。PDFから取り出したテキストで表の列が崩れたり、図の注記が抜けたりしたときは、該当ページを目で確認します。会社の概要に書かれた顧客名と、今回の成長要因に関わる顧客名も同じとは限りません。
調査後は、条件を変えずに対象全件を保存します。候補だけを残すと、不適合企業を何社見たのかが分からず、次の検証で都合のよい数字を選びやすくなります。条件を変更したくなったときは、旧条件の結果を残して別の試行として比較します。候補がゼロでも失敗ではありません。その基準では残らなかったという結果が、無理に銘柄を薦めないための判断材料になります。
ここまでの作業は、発掘から一次確認までです。投資判断へ進む場合は、有利子負債、営業キャッシュフロー、増資や希薄化、主要顧客への依存、利益率の持続性などを追加で読みます。事業面の改善が一時的な要因だけで説明される場合は、売上や利益の数字が良くても評価を引き上げる根拠が弱くなります。今回の手法が捉える信号と、財務や株価の検証を順に積み重ねる使い方が適しています。
次の資料で確認する強気・中立・弱気
| 場面 | 次の資料で確認すること | 扱い |
|---|---|---|
| 強気 | 同一範囲のARR・顧客数が伸び、解約や獲得費用も安定する | 仮説を補強するが、株価上昇の保証にはしない |
| 中立 | ARRは伸びるが、値上げ・顧客構成・解約の影響が未確認 | 未確認事項を残して継続調査する |
| 弱気 | ARRの伸びが鈍り、解約増加や獲得費用が利益を圧迫する | 候補にした理由を見直し、必要なら外す |
以下は企業の業績予想ではなく、次の資料を読むための条件分岐です。強気の場面でも、先行指標が伸びるだけでは完了にしません。売上への転換、採算、現金回収の順に確認します。中立の場面は、好材料と未確認事項が混在している状態です。弱気の場面は、仮説と反対の数字が出た場合で、候補にした理由を見直すために使います。
次回確認では、まず今回と同じ定義の指標を取り出します。開示定義が変わったら連続した成長率をそのまま計算せず、比較可能な範囲を探します。その上で、会社の説明と数字の方向が一致しているかを見ます。説明の言葉が強くても実数の改善が伴っていない場合は、予想として保存し、実績とは分けます。逆に単一の四半期で数値が良くなっても、季節性や前年の低さで説明できるかを確かめます。
更新の際には、今回の表を上書きする前に基準日付きで保存しておきます。どの情報を知った時点で何を判断していたかが残ると、後から発表された好決算を最初から予見していたように書くことを避けられます。将来の評価を調べる場合にも、過去時点で公表済みだった資料だけを使うことが大切です。今回はこの仕組みの説明と小規模な検証までで、過去の株価成績による有効性の実証は行っていません。

まとめと一次資料
今回の二社では、売上の成長に加えて、ARRと有料契約・顧客数が増えていることを確認できました。私がおもしろいと思ったのは、売上の手前にある「使ってもらい続ける商売」を数字から考えられることです。単に成長率が高いという話より、なぜ契約が広がり、なぜ続けてもらえるのかが見えてくると、その会社への関心も深くなります。
一方、両社の全社通期売上は既に増えており、今回の結果だけで成長前や全社回復前とは呼べません。freeeの同じ範囲の月次解約率も未確認です。次は契約の継続性と採算を合わせて、広がった契約がどのくらい利益に結び付くのかを追いたいと思います。ARRの伸びは、その問いを始める入口でした。
この記事で使用した一次資料
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