決算の売上にはまだ表れていないのに、お客さんから先にお金が入っている。そんな変化があれば、少し先の業績を考える手がかりになるのではないか。今回は、その気持ちから契約負債と前受金を調べてみました。株価を追うだけでは見えにくい、会社と顧客の間で起きている動きを知りたいと思ったからです。
調べたのは岡本工作機械(6125)、芝浦機械(6104)、SCREEN(7735)、ツガミ(6101)の4社です。4社とも残高は前期末から20%以上増えていました。そのうち、最新四半期の売上と営業利益がまだ低調という条件にも合ったのは最初の3社でした。ただ、残高が増えた理由と売上になる時期までは分かっていません。期待を持てる数字が見つかった、というところから話を始めます。
この手法が捉える先行サイン
契約負債は、顧客との契約で収益を認識する前に受け取った対価などに関わる負債です。前受金も売上になる前の受取額として使われる場合がありますが、勘定名や対象範囲は会社の注記で確認する必要があります。今回は各社内で比較可能な同じ項目を追い、会社間で金額の大きさだけを競うランキングにはしません。
ここで立ち止まったのが、受注残と契約負債の違いでした。受注残には、まだ代金を受け取っていない注文も含まれ得ます。一方、契約負債は支払条件や年払いの時期でも動きます。同じ注文でも前受けの割合が高まれば残高は増えるので、契約負債50%増を、そのまま受注50%増と読むわけにはいきません。前受金の増加は、契約内容と支払条件を合わせて確認する必要があります。
残高は一時点のストックです。売上や利益は期間のフローなので、残高の増加と売上の増加を同じ成長率のように読むことは避けます。今回は前期末比の増加を探索の入口とし、前年同四半期残高も補足します。年度末に売上計上が集中すると前期末残高が低くなり、その次の四半期で大きく増えることがあります。前期末からの増加だけでは新しい需要の強さを判断できません。
今回の条件と実行範囲
条件は、最新四半期の契約負債または前受金が前期末比20%以上増、全社売上の前年同期比5%以下、営業利益の実額が前年同期以下という三つです。さらに増加要因と収益認識時期を確認し、未確認なら条件付き候補にします。20%は探索用の仮説で、有効性が実証された数値ではありません。
今回4社の最新残高を確認し、岡本工作機械・芝浦機械・SCREENは2025年6月から2026年6月までの5時点を比較しました。ツガミは今回2026年3月と6月の2時点で、4期以上の比較は未完了です。過去の残高が取得できた3社でも、季節性や為替、支払条件を完全に分離した分析ではありません。

そのまま使える発掘プロンプト
次の枠をまとめてコピーし、基準日時だけを調査する日時へ変更してください。これがこの記事で紹介する一つのプロンプトです。目標件数と今回の実行件数は同じではありません。
本記事の検証には2026年10月1日16時06分時点の公開情報を使用しています。対象企業を限定した試行です。
日本の上場企業から、契約負債・前受金の増加が業績回復に先行する候補を探してください。基準日時は2026年10月1日16時06分JSTです。
銘柄を先に指定せず、同じ基準で比較できる契約負債・前受金を開示する企業を探し、対象全件と未取得項目を記録してください。
探索条件は、最新四半期の契約負債/前受金が前期末比20%以上増、全社売上前年比5%以下、営業利益が前年以下の3つです。探索用の仮説であり、有効性が実証された閾値とは書かないでください。
最低4期の推移、可能なら前年同四半期残高も確認し、季節性、為替、連結変更、支払条件変更、年払い契約、解約返金の影響を調べてください。前期末比と前年比は別に表記してください。
契約負債を受注残に置き換えず、増加しただけでは合格確定にしないでください。増加理由・収益認識時期が未確認なら条件付き候補としてください。
棚卸資産や仕掛品の増加も確認し、需要対応の準備と売れ残りの両仮説を示してください。
対象全社の実数、計算式、対象期間、公開日、定義、条件別合否、未確認事項、出典URLを示してください。全市場の確認や株価上昇を断定しないでください。
回答は、調査の基準日時、実行範囲、候補一覧、条件別の判定、未確認事項、出典の順で作成してください。探索対象を作る工程と、実際に資料を取得して条件を照合する工程を区別してください。目標件数に届かなかった場合は、確認件数と不足した理由を明記してください。対象の全件一覧を残し、候補だけを抜き出して網羅的な調査のように見せないでください。
数値はまず資料の原単位で保存し、表示単位への換算と計算式を別に示してください。資料のページ番号または表名、対象期間、個別・連結、サービスや地域の範囲、比較値、資料公表日を付けてください。レンジ、速報、実績、会社予想を区別してください。元の資料に訂正がある場合は訂正対象を確認してください。PDF抽出で列や注記が崩れている場合は画像で再確認し、確認できない数値を推定で埋めないでください。
営業利益がゼロや赤字の場合は無理に増減率を計算せず、実額の変化で改善・悪化を判断してください。調整後利益を会計上の営業利益に置き換えないでください。基本条件の適合、補足条件の適合、全社の段階判定は別々の列にしてください。条件に合わない理由が取得済みの数値にある場合は不適合、必要な資料がない場合は保留、因果関係だけが不明な場合はその限定を明記してください。
最後に、候補ごとの強気・中立・弱気の確認条件と、次に取得すべき資料を示してください。これらを数値目標や株価予想として扱わないでください。この閾値は探索の仮説であり、バックテストされた投資戦略ではありません。現在の株価やバリュエーションを調べていない場合は、出遅れ、割安、上昇余地が大きいと結論づけないでください。
実際のスクリーニング結果
| 銘柄・項目(億円) | 25年6月 | 25年9月 | 25年12月 | 26年3月 | 26年6月 | 前期末比/前年同月比・判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 岡本工作機械6125・契約負債 | 50.36 | 44.75 | 49.39 | 36.78 | 57.72 | +56.93%/+14.61%・条件付き |
| 芝浦機械6104・契約負債 | 306.86 | 213.98 | 204.32 | 104.58 | 132.00 | +26.22%/−56.98%・条件付き |
| SCREEN7735・契約負債 | 1,062.68 | 1,134.46 | 1,100.85 | 831.45 | 1,249.27 | +50.25%/+17.56%・条件付き |
| ツガミ6101・契約負債 | 未取得 | 未取得 | 未取得 | 64.07 | 86.28 | +34.67%/未確認・業績段階不適合 |

銘柄別の解釈と未確認事項
岡本工作機械の契約負債は36.78億円から57.72億円へ増え、前期末比56.93%増です。前年同月の50.36億円と比べると14.61%増になります。売上82.44億円、前年同期比6.3%減、営業損益3.65億円の赤字で、今回の数値条件に合います。同社は受注の増加も確認できますが、契約負債の増加額を受注の増加額と同じものとしては扱いません。
芝浦機械の契約負債は104.58億円から132.00億円へ26.22%増えました。ここだけなら目を引きます。ところが、前年同月の306.86億円からは56.98%減です。比べる相手を変えると印象がずいぶん違います。売上211.19億円、前年同期比31.8%減、営業損益6.52億円の赤字で業績条件には合いますが、私なら前期末からの増加だけで回復の勢いを決めず、前年より低い水準も一緒に見ておきます。
SCREENの契約負債は831.45億円から1,249.27億円へ50.25%増、前年同月比では17.56%増です。売上1,217.75億円、前年同期比10.3%減、営業利益143.68億円、41.1%減で、数値条件に合います。棚卸資産も1,586.37億円から1,925.90億円へ21.40%増えています。ただし在庫の増加は販売の準備と滞留の両方で説明できるため、売れる見込みの確定として扱いません。
SCREENは7月28日に業績予想を修正し、通期売上7,430億円、営業利益1,565億円を見込んでいます。これらは会社予想で、実現した利益ではありません。会社自身が回復を予想している状況なので、契約負債の増加から誰も気付いていない回復を見つけたという表現にはしません。顧客投資との関係は調査対象ですが、残高増が特定のTSMC案件に由来する証拠も未確認です。
ツガミの契約負債は64.07億円から86.28億円へ34.67%増でした。残高条件には合いますが、売上430.06億円、前年同期比35.3%増、営業利益134.66億円、55.2%増と全社業績は既に伸びています。そのため回復前の条件からは外れます。過去の四半期残高が未取得という理由だけで保留にしているのではなく、取得済みの全社業績が設定条件に不適合です。
3社の5時点を並べると、前期末に残高が低くなっていることが見えてきました。一つの増加率だけを見ていたら、見落としやすいところです。ただ、一年分で季節性まで分かったとは言えません。ここからは複数年の同じ四半期と、契約の支払条件・収益認識の説明を合わせて、年度末からの反動なのか、契約が継続的に増えているのかを追っていきたいです。
結果を読むときの注意点
前受けの比率変更、為替、連結範囲の変更、年払い契約、解約返金などで残高は動きます。残高が増えると将来の売上が増えるように見えますが、同じ売上でも受取時期が前へ移っただけという可能性があります。今回は増加要因を分離できていないため、3社を合格確定とせず条件付きにしています。
棚卸資産も同時に増えている場合は、需要に備えて製作が進んでいる仮説と、出荷・販売が遅れて在庫が残っている仮説の両方を置きます。岡本工作機械の棚卸資産は177.84億円から191.13億円へ約7.47%増、芝浦機械は500.67億円から596.75億円へ約19.19%増でした。残高の方向が同じだから良いと判断せず、次の売上転換と現金回収まで確認します。
契約負債は負債であって、有利子負債と同じ性質ではありません。また、その残高があるから返済余力が高いと単純に扱うこともできません。顧客に製品やサービスを提供するための費用が残る場合があります。残高を企業価値にそのまま加算する方法は使わず、契約に基づく義務と収益化の過程を読むための入口とします。
このページの結果は、公開資料を取得できた企業で手法を試したものです。日本の上場企業をすべて確認した結果ではありません。プロンプトの中には最低20社を目標にする指示がありますが、それは読者が改めて探索するときの作業条件です。この記事の実行件数とは分けています。調べていない企業が条件を満たさないという意味にもなりません。
候補という言葉は、次の資料を読む対象という意味で使います。買う順番や予想リターンを示す順位ではありません。現時点の株価、出来高、時価総額、予想PERを横断比較する工程は今回の結果に含めていません。事業の改善が見えても、その期待が株価に十分織り込まれている可能性があります。業績の先行指標があることと、株価の上昇余地があることは、別々に検証する必要があります。
結果の読み方は二段階です。まず、その手法に固有の入口条件を満たすかを確かめます。その後、全社の業績がまだ回復前なのか、既に伸びているのかを確かめます。入口の指標が良くても全社が既に成長していれば、成長の持続を調べる対象になります。全社決算の比較が不足している企業を、回復前という言葉で埋めることはしません。
全社の段階判定には、最新四半期の売上高が前年同期比5%以下、営業利益の実額が前年同期以下という条件を置きます。この境界は発掘作業のための仮説です。利益が赤字の場合にも実額を比べ、前年より赤字が縮小していれば利益は改善していると扱います。赤字が続いているという理由だけで、回復前の条件に自動的に入れません。調整後利益しかない場合や、通期しか確認していない場合は、その制約を書きます。
表の「適合」は資料と設定条件の照合結果であり、将来予測が当たったという評価ではありません。「保留」は、必要な項目や因果関係が未確認という意味です。「不適合」は、取得済みの数値が設定した条件から外れるという意味です。保留を不適合に置き換えると開示の少ない企業を機械的に排除し、不適合を候補に置き換えると条件を後付けで緩めることになります。三つを分けて記録することで、次回の更新も追いやすくなります。

AIで再実行するときの手順
プロンプトを使う前に、調査基準の日時を指定します。決算日だけでは、同じ日に午前と夕方で取得可能な資料が変わることがあります。AIに最新とだけ依頼すると、更新前のキャッシュや前年の資料を拾っても気付きにくくなります。基準日時、資料の公表日、数字の対象期間を別々の欄に残すと、どこが古くなったのかを確認できます。
次に、検索できるAIで公式IR、決算短信、決算説明資料、適時開示を順に確認します。検索結果の短い説明は資料を見つける入口として使い、数字の根拠には本文の表を用います。会社が提出した資料を取引所や開示配信サービスで読む場合も、掲載主体の説明記事と会社自身の開示資料を区別します。取得できない資料は未取得と記録し、ほかの数値から逆算して確定値のように扱わないことが必要です。
AIの回答は、結論だけで受け取らず、元の実数と計算式まで確認します。百万円の数字を億円に直す場合は100で割ります。前年比120%という表記は20%増であり、120%増ではありません。また、20%から30%への変化は10ポイントの差です。単位や比率の取り違えは候補の判定そのものを変えるので、目立つ数字だけでなく閾値の近くにある数字も確認します。
資料に訂正があった場合は、対象の項目が修正されているかを読みます。訂正があるというだけで全表を破棄する必要はありませんが、旧版と新版の数字を混ぜることもできません。PDFから取り出したテキストで表の列が崩れたり、図の注記が抜けたりしたときは、該当ページを目で確認します。会社の概要に書かれた顧客名と、今回の成長要因に関わる顧客名も同じとは限りません。
調査後は、条件を変えずに対象全件を保存します。候補だけを残すと、不適合企業を何社見たのかが分からず、次の検証で都合のよい数字を選びやすくなります。条件を変更したくなったときは、旧条件の結果を残して別の試行として比較します。候補がゼロでも失敗ではありません。その基準では残らなかったという結果が、無理に銘柄を薦めないための判断材料になります。
ここまでの作業は、発掘から一次確認までです。投資判断へ進む場合は、有利子負債、営業キャッシュフロー、増資や希薄化、主要顧客への依存、利益率の持続性などを追加で読みます。事業面の改善が一時的な要因だけで説明される場合は、売上や利益の数字が良くても評価を引き上げる根拠が弱くなります。今回の手法が捉える信号と、財務や株価の検証を順に積み重ねる使い方が適しています。
次の資料で確認する強気・中立・弱気
| 場面 | 次の資料で確認すること | 扱い |
|---|---|---|
| 強気 | 残高増加の理由が確認でき、売上・利益への転換と在庫の消化が進む | 仮説を補強するが、株価上昇の保証にはしない |
| 中立 | 前期末比では増えるが、前年比較や支払条件の影響が残る | 未確認事項を残して継続調査する |
| 弱気 | 残高の増加が続かず、返金・延期や在庫滞留で回復仮説が弱まる | 候補にした理由を見直し、必要なら外す |
以下は企業の業績予想ではなく、次の資料を読むための条件分岐です。強気の場面でも、先行指標が伸びるだけでは完了にしません。売上への転換、採算、現金回収の順に確認します。中立の場面は、好材料と未確認事項が混在している状態です。弱気の場面は、仮説と反対の数字が出た場合で、候補にした理由を見直すために使います。
次回確認では、まず今回と同じ定義の指標を取り出します。開示定義が変わったら連続した成長率をそのまま計算せず、比較可能な範囲を探します。その上で、会社の説明と数字の方向が一致しているかを見ます。説明の言葉が強くても実数の改善が伴っていない場合は、予想として保存し、実績とは分けます。逆に単一の四半期で数値が良くなっても、季節性や前年の低さで説明できるかを確かめます。
更新の際には、今回の表を上書きする前に基準日付きで保存しておきます。どの情報を知った時点で何を判断していたかが残ると、後から発表された好決算を最初から予見していたように書くことを避けられます。将来の評価を調べる場合にも、過去時点で公表済みだった資料だけを使うことが大切です。今回はこの仕組みの説明と小規模な検証までで、過去の株価成績による有効性の実証は行っていません。

まとめと一次資料
私が今回おもしろいと思ったのは、貸借対照表にも、顧客との商売の動きを考える入口があることでした。売上や利益の見出しに目が行きがちですが、その前に受け取ったお金をたどると、別の景色が見えてきます。一方で、芝浦機械のように前期末比と前年同月比で印象が変わる例もあり、増加率一つで飛びつけないこともよく分かりました。
岡本工作機械・芝浦機械・SCREENは、残高増と低調な全社業績が重なる調査候補です。ツガミは既に全社業績が伸びていました。次に知りたいのは、増えた残高がいつ、どのくらいの利益を伴って売上になるのか。その説明がつながれば、今回の数字に感じた期待をもう少し具体的にできます。
この記事で使用した一次資料
- 岡本工作機械・最新決算
- 岡本工作機械・2025年12月末決算
- 岡本工作機械・2025年9月末資料
- 岡本工作機械・2025年6月末資料
- 芝浦機械・最新決算
- 芝浦機械・過去第3四半期
- 芝浦機械・過去第2四半期
- 芝浦機械・過去第1四半期
- SCREEN・最新決算
- SCREEN・2025年12月末資料
- SCREEN・2025年9月末資料
- SCREEN・2025年6月末資料
- ツガミ・最新決算
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