銘柄研究:2025/1/2(木)核融合発電について

核融合発電は、次世代のクリーンエネルギーとして期待されています。以下にそのメリットと課題を説明した上で、世界および日本で核融合発電の実用化に向けた取り組みを行っている企業を紹介します。

目次

核融合発電のメリット

  1. 無尽蔵の燃料
    • 核融合は主に水素の同位体(重水素と三重水素)を燃料とします。これらは海水中に豊富に存在しており、事実上枯渇しない燃料源です。
  2. 高いエネルギー密度
    • 核融合反応は、従来の化石燃料や核分裂に比べて非常に高いエネルギー密度を持ちます。少量の燃料で大量のエネルギーを生産可能です。
  3. クリーンで安全
    • 核融合反応では二酸化炭素を排出せず、地球温暖化への影響がありません。
    • 核分裂発電と異なり、高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しません。また、暴走反応の危険性が極めて低いです。
  4. 環境負荷の低減
    • ウラン採掘や廃棄物処理が不要で、環境への負荷が少ないです。

核融合発電の課題

  1. 技術的な複雑さ
    • 核融合には、非常に高温(1億度以上)を維持し、プラズマを安定して閉じ込める技術が必要です。これを実現するのは非常に困難です。
  2. エネルギーバランスの確保
    • 核融合反応を維持するために消費するエネルギーが、発生するエネルギーを上回らないようにする必要があります。
  3. コストの高さ
    • 現在の核融合関連設備は非常に高価で、大規模な投資が必要です。
    • 実用化後も運用コストが化石燃料や再生可能エネルギーと競争できるかが課題です。
  4. 三重水素の供給問題
    • 核融合反応に必要な三重水素は自然界にほとんど存在せず、人工的に製造する必要があります。その供給体制を整える必要があります。
  5. 実用化までの時間
    • 技術的ブレークスルーやコスト削減にはまだ多くの時間が必要とされています。

世界で核融合発電に取り組む主な企業・プロジェクト

核融合発電は次世代のエネルギー源として注目され、世界中で企業やプロジェクトが実用化に向けて取り組んでいます。以下に主な企業やプロジェクトを挙げます。

国際的なプロジェクト

  1. ITER(国際熱核融合実験炉)
    • 概要: 世界最大の核融合プロジェクト。フランス・カダラッシュに建設中。
    • 参加国: EU、米国、日本、ロシア、中国、インド、韓国。
    • 目標: トカマク型核融合炉で持続的な核融合反応を達成し、エネルギー増倍率(Q値)10を目指す。
    • 現在の進捗: プラズマ生成に向けた段階で、2025年以降に稼働予定。
  2. DEMO(実証炉プロジェクト)
    • 概要: ITERの次のステップとして、核融合発電の実用化に向けた商業実証炉。
    • 参加国: ITERの参加国を中心に構想中。
    • 目標: 核融合による持続的な発電を実現。

アメリカ

  1. Commonwealth Fusion Systems (CFS)
    • 概要: MIT発のスタートアップ。
    • 技術: 高温超伝導磁石を使用したコンパクトなトカマク型核融合炉「SPARC」を開発中。
    • 目標: 2030年までに商業用核融合炉を完成。
  2. Helion Energy
    • 概要: マグネティックインジェクション方式を採用するスタートアップ。
    • 目標: 2028年までに電力供給を開始する予定。
  3. TAE Technologies
    • 概要: プラズマを安定して閉じ込める独自の技術を開発。
    • 目標: 水素-ホウ素燃料を用いた核融合発電を目指す。
  4. General Fusion
    • 概要: カナダ企業でアメリカにも拠点を持つ。
    • 技術: ピストン駆動型磁気閉じ込め方式。
    • 進捗: イギリスに実証プラントを建設中。

ヨーロッパ

  1. Tokamak Energy(イギリス)
    • 概要: スフェリカル型トカマク方式を採用。
    • 目標: 2040年までに商業用核融合炉を実現。
  2. First Light Fusion(イギリス)
    • 技術: 慣性閉じ込め方式。
    • 進捗: 低コストで効率的な核融合を目指し研究を進めている。
  3. EUROfusion
    • 概要: EU主導の核融合研究プログラム。
    • 進捗: ITERやDEMOへの技術提供を行う。

アジア

  1. 中国核融合プロジェクト(EAST: Experimental Advanced Superconducting Tokamak)
    • 概要: 中国が独自開発したトカマク型核融合実験装置。
    • 進捗: プラズマの閉じ込めで世界記録を更新(101秒間の1億2000万度プラズマ維持)。
  2. 韓国核融合エネルギー研究所(KSTAR)
    • 概要: 韓国が開発したトカマク型装置。
    • 進捗: プラズマ閉じ込め技術で成果を上げている。

その他の注目企業

  1. Zap Energy(アメリカ)
    • 技術: ピンチ技術を活用した核融合方式。
  2. Renaissance Fusion(フランス)
    • 技術: 超電導技術を用いた磁場閉じ込め。
  3. HB11 Energy(オーストラリア)
    • 技術: レーザー核融合による水素-ホウ素反応を研究。

これらの企業やプロジェクトが核融合発電の実現に向けて技術開発を進めています。実用化にはまだ課題がありますが、各国が競争しながら技術の進展を加速させています。

日本で核融合発電に取り組む企業・プロジェクト

1. 京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering)

  • 概要: 京都大学発のスタートアップで、核融合炉の周辺機器やシステムの開発を手掛けています。
  • 取り組み: プラズマ加熱装置や燃料サイクルシステム、高温超伝導コイルなど、多岐にわたる機器の開発を進めています。

2. Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)

  • 概要: 核融合科学研究所の研究者らが設立したスタートアップで、ヘリカル型磁場閉じ込め方式の核融合炉の実現を目指しています。
  • 取り組み: 高温超伝導導体の研究開発や、核融合燃料のプラズマへの打ち込み手法、ブランケットに関する研究を進めています。

3. EX-Fusion(エクスフュージョン)

  • 概要: 大阪大学発のスタートアップで、レーザー核融合(慣性閉じ込め方式)の商用化を目指しています。
  • 取り組み: 高速点火方式を採用し、燃料ターゲットの圧縮と点火を高頻度で繰り返す技術の開発を進めています。

4. 三菱重工業

  • 概要: 日本を代表する重工業メーカーで、長年にわたり核融合関連の装置開発に携わっています。
  • 取り組み: 国際熱核融合実験炉(ITER)向けのトロイダル磁場コイルやダイバータの製造を担当し、日本の核融合研究に貢献しています。

5. 東芝エネルギーシステムズ

  • 概要: 東芝グループのエネルギー部門で、核融合関連の装置開発に取り組んでいます。
  • 取り組み: JT-60SAの真空容器の製造や組み立て、ITER向けのトロイダル磁場コイルの製造などを手掛けています。

6. 古河電気工業

  • 概要: 超電導線材の製造で知られる企業で、核融合炉のプラズマ制御に必要な超電導技術を提供しています。
  • 取り組み: ITER向けの超電導ケーブルの供給や、英国の核融合企業への高温超電導線材の供給契約を締結しています。

7. フジクラ

  • 概要: 超電導線材の製造を手掛ける企業で、核融合関連の技術開発に取り組んでいます。
  • 取り組み: 米国の核融合スタートアップへの高温超電導線材の納入や、京都フュージョニアリングとの共同研究を進めています。

8. 住友商事

  • 概要: 総合商社として、エネルギー分野への投資や事業展開を行っています。
  • 取り組み: 米国の核融合スタートアップへの出資や、英国の核融合企業との協業契約を結ぶなど、核融合産業への関与を深めています。

核融合発電はクリーンで持続可能なエネルギー源として非常に大きな可能性を持っていますが、実用化にはまだ多くの技術的・経済的課題を克服する必要があります。世界中で企業や研究機関がしのぎを削り、日本もその一翼を担っています。技術の進歩とコスト削減が進めば、今後数十年でエネルギーの主力となる可能性があります。

フランスで進む国際的な実証実験について(ITER)

フランスのカダラッシュに建設中の**ITER(国際熱核融合実験炉)**は、核融合エネルギーの実用化に向けた国際的な実証実験施設です。ITERの主な目的は、核融合反応を地上で再現し、持続的なエネルギー生産の可能性を検証することです。

主な実験内容:

  1. プラズマ生成と維持:
    • 水素の同位体である重水素と三重水素を高温(約1億度)に加熱し、プラズマ状態を生成します。この高温プラズマを磁場で閉じ込め、安定的に維持する技術の検証が行われます。
  2. エネルギー増倍率(Q値)の測定:
    • 投入したエネルギーに対して、核融合反応で得られるエネルギーの比率(Q値)を測定します。ITERでは、Q値10(投入エネルギーの10倍のエネルギーを生成)を目指しています。
  3. トリチウム燃料の生産と管理:
    • 核融合反応で使用される三重水素(トリチウム)は自然界にほとんど存在しないため、炉内での生成と回収の技術を開発・検証します。
  4. 材料の耐久性評価:
    • 高エネルギー中性子や高温環境にさらされる炉内構造材料の耐久性や劣化特性を評価し、将来の実用炉設計に必要なデータを収集します。
  5. 安全性と制御技術の確立:
    • プラズマの安定制御や異常時のシャットダウン手順など、安全運転に必要な技術の開発と検証を行います。

これらの実験を通じて、ITERは核融合発電の科学的・技術的実現性を示し、将来的な商業用核融合炉の設計と建設に向けた基盤を築くことを目指しています。

なお、**CERN(欧州原子核研究機構)**はスイスとフランスの国境に位置し、主に粒子物理学の研究を行う施設であり、核融合発電の実証実験は行っていません。核融合研究に関しては、ITERが中心的な役割を担っています。






★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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