2026年6月12日、米スペースXが史上最大規模のIPOを実施すると伝わり、宇宙関連株への物色人気が再燃しました。株探の人気テーマランキングでも「宇宙開発関連」は半導体・量子コンピューターに次ぐ上位の常連となっています。本稿では、月面・衛星・デブリ除去といっました宇宙専業の新興ベンチャー(ピュアプレー)と、ロケット・エンジン・防衛で稼ぐ総合重工大手という性格の異なる2つのグループに分け、計6銘柄を一次ソース(株探・IRBANK・各社IR)に基づいて点検します。新興系は赤字段階のため通常のEPS×PERが使えませんので、時価総額・PBR・売上成長で「期待の大きさ」を測り、重工大手は会社予想EPSを起点にPERの感応度分析で理論株価のレンジを描いていきます。
※株価・指標はすべて2026年6月12日終値時点(QPS研究所5595のみ後述の事情によりIRBANK表示が2025年11月)。本稿は事実の整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身でお願いします。
宇宙ピュアプレー3社――「赤字でも買われる」期待値の測り方
ispace・アストロスケール・QPSの3社は、いずれも最終赤字(QPSは今期黒字転換予想)で、PERでの評価が難しい銘柄です。市場は足元の利益ではなく「将来の事業規模」を時価総額として先に織り込んでいます。ここでは時価総額・PBR・売上成長率の3点で、各社が置かれた位置を確認していきます。
ispace(9348)――月面輸送のフロンティア
月への物資輸送を手掛ける月面開発ベンチャーです。売上はまだ数十億円規模で、2027年3月期も赤字拡大予想(先行投資フェーズ)となっています。それでも時価総額は800億円を維持しており、市場は「着陸ミッションの成否」というイベントドリブンで値が大きく振れやすい銘柄です。PBR5.35倍は、純資産の5倍超を将来期待で評価していることを意味します。信用買い残が極端に積み上がっており、需給は重いと言えます。
アストロスケールHD(186A)――宇宙ごみ除去の世界的先駆者
運用を終えた人工衛星のデブリ化防止・除去、衛星の寿命延長サービスを手掛けています。2026年6月12日に通期決算を発表し、売上は前期比+34.7%(予想ベース)と高成長が続く一方、赤字は継続しています。PBR32.65倍はピュアプレーの中でも突出して高く、「世界で数少ないデブリ除去の実証実績」というプレミアムが乗っています。売上が前期24.6億→今期59.4億→来期予80.0億と倍々で伸びる成長率を、市場がどこまで許容し続けるかが評価の分かれ目になります。
QPSホールディングス(464A)――小型SAR衛星で黒字化が視野に
小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・製造と、衛星画像データの販売を手掛けています。今期(2026年5月期)は売上40億円(+49.2%)・最終黒字転換(EPS9.0円)が予想され、3社の中で唯一「PERで語れる」段階に入りつつあります。ただし予想PER311倍は黒字化初年度の小さな利益を割ったもので、過去平均(351.61倍)と比べても依然として超高水準です。利益の絶対額が小さいうちは、PERよりも衛星の打ち上げ基数・受注残の積み上がりを追う局面だと考えられます。
【データの注意点】 株探・IRBANKでは旧「QPS研究所(証券コード5595)」のページに2025年11月時点の情報が残っていますが、同社は持株会社体制へ移行し、現在の上場主体は「QPSホールディングス(464A)」となっています。本稿の数値はすべて現行の464Aベースに統一しています。投資情報を確認する際は、コードの取り違えにご注意ください。
総合重工大手3社――会社予想EPSから理論株価のレンジを描く
三菱重工・IHI・川崎重工は、ロケットや人工衛星、防衛・航空エンジンで実需を持つ「稼げる宇宙関連株」です。宇宙はあくまで事業の一部ですが、防衛費増額・基幹ロケット・安全保障という追い風がそのまま業績に乗ります。ここからは会社予想EPSを起点に、想定PERを動かしたときの理論株価レンジ(感応度分析)で「現在地」を測っていきます。理論株価=会社予想EPS×想定PERで計算した、あくまで現在地を測るための物差しであり、目標株価の提示ではありません。
三菱重工業(7011)――H3ロケットと防衛の中核
会社予想EPS113.1円に対し、現在のPER31.3倍はやや過去平均(34.28倍)を下回る水準です。基幹ロケットH3の打ち上げ、防衛費増額、ガスタービン・原子力の好調が利益を押し上げる構図で、強気の40倍を当てれば理論株価は4,500円台に乗る一方、成長鈍化の25倍なら2,800円台まで下押し余地があります。時価総額12兆円の巨艦で、宇宙単独というより「総合防衛・エネルギー」として評価される銘柄です。
IHI(7013)――航空エンジン首位、イプシロン系の一角
予想ROE25.3%と重工3社で最も高い資本効率を誇り、予想PER15.6倍は過去平均(18.35倍)を下回っています。航空エンジンが回復し、防衛も追い風です。過去平均への回帰なら2,800円台が視野に入ります。一方で、2026年6月2日に子会社IHIエアロスペースが官公庁の競争参加資格停止処分を受けたと開示しており、宇宙・防衛案件への一時的な影響はリスクとして織り込んでおきたいところです。
川崎重工業(7012)――H3・基幹ロケット、フィジカルAIにも顔
基幹ロケットや人工衛星に加え、防衛(潜水艦)、水素、ヒト型ロボット(フィジカルAI)と幅広いテーマを持っています。予想PER21.5倍は過去平均(24.02倍)をやや下回り、増配(34.2円→予40.0円)も続いています。宇宙はポートフォリオの一部ですが、防衛・水素と並んで中長期の成長ドライバーに位置づけられます。
テーマ全体の強気材料と弱気材料
📊 参照ソース(一次データ)
■ 株探(株価・指標・業績):ispace 9348/アストロスケール 186A/QPSHD 464A/三菱重工 7011/IHI 7013/川崎重工 7012
■ IRBANK(財務・時系列):9348/186A/464A/7013/7012
■ 各社公式IR:ispace/アストロスケール/QPSHD/IHI/川崎重工
※数値は2026年6月12日終値時点。SERP・第三者サイトの数値は更新タイミングで実際と異なる場合があります。必ず一次ソースでご確認ください。
【免責】本記事は株探・IRBANK・各社IR等の公開情報を整理したものであり、特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。理論株価のレンジは「会社予想EPS×想定PER」で機械的に試算した感応度分析であり、目標株価や将来の株価を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
📄 参考・出典
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

