株式投資を始めると、必ず出会う3つの言葉があります。PER・PBR・EPSです。証券会社のアプリにも、株探のような情報サイトにも、当たり前のように並んでいます。けれども「なんとなく低いと割安らしい」という曖昧な理解のまま使っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、PER・PBR・EPSの3つを基礎の基礎からていねいに解説し、最後に当研究所のテーマ株記事で実際に使っている「EPS×PERで株価の現在地を測る」考え方までつなげていきます。
この記事は、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。指標の一般的な意味と使い方を解説するものであり、ここで紹介する考え方を使えば必ず利益が出る、というものでもありません。最終的な投資判断はご自身でお願いいたします。
まず結論――3つの指標は「何を測る物差しか」が違う
細かい計算式に入る前に、全体像をつかんでおきましょう。PER・PBR・EPSは、それぞれ測っている対象が異なります。ざっくり言えば、EPSは「会社がどれだけ稼いだか(実力)」、PERは「その稼ぎに対して株価が何倍まで買われているか(人気・期待)」、PBRは「会社の純資産に対して株価が何倍か(資産面の評価)」を表します。役割の違いを最初に押さえておくと、混乱しにくくなります。
EPS(1株当たり利益)――すべての出発点
EPSは「Earnings Per Share」の略で、会社が1年間に稼いだ純利益を、発行している株式の数で割ったものです。たとえば純利益が100億円、発行済株式数が1億株なら、EPSは100円になります。1株を持っているオーナーの取り分が100円ぶんある、というイメージです。
EPSが重要なのは、PERの計算にも使われる「土台」だからです。EPSが伸びていれば会社の実力が上向いている可能性が高く、逆にEPSが減っていれば、たとえ株価が上がっていても中身が伴っていない、という見方ができます。当研究所のテーマ株記事で「会社予想EPS」を必ず載せているのは、株価を語る前に、まず稼ぐ力の推移を確認したいからです。
注意点として、EPSは1回限りの特別利益(資産売却益など)で一時的に膨らむことがあります。継続的な本業の実力を見たいときは、複数年の推移や、特別な要因がないかを合わせて確認するのが安全です。
PER(株価収益率)――「人気」と「期待」を映す鏡
PERは「Price Earnings Ratio」の略で、株価をEPSで割った数字です。「いまの株価が、1株当たり利益の何倍まで買われているか」を示します。たとえば株価1,500円・EPS100円ならPERは15倍。これは「いまの利益水準が続くと仮定すると、株価のもとを取るのに15年かかる」という意味合いにもなります。
一般に、PERが低いほど「割安」、高いほど「割高」とされます。ただし、これは単純すぎる理解です。PERが高い銘柄は、将来の利益成長を市場が期待しているからこそ高く買われている、というケースが多いのです。成長期待の高いグロース株はPER数十倍が当たり前で、成熟した安定企業は10倍前後ということもあります。つまりPERは「割安・割高」だけでなく、「市場がどれだけ期待しているか」を映す鏡でもあります。
ありがちな誤解:「PERが低い=買い」ではありません。PERが低い銘柄には、業績が今後悪化すると見られている、構造的に成長が乏しい、といった理由が隠れていることもあります。低PERの背景に何があるのかを考える習慣が大切です。
PBR(株価純資産倍率)――資産から見た「下値の目安」
PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、株価をBPS(1株当たり純資産)で割った数字です。会社が持っている純資産(資産から負債を引いたもの)に対して、株価が何倍ついているかを表します。PBR1倍とは、株価と1株当たり純資産がちょうど等しい状態。理論上は「会社をいま解散して資産を分配したときの価値」と株価が同じ、という水準で、これを解散価値と呼びます。
PBRが1倍を下回ると、「会社の資産価値より株価が安い」状態となり、割安の目安のひとつとされます。ただし、これも単純ではありません。PBRが低いのは、その資産をうまく利益に変えられていない(=資本効率が低い)と市場に見られているからかもしれません。PBRを見るときは、後述のROE(自己資本利益率)とセットで考えると、より立体的に判断できます。
3つをつなぐ――「EPS×PERで株価の現在地を測る」考え方
ここからが、この記事のいちばん伝えたい部分です。PER・EPSの関係を式変形すると、次の関係が見えてきます。
株価 = EPS × PER
当たり前の式に見えますが、これは投資を考えるうえで非常に強力な道具になります。会社が公表している「来期の予想EPS」に、いくつかの「想定PER」を掛けてみることで、株価が将来どのあたりのレンジに収まりそうかを機械的に試算できるのです。これを感応度分析(センシティビティ分析)と呼びます。
たとえば、来期の会社予想EPSが120円の銘柄があるとします。この会社の過去3年の平均PERが18倍、現在のPERが15倍だったとしましょう。想定PERを動かすと、理論株価は次のように変化します。
このように、ひとつの「目標株価」を断定するのではなく、前提を変えたときのレンジ(幅)として捉えるのがポイントです。現在の株価がこのレンジのどのあたりにあるのかを見れば、「すでに強気シナリオまで織り込んでいるのか」「保守シナリオ近辺で放置されているのか」といった現在地が見えてきます。
大切なのは、これは未来の株価を当てる占いではないということです。あくまで「いまの株価が、どの利益水準・どの評価倍率を前提にしているか」を逆算して確認するための道具です。当研究所のテーマ株記事では、この考え方を各銘柄に当てはめて「現在地」を点検しています。
使うときの注意点――指標は万能ではありません
最後に、3指標を使ううえでの落とし穴をまとめます。第一に、赤字企業や黒字化したばかりの新興企業はEPSが小さい(またはマイナス)ため、PERが極端な数字になったり計算できなかったりします。こうした銘柄は、PERではなく時価総額・売上成長率・PBRなど別の物差しで見る必要があります。第二に、業種によって「標準的なPER・PBR」は大きく異なります。同じ指標でも、銀行・不動産・グロースIT・重厚長大では適正水準がまるで違うため、比較は同業他社との間で行うのが基本です。第三に、会社予想は修正されることがあります。決算ごとに最新の予想EPSへアップデートする姿勢が欠かせません。
まとめ
EPSは会社の稼ぐ力、PERはその稼ぎに対する人気・期待、PBRは資産から見た評価。この3つを役割の違いとともに押さえ、「株価=EPS×PER」という関係から現在地をレンジで測る。これが、テーマやニュースの熱量に流されずに銘柄と向き合うための、地味ですが一生使える土台になります。指標は答えそのものではなく、考えるための入り口です。まずはお手元の気になる銘柄で、EPSの推移とPER・PBRを実際に確認してみることをおすすめします。
📊 指標を実際に調べてみるなら
個別銘柄のEPS・PER・PBR・過去平均PERは、無料の情報サイトで確認できます。当研究所が一次データの確認に使っている代表的なサイトは次の通りです。
■ 株探(かぶたん):株価・予想PER・PBR・業績推移・テーマ登録
■ IRBANK:過去のEPS・BPS・ROEなど長期の財務推移
いずれも数字は更新タイミングで変わるため、最新値は各サイトでご確認ください。
⚠ 免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。将来の値動きや利益を保証するものではありません。
【免責】本記事は株式投資の一般的な指標・手法を解説した情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の考え方を用いても利益を保証するものではなく、投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

