クラウドセキュリティSaaS「HENNGE One」を主力とするHENNGE(4475・東証グロース)は、企業のID管理・メールセキュリティを支えるサブスク型のソフト企業です。株価は1,046円(2026年6月16日)、実績PERは約20倍、PBRは8.89倍と高評価です。本記事では、最新決算、EPS、同業PER比較、適正株価の試算まで踏み込み、割安か割高かを整理します。
HENNGEはどんな会社か
HENNGE(ヘンゲ)は、企業向けのクラウドセキュリティSaaS「HENNGE One」を主力とする会社です。複数のクラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspaceなど)へのシングルサインオン(SSO)やID管理、メールの誤送信防止・アーカイブといったセキュリティ機能を一元的に提供します。月額課金(サブスクリプション)のストック型ビジネスで、契約企業数とユーザー数の積み上げが収益の源泉です。
クラウド利用の拡大とセキュリティ意識の高まりを背景に、解約率の低いSaaSとして安定成長を続けています。ストック収益は継続課金のため業績の予見性が高く、ARR(年間経常収益)の積み上がりが企業価値の中心になります。
- ▶HENNGE One:SSO・ID管理・メールセキュリティのクラウドSaaS
- ▶サブスク型収益:月額課金のストックモデルで業績の予見性が高い
- ▶成長ドライバー:契約企業数・ユーザー数・ARRの積み上げ
最新決算(直近本決算)の要点
2025年9月期本決算(2025年11月7日発表)は、売上高109億24百万円(前期比+30.6%)、営業利益17億93百万円、最終利益13億58百万円、EPS42.4円と高成長・増益を達成しました。2026年9月期会社予想は売上128億34百万円・営業利益20億57百万円・最終利益15億95百万円・EPS51.2円と、引き続き2割超の増収増益を計画しています。
上表のとおり、直近数年の売上・利益の推移を追うと、同社の収益力の方向性が読み取れます。単年度の数字だけでなく、複数年のトレンドと会社予想(最終行)を並べて見ることで、成長が続いているのか、踊り場にあるのか、回復局面なのかを判断しやすくなります。
SaaS企業のバリュエーションをどう見るか
HENNGEのようなSaaS企業は、解約率の低いストック収益が積み上がるため、目先のPERだけでなく「成長率」と「継続性」を加味して評価されます。売上が毎期2〜3割伸び、解約率が低位安定していれば、現在のPERが高くても将来的に利益が追いついて割安化する可能性があります。重要指標はARR(年間経常収益)の成長率と解約率(チャーンレート)です。
一方、SaaSの成長が鈍化したり解約率が上昇したりすると、高い成長プレミアムが剥落して株価調整につながります。クラウドセキュリティ市場は競争も激しく、価格競争や大手プラットフォーマーの機能拡充による圧迫リスクも常に意識する必要があります。
今後の成長見通し
成長ドライバーは、企業のクラウド移行とセキュリティ需要の拡大です。SaaS利用が広がるほどID管理・SSO・メールセキュリティの需要が増え、HENNGE Oneの契約が積み上がります。サブスク型ゆえ、既存顧客の継続とアップセル(上位プランへの移行)も収益を押し上げます。
- ▶企業のクラウド移行に伴うID管理・SSO需要の拡大
- ▶解約率の低いサブスク収益(ARR)の継続的な積み上げ
- ▶既存顧客へのアップセル・クロスセル
- ▶セキュリティ意識の高まりによる市場拡大
同業他社比較と適正株価の試算――割安か割高か
HENNGEのバリュエーションを、SaaS・IT関連の同業他社のPERと比較します。下表は2026年6月16日時点の各社実績PERです。
HENNGEの実績PERは約20.4倍で、SaaS・IT同業3社平均の約17.3倍をやや上回ります。SaaSとしては高成長(売上+30%)かつ解約率が低い点を踏まえると、成長プレミアムが上乗せされた水準といえます。
なお、ここで示した適正株価はあくまで同業平均PERという一つの物差しで機械的に逆算した参考値です。実際の株価は成長率・利益の質・財務健全性・市場全体の地合いなど多くの要因で決まるため、唯一の正解ではありません。割安・割高の判断は、この目安に加えて、その企業固有の成長ストーリーやリスクを総合的に勘案して行うことが重要です。
株価指標と需給
信用倍率は4.68倍とやや買い長です。SaaS株は成長期待で買われやすい一方、グロース市場の地合いや金利動向に株価が左右されやすく、決算でのARR成長率や解約率の数字に敏感に反応します。高PBRゆえ、成長鈍化の兆候が出ると調整幅が大きくなりやすい点に注意が必要です。
投資する際に押さえておきたいリスク
- ▶成長鈍化リスク:売上成長率や解約率が悪化すると成長プレミアムが剥落
- ▶競争激化リスク:クラウドセキュリティ市場の競合・価格競争
- ▶大手プラットフォーマーリスク:Microsoft等の機能拡充による圧迫
- ▶バリュエーションリスク:PBR8.89倍と高水準。地合い悪化で売られやすいです
- ▶市場全体リスク:グロース市場・金利動向に株価が左右される
指標とニュースの読み方――数字に振り回されないために
株価指標は単独でなく、同業他社や過去の自社平均との「比較」で評価することが重要です。PERやPBRの高低は業種特性で大きく異なり、成長期待が強い銘柄ほど指標は高めに出る傾向があります。逆に指標が低い場合も、市場が将来の業績悪化や構造的な問題を織り込んでいる「割安に見えて割安でない」ケースがあるため、なぜその水準なのかという背景まで踏み込むことが大切です。とりわけPERは「株価÷1株利益(EPS)」で計算されるため、EPSが一過性要因で膨らんでいる年度は見かけ上PERが低くなり、逆に特別損失でEPSが落ち込んだ年度はPERが高く見える点に注意が必要です。本記事ではこの歪みを避けるため、必要に応じて会社予想EPSも併用して適正株価を試算しています。
また、決算やニュースで株価が大きく動いた局面では、事実(決算数値・開示内容)と思惑(市場の期待・テーマ性)を切り分けて整理することが欠かせません。短期的な値動きはセンチメントや需給に左右されやすく、ファンダメンタルの変化とは必ずしも一致しません。中長期で投資を検討する場合は、四半期ごとの業績トレンド、受注や利益率の方向性、会社見通しの修正有無、そして本記事で示した同業比較・適正株価の目安といった「事業の実態と相対評価」を継続的に追うことが、ノイズに振り回されないための基本となります。
投資スタンスの整理
HENNGEは、クラウドセキュリティSaaS「HENNGE One」で安定成長を続けるストック型ビジネスで、2025年9月期は売上+30%超の高成長を達成しました。実績PER約20.4倍は同業平均17.3倍をやや上回り、成長プレミアムが乗った水準です。SaaS株の評価はARR成長と解約率次第のため、投資にあたっては四半期ごとにこれらの指標が高水準を維持しているかを確認し、成長前提が崩れていないかを見極めながら、押し目・分散で対応するのが現実的です。
いずれの場合も、投資判断は本記事の情報のみに依拠せず、最新の決算短信・有価証券報告書・適時開示といった一次情報をご自身で確認することが大切です。特に、業績予想の前提(為替・市況・受注見通し)や、配当方針・株主還元の継続性、そして決算で示された会社側のコメントは、数字の背後にある事業の実態を理解するうえで重要な手がかりになります。短期の株価変動に一喜一憂せず、事業の中期的な方向性に基づいて判断することが、結果的にリスクを抑えた投資につながります。
この銘柄を継続ウォッチする際のチェックポイント
最後に、本銘柄を中長期で追いかける場合に、四半期ごとに確認しておきたい実務的なポイントを整理します。決算発表のたびに以下の点をチェックすることで、投資判断の前提が崩れていないかを早めに察知でき、過度な楽観や悲観に流されずに済みます。
- ▶売上高・営業利益の前年同期比成長率が、会社計画のペースを維持できているか
- ▶営業利益率(採算)が改善方向にあるか、悪化していないか
- ▶会社の通期業績予想が上方修正・下方修正されていないか、その理由は何か
- ▶受注残・新規受注の動向や、主力製品の数量・単価のトレンド
- ▶配当・自社株買いなど株主還元方針に変化がないか
まとめ
HENNGE(4475)は、クラウドセキュリティSaaSで高成長を続けるストック型企業で、2025年9月期はEPS42.4円・売上+30%超を達成しました。実績PER約20.4倍は同業平均17.3倍をやや上回り、理論株価約733円に対し現在1,046円は成長プレミアムを織り込んだやや割高圏です。ARRの成長と低い解約率の継続が株価評価のカギであり、SaaSとしての成長持続を見極めながら向き合うのが賢明です。
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⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月16日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

