直動案内機器(LMガイド)で世界首位級のTHK(6481・東証プライム)は、機械の直線運動を支える精密部品のリーディングカンパニーです。株価は7,530円(2026年6月16日)、配当利回りは2.4%超。2025年12月期は特別損失で最終赤字となったものの、2026年12月期はEPS202.6円への回復を計画しています。本記事では、最新決算、EPS、同業PER比較、適正株価の試算まで踏み込み整理します。
THKはどんな会社か
THKは1971年設立、機械の直線運動を高精度かつ滑らかに案内するLMガイド(直動案内機器)を世界で初めて実用化したパイオニアで、この分野で世界トップシェアを握ります。LMガイドは工作機械、産業用ロボット、半導体製造装置、液晶・有機EL製造装置など、精密な位置決めを必要とするあらゆる産業機械に組み込まれる基幹部品です。
近年は、産業機械向けに加えて、自動車(電動パワーステアリングなど)や物流・搬送、医療など用途を広げています。FA・自動化・電動化という構造的トレンドの恩恵を受ける一方、半導体・工作機械の設備投資循環に業績が連動する特徴があります。
- ▶LMガイド(直動案内機器):世界トップシェア。機械の直線運動を案内する基幹部品
- ▶産業機械向け:工作機械・ロボット・半導体/FPD製造装置
- ▶自動車・新事業:電動部品、物流・搬送、医療など用途拡大
最新決算(直近本決算)の要点
2025年12月期本決算(2026年2月発表)は、売上高2,404億円ながら、営業利益144億円に対し最終損益は698億円のマイナス(EPS-618.7円)と大幅赤字に転落しました。これは構造改革に伴う減損など特別損失の計上が主因とみられます。本業の営業利益は黒字を維持しており、2026年12月期会社予想は売上2,760億円・営業利益310億円・最終利益227億円・EPS202.6円と、利益の本格回復を計画しています。
上表のとおり、直近数年の売上・利益の推移を追うと、同社の収益力の方向性が読み取れます。単年度の数字だけでなく、複数年のトレンドと会社予想(最終行)を並べて見ることで、成長が続いているのか、踊り場にあるのか、回復局面なのかを判断しやすくなります。
最終赤字をどう読むか――本業は黒字維持
2025年12月期の最終赤字(EPS-618.7円)は一見ショッキングですが、注目すべきは営業利益が144億円の黒字を維持している点です。最終赤字の主因は構造改革に伴う減損などの特別損失とみられ、これは将来の収益力を高めるための「膿出し」の側面があります。したがって同社の実力を測るには、特別損益を含む最終利益ではなく、本業の営業利益・経常利益の推移を重視すべきです。
2026年12月期に営業利益が144億円→310億円へ倍増、EPSが黒字202.6円へ回復する計画は、構造改革を経た収益力の正常化を示唆します。市場がこの回復シナリオをどこまで信頼するかが、株価の方向感を左右します。
今後の成長見通し
成長ドライバーは、第一に半導体・工作機械の設備投資回復に伴うLMガイド需要、第二にFA・自動化・省人化の構造的トレンド、第三に自動車電動化・物流・医療など新分野の開拓です。世界トップシェアの基幹部品メーカーとして、自動化の進展が長期の追い風になります。
- ▶半導体・工作機械の設備投資回復によるLMガイド需要
- ▶FA・自動化・省人化の構造的トレンド
- ▶自動車電動化・物流搬送・医療など新分野の開拓
- ▶構造改革による収益力の正常化・利益率改善
同業他社比較と適正株価の試算――割安か割高か
THKのバリュエーションを、直動・軸受の同業他社のPERと比較します。なお2025年12月期は特別損失で赤字のため、適正株価は会社予想EPS202.6円(2026年12月期)をベースに試算します。
THKの予想PERは約37倍(株価7,530円 ÷ 予想EPS202.6円)で、直動・軸受の同業3社平均の約22.1倍を上回ります。世界トップシェアという質の高さはあるものの、予想ベースのPERでも同業より高めで、回復期待がやや先行した水準といえます。
なお、ここで示した適正株価はあくまで同業平均PERという一つの物差しで機械的に逆算した参考値です。実際の株価は成長率・利益の質・財務健全性・市場全体の地合いなど多くの要因で決まるため、唯一の正解ではありません。割安・割高の判断は、この目安に加えて、その企業固有の成長ストーリーやリスクを総合的に勘案して行うことが重要です。
株価指標と需給
信用倍率は4.75倍と過度な買い長ではなく、需給は比較的落ち着いています。配当利回り2.4%超は下支え要因ですが、予想PER37倍は同業を上回るため、構造改革の効果や設備投資回復が想定を下回ると株価が調整しやすい点に注意が必要です。本業の営業利益の回復ペースを四半期ごとに確認することが重要です。
投資する際に押さえておきたいリスク
- ▶業績回復の不確実性:構造改革効果・設備投資回復が想定を下回るリスク
- ▶バリュエーションリスク:予想PER37倍と同業を上回る
- ▶設備投資循環リスク:半導体・工作機械投資の減速で需要が振れる
- ▶特別損失の追加リスク:構造改革に伴う追加損失の可能性
- ▶市場全体リスク:景気敏感株として地合いに左右される
指標とニュースの読み方――数字に振り回されないために
株価指標は単独でなく、同業他社や過去の自社平均との「比較」で評価することが重要です。PERやPBRの高低は業種特性で大きく異なり、成長期待が強い銘柄ほど指標は高めに出る傾向があります。逆に指標が低い場合も、市場が将来の業績悪化や構造的な問題を織り込んでいる「割安に見えて割安でない」ケースがあるため、なぜその水準なのかという背景まで踏み込むことが大切です。とりわけPERは「株価÷1株利益(EPS)」で計算されるため、EPSが一過性要因で膨らんでいる年度は見かけ上PERが低くなり、逆に特別損失でEPSが落ち込んだ年度はPERが高く見える点に注意が必要です。本記事ではこの歪みを避けるため、必要に応じて会社予想EPSも併用して適正株価を試算しています。
また、決算やニュースで株価が大きく動いた局面では、事実(決算数値・開示内容)と思惑(市場の期待・テーマ性)を切り分けて整理することが欠かせません。短期的な値動きはセンチメントや需給に左右されやすく、ファンダメンタルの変化とは必ずしも一致しません。中長期で投資を検討する場合は、四半期ごとの業績トレンド、受注や利益率の方向性、会社見通しの修正有無、そして本記事で示した同業比較・適正株価の目安といった「事業の実態と相対評価」を継続的に追うことが、ノイズに振り回されないための基本となります。
投資スタンスの整理
THKは、LMガイドで世界トップシェアを握る直動案内機器のリーディングカンパニーで、FA・自動化の構造的トレンドを取り込む基幹部品メーカーです。2025年12月期は特別損失で最終赤字となりましたが、本業の営業利益は黒字を維持し、2026年12月期はEPS202.6円への回復を計画しています。予想PER約37倍は同業平均22.1倍を上回り、回復・シェアプレミアムが乗った水準です。投資にあたっては、特別損益に惑わされず本業の営業利益の回復ペースを確認し、回復シナリオの確度を見極める姿勢が重要です。
いずれの場合も、投資判断は本記事の情報のみに依拠せず、最新の決算短信・有価証券報告書・適時開示といった一次情報をご自身で確認することが大切です。特に、業績予想の前提(為替・市況・受注見通し)や、配当方針・株主還元の継続性、そして決算で示された会社側のコメントは、数字の背後にある事業の実態を理解するうえで重要な手がかりになります。短期の株価変動に一喜一憂せず、事業の中期的な方向性に基づいて判断することが、結果的にリスクを抑えた投資につながります。
この銘柄を継続ウォッチする際のチェックポイント
最後に、本銘柄を中長期で追いかける場合に、四半期ごとに確認しておきたい実務的なポイントを整理します。決算発表のたびに以下の点をチェックすることで、投資判断の前提が崩れていないかを早めに察知でき、過度な楽観や悲観に流されずに済みます。
- ▶売上高・営業利益の前年同期比成長率が、会社計画のペースを維持できているか
- ▶営業利益率(採算)が改善方向にあるか、悪化していないか
- ▶会社の通期業績予想が上方修正・下方修正されていないか、その理由は何か
- ▶受注残・新規受注の動向や、主力製品の数量・単価のトレンド
- ▶配当・自社株買いなど株主還元方針に変化がないか
まとめ
THK(6481)は、LMガイドで世界トップシェアを握る精密部品のリーディングカンパニーです。2025年12月期は特別損失で最終赤字(EPS-618.7円)となったものの本業は黒字を維持し、2026年12月期はEPS202.6円への回復を計画。予想PER約37倍は同業平均22.1倍を上回り、理論株価約4,477円に対し現在7,530円はやや割高圏です。本業の営業利益の回復ペースと構造改革の効果を見極めながら向き合う、回復期待の優良シェア企業と整理できます。
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⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月16日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

