半導体の設計・検証・テストを支えるイノテック(9880・東証スタンダード)は、2026年3月期に営業利益・最終利益が大幅増となり、配当も大きく引き上げた「割安・増配の半導体関連株」です。株価は3,955円(2026年6月16日終値)、時価総額は約542億円、実績PERは約9.9倍と市場平均を下回る水準にあります。本記事では、最新決算の要点、EPSをはじめとする指標、同業他社との比較、そして同業平均PERから逆算した理論株価(適正株価)まで踏み込み、現在の株価が割安なのか割高なのかを整理します。
イノテックはどんな会社か
イノテックは1976年設立、半導体・電子機器の「つくる工程」を幅広く支えるエレクトロニクス関連企業です。単なる商社ではなく、半導体の設計(EDAツール・半導体IPの提供)から検証、テスト(LSIテスタなどの評価・計測機器)、さらには組込みソフトやシステム開発、自社製品までを手がける点に特徴があります。最先端ツールを国内顧客へ橋渡しする商社機能と、自社で付加価値を加えるソリューション機能を併せ持つビジネスモデルです。
顧客は半導体メーカー、電子機器メーカー、車載・産業機器メーカーなど多岐にわたります。半導体が微細化・高機能化するほど設計検証やテスト工程の重要性と工数が増えるため、AI・データセンター向けや車載向け半導体の高度化は、同社の関連需要を押し上げる構造的な追い風となります。
- ▶設計・検証ソリューション:EDAツール、半導体IP、設計検証環境などを提供
- ▶テスト・計測:LSIテスタや評価・計測関連の機器・サービス
- ▶組込み・システム/自社製品:組込みソフト開発、システム構築、自社開発製品
最新決算(2026年3月期 本決算)の要点
2026年5月14日に発表された2026年3月期本決算は、売上高467億37百万円(前期比+11.3%)、営業利益31億08百万円(同+64.7%)、経常利益29億12百万円、最終利益41億11百万円、EPS(1株利益)320.2円となりました。前期(2025年3月期)のEPS89.5円から大幅に増加しています。配当も前期の年70円から年125円へ大幅増配。会社は2027年3月期について、売上高500億円(+7.0%)、営業利益37億円(+19.0%)、経常利益37億円(+27.1%)、最終利益48億50百万円(+18.0%)、EPS399.9円、配当130円を計画しています。
利益の「質」をどう読むか
2026年3月期は最終利益(41億11百万円)が営業利益(31億08百万円)を上回りました。通常は営業外費用や税金を差し引くため最終利益は営業利益を下回るので、この逆転は投資有価証券の売却益や繰延税金資産の計上といった特別・一過性の要因を含む可能性を示唆します。したがって「巡航ベースの稼ぐ力」を見るには、最終利益よりも営業利益・経常利益の推移を重視するのが妥当です。その観点でも営業利益は18.9億円(2025.03)→31.1億円(2026.03)→会社予想37.0億円(2027.03)と明確な増益トレンドにあり、本業の収益力は着実に高まっています。増配の原資が一過性利益に偏っていないかは、今後の配当性向と営業キャッシュフローで継続確認したいポイントです。
今後の成長見通し
成長ドライバーは、第一にAI・データセンター・車載といった分野で進む半導体の高度化です。半導体が高機能化・微細化するほど、設計検証やテストの工数・難易度は上がり、関連ツールや計測・テストサービスの需要は構造的に増えます。第二に、国内半導体投資の活発化です。国策としての半導体産業強化や設備投資の流れは、設計・テスト工程を支えるイノテックにとって追い風となり得ます。第三に、商社機能だけに依存せず、ソリューション・自社製品の付加価値を高めることによる採算改善余地です。会社は2027年3月期も2桁の営業増益を計画しており、半導体需要回復を取り込む構図が続きます。
- ▶AI・データセンター・車載半導体の高度化に伴う設計検証・テスト需要の拡大
- ▶国内半導体投資の活発化を背景とした関連ツール・計測機器需要
- ▶商社機能に加えソリューション・自社製品で付加価値を高める採算改善
- ▶利益成長に連動した増配方針(70円→125円→130円計画)による株主還元
同業他社比較と適正株価の試算――割安か割高か
イノテックのバリュエーションを評価するため、半導体の設計・検証・テスト・組込み関連の同業他社のPER(株価収益率)と比較します。下表は2026年6月16日時点の各社実績PERです。なお半導体テスター最大手のアドバンテスト(6857)は規模・収益性が別格のため参考扱いとし、設計・検証・組込みの近い規模の3社で平均を算出します。
イノテックの実績PERは約9.9倍(株価3,955円 ÷ EPS320.2円)で、同業3社(図研・アバール・Tホライゾン)の平均PER約14.9倍を下回る水準にあります。ここから、同業平均PERを当てはめた理論株価(適正株価)を試算すると次のようになります。
株価指標と需給
需給面では、発行済株式数が約1,370万株と少なく、出来高次第で値動きがやや軽くなりやすい点に留意が必要です。半導体関連はテーマ性で資金が集まりやすい一方、市況の変化や地合いの悪化局面では値幅が出やすい性質があります。実績PER10倍前後・配当利回り3%超という指標は下値の支えになりやすいものの、半導体投資サイクルの転換には敏感です。
投資する際に押さえておきたいリスク
- ▶半導体市況リスク:半導体投資サイクルの変調で設計検証・テスト需要が減速する可能性
- ▶利益の変動リスク:2026年3月期の最終益には特別要因が含まれるとみられ、経常利益ベースの実力確認が必要
- ▶為替・仕入リスク:海外ツールの取り扱いがあり、為替や仕入条件の変動が採算に影響
- ▶顧客集中・受注変動リスク:特定顧客・特定分野の投資動向に業績が左右されやすい
- ▶流動性リスク:発行済株式数が少なく値動きが軽くなりやすい
投資スタンスの整理
イノテックは、半導体の設計・検証・テストを支える事業基盤を持ち、2026年3月期に営業・最終利益が大幅増、配当も70円から125円へ大幅増配となった「割安・増配の半導体関連株」です。実績PER約9.9倍は同業平均14.9倍を下回り、実績EPSベースの理論株価約4,770円に対して現在株価3,955円は約17%の割安と評価できます。成長株でありながらバリュー・インカムの性格も併せ持つ点が魅力です。一方で、半導体投資サイクルに業績が左右されやすく、2026年3月期の最終益には特別要因が含まれる点は割り引いて評価する必要があります。投資にあたっては、経常利益ベースの実力値、四半期ごとの受注・市況動向、増配方針の継続性を確認しながら、指標の割安感を活かした押し目での対応が現実的でしょう。
「設計から評価まで」を横断する事業ポートフォリオの強み
イノテックの事業は、最先端の設計・検証ツール(EDA)や半導体IPを扱う領域、LSIテスタなどの評価・計測を担うテスト領域、そして組込み・システム開発や自社製品の領域に分かれます。半導体の開発工程は「設計→検証→試作→評価・テスト→量産」と進みますが、同社はこのうち川上の設計検証から川中の評価・テストまでを横断的に支えられる点が強みです。大手半導体製造装置メーカーのように巨額の設備投資を要するビジネスではなく、知見とツールで付加価値を出すモデルのため、相対的に資産効率が高く、割安なPERと高めの配当利回りが両立しやすい構造になっています。
特に、AI向けの先端ロジック半導体やHBM(広帯域メモリ)、車載向けのパワー半導体などは、回路が複雑化し検証・テストの難易度が上がっています。設計検証ツールの高度化ニーズと、出荷前テストの厳格化ニーズは、いずれもイノテックが提供するソリューションの追い風です。半導体の「量」だけでなく「質(高度化・微細化)」が進むほど同社の付加価値が効きやすいという点は、単純な半導体市況連動とは異なる中期的な成長余地として注目できます。
まとめ
イノテック(9880)は、半導体の設計・検証・テスト工程を支えるソリューション企業で、2026年3月期に営業利益が前期比+64.7%、配当も125円へ大幅増配しました。実績EPS320.2円・実績PER約9.9倍は同業平均14.9倍を下回り、理論株価約4,770円に対し現在株価3,955円は約17%の割安圏にあります。半導体投資サイクルの影響と最終益に含まれる特別要因には注意が必要ですが、AI・車載・データセンター向け半導体の高度化という構造的追い風を取り込める割安・高配当の銘柄として、ファンダメンタルと株主還元の両面から注目できる存在です。
この銘柄を実際に取引するなら、手数料や取扱商品・ツールを比較して自分に合った証券口座を選びましょう。ネット証券は口座開設・維持費は無料で、少額から始められます。
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月16日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

