QPS研究所(464A)の理論株価は?小型SAR衛星36機の黒字化シナリオ

QPS研究所(464A)の株価分析|億り人研究所

小型SAR(合成開口レーダー)衛星を手がけるQPS研究所(464A・東証グロース/旧コード5595)は、日本の「宇宙専業(ピュアプレイ)」銘柄の代表格として、スペースX上場期待に沸く宇宙テーマの中でも特に値動きの大きい一社です。本記事は当ブログの宇宙関連株シリーズ(①総論・②米国・③日本マップ)の個別編として、QPS研究所の事業の核心である「36機の衛星コンステレーション」構想と、投資家が最も気にする「いつ・どう黒字化するのか」「株価はどこまで評価され得るのか」を、公開情報をもとに株価視点で整理します。

※本記事は研究・整理を目的とした内容であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。理論株価は前提を置いた試算として扱います。

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💡 この記事の要点(先に結論)
  • QPS研究所(464A・東証グロース)は九州大学発の小型SAR衛星ベンチャー。「夜でも雲があっても地表を見られます」レーダー衛星を、最終的に36機のコンステレーションで運用し「準リアルタイム観測網」を作るのが事業の核。
  • 現在9機を運用中。会社計画では2028年5月末までに24機、2030年に36機へ拡大し、平均10分間隔の観測サービスを目指す。
  • 足元は衛星量産の先行投資フェーズ。2026年5月期は会社見込みで営業赤字(約△12億円)ですが、宇宙戦略基金などの補助金(営業外)で経常・最終は黒字の見込み。「本業の黒字化」と「会計上の黒字」は分けて見る必要があります。
  • 株価視点では、衛星機数の積み上がり=将来の観測キャパシティ=売上の上限が直結する珍しい銘柄。打ち上げ成功・機数増がカタリストになりやすい一方、PER(予)200倍超と期待先行の割高評価でもあります。
  • 本記事は研究目的の整理であり、売買推奨ではありません。理論株価は「前提を置いた試算」として扱います。
目次

QPS研究所とは――九州大学発の「世界トップレベル」SAR衛星ベンチャー

QPS研究所は、九州大学の人工衛星研究の流れを汲み、福岡を拠点に設立された宇宙ベンチャーです。手がけるのは「QPS-SAR」と呼ばれる小型のレーダー衛星。一般的な光学衛星(カメラ)が夜や雲があると地表を見られないのに対し、SAR衛星は電波を使うため夜間でも悪天候でも地表を観測できますのが決定的な違いです。

同社の特徴は、従来は大型・高コストだったSAR衛星を、九州大学の技術と地元中小企業の協力によって小型・軽量・低コストに作り上げた点にあります。これにより、多数の衛星を打ち上げて網の目のように地球を覆う「コンステレーション」という発想が現実的になりました。

QPS研究所(464A)の基本データ(2026年6月時点)
項目内容
上場市場東証グロース(旧コード5595。持株会社化で「QPSホールディングス」、証券コード464A)
事業小型SAR(合成開口レーダー)衛星「QPS-SAR」の開発・製造・運用、画像データ販売
時価総額約1,200〜1,270億円(株価変動で日々変動)
株価約2,200円前後(2026/6/17終値2,202円)
PER(会社予想)約250倍前後(利益が小さく高PER)
PBR約8倍/BPS約270円
配当無配(成長投資を優先)
主要株主大西俊輔(社長)約8.5%、スカパーJSAT約13.2%

事業の核心――「36機コンステレーション」で何が起きるのか

QPSの株価を理解する上で最も重要なのが、衛星の機数がそのまま事業規模の上限になりますという構造です。会社の最終目標は、12の軌道に各3機、計36機の衛星を配置し、世界中のほぼどこでも10分以内、特定地域なら平均10分に1回観測できる「準リアルタイム観測網」を作ること。これが実現すれば、災害把握・安全保障・インフラ監視・経済活動のモニタリングなど、「いま起きていること」をほぼリアルタイムで捉えるサービスが可能になります。

QPS-SARコンステレーション拡大ロードマップ(会社計画)
時期運用機数到達する観測能力株価視点での意味
2026年6月時点9機特定地域を1日複数回観測商用運用の初期段階。実績作りのフェーズ
2028年5月末まで24機観測頻度が大幅に向上売上が機数に比例して伸びる加速局面の入口
2030年36機(12軌道×3機)世界中ほぼ10分以内/特定地域を平均10分に1回「準リアルタイム観測網」完成。本業黒字化の本命シナリオ

現在は9機を運用中で、会社計画では2028年5月末までに24機、2030年に36機へ拡大する方針です(出典:PR TIMES 2026年6月、JAXA、会社IR)。株価視点では、「打ち上げ成功」「運用機数の増加」が業績の先行指標であり、同時に株価のカタリストになります。逆に、打ち上げ失敗や計画遅延は将来の売上シナリオを直接削るため、最大のリスク要因でもあります。

🛰️ QPSの「技術的な強み」――なぜ注目されるのか
  • 小型・軽量・低コスト:従来トラック大の大型SAR衛星を、九州大学の技術と地元中小企業の協力で小型化。1機あたりの製造コストを抑え、多数機の量産=コンステレーション構築を現実的にしました。
  • 高分解能:小型ながら高精細な画像取得が可能で、世界トップレベルとされます。光学衛星と違いです夜間・悪天候でも観測できますのがSARの本質的価値。
  • 準リアルタイム性:36機構成なら平均10分に1回の高頻度観測が可能になり、災害・安全保障・インフラ監視・経済活動把握など「いま起きていること」を捉える用途に直結します。
  • 地上局の国際連携:ノルウェーのKSAT(Kongsberg Satellite Services)と地上局契約を結び、グローバルなデータ受信網を確保しています。

業績と「黒字化」の実態――補助金を除いて本業を見る

投資家が最も知りたい「いつ黒字になるのか」を、会計の中身まで踏み込んで整理します。結論から言うと、QPSの黒字は「補助金込みの黒字」であり、本業(営業損益)はまだ赤字フェーズにある、という点を正しく押さえる必要があります。

QPS研究所の業績推移(単体/会社予想ベース)
区分売上高営業利益経常利益最終利益
2024年5月期 実績約16.5億円黒字(小幅)黒字黒字
2025年5月期 実績26.81億円(+62%)0.85億円(△75%)△2.1億円赤字(減損計上)
2026年5月期 会社予想40億円△12億円(赤字)6億円5億円

2025年5月期は売上26.81億円(前期比+62%)と伸びた一方、営業利益は0.85億円(前期比△75%)まで縮小し、経常は△2.1億円、最終も減損計上で赤字でした。続く2026年5月期は、衛星量産の先行投資で営業損益が△12億円の赤字になる一方、宇宙戦略基金などの補助金が営業外に乗ることで経常6億円・最終5億円の黒字を会社は見込んでいます(出典:会社業績予想、IRBANK)。

🔍 「営業赤字なのに最終黒字」の正体(ここが最重要)
  • 本業(営業損益):衛星を量産し機数を増やす局面のため、製造・打ち上げ・人件費が先行し、2026年5月期は営業赤字(約△12億円)見込み。当初△22億円予想から△12億円へ上方修正された(2026年6月)。
  • 営業外で黒字化:宇宙戦略基金や各種補助金が営業外収益に乗るため、経常6億円・最終5億円の黒字見込みへ。つまり「政策マネーが赤字の本業を黒字に見せています」構図。
  • 株価視点の含意:QPSの黒字は「補助金込みの黒字」。投資家が見るべきは、画像データ販売(本業の売上)が機数増とともに伸び、補助金に頼らずに営業黒字へ移行できるか。その分岐点は、コンステレーションが24機規模に近づく2028年前後が一つの目安。

つまり「黒字化した」という言葉だけを受け取ると評価を誤ります。本業の営業損益が補助金抜きで黒字に転じるのは、機数が積み上がりデータ販売が拡大する数年先という時間軸で見るのが妥当です。投資判断としては、四半期ごとに「画像データ販売の売上が機数増に伴って伸びているか」「営業損益の赤字幅が縮小しているか」を追うのが現実的です。

最新の会社計画と数値目標――「正式な中計」はなく機数ロードマップと通期予想で読む

まず前提として、QPSホールディングス(464A)は黒田精工の「Vision2030」のように最終年度の売上・利益率・ROEまで数値で示した正式な中期経営計画は開示していません。同社が公式に示しているのは、(1)衛星コンステレーションの整備ロードマップ(機数目標)、(2)単年度の通期業績予想、(3)宇宙戦略基金・防衛省案件などの受注・採択額の3つです。以下では「会社が公式に出している数字」と「筆者の推測」を厳密に分け、まず公式の数値を整理します。

区分会社公表の数値目標時期
衛星機数(ロードマップ)現在9機運用 → 2028年5月期に24機 → 36機コンステ完成36機は2030年代前半(2031年5月期目処)
通期業績予想(2026年5月期・連結)売上40億円/営業△12億円/経常6億円/純利益5億円/EPS8.97円2026年5月期
宇宙戦略基金衛星コンステ構築・加速化のため採択
防衛省「衛星コンステ整備・運営等事業」他社と共同落札(報道ベースで5年・最大697億円規模)2025〜
資金調達2026年3月に約152億円を調達(増資)し36機構築の資金を手当て2026年3月
図表:QPSが公式に開示している主な数値目標・計画(2026年6月時点、会社開示・適時開示・報道ベース)

ポイントは、同社の数値目標は「売上計画」より先に「機数計画」で語られます点です。SAR衛星は1機あたりの撮像枚数・販売可能データ量がほぼ機数に比例するため、機数ロードマップ(24機→36機)が事実上の中期売上ドライバーになります。会社側も「稼ぎ頭は24機が揃う2029年度以降」という趣旨の説明をしており、足元の通期予想(売上40億円)はあくまで途中段階の数字です。

なお2026年5月期予想は「営業△12億円(営業赤字)」でありながら「経常6億円・純利益5億円(黒字)」です。これは本業(衛星運用)の損益はまだ赤字で、宇宙戦略基金などの補助金・助成金が営業外で計上されて最終黒字になります構造であり、「黒字=本業が儲かっています」ではない点に注意が必要です。

メディア報道まとめ――日経・専門メディアは何を伝えているか

QPSをめぐる主要メディアの報道を、出典URL付きで要点のみ整理します(各記事本文は著作権に配慮し要約にとどめています。詳細はリンク先をご確認ください)。

主なメディア報道(出典URL)

報道を総合すると、市場の注目は「防衛省・宇宙戦略基金という国策マネーが、36機構築の資金リスク(『死の谷』)をどこまで埋めるか」に集約されます。2026年3月の約152億円調達と防衛省の大型案件は機数積み上げの蓋然性を高める材料と受け止められた一方、PERは200倍超と「36機フル稼働」を相当織り込んだ水準まで買われている、と両面で語られています。

資金調達の状況――新株予約権と第三者割当増資で量産費用を確保

QPS研究所は、衛星量産・打ち上げの先行投資を続けるため、上場後も継続的にエクイティ(株式性)での資金調達を行っています。利益が小さい現状では銀行借入よりも増資・新株予約権が中心で、その分だけ既存株主には希薄化のコストがかかります。主な調達は次のとおりです。

時期手段調達額(概算)割当先・備考
2025年1月新株予約権(第21回ほか)約80億円SMBC日興証券を割当先に発行。順次行使され資本に組み入れ
2026年3月第三者割当による新株式発行約152億円スカパーJSAT・ミツウロコグループHD等の事業会社3社。発行730万株・1株2,088円
図表:QPS研究所の主な資金調達(各社IR・適時開示・報道より筆者整理)

2026年3月の152億円は、25〜38号機の衛星製造・打ち上げ費用(宇宙戦略基金の補助対象外部分)に充当する方針が示されています。事業会社を割当先にしたことで、単なる資金確保だけでなく事業連携(通信・データ販売)も意識した調達といえます。一方で、量産が続く間は追加調達の可能性が残り、「機数が積み上がるたびに希薄化リスクがついて回る」点は株価を見るうえで外せません。

資金調達に関する主な出典

打ち上げ実績と主要案件――防衛省の大型契約と宇宙戦略基金

QPS研究所の事業は「小型SAR衛星を打ち上げ、その観測データ(画像・ソリューション)を売る」モデルです。現状の売上はまだ小さいものの、政府系の大型案件が将来の売上の柱として控えています。代表的なものを整理します。

案件・実績内容・目的規模感
SAR衛星の運用機数小型SAR衛星を順次打ち上げ。準リアルタイム観測網を構築現在約9機 → 2028年24機 → 2031年36機が目標
防衛省向け衛星データ提供安全保障目的の継続的なSAR画像・解析データ提供5年間で最大約697億円規模と報じられます
宇宙戦略基金(政府)SAR衛星コンステの開発・量産を後押しする国の基金に採択黒字化を支える補助金の柱
図表:QPSの主な打ち上げ・受注案件(IR・報道より筆者整理。金額は報道ベースの概算)

注意したいのは、足元の最終黒字が宇宙戦略基金などの補助金に支えられた「会計上の黒字」である点です。本業(営業損益)はまだ赤字で、防衛省案件や民需の積み上がりで「補助金に頼らない黒字」へ移行できるかが、株価の中長期の評価を分けます。

リスク――「機数が積み上がるまで」の不確実性

QPSは夢のある事業ですが、その夢が数字になるまでには複数の不確実性があります。とくに、コンステレーション完成までは「先行投資が先、回収は後」という構造のため、株価は期待と失望に大きく揺れやすい点に注意が必要です。

QPS研究所の主なリスク(株価の下振れ要因)
リスク内容株価へのインパクト
打ち上げ失敗・衛星不具合量産・打ち上げが事業の前提。失敗は機数計画を直撃大(計画遅延でシナリオが崩れる)
資金調達・希薄化量産投資のため増資・新株予約権の可能性中〜大(1株価値の希薄化)
補助金依存黒字が宇宙戦略基金等の補助金頼み。政策変更に弱いです中(本業黒字化が遅れると顕在化)
高バリュエーションPER(予)200倍超。期待先行で値動きが荒いです大(テーマ剥落時の下落幅が大きい)
競合海外のSAR勢(フィンランドICEYE、米Capella等)との競争中(価格・データ品質競争)

会社四季報で見るQPS研究所――防衛省697億円案件と「経常黒字拡大」の黒字化シナリオ

以下は会社四季報(2026年3集・夏号/2026年6月17日発売)で公表された業績予想・財務データをもとに、編集部が独自に整理・要約したものです。数値やコメントをそのまま転載したものではなく、防衛省案件を背景にした黒字化の道筋を読み解く参考として作成しています。実際の数値・前提は必ず四季報や同社IRなど一次情報でご確認ください。

ここからはQPS研究所の株価をどう捉えるかを整理します。同社は経常段階ではすでに黒字で、防衛省の大型案件を追い風に利益拡大が見込まれています。まず会社四季報の業績予想と財務をもとに「黒字化の中身と前提」「PERから見た株価水準」を確認し、続いて36機コンステレーション体制を達成した場合の理論株価へとつなげていきます。

① 業績推移――売上急拡大で営業赤字縮小、経常黒字が拡大

決算期売上高営業損益経常損益1株損益
2025年5月期26.8億円+0.85億円-2.1億円-47.5円
2026年5月期 予40.0億円-12.0億円+6.0億円+9.0円
2027年5月期 予100.0億円-5.0億円+45.0億円+64.5円

四季報予想では、防衛省向け衛星群事業の貢献が本格化することで2027年5月期に売上が約2.5倍へ急伸します。衛星の運用機数増加に伴う償却費や人件費の膨張で営業段階は赤字が続くものの、その赤字幅は縮小し、営業外の補助金収入を加えた経常利益は大きく拡大する見通しです。営業赤字と経常黒字が同居する構図はSynspectiveと同様で、補助金に頼らない営業段階の黒字化に進めるかが次の焦点になります。

② 黒字化の条件――36機コンステレーションと防衛省697億円案件の売上化

QPS研究所の収益拡大は、(1) 小型SAR衛星を36機まで増やす「コンステレーション」を構築し、観測頻度を高めて画像データ販売を伸ばすこと、(2) 防衛省から受注した5年・最大697億円規模の大型案件を着実に売上へ変えること、の2点が軸になります。四季報も2027年5月期に経常45億円の黒字を見込んでおり、機数の積み上がりと防衛案件のフル寄与が計画どおり進むかどうかが、利益成長の実現性を左右します。

  • 事業の核心:小型SAR衛星36機コンステレーションによる高頻度の地球観測データ販売
  • 大型案件:防衛省から5年・最大697億円規模の大型契約を受注(衛星群事業の中核)
  • 資金調達:スカパーJSATなど3社への第三者割当増資で152億円を調達し衛星群構築に充当

③ 株価指標の目安――予想PER242倍→34倍の急低下をどう見るか

指標四季報ベースの数値コメント
予想PER(26.5期)約242倍黒字化初年度で利益が小さく指標は極端に高い
予想PER(27.5期)約34倍利益急拡大を織り込めば現実的な水準まで低下
自己資本比率約64.6%増資で資本を厚くしており財務は比較的健全
時価総額約1,216億円防衛案件と機数拡大への期待が織り込まれた評価

2026年5月期は黒字化初年度で利益が小さいため予想PERは約242倍と極端に高いが、利益が急拡大する2027年5月期には約34倍まで低下します。つまり株価は「来期以降の利益成長が実現する」ことを前提に評価されています。逆に言えば、衛星の打ち上げ遅延や防衛案件の売上化の遅れ、追加調達による希薄化が起きれば、この高いPERが修正されるリスクがある点には注意したいところです。

💡 ポイント

QPS研究所は経常黒字をすでに確保し、防衛省の大型案件を背景に利益拡大が見込まれる宇宙株。投資の際は、(1) 衛星の打ち上げ・運用機数の積み上がり、(2) 防衛省697億円案件の売上化ペース、(3) 補助金を除いた営業段階の黒字化時期、の3点を四半期決算で追うのが現実的な評価軸になります。

⚠ 注意

本セクションの業績整理・黒字化シナリオは四季報の公表値をもとにした編集部独自の試算であり、将来の達成を保証するものではありません。経常黒字は営業外の補助金に支えられている面があり、打ち上げ失敗・案件遅延・希薄化などのリスクを含みます。投資判断の際は必ず最新のIR資料・四季報など一次情報をご確認ください。

もし36機体制を達成できたら――理論株価(ターゲットプライス)の試算

ここまでは「黒字化を慎重に見る」視点で整理してきましたが、投資家として気になるのは「仮に36機体制が完成し、観測サービスが軌道に乗ったら株価はどこまで評価され得るのか」という上値の目安でしょう。QPSは利益がごく小さくPER評価が難しいため、ここではPSR(株価売上高倍率)を使い、将来の売上規模から理論時価総額を逆算します。あくまで「フル達成」を前提にした試算であり、予想でも推奨でもありません。

もし36機体制を達成できたら――PSR(株価売上高倍率)による理論株価の試算
前提シナリオ想定売上(36機体制・年)想定PSR理論時価総額想定株価(試算)現在(約1,250億円)との比較
保守ケース100億円8倍約800億円約1,390円約△36%
中心ケース150億円10倍約1,500億円約2,600円約+20%
強気ケース200億円12倍約2,400億円約4,170円約+92%

36機体制での年間売上を100〜200億円、SAR系成長企業のPSRを8〜12倍と仮定すると、理論時価総額はおおむね800〜2,400億円(中心1,500億円前後)。現在の時価総額(約1,250億円)は、すでに中心ケースに近い水準まで将来の成長を織り込んでいますとも読めます。裏を返せば、計画どおり機数と売上が積み上がれば現値は正当化され得る一方、遅延すれば割高感が顕在化しやすい、という評価です。

⚠️ 試算にあたっての注意

この理論株価は「2030年に36機体制を達成し、観測サービスが想定どおり立ち上がった場合」という最も楽観的な前提に立ったPSRベースの試算であり、業績予想でも目標株価の推奨でもありません。QPSは利益がごく小さくPERでの評価が難しいため、売上倍率(PSR)で上限イメージを描いています。打ち上げ遅延・資金調達による希薄化・補助金依存からの脱却の遅れなど、前提が一つ崩れるだけで結論は大きく変わります。あくまで「うまくいった場合の天井イメージ」として捉え、四半期ごとの機数増・売上進捗で前提を見直すことが前提です。本試算は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

中計(機数ロードマップ)どおり進んだ場合の予想EPS・適正株価(推測)

ここからは会社の公式目標ではなく、筆者が公開情報をもとに置いた仮定による試算です。前提が変われば結論も大きく変わるため、「36機体制をフル達成できた場合の上限イメージ」として捉えてください。QPSは現在ほぼ無配・本業赤字でPER評価が機能しないため、「将来売上 × 想定利益率」と「PSR(株価売上倍率)」の二本立てで考えます。

置いた仮定:(1) 36機フル稼働時の年間売上を150〜200億円と想定(24機で約100億円規模、36機で1.5倍程度、SAR画像+ソリューション収入を含む)。(2) 規模拡大後の営業利益率を18〜25%(固定費型で機数が一定を超えると利益率が急改善する想定)。(3) 増資後の希薄化を織り込み発行済株式数を概算約5,500万株

シナリオ想定売上想定営業利益率想定純利益予想EPS(概算)
保守150億円18%約20億円約36円
中心175億円22%約30億円約55円
強気200億円25%約40億円約73円
図表:36機フル稼働時の予想EPS試算(筆者試算・推測。税負担等は簡易化)

中心EPS55円前後に、グロース市場の高成長宇宙企業として一定のプレミアムを乗せたPER25〜40倍を当てると、理論株価はおおむね1,400〜2,200円。PSRで見ると別レンジが出ます。現在株価(2,170円前後・時価約1,227億円)は、この「36機フル達成シナリオの中心〜強気」を既に織り込んだ水準と読めます。

評価軸前提理論株価レンジ現値2,170円との比較
予想EPS×PER中心EPS55円 × PER25〜40倍約1,400〜2,200円約−35%〜+1%
PSR36機時売上175億円 × PSR6〜10倍 ÷ 5,500万株約1,900〜3,200円約−12%〜+47%
中心的な目線両アプローチの重なる水準約2,000円前後約−8%(やや割高)
図表:36機達成を前提とした理論株価レンジと現値(2026/6/18終値 約2,170円)との比較(筆者試算・推測)
⚠️ 試算にあたっての注意
上記は「2030年代前半に36機をフル稼働でき、想定どおりの利益率を確保できたら」という最も楽観的な前提の数字です。実際には、(1)打ち上げ遅延・衛星故障による機数未達、(2)補助金依存からの脱却(本業黒字化)の遅れ、(3)増資による一段の希薄化、で前提は容易に崩れます。とりわけ現状は本業(営業損益)が赤字で、「機数が積み上がるまでの数年間をどう乗り切るか」が最大の不確実性です。本試算は売買推奨ではなく、四半期ごとの機数進捗・受注で前提を見直すことが前提です。

まとめ――「機数の積み上がり」を四半期で追う銘柄

QPS研究所(464A)は、九州大学発の技術を武器に、最終的に36機の小型SAR衛星コンステレーションで「準リアルタイム観測網」を作ることを目指す宇宙専業ベンチャーです。現在9機を運用し、2028年に24機、2030年に36機という明確なロードマップを持つ点が、株価の手がかりを読みやすくしています。

一方で、足元は量産の先行投資で営業赤字フェーズにあり、最終黒字は宇宙戦略基金など補助金に支えられた「会計上の黒字」である点は冷静に見る必要があります。PER(予)200倍超という高い評価も、期待先行ゆえの値動きの荒さにつながります。

したがって現実的な向き合い方は、「テーマで先回りする」のではなく、打ち上げ成功・運用機数の増加・画像データ販売の伸び・営業赤字幅の縮小という4点が四半期ごとに前進しているかを確認しながら評価を更新していく、というスタンスになります。機数が積み上がるほど、QPSの「準リアルタイム観測網」は夢から見える現実へと近づき、株価評価の土台が固まっていきます。

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📄 参考・出典

  • 株探(kabutan.jp)――株価・業績・財務データ
  • QPSホールディングス/QPS研究所 公式サイト・IR(i-qps.net)
  • QPS研究所 2026年5月期 第3四半期決算短信・業績予想修正のお知らせ(適時開示)
  • 株探(かぶたん)/Yahoo!ファイナンス|QPS研究所(464A)の株価・業績
  • IRBANK|QPS HD(464A)決算・財務データの時系列
  • PR TIMES/JAXA|QPS-SARコンステレーション(36機)に関する発表

⚠ 免責事項

本記事は公開情報および会社開示資料をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。本文中の「目標」「計画」は会社が公表した値であり、業績予想でも実績でもありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月)のものです。ドル建ての数値は1ドル=160円で換算しています。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

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