Synspective(290A)は黒字化できるか?SAR衛星StriXと防衛省落札・理論株価を検証

Synspective(290A)の株価分析|億り人研究所

小型SAR衛星「StriX」を運用するSynspective(290A・東証グロース)は、2025年12月に上場したばかりの日本の宇宙ベンチャーです。QPS研究所と並ぶ「日本のSAR衛星の双璧」でありながら、データ解析・ソリューション事業に軸足を置く点で性格が異なります。本記事は当ブログの宇宙関連株シリーズの個別編として、Synspectiveの事業構造、2025年末の防衛省案件落札がもたらした変化、そして「いつ・どう黒字化するのか」「株価はどこまで評価され得るのか」を、公開情報をもとに株価視点で整理します。

※本記事は研究・整理を目的とした内容であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。理論株価は前提を置いた試算として扱います。

📋 併せて読みたい
💡 この記事の要点(先に結論)
  • Synspective(290A・東証グロース)は、小型SAR衛星「StriX」シリーズのコンステレーションを運用する宇宙ベンチャー。2025年12月に上場したばかりの新興銘柄。
  • QPS研究所と同じ「夜でも雲があっても見える」SAR衛星のプレイヤーですが、Synspectiveはデータ解析・ソリューション事業に強みを置く点が特徴。
  • 2025年12月に防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」を落札。受注残高が一気に前期末比+196億円拡大し、業績の土台が一変しました。
  • 会社は10機前後の運用機数で黒字化が想定とし、2028年以降に30機以上のコンステ構築を目指す。2026年12月期は売上63.5億円(前期比約2.7倍)・経常黒字化(補助金込み)を見込む。
  • ただし営業損益は赤字拡大(2026年12月期予△54.7億円)で、黒字は補助金・受注に支えられた段階。本業の自立黒字はその先。
  • 本記事は研究目的の整理であり、売買推奨ではありません。理論株価は前提を置いた試算として扱います。
目次

Synspectiveとは――「StriX」コンステレーションとソリューション事業

Synspectiveは、JAXAなどの研究プロジェクトの流れを汲んで設立された宇宙ベンチャーで、小型SAR衛星「StriX」シリーズを自社開発しています。SAR衛星は電波を使うため、夜間でも雲があっても地表を観測できますのが光学衛星にない強み。Synspectiveはこの衛星を多数機並べたコンステレーションを運用し、取得したデータを解析してソリューションとして提供することに力を入れています。

事業は大きく「画像データ販売」と「ソリューション(解析・コンサルティング)」に分かれます。単に画像を売るのではなく、インフラの変位監視・防災・経済活動の把握といっました「意思決定に使える情報」に加工して付加価値を高めるのがSynspectiveの方向性です。

Synspective(290A)の基本データ(2026年6月時点)
項目内容
上場市場東証グロース(コード290A・情報・通信業)。2025年12月19日上場
事業小型SAR衛星「StriX」の開発・製造・運用、画像データ販売、データ解析ソリューション
時価総額約1,700〜1,760億円
PER(会社予想)約67倍
PBR約4.9倍/BPS約272円
配当無配(成長投資を優先)
財務自己資本比率76.2%(2025/12)、現金約245億円、有利子負債約94億円
🛰️ Synspectiveの特徴――「データ解析・ソリューション」志向
  • StriXシリーズ:自社開発の小型SAR衛星。年産12機の製造体制を確立し、量産によるコスト低減を図る。
  • ソリューション重視:単なる画像販売にとどまらず、取得データを解析して「意思決定に使える情報」に変えるソリューション事業に注力。インフラ変位監視・防災・経済分析など用途が広いです。
  • 即応性:オンボードデータ処理や衛星間通信を活用し、観測から情報提供までの時間短縮を狙う。
  • QPSとの違い:QPSが「高頻度観測網(36機)」の構築を前面に出すのに対し、Synspectiveは「30機+データ解析力」で付加価値の高いソリューションを売る方向性。両社は競合かつ日本のSAR双璧。

業績を一変させた「防衛省案件の落札」

Synspectiveを語る上で外せないのが、2025年12月に発表された防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」の落札です。これは新興ベンチャーにとって、将来の売上が「見える化」する決定的な出来事でした。

🛡️ 防衛省案件の落札――業績を変えた最大のニュース
  • 2025年12月、防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」を落札。SAR衛星のデータ販売・ソリューション提供を担う。
  • この受注により、受注残高が前期末比+196億円と急拡大。新興ベンチャーにとって「将来の売上が見える化」した意味は極めて大きいです。
  • 防衛調達は単年で終わらない複数年の継続発注になりやすく、赤字期の資金と売上を中期で支える土台になります。
  • 株価視点では、防衛需要は景気サイクルに左右されにくい安定的な収益源。安全保障マネー(政府の宇宙関連予算は令和8年度で初の1兆円超)の追い風を直接受ける立ち位置。

コンステレーション計画――「10機前後で黒字化」という強み

株価視点で重要なのは、Synspectiveが「10機前後の運用機数で黒字化が想定される」と決算資料で明言している点です。現在すでに9機を運用しており、黒字化ラインに近づいています。これはQPS(36機で完成)と比べて、相対的に早期の損益分岐到達を示唆します。会社は年産12機の製造体制を確立し、2028年以降に30機以上のコンステレーション構築を目指す方針です。

Synspectiveのコンステレーション拡大計画(会社方針)
段階運用機数ポイント
2026年6月時点9機(StriX)黒字化想定ラインの「10機前後」に接近
黒字化想定10機前後会社が「この機数下で黒字化想定」と明言
2028年以降30機以上年産12機の製造体制を確立し、早期構築を目指す

業績と「黒字化」の実態――補助金を除いて本業を見る

「2026年12月期に黒字化」という見出しだけを受け取ると、評価を誤ります。中身を見ると、QPSと同じく本業(営業損益)はむしろ赤字が拡大し、黒字は補助金など営業外の要因で実現する構造だからです。

Synspectiveの業績推移(12月決算・会社予想ベース)
区分売上高営業利益経常利益最終利益
2023年12月期13.9億円△18.0億円△19.5億円△15.2億円
2024年12月期23.2億円△30.7億円△35.9億円△35.9億円
2025年12月期23.8億円△41.4億円△10.7億円△3.7億円
2026年12月期 会社予想63.5億円(+167%)△54.7億円30.1億円(黒転)26.2億円(黒転)

2026年12月期の会社予想は、売上63.5億円(前期比約2.7倍)と急拡大する一方、営業損益は△54.7億円と赤字が拡大、経常は30.1億円・最終は26.2億円の黒字へ転換する計画です(出典:会社決算資料、IRBANK)。経常・最終の黒字は、宇宙戦略基金などの補助金が営業外に乗ることで実現するもので、いわば「政策マネー込みの黒字」です。

🔍 「営業赤字なのに経常・最終は黒字」のからくり
  • 本業(営業損益):2026年12月期は衛星量産と打ち上げの先行投資で△54.7億円と赤字が拡大する見込み。売上は63.5億円へ急増しますが、コスト先行が続く。
  • 営業外で黒字化:宇宙戦略基金など補助金が営業外収益に乗ることで、経常30.1億円・最終26.2億円の黒字へ転換する計画(EPS約19.9円)。QPSと同じ「補助金黒字」の構造。
  • 10機前後で黒字化想定:会社は決算資料で「10機前後の運用機数下で黒字化が想定される」と説明。現在9機運用済みで、この水準に近づいている点が他社にない強み。
  • 株価視点の含意:補助金と防衛受注が赤字の本業を支える間に、画像データ販売・ソリューション売上を積み上げ、営業損益ベースでの自立黒字へ移行できるかが中期の最大の論点。

なお財務面では、2025年12月期に営業キャッシュフローがプラスに転換(約+16.6億円)し、自己資本比率も76.2%と高水準です。上場とこれまでの資金調達で現金約245億円を確保しており、当面の量産投資を賄う体力はある一方、設備投資が巨額(2025年12月期△116億円)でフリーCFは大幅マイナスが続いている点は留意が必要です。

最新の会社計画と数値目標――防衛省案件と「黒字化」の前提を整理する

Synspective(290A)も、最終年度の売上・利益率まで数値で固定した正式な中期経営計画は開示していません。ただしQPSと比べると、決算説明資料のなかで「黒字化に必要な運用機数」「コンステレーション拡大計画」「受注残」といっました中期の前提となる数値をかなり具体的に開示していますのが特徴です。まず会社が公式に示している数値を整理します。

区分会社公表の数値・目標時期・出典
通期業績予想(2026年12月期・連結)売上63.5億円(+167.3%)/営業△54.7億円/経常30.1億円(黒転)/純利益26.2億円(黒転)/EPS19.9円2026年12月期会社予想
黒字化の目安「10機前後の運用機数で黒字化」を想定(その後機数増で海外需要拡大)決算説明資料
コンステレーション計画現在9機 → 年産12機ペース → 2028年以降に30機超体制会社方針
防衛省案件「衛星コンステレーション整備・運営等事業」を落札、受注残が前期末比+196億円に急拡大2025年12月/2026年2月説明会
業界環境防衛省の衛星コンステ予算2,832億円(国産衛星活用)が国会で可決2025年
図表:Synspectiveが公式に開示している主な数値・計画(2026年6月時点、会社開示・決算説明資料ベース)

重要なのは、2026年12月期に見込む「経常黒字化(経常30.1億円)」が防衛省案件の納入と補助金計上による黒字である点です。営業損益は△54.7億円と依然として大幅な営業赤字であり、本業(衛星データ・ソリューション販売)だけで黒字になったわけではありません。会社自身も「営業黒字化の時期は後ろ倒しの可能性」に言及しており、「10機前後で黒字化」というのは本業ベースでの中期目線です。

株価視点でのポイントは、「防衛省という固い需要で当面の売上・受注残は埋まる一方、本当の評価軸は『その後の海外ソブリン(各国政府)需要を取れるか』」に移ることです。受注残+196億円は、向こう数年の売上の下支えとして市場に好感されています。

メディア報道まとめ――日経系・専門メディアは何を伝えているか

Synspectiveをめぐる主要メディアの報道を、出典URL付きで要点のみ整理します(本文は著作権に配慮し要約にとどめます。詳細はリンク先をご確認ください)。

主なメディア報道(出典URL)

報道の論点は、「防衛省案件で黒字化の道筋は付いました。問題はその持続性と、営業(本業)黒字がいつ来るか」に集約されます。受注残の積み上がりと営業CFの黒字転換(2025年12月期に+16.6億円)はポジティブ材料として、営業損益の赤字継続と先行投資(年産12機への設備投資)はリスク材料として、両論で語られています。

資金調達の状況――MS型新株予約権による大型調達と希薄化懸念

Synspective(シンスペクティブ)も、StriX衛星の量産・打ち上げに向けて先行投資が続くフェーズにあり、上場後にエクイティでの大型調達を行っています。とりわけ2025年の調達は「行使価額修正条項付(いわゆるMSワラント型)」の新株予約権を含み、市場では希薄化・需給悪化への懸念から株価が大きく動きました。

時期手段規模感内容・市場の反応
2025年7月第三者割当・行使価額修正条項付第5回新株予約権(停止指定条項付)最大約240億円の調達計画と報道発表翌日は希薄化・需給悪化を懸念して株価が急落
2025年8月〜10月行使価額修正条項付新株予約権の発行・行使(第5回は取得・消却し再設計)2025年8月13日発行ぶんが10月に大量行使。筆頭株主の異動を伴う再編も
図表:Synspectiveの主な資金調達(適時開示・四季報オンライン等の報道より筆者整理)

MSワラント型は、株価に応じて行使価額が修正されるため、発行体は機動的に資金を得られる一方、株価が下がるほど発行株数が増えて希薄化が進みやすいという性質があります。Synspectiveは2025年7月の発表直後に株価が急落しており、資金調達手段そのものが株価の波乱要因になり得ることを示しました。先行投資フェーズである以上、今後も追加調達の可能性は残ります。

打ち上げ実績と主要案件――StriX量産と防衛コンステ需要

Synspectiveの事業は、自社開発の小型SAR衛星「StriX」を量産・打ち上げ、観測データと解析ソリューションを売るモデルです。足元では機数を着実に増やしており、防衛・安全保障分野の需要が将来の柱として意識されています。

案件・実績内容・目的規模感
StriX衛星の打ち上げ自社小型SAR衛星を順次打ち上げ。10機前後で黒字化を目指す2025年に10機目を打ち上げ。30機超体制を2028年以降に想定
防衛・安全保障向け需要政府の衛星コンステレーション関連予算を取り込む政府の関連予算は数千億円規模(防衛省の衛星コンステ予算)
受注残高官民の継続案件で将来売上を積み上げ受注残は積み上がり傾向(直近で+196億円規模の増加)
図表:Synspectiveの主な打ち上げ・受注案件(IR・報道より筆者整理。金額は概算)

Synspectiveは「10機前後で黒字化」を一つの目安として示しており、QPS同様、機数の積み上がりが黒字化シナリオの鍵です。防衛需要という追い風がある一方、調達に伴う希薄化が株価の重しになりやすい構図は意識しておきたいところです。

リスク――「自立黒字」までの距離

Synspectiveは防衛受注という強い追い風を得ましたが、本業の営業損益が補助金抜きで黒字化するまでには、なお距離があります。上場直後で需給が不安定な点も含め、株価は期待と失望に振れやすい局面です。

Synspectiveの主なリスク(株価の下振れ要因)
リスク内容インパクト
営業赤字の継続本業の営業損益は赤字拡大局面。自立黒字化が遅れる可能性
補助金・防衛依存黒字が補助金と防衛受注に依存。政策・予算変更に弱いです中〜大
希薄化量産投資で増資・調達の可能性。上場直後で需給も不安定中〜大
打ち上げ・量産リスク年産12機体制の量産・打ち上げが計画どおり進むか
競合QPS研究所や海外SAR勢(ICEYE・Capella等)との競争
高バリュエーション上場直後の人気で値動きが荒く、テーマ剥落に弱い

会社四季報で見るSynspective――宇宙株で唯一「経常黒字化」が見える黒字化シナリオ

以下は会社四季報(2026年3集・夏号/2026年6月17日発売)で公表された業績予想・財務データをもとに、編集部が独自に整理・要約したものです。数値やコメントをそのまま転載したものではなく、防衛省案件を背景にした黒字化の道筋を読み解く参考として作成しています。実際の数値・前提は必ず四季報や同社IRなど一次情報でご確認ください。

ここからはSynspectiveの株価をどう捉えるかを整理します。同社は宇宙ベンチャーのなかでは黒字化への距離が最も近く、四季報予想ベースでは経常段階で黒字に転じる姿が描かれています。まず会社四季報の業績予想と財務をもとに「黒字化の中身と前提」「PER・PBRから見た資産価値」を確認し、続いて30機体制・防衛需要が軌道に乗った場合の理論株価へとつなげていきます。

① 業績推移――売上急拡大と「経常黒字化」が同時に進む局面

決算期売上高営業損益経常損益1株損益
2024年12月期23.2億円-30.7億円-35.9億円-42.8円
2025年12月期23.8億円-41.4億円-10.7億円-3.2円
2026年12月期 予63.5億円-54.5億円+30.0億円+19.7円
2027年12月期 予140.0億円-20.0億円+65.0億円+42.4円

四季報予想では、防衛省向け衛星群事業が期央から本格化することで2026年12月期に売上が約2.7倍へ急伸します。営業段階では運用衛星の増加に伴う償却費や人件費の先行で赤字が続くものの、営業外の補助金収入が大きく、経常利益では黒字に転じる見通しです。営業赤字と経常黒字が同居する点が同社の業績の特徴で、補助金を除いた本業ベースの黒字化がいつ実現するかが次の焦点になります。

② 黒字化の条件――防衛省案件のフル寄与と「営業段階の黒字化」が次の関門

Synspectiveの黒字化は、(1) 防衛省向け衛星群事業の売上がフルに寄与し、画像データ販売・ソリューションが積み上がること、(2) StriX衛星のコンステレーション(同社は10機前後で本業黒字化が見えると説明)が拡大し、衛星1機あたりの稼働効率が上がること、の2点が軸になります。四季報予想の経常黒字は営業外の補助金に支えられた面が大きく、補助金に頼らない「営業段階の黒字化」へ進めるかどうかが、持続的な収益力を測るうえでの本丸となります。

  • 売上ドライバー:防衛省向け衛星群事業の本格寄与、画像データ販売・ソリューション事業の拡大
  • 供給能力:自社10機目のStriX衛星を打ち上げ、ロケット枠は衛星26機分の打ち上げ機会を確保
  • 政府支援:宇宙戦略基金 第2期にも採択、2032年3月末までに上限37.6億円の支援金受領へ

③ 株価指標の目安――予想PER64倍・実績PBR4.7倍をどう見るか

指標四季報ベースの数値コメント
予想PER(26.12期)約64倍経常黒字化を織り込みつつも期待先行の高水準
予想PER(27.12期)約30倍利益成長が続けば徐々に正当化される水準へ
1株純資産(BPS)約285.8円宇宙株のなかでは純資産の積み上がりが厚い
実績PBR/自己資本比率約4.7倍/約74%財務は健全で、希薄化耐性は相対的に高い

同社は宇宙株のなかでは予想PERが算出できる数少ない銘柄で、2026年12月期の予想PERは約64倍、利益が伸びる2027年12月期は約30倍まで低下します。自己資本比率が約74%と財務が健全な点も、増資による希薄化リスクを抱えやすい同業のなかでは相対的な強みになります。一方で、黒字化が補助金に支えられている段階であることを踏まえると、PERの高さは「本業の黒字化が続くか」を見極めながら評価する必要があります。

💡 ポイント

Synspectiveは宇宙ベンチャーのなかで「経常黒字化が最も近い」銘柄。投資の際は、(1) 防衛省案件の売上寄与、(2) 補助金を除いた営業段階の黒字化時期、(3) StriX衛星の打ち上げ・運用機数の拡大、の3点を四半期決算で追うのが現実的な評価軸になります。

⚠ 注意

本セクションの業績整理・黒字化シナリオは四季報の公表値をもとにした編集部独自の試算であり、将来の達成を保証するものではありません。経常黒字は営業外の補助金に支えられている面があり、補助金の変動や打ち上げ失敗、希薄化などのリスクを含みます。投資判断の際は必ず最新のIR資料・四季報など一次情報をご確認ください。

もし30機体制・防衛需要が軌道に乗ったら――理論株価の試算

仮に30機体制が完成し、防衛・民需の売上が積み上がったら株価はどこまで評価され得るのか。Synspectiveも利益が補助金依存でPER評価が難しいため、ここではPSR(株価売上高倍率)で将来の売上規模から理論時価総額を逆算します。あくまで「フル達成」を前提にした試算で、予想でも推奨でもありません。

もし30機体制・防衛需要が軌道に乗ったら――PSRによる理論株価の試算
前提シナリオ想定売上(年)想定PSR理論時価総額想定株価(試算)現在(約1,750億円)との比較
保守ケース100億円10倍約1,000億円約740円約△43%
中心ケース150億円12倍約1,800億円約1,330円概ね現値並み
強気ケース250億円14倍約3,500億円約2,580円約+100%

30機体制での年間売上を100〜250億円、SAR系成長企業のPSRを10〜14倍と仮定すると、理論時価総額はおおむね1,000〜3,500億円(中心1,800億円前後)。現在の時価総額(約1,750億円)は、すでに中心ケースに近い水準まで将来を織り込んでいますとも読めます。防衛受注残の積み上がりと売上の実現が伴えば現値は正当化され得る一方、営業赤字の長期化や希薄化があれば割高感が顕在化しやすい、という評価です。

⚠️ 試算にあたっての注意

この理論株価は「30機体制と防衛需要が想定どおり立ち上がった場合」という楽観前提に立ったPSR(株価売上高倍率)ベースの試算であり、業績予想でも目標株価の推奨でもありません。Synspectiveは利益が補助金依存で、PERでの評価が難しいため売上倍率で上限イメージを描いています。営業赤字の長期化・希薄化・防衛予算の変動など、前提が一つ崩れれば結論は大きく変わります。あくまで「うまくいった場合の天井イメージ」として捉え、四半期ごとに受注残・売上・営業赤字幅の進捗で前提を見直すことが前提です。本試算は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

中計どおり進んだ場合の予想EPS・適正株価(推測)

ここからは会社の公式目標ではなく、筆者が公開情報をもとに置いた仮定による試算です。Synspectiveは2026年12月期に黒字転換予想(EPS19.9円)が出ているため、QPSより一歩進んで「黒字化後の利益水準」をベースに考えられます。ただしこの黒字は補助金込みのため、「本業ベースの正常利益」に引き直して評価します。

置いた仮定:(1) 30機超体制が整う2028〜2030年の年間売上を200〜300億円と想定(防衛+海外ソブリン+ソリューション)。(2) スケール後の純利益率を12〜18%(補助金を除いた本業ベースで黒字が定着する想定)。(3) 発行済株式数は概算約1.4億株(BPS272円・株主資本376億円から逆算)。

シナリオ想定売上想定純利益率想定純利益予想EPS(概算)
保守200億円12%約24億円約17円
中心250億円15%約38億円約27円
強気300億円18%約54億円約39円
図表:30機超体制(2028〜2030年)の予想EPS試算(筆者試算・推測。補助金除く本業ベース)

中心EPS27円前後に、黒字定着後の成長企業としてPER25〜40倍を当てると、理論株価はおおむね675〜1,560円(中心1,000円前後)。現在株価(1,290円前後・時価約1,782億円)は会社予想EPS19.9円に対しPER67倍と、すでに「30機体制での利益拡大」を相当織り込んだ水準です。PSRで見ると別レンジになります。

評価軸前提理論株価レンジ現値1,290円との比較
予想EPS×PER中心EPS28円 × PER25〜40倍約675〜1,090円約−48%〜−15%
PSR30機時売上250億円 × PSR5〜8倍 ÷ 1.4億株約890〜1,430円約−31%〜+11%
中心的な目線両アプローチの重なる水準約1,000円前後約−22%(現値が上回る)
図表:30機超体制を前提とした理論株価レンジと現値(2026/6/18終値 約1,290円)との比較(筆者試算・推測)
⚠️ 試算にあたっての注意
上記は「2028〜2030年に30機超体制を整え、補助金を除いた本業で安定的に黒字を出せたら」という前提の数字です。実際には、(1)防衛省案件の一巡後に海外ソブリン需要を取り切れるか、(2)営業(本業)黒字化が想定どおり進むか(会社も後ろ倒しの可能性に言及)、(3)年産12機への設備投資負担と追加調達による希薄化、で前提は容易に崩れます。とりわけ「経常・最終の黒字=補助金込み」である点と「営業損益はまだ赤字」である点の区別が重要です。本試算は売買推奨ではなく、四半期ごとの受注残・営業損益・機数で前提を見直すことが前提です。

まとめ――「受注残と営業赤字幅」を四半期で追う銘柄

Synspective(290A)は、StriX衛星コンステレーションとデータ解析ソリューションを武器に、防衛省案件の落札で将来の売上の土台を一気に固めた宇宙専業ベンチャーです。「10機前後で黒字化想定」という相対的に早い損益分岐ラインと、受注残+196億円という実需が、QPSにない強みになっています。

一方で、本業の営業損益は赤字拡大局面にあり、経常・最終の黒字は補助金と防衛受注に支えられた段階です。上場直後の高いバリュエーションと需給の不安定さも、値動きの荒さにつながります。

したがって現実的な向き合い方は、受注残高の積み上がり・画像データ/ソリューション売上の伸び・営業赤字幅の縮小・運用機数の増加という4点が四半期ごとに前進しているかを確認しながら評価を更新していく、というスタンスになります。これらが揃うほど、Synspectiveの黒字は「補助金頼み」から「本業の黒字」へと質を変え、株価評価の土台が固まっていきます。

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📄 参考・出典

  • 株探(kabutan.jp)――株価・業績・財務データ
  • Synspective 公式サイト・IR(synspective.com)/会社概要・ニュース
  • Synspective 2025年12月期 通期決算説明資料、防衛省案件落札のお知らせ(適時開示)
  • 株探/Yahoo!ファイナンス|Synspective(290A)の株価・業績
  • IRBANK|Synspective(290A)決算・財務データの時系列
  • 防衛省「衛星コンステレーション整備・運営等事業」関連の公表資料

⚠ 免責事項

本記事は公開情報および会社開示資料をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。本文中の「目標」「計画」「予想」は会社が公表した値であり、実績を保証するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月)のものです。ドル建ての数値は1ドル=160円で換算しています。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

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