【核融合発電とは?】「地上の太陽」の全体像とITER・NIFなど海外開発動向・関連銘柄

【核融合発電とは|億り人研究所
核融合発電(フュージョンエネルギー)とは何か?
太陽が輝くのと同じ原理で膨大なエネルギーを生み出す「地上の太陽」。CO2も高レベル放射性廃棄物も出さない究極のクリーンエネルギーとして、ITER(国際協力)や米英のスタートアップが実用化を競っています。AI時代の電力需要急増を背景に、関連銘柄を株価視点で整理します。
目次

1. 核融合発電とは何か――「核分裂」との違い

核融合発電とは、軽い原子核(主に水素の仲間である重水素・三重水素)どうしを超高温・高圧で融合させ、その際に生まれる莫大なエネルギーで発電する技術です。太陽が光り輝いているのと同じ原理であることから「地上の太陽」とも呼ばれます。

現在の原子力発電(核分裂)が、ウランなど重い原子核を「分裂」させてエネルギーを得るのに対し、核融合は逆に軽い原子核を「融合」させます。この違いが、核融合の大きなメリットを生みます。

核融合発電の主なメリット:
・燃料となる重水素は海水から取り出せ、事実上ほぼ無尽蔵。
・発電時にCO2を排出しないクリーンエネルギー。
・暴走(メルトダウン)が原理的に起こらず、安全性が高いです。
・高レベル放射性廃棄物が核分裂に比べて格段に少ありません。
一方で、1億度を超える超高温のプラズマを安定して閉じ込める必要があるなど、技術的なハードルは極めて高く、「実用化は常に30年先」と長く言われてきました。しかし近年、超電導磁石やAI制御技術の進歩、そして民間スタートアップの参入で、実現時期が現実的に語られ始めています。

2. なぜ今、核融合が注目されるのか――AI時代の電力需要

核融合が再び脚光を浴びる最大の理由が、AI・データセンターによる電力需要の爆発的な増加です。生成AIの普及で世界の電力消費は急増しており、CO2を出さずに大量の安定電源を確保できる核融合は、脱炭素と電力確保を同時に満たす「切り札」として期待されています。

実際、海外ではマイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業が、将来の電力源として核融合スタートアップと電力購入契約を結ぶ動きも出ており、AI企業が核融合開発の有力な資金の出し手になりつつあります。

3. 主要な方式――トカマク型・レーザー型など

核融合の実現方式は一つではありません。代表的なものを整理します。

方式仕組み代表的なプロジェクト
トカマク型(磁場閉じ込め)ドーナツ状の強力な磁場でプラズマを閉じ込めるITER(国際)、JT-60SA(日本)、BEST(中国)、STEP(英国)
レーザー型(慣性閉じ込め)強力なレーザーで燃料を一気に圧縮・加熱NIF(米国)
ヘリカル型ねじれた磁場でプラズマを閉じ込めるLHD(日本)など

現状、国際協力による本命とされるのが「トカマク型」で、後述のITERがその代表です。一方、米国では「レーザー型」のNIFが点火という重要な節目を達成し、注目を集めました。

4. 海外の開発動向――ITER・NIF・STEP

ITER(イーター)――史上最大の国際核融合実験炉

ITERは、日本・欧州連合(EU)・米国・ロシア・中国・韓国・インドの7極が参加する史上最大の核融合の国際協力プロジェクトです。2007年に計画が始まり、現在フランス南部で巨大な実験炉を建設中。内閣府やQST(量子科学技術研究開発機構)の資料によれば、2035年の運転開始が予定されています。日本も中核メンバーとして超電導コイルなど重要機器を担っています。

NIF(米国)――レーザー核融合で「点火」を達成

米国のローレンス・リバモア国立研究所のNIF(国立点火施設)は、レーザー型核融合で「点火(投入したエネルギーを上回るエネルギーを取り出すこと)」を達成しました。文部科学省の資料によれば、投入2.05MJに対し出力3.15MJを得たとされ、核融合研究における科学的な節目を越えた成果として世界的に報じられました。

STEP(英国)――2040年代の商業運転を目指す

英国は「STEP(Spherical Tokamak for Energy Production)」という核融合発電プログラムを進めており、2040年代の商業運転開始を目指しています。このSTEP関連のサプライチェーンには、後述する三菱重工など日本企業も参画しています。

中国「BEST」――ITERに先行するDT運転を狙う

経済産業省の「次世代革新炉開発ロードマップ(案)」などによれば、中国はITERに先立って重水素・三重水素(DT)運転を行うトカマク型実験炉「BEST」を2023年に建設開始しています。豊富な国家資金を背景に、中国の核融合開発も加速しています。

5. 日本の国策と開発体制

日本も核融合を国家戦略として推進しています。政府は核融合(フュージョンエネルギー)を成長分野と位置づけ、研究開発を加速。経済産業省の次世代革新炉開発のロードマップでは、2050年代の発電実証を見据えた工程が描かれています。

国内では、量子科学技術研究開発機構(QST)が大型装置「JT-60SA」を運用するほか、京都大学発のスタートアップ「Kyoto Fusioneering」が独自の実証装置「FAST」構想を進めるなど、官民双方で開発が進んでいます。

重要な前提:核融合発電は依然として「実証段階」であり、商業発電は早くても2030〜2050年代とされる長期テーマです。現時点で「核融合で稼いでいます」上場企業は存在せず、関連銘柄はあくまで部品・素材・建設などで関わる企業である点を理解しておく必要があります。

6. 関連銘柄を「層」で整理する

核融合は専業の上場企業がほぼ存在しないため、「核融合炉に必要な技術・部品・建設を担う企業」を関連銘柄として捉えます。

役割主な銘柄
プラント・建設炉本体の設計・建設・機器三菱重工(7011)、住友重機(6302)
超電導・線材プラズマ閉じ込め用の強力磁石フジクラ(5803)、古河電工(5801)
素材・部品高温・中性子に耐える特殊材料など各種素材メーカー

7. 主要関連銘柄の指標一覧(2026年6月18日時点・株探ベース)

数値はすべて株探の2026年6月18日時点の表示値に基づきます。

銘柄(コード)株価時価総額PERPBR配当利回り
三菱重工(7011)3,968円13兆3,866億円35.1倍4.32倍0.73%
住友重機(6302)5,439円6,685億円19.0倍0.94倍2.67%
フジクラ(5803)4,461円7兆9,191億円32.3倍13.18倍0.85%
古河電工(5801)46,360円3兆2,761億円39.8倍7.82倍0.47%

8. 個別銘柄の特徴と核融合との関わり

三菱重工(7011)――プラント技術の総合力

発電プラント・原子力で長年の実績を持つ重工大手。核融合炉の機器製造や、英国STEPのサプライチェーン参画など、核融合のプラント面で中心的役割が期待されます。防衛・航空・原子力など事業の幅が広く、核融合はその一角である点に留意が必要です。

住友重機(6302)――加速器・特殊機械

加速器や特殊な産業機械に強みを持つ重機メーカー。核融合に関連する精密機器・装置分野での関与が期待されます。PBR0.94倍と指標面では割安圏にあります。

フジクラ(5803)・古河電工(5801)――超電導・線材

核融合炉では、1億度のプラズマを閉じ込めるために超強力な超電導磁石が不可欠です。両社は光ファイバーで知られますが、超電導線材の技術も持ち、核融合・データセンターの双方で恩恵が期待される銘柄です。ただし株価はすでにAI・データセンター期待で大きく上昇しており、指標は高水準です。

9. 投資する際の注意点

① 実用化は長期テーマ:商業発電は早くても2030〜2050年代とされ、足元の業績寄与はほぼありません。「夢のテーマ」として株価が先行しやすく、期待が剥落すると急落するリスクがあります。
② 専業企業が存在しない:関連銘柄はいずれも核融合が本業の一部に過ぎず、テーマの進展が即・全社業績に直結するわけではありません。
③ 技術的な不確実性:核融合は依然として技術的ハードルが高く、計画の遅延や方式転換のリスクが常に存在します。

10. まとめ

核融合発電は、CO2を出さず燃料がほぼ無尽蔵という「究極のクリーンエネルギー」であり、AI時代の電力需要を背景に再び注目を集めています。海外ではITER(南仏・2035年運転開始予定)を軸に、米国NIFの点火達成、英国STEP、中国BESTなど各国が開発を加速。日本も国策として2050年代の発電実証を目指しています。一方で商業化は長期であり専業企業も存在しないため、関連銘柄(三菱重工・住友重機・フジクラ・古河電工など)は「核融合に関わる技術を持つ企業」として、テーマの大きさと足元業績のギャップを冷静に見極めることが重要です。

あわせて読みたい:各銘柄の「会社予想EPS×同業平均PER」による適正株価の試算は、個別銘柄記事で詳しく解説します。小型原子炉(SMR)・データセンターなど関連セクターの記事もあわせてご覧ください。

⚠ 免責事項

本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月18日)のものです。各銘柄の適正株価の試算は個別銘柄記事にて一定の前提に基づき行う参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

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