1. 核融合発電とは何か――「核分裂」との違い
核融合発電とは、軽い原子核(主に水素の仲間である重水素・三重水素)どうしを超高温・高圧で融合させ、その際に生まれる莫大なエネルギーで発電する技術です。太陽が光り輝いているのと同じ原理であることから「地上の太陽」とも呼ばれます。
現在の原子力発電(核分裂)が、ウランなど重い原子核を「分裂」させてエネルギーを得るのに対し、核融合は逆に軽い原子核を「融合」させます。この違いが、核融合の大きなメリットを生みます。
・燃料となる重水素は海水から取り出せ、事実上ほぼ無尽蔵。
・発電時にCO2を排出しないクリーンエネルギー。
・暴走(メルトダウン)が原理的に起こらず、安全性が高いです。
・高レベル放射性廃棄物が核分裂に比べて格段に少ありません。
2. なぜ今、核融合が注目されるのか――AI時代の電力需要
核融合が再び脚光を浴びる最大の理由が、AI・データセンターによる電力需要の爆発的な増加です。生成AIの普及で世界の電力消費は急増しており、CO2を出さずに大量の安定電源を確保できる核融合は、脱炭素と電力確保を同時に満たす「切り札」として期待されています。
実際、海外ではマイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業が、将来の電力源として核融合スタートアップと電力購入契約を結ぶ動きも出ており、AI企業が核融合開発の有力な資金の出し手になりつつあります。
3. 主要な方式――トカマク型・レーザー型など
核融合の実現方式は一つではありません。代表的なものを整理します。
現状、国際協力による本命とされるのが「トカマク型」で、後述のITERがその代表です。一方、米国では「レーザー型」のNIFが点火という重要な節目を達成し、注目を集めました。
4. 海外の開発動向――ITER・NIF・STEP
ITER(イーター)――史上最大の国際核融合実験炉
ITERは、日本・欧州連合(EU)・米国・ロシア・中国・韓国・インドの7極が参加する史上最大の核融合の国際協力プロジェクトです。2007年に計画が始まり、現在フランス南部で巨大な実験炉を建設中。内閣府やQST(量子科学技術研究開発機構)の資料によれば、2035年の運転開始が予定されています。日本も中核メンバーとして超電導コイルなど重要機器を担っています。
NIF(米国)――レーザー核融合で「点火」を達成
米国のローレンス・リバモア国立研究所のNIF(国立点火施設)は、レーザー型核融合で「点火(投入したエネルギーを上回るエネルギーを取り出すこと)」を達成しました。文部科学省の資料によれば、投入2.05MJに対し出力3.15MJを得たとされ、核融合研究における科学的な節目を越えた成果として世界的に報じられました。
STEP(英国)――2040年代の商業運転を目指す
英国は「STEP(Spherical Tokamak for Energy Production)」という核融合発電プログラムを進めており、2040年代の商業運転開始を目指しています。このSTEP関連のサプライチェーンには、後述する三菱重工など日本企業も参画しています。
中国「BEST」――ITERに先行するDT運転を狙う
経済産業省の「次世代革新炉開発ロードマップ(案)」などによれば、中国はITERに先立って重水素・三重水素(DT)運転を行うトカマク型実験炉「BEST」を2023年に建設開始しています。豊富な国家資金を背景に、中国の核融合開発も加速しています。
5. 日本の国策と開発体制
日本も核融合を国家戦略として推進しています。政府は核融合(フュージョンエネルギー)を成長分野と位置づけ、研究開発を加速。経済産業省の次世代革新炉開発のロードマップでは、2050年代の発電実証を見据えた工程が描かれています。
国内では、量子科学技術研究開発機構(QST)が大型装置「JT-60SA」を運用するほか、京都大学発のスタートアップ「Kyoto Fusioneering」が独自の実証装置「FAST」構想を進めるなど、官民双方で開発が進んでいます。
6. 関連銘柄を「層」で整理する
核融合は専業の上場企業がほぼ存在しないため、「核融合炉に必要な技術・部品・建設を担う企業」を関連銘柄として捉えます。
7. 主要関連銘柄の指標一覧(2026年6月18日時点・株探ベース)
数値はすべて株探の2026年6月18日時点の表示値に基づきます。
8. 個別銘柄の特徴と核融合との関わり
三菱重工(7011)――プラント技術の総合力
発電プラント・原子力で長年の実績を持つ重工大手。核融合炉の機器製造や、英国STEPのサプライチェーン参画など、核融合のプラント面で中心的役割が期待されます。防衛・航空・原子力など事業の幅が広く、核融合はその一角である点に留意が必要です。
住友重機(6302)――加速器・特殊機械
加速器や特殊な産業機械に強みを持つ重機メーカー。核融合に関連する精密機器・装置分野での関与が期待されます。PBR0.94倍と指標面では割安圏にあります。
フジクラ(5803)・古河電工(5801)――超電導・線材
核融合炉では、1億度のプラズマを閉じ込めるために超強力な超電導磁石が不可欠です。両社は光ファイバーで知られますが、超電導線材の技術も持ち、核融合・データセンターの双方で恩恵が期待される銘柄です。ただし株価はすでにAI・データセンター期待で大きく上昇しており、指標は高水準です。
9. 投資する際の注意点
10. まとめ
核融合発電は、CO2を出さず燃料がほぼ無尽蔵という「究極のクリーンエネルギー」であり、AI時代の電力需要を背景に再び注目を集めています。海外ではITER(南仏・2035年運転開始予定)を軸に、米国NIFの点火達成、英国STEP、中国BESTなど各国が開発を加速。日本も国策として2050年代の発電実証を目指しています。一方で商業化は長期であり専業企業も存在しないため、関連銘柄(三菱重工・住友重機・フジクラ・古河電工など)は「核融合に関わる技術を持つ企業」として、テーマの大きさと足元業績のギャップを冷静に見極めることが重要です。
📄 参考・出典
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月18日)のものです。各銘柄の適正株価の試算は個別銘柄記事にて一定の前提に基づき行う参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

