① SMR(小型モジュール炉)とは何か
SMR(Small Modular Reactor=小型モジュール炉)は、従来の大型原子力発電所よりも出力が小さく、主要な機器を工場であらかじめモジュール(部品単位)として製造し、現地で組み立てる方式の原子炉です。一般に電気出力が30万kW程度以下のものを指すことが多く、大型炉の数分の1の規模です。
工場生産による品質の安定とコスト低減、建設期間の短縮、設置場所の柔軟性などが期待されています。また、設計段階から自然循環による冷却など「固有の安全性」を高める工夫が盛り込まれているものが多いのも特徴です。
・出力が小さく、需要に応じて複数基を組み合わせやすい
・工場でモジュール生産 → 現地組み立てで工期短縮を狙う
・受動的(パッシブ)な安全設計を取り入れやすい
・データセンターや工業地帯の近くなど、立地の自由度が高い
② なぜいまSMRが注目されるのか
AI・データセンターの電力需要
最大の追い風は、生成AIとデータセンターの電力需要急増です。AIデータセンターは膨大な電力を、しかも安定的(24時間・天候に左右されない)に必要とします。再生可能エネルギーだけでは賄いにくい「ベースロード電源」として、二酸化炭素を出さない原子力、とりわけ立地の柔軟なSMRに注目が集まっています。海外の大手IT企業がSMRの電力購入契約に動く例も報じられています。
脱炭素とエネルギー安全保障
脱炭素(カーボンニュートラル)の達成と、エネルギー安全保障の両立という観点からも、原子力が再評価されています。SMRは、その新しい選択肢として各国の政策の中で位置づけられつつあります。
③ 海外の開発動向
SMRの開発は、米国を中心に世界各国で進んでいます。代表的なプロジェクトには次のようなものがあります。
米国勢が設計認証や建設計画で先行していますが、各社で炉の方式(軽水炉型、高速炉型など)が異なり、本格的な商用運転や経済性の確立はこれからという段階です。日本企業の一部は、これら海外プロジェクトに部材供給や事業参画というかたちで関わっています。
④ 日本企業の立ち位置
日本には、原子力に関わる重工メーカーや、原子炉の心臓部に使われる大型鍛鋼品(鍛造した鋼材)を製造できる企業があります。とくに大型鋳鍛鋼の分野では世界的に高いシェアを持つ企業もあり、SMRを含む原子力部材のサプライチェーンで重要な役割を果たし得ます。
⑤ SMR関連の主な銘柄
ここからは、SMR・原子力に関連する事業を持つ国内の上場企業を整理します。いずれもSMRが事業の一部であり、株価がSMRだけで動くわけではない点に注意してください。
関連銘柄を「層」で整理する
⑥ 主要関連銘柄の指標一覧
以下は関連銘柄の株価・指標の一覧です。株価・時価総額・PER・PBR・配当利回りはいずれも2026年6月18日時点の株探調べです。
⑦ 主な関連銘柄の特徴
日本製鋼所(5631)
原子炉圧力容器などに使われる大型鋳鍛鋼の分野で世界的に高いシェアを持つとされる企業です。原子力部材のサプライチェーンで重要な役割を担い得ますが、半導体製造装置や産業機械なども手がけ、事業は多角化しています。
三菱重工業(7011)/IHI(7013)
いずれも原子力プラントや機器を手がける重工メーカーです。両社とも防衛・航空エンジンなど他の主力事業の比重が大きく、株価はそれらの動向に強く左右されます。SMRは将来の成長分野の一つという位置づけです。
古河電気工業(5801)
電線・光ファイバー大手で、送電や超電導関連の技術を持ちます。SMRそのものの主役ではありませんが、電力インフラ・関連部材のくくりで言及されることがあります。光電融合・核融合関連としても注目される銘柄です。
⑧ 投資する際の注意点
SMRは本格的な商用運転や経済性の確立がこれからの技術で、計画の遅延や見直しのリスクがあります。テーマ性が先行しやすい点に注意が必要です。
国内の関連銘柄はいずれもSMRが事業の一部にすぎず、株価は主力事業や全社業績に左右されます。「SMR関連だから上がる」という単純な発想は危険です。
原子力は規制や世論、安全性に関する社会的な議論の影響を強く受ける分野です。政策や規制の動向次第で計画が大きく変わる可能性があります。
⑨ まとめ
SMR(小型モジュール炉)は、AI・データセンターの電力需要急増と脱炭素の流れを背景に、次世代原子力として世界的に注目されているテーマです。米国のNuScaleやTerraPower、GE日立などが開発で先行し、日本企業も原子炉部材や重工分野で関わっています。
一方で、商用化はこれからの段階であり、国内に純粋なSMR専業の大型株は存在しません。関連銘柄に関心を持つ場合も、各社の本業や財務、株価指標を冷静に確認し、テーマの過熱には十分注意したいところです。
当ブログでは、核融合発電やデータセンター、光電融合(IOWN)など、AI時代の電力・インフラに関するセクター記事も公開しています。あわせてご覧ください。
📄 参考・出典
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点(2026年6月18日時点・株探調べ)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

