「空の産業革命」と呼ばれるドローン(無人航空機)が、測量・インフラ点検・物流・農業・防災、そして防衛まで用途を広げています。2022年の改正航空法による「レベル4(有人地帯での目視外飛行)」解禁を起点に、国産機体・運航管理(UTM)・センサー・通信といった裾野の広い産業が立ち上がりつつあります。本記事では、ドローン関連の全体像と、株探の「ドローン(無人飛行機)」テーマに収録された関連銘柄を一覧で整理します。
※株価・PER・PBR・利回りはいずれも2026年6月19日終値・株探ベースです。本記事は情報整理を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
1. ドローンとは何か――「空の産業革命」の現在地
ドローン(無人航空機/UAV)とは、人が搭乗せずに遠隔操作または自律飛行する航空機の総称です。当初は空撮・ホビー用途が中心でしたが、近年はセンサーやAIの進化により、橋梁・送電線・プラントの点検、土木測量、農薬散布、災害調査、離島・山間部への物流など、人手では危険・非効率だった作業を置き換える「産業用ツール」として急速に普及しています。
日本では2022年12月の改正航空法施行により、第三者がいる上空を補助者なしで飛ばせる「レベル4飛行」が制度上解禁されました。これにより、都市部や有人地帯での目視外・自律飛行が現実味を帯び、物流・点検・警備といった分野でのビジネス化が一段と進む環境が整いつつあります。
2. 市場を動かす5つの追い風
ドローン市場の拡大を支えているのは、単一の技術ではなく複数の社会的・制度的な追い風です。主なドライバーを整理します。
- 制度整備(レベル4・機体認証・操縦ライセンス):飛行の自由度が広がり、商用化の前提が整っました。
- 労働力不足・インフラ老朽化:橋梁・トンネル・送電網などの点検需要が拡大し、人手作業の代替ニーズが強いです。
- 物流網の再構築:ラストワンマイルや離島・山間部配送での実証が進む。
- 防災・安全保障:災害調査や警備、そして防衛分野での無人機(UAV)需要の高まり。
- 経済安全保障・国産化:海外製(特に中国製)依存からの脱却を狙う「国産ドローン」政策が国内メーカーの追い風に。
3. プレーヤーの全体像――「機体」だけがドローン銘柄ではない
ドローン関連を理解するうえで重要なのは、バリューチェーンの広がりです。完成機(機体)を作る企業はごく一部で、実際には部品・センサー・通信・運航管理ソフト・点検サービスなど、多くのレイヤーに関連企業が存在します。本記事では便宜上、次のように整理します。
- ① 機体・運航(ピュアプレー):ACSL(6232)、テラドローン(278A)、リベラウェア(218A)、ブルーイノベ(5597)など、ドローンそのものや運航管理を主力とする企業。
- ② 防衛・重工・航空:三菱重工(7011)、IHI(7013)、川崎重工(7012)など、無人機(UAV)・エンジン領域を担う大手。
- ③ 電機・電子部品:ソニーG(6758、イメージセンサー)、村田製作所(6981)、双葉電子(6986、無線・プロポ)、航空電子(6807)など、心臓部の部品を供給。
- ④ 通信・インフラ点検・警備:NTT(9432)、KDDI(9433)、セコム(9735)、ALSOK(2331)など、運航通信・点検/警備サービスを担う。
- ⑤ ソフト・AI・測位・地図:オプティム(3694)、モルフォ(3653)、ジェノバ(5570、RTK測位)、アイサンテク(4667、高精度地図)など。
4. 国産化という大きなテーマ――「中国製依存」からの脱却
世界の民生用ドローン市場は中国DJIが圧倒的なシェアを握ってきました。一方で、政府機関やインフラ・防衛分野では、データ安全保障の観点から「国産機」へのニーズが高まっています。日本では経済産業省や防衛省が国産ドローンの開発・調達を後押ししており、ACSLやテラドローンなどの国産メーカーにとって追い風となっています。
この「経済安全保障×国産化」という文脈は、ドローン関連銘柄を見るうえで欠かせない視点です。純粋な技術力だけでなく、政府調達・インフラ案件をどれだけ取り込めるかが、各社の成長を左右します。
5. 【防衛視点】無人機が「防衛の中核」に――予算3倍・国産化の本命テーマ
ドローン関連を語るうえで、近年最も大きなカタリスト(株価材料)となっているのが防衛・安全保障の文脈です。ウクライナ戦争で安価な無人機が戦況を左右したことを受け、各国は「無人アセット(UAV/UGV/USV)」への投資を急拡大させています。日本も例外ではなく、ここでは公的資料・報道をもとに、防衛文脈のポイントを精査・整理します。
① 令和8年度(2026年度)防衛予算――無人機関連が前年比約3倍
2026年4月に成立した令和8年度の防衛関係予算は過去最高の約9兆円規模。このうち「無人アセット防衛能力」の整備に約2,773億円(契約ベースでは約3,128億円)が計上され、前年度のおよそ3倍に拡大しました。無人システムを防衛の中核に据える国家方針が、予算面で明確に示された形です。
その柱が、無人アセットによる多層的沿岸防衛体制「SHIELD(シールド)」構想で、令和8年度予算で早期構築に約1,001億円が計上されています。あわせて、敵ドローンに対処する「カウンタードローン(対ドローン)」器材の整備(約78億円)や、次世代の防空指揮統制システム(次世代JADGE、約547億円)など、無人機を「使う/守る」双方の整備が進められています。
② 国産化の壁――「DJI 7割」と価格競争力
防衛・公的調達で重視されるのが、データ安全保障の観点からの「脱・中国製」と国産化です。経済産業省の資料でも、民生用ドローンは中国DJIが世界シェアの7割超(72.7%)を握る現状が示され、国内生産基盤の構築が課題とされています。
一方で、国産ドローンはDJI製に比べ価格が大幅に高い(一部報道では「10倍高い」との指摘も)うえ、量産体制構築には継続的な国産需要が不足しているとされます。「政策で需要を作り、量産でコストを下げる」という好循環を回せるかが、国産メーカーの成否を分けるポイントです。
③ 防衛プライムと無人機――重工・電機大手の動き
防衛装備の中核を担うのは、三菱重工(7011)・川崎重工(7012)・IHI(7013)といった重工プライムと、三菱電機(6503)・NEC(6701)・富士通(6702)などのC4I(指揮統制・通信)・電子系大手です。各種報道によれば、無人機(UAV)は「新規参入が加速する領域」と位置づけられ、主な動きは次の通りです。
- 三菱重工(7011):固定翼型とミサイル形状の2種類のAI搭載無人機を開発中とされ、迎撃ドローンの量産試作を短期間で開発し防衛省への採用提案を検討との報道。防衛省との契約額で国内首位(2024年度 約1.4兆円規模)。
- 川崎重工(7012):無人機向けの小型エンジンや無人水上艇(USV)など、無人アセットの動力・プラットフォームを担う。
- IHI(7013):航空エンジンの技術を背景に、無人機向け動力・部品で関与。
- 三菱電機(6503):次期防衛衛星通信を受注するなど、無人機運用を支える通信・センサー・指揮統制で存在感。
- NEC(6701)/富士通(6702):防空・ミサイル防衛やC4I(指揮統制システム)、ネットワーク領域で関連。
④ ピュアプレー国産メーカーの防衛参入
重工大手だけでなく、ドローン専業の新興企業も防衛分野へ参入を進めています。象徴的なのがテラドローン(278A)で、2026年3月に防衛分野への本格参入を表明し、同年5月には防衛装備庁から国産の「モジュール型UAV(汎用型・教育用)」300式を約1.15億円で受注(納期2026年9月予定)したと報じられました。金額自体は小さいものの、専業メーカーが防衛調達の実績を作った点に象徴的な意味があります。
また、最先端の軍用ドローン技術を持つ米アンドゥリル(Anduril)が2025年末に日本法人を設立するなど、海外勢との連携・競争も活発化しています。国産ピュアプレー(ACSL・テラドローン・ブルーイノベ等)にとって、防衛・公的調達は大きな成長機会であると同時に、競争も激しさを増す領域です。
6. ドローン関連銘柄 指標一覧(2026年6月19日時点・株探ベース)
株探「ドローン(無人飛行機)」テーマに収録された関連銘柄を一覧にしました(全87銘柄)。区分は本記事による便宜的な分類です。「-」は当該指標が算出不能(赤字・非開示等)であることを示します。
7. 注目される個別銘柄の特徴
数多い関連銘柄のうち、「ドローンとの関連が深い」「市場で注目度が高い」代表例の特徴を簡潔に整理します。なお業績や株価指標の詳細は各社の決算資料・株探をご確認ください。
ACSL(6232)――国産産業用ドローンの旗手
物流・点検・防災・安全保障向けの国産産業用ドローンを開発・製造する代表格。経済安全保障を背景にした「国産化」の文脈で政府・インフラ案件への期待が高く、テーマの中核銘柄の一つです。一方で収益はまだ先行投資段階で、PERが算出されない局面もあります。
テラドローン(278A)――ドローン測量・運航管理で世界展開
ドローンを使った測量・点検サービスと、運航管理システム(UTM)を国内外で展開する成長企業。世界各国で事業を持つグローバル性が特徴で、上場後の値動きの大きさでも注目を集めました。成長期待が株価指標(高PBR)に織り込まれている点は留意が必要です。
リベラウェア(218A)――狭小空間に特化した点検ドローン
プラントや煙突、ボイラー内部など、人が入れない「狭小・閉鎖空間」の点検に特化した小型ドローン「IBIS」を手がけるニッチトップ。インフラ老朽化を背景にした点検需要を取り込む独自ポジションが強みです。
ブルーイノベ(5597)――ドローンの「運航・社会実装」
ドローンの運航管理・自律飛行プラットフォームや、点検・物流の社会実装を手がける企業。機体そのものより「飛ばす仕組み」「群制御」に強みを持ち、レベル4時代のインフラ層を狙います。
双葉電子工業(6986)――無線・プロポの老舗
ラジコン用プロポーショナルシステム(送受信機)の世界的メーカー。ドローンの無線制御技術に強みを持つ「縁の下の力持ち」型の銘柄で、PBRが低水準にある点も特徴です。
ソニーグループ(6758)/村田製作所(6981)――心臓部の部品
ソニーはドローンの「目」となるCMOSイメージセンサーで世界首位。村田製作所は通信モジュールやセンサー・電子部品を供給します。いずれもドローンは事業全体のごく一部ですが、性能を左右する基幹部品の担い手です。
三菱重工(7011)/IHI(7013)/川崎重工(7012)――防衛・無人機
防衛・安全保障分野での無人機(UAV)やエンジン・航空機技術を担う重工大手。近年の防衛費増額を背景に注目されますが、ドローン(民生小型機)というより「無人航空機・防衛」文脈での関連が中心です。
オプティム(3694)/モルフォ(3653)――AI・画像解析ソフト
オプティムは農業・点検向けにドローン×AI(画像解析)を組み合わせたサービスを展開。モルフォは画像処理・AIアルゴリズムに強みを持ち、ドローン映像の解析などで関連します。ソフト側からドローン市場に関わるプレーヤーです。
8. 投資する際の注意点
- ① 「本業との距離」を見極める:一覧の多くは大企業で、ドローンは事業の一部に過ぎません。テーマ物色で短期的に動いても、業績インパクトは限定的なケースが多いです。
- ② ピュアプレーは業績先行・高ボラティリティ:ACSL・テラドローン・リベラウェアなど純ドローン企業は成長期待が先行し、赤字や高PBRの銘柄も多く、株価の振れ幅が大きくなりがちです。
- ③ 制度・政策依存:レベル4の運用拡大や国産化政策、防衛調達など、制度・政策の動向が業績を大きく左右します。政策の遅れは期待剥落リスクにもなります。
- ④ 競争環境:民生機では中国DJIの存在が大きく、価格・性能競争は激しいです。国産勢が「安全保障×特定用途」でどれだけ差別化できるかが鍵です。
9. まとめ
ドローンは、レベル4解禁を起点に「空の産業革命」が実装フェーズへ移行しつつある長期テーマです。測量・点検・物流・農業・防災・防衛と用途は広く、関連企業も機体メーカーから部品・通信・地図・ソフト・防衛・商社まで87銘柄規模に及びます。中核となるのはACSL・テラドローン・リベラウェア・ブルーイノベといった国産ピュアプレーですが、これらは業績先行・高ボラティリティであり、ソニーG・村田・双葉電子といった基幹部品勢や、三菱重工・IHIなどの防衛勢まで含めて、テーマの「層の厚さ」を理解することが大切です。経済安全保障を背景にした国産化の流れは中長期の追い風ですが、政策依存・競争激化のリスクも併存します。テーマの大きさと足元業績のギャップを意識した選別が、引き続き重要になります。
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10. 参考・一次情報ソース
- 株探(kabutan.jp)「ドローン(無人飛行機)」テーマ銘柄一覧(株価・PER・PBR・利回り、2026年6月19日時点)
- 国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」「レベル4飛行・機体認証制度」関連資料
- 経済産業省・各社IR(決算短信/統合報告書/事業計画)
- 各社公式サイトの製品・事業紹介ページ
📄 参考・出典
- 株探(kabutan.jp)――各社の株価・業績・財務データ(2026年6月時点)
- 各社の公式IR資料・決算短信・有価証券報告書
- 各種報道(2026年6月時点)
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月16日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

