IHI(7013)の株価は2,817円(2026年6月19日終値)、PER約18.1倍・PBR約4.58倍です。本記事では、重工大手。航空エンジン(民間・防衛)・ガスタービン・ボイラ・物流機器・無人機関連を展開を手がける同社が、フィジカルAI(現実世界で動くAI)・ヒューマノイド普及の流れの中でどんな立ち位置にあるのか、最新決算・中期経営計画・適正株価の試算・リスクまでを株価視点で整理します。
📌 この記事の結論(先に要点)
- 投資スタンス:中立(航空エンジン・防衛・原動機の重工大手、防衛・航空回復が追い風)
- 目標株価レンジ:2,180円〜3,730円(予想EPS155.6円/弱気PER14倍〜強気PER24倍)
- 中立シナリオ:約2,800円(現状株価2,817円・PER18倍前後と整合的)
- 最大リスク:民間航空需要・防衛予算に業績が左右される点と、自己資本比率27%とやや高い財務レバレッジ
※株価2,817円・予想PER18.1倍・PBR4.58倍・配当利回り0.82%・時価総額約3兆501億円(執筆時点)。数値は株探等の公開情報を確認のうえ整理。目標株価は前提付きの参考値です。
| シナリオ | 想定PER | 目標株価 | 現値2,817円との差 |
|---|---|---|---|
| 弱気 | 14倍 | 約2,180円 | −23% |
| 中立 | 18倍 | 約2,800円 | −1% |
| 強気 | 24倍 | 約3,730円 | +32% |
IHIはどんな会社か
IHI(証券コード7013)は、重工大手。航空エンジン(民間・防衛)・ガスタービン・ボイラ・物流機器・無人機関連を展開を主力とする機械セクターの企業です(東証P上場)。
- 主力事業:重工大手。航空エンジン(民間・防衛)・ガスタービン・ボイラ・物流機器・無人機関連を展開
- 時価総額:約3兆501億円
- 関連テーマ:防衛・航空エンジン・無人機・ドローン関連
防衛・無人機(ドローン)事業の深掘り――「空の動力」を握るエンジンメーカー
IHIをドローン・防衛テーマで捉えるときの鍵は、完成した機体そのものよりも「推進系(エンジン)」にあります。同社は日本の航空機エンジンの中核を担っており、有人機から無人機まで「飛ぶもの」の動力源として広く関与します。ここでは2026年時点で公表されている同社の防衛・無人機関連の位置づけを整理します。
① 国産ジェットエンジンの中核――防衛「御三家」の一角
IHIは日本国内のジェットエンジン生産の大宗(報道ベースで概ね6〜7割とされます)を担い、航空自衛隊の戦闘機(F-15・F-2)や哨戒機P-1、各種練習機などのエンジンで主契約者の地位にあります。三菱重工・川崎重工と並ぶ防衛「御三家」の一角とされ、次期戦闘機GCAP(日英伊共同開発)でもエンジン開発の国内主担当を担う見通しです。エンジンは機体の性能を左右する基幹技術であり、参入障壁が極めて高い領域です。
② 防衛・原子力を「成長事業」に位置づけ――最高益の中身
IHIは2026年3月期に3年連続の最高益を計上しました。牽引役は民間航空エンジンの補修部品と防衛事業で、海外の脱炭素関連の構造改革や不動産売却も利益を押し上げた。会社側は次期中期計画において、民間向け航空エンジン・防衛・原子力を「成長事業」と位置づけ、これらを主な対象に生産能力(キャパシティ)の拡充を進める方針を示しています。防衛費増額の流れは、エンジン・推進系を握る同社にとって中期的な追い風となります。
③ 無人機・次世代モビリティへの展開――ガスタービンのハイブリッド化
IHIは無人機分野においても、機体メーカーへエンジン・推進ユニットを供給する立場で関与する可能性が高いです。2026年6月のJapan Drone 2026では、航空機用ジェットエンジンの技術を応用し、ガスタービンをハイブリッド化することで約1,000kmの航続を狙う次世代の「空飛ぶクルマ(eVTOL/次世代航空モビリティ)」構想を提案しています。長距離・高出力が求められる無人機や次世代モビリティでは、バッテリーのみでは航続に限界があるため、同社のガスタービン・ハイブリッド技術が差別化要素になり得ます。
最新決算(直近本決算)の要点
直近本決算(2026年3月期)は、売上高1兆6,434億円・営業利益1,655億円・最終利益1,610億円(EPS151.9円)でした。航空エンジン需要の回復と防衛拡大で、2026年3月期に最終益が大きく改善。
今後の成長見通し
IHIの成長は、重工大手。航空エンジン(民間・防衛)・ガスタービン・ボイラ・物流機器・無人機関連を展開という主力事業を軸に、世界的な省人化・自動化の流れと、フィジカルAI/ヒューマノイドの普及によって支えられます。以下、直近の決算短信と中期経営計画をふまえて見通しを整理します。
直近の決算短信の要点
IHIの直近本決算(2026年3月期)は、売上高1兆6,434億円・営業利益1,655億円・最終利益1,610億円(EPS151.9円)でした。(航空エンジン回復で大幅増益)。2027年3月期は営業益+45.0%・売上+11.4%を計画。財務面では自己資本比率25%前後・1株純資産615円、航空エンジンの収益回復で財務改善が進むと、安定した基盤を備えています。
中期経営計画と今後の見通し
中期経営計画では、航空・宇宙・防衛、資源/エネルギー/環境、社会基盤、産業システムを軸に、航空エンジン回復と防衛拡大を取り込むとしています。会社が示す2027年3月期の予想と前期実績を並べると、次のようになります。
見通しを支える3つの成長ドライバー
- ① 航空エンジンの回復:民間航空需要の回復でアフターマーケット(整備)収益が拡大。
- ② 防衛拡大:防衛費増額を背景に、エンジン・無人機関連の受注が増加。
- ③ 脱炭素・アンモニア:アンモニア燃焼など脱炭素技術で中長期の成長を狙う。
ここからは株価の水準を2つの角度から整理します。まず会社四季報の業績予想をもとに、将来の利益成長が続いた場合に株価がどこまで上がり得るか(成長ベースのターゲット株価)を見る。続いて、現在の予想EPSや純資産に標準的なPER/PBRを当てはめた現時点の適正株価(理論株価)を確認し、両者をあわせて総合的に判断します。
会社四季報で見るIHI――成長性の定量分析と3年後ターゲット株価
会社四季報(2026年3集・夏号/2026年6月17日発売)をもとに、IHIの成長性を具体的な数値で点検し、将来の利益見通しから3年後のターゲット株価を試算します。以下は四季報の数値・コメントをそのまま転載したものではなく、開示された事実を当研究所が独自に整理・計算し直したものです。
① 1株利益(EPS)の推移――「一過性の益」を見抜くことが重要
IHIの1株利益は、2024年3月期に大幅赤字(航空エンジン関連の損失処理など)に沈んだ後、2025年3月期に急回復し、足元は高水準で推移しています。ただし四季報を読むと、今期(2027年3月期)の利益には資産売却による営業益の押し上げ(約900億円規模)という一過性要因が含まれており、来期(2028年3月期)はその反動で減益が見込まれている点に注意が必要です。つまり、今期のEPS155.6円をそのまま「実力」と受け取ると過大評価につながります。
したがって本記事では、一過性の売却益が剥落した後の巡航ベースに近い2028年3月期予想EPS123.6円を「実力値」とみなし、ここを出発点に将来を試算します。四季報の新戦略では、2025年度を起点に2035年度まで年平均で売上成長率5%超を掲げており、航空エンジン・防衛・原子力という追い風セクターを抱える点が成長の下支えになります。
② 3年後の利益をシミュレーションする
一過性益を除いた実力EPS約124円を起点に、その後3年間の利益成長を3通りで置きました。重工・防衛セクターは受注残(バックログ)が中期業績を下支えする一方、案件採算のブレも大きいため、控えめからやや強気までを想定します。
- 保守シナリオ(年率5%成長):会社が掲げる売上成長率の下限程度を想定。3年後EPSは約143円。
- 標準シナリオ(年率8%成長):防衛・航空エンジン補修の伸びが利益率改善を伴うと想定。3年後EPSは約156円。
- 強気シナリオ(年率12%成長):防衛費増額と原発再稼働需要が重なると想定。3年後EPSは約174円。
③ 想定PERから3年後ターゲット株価を逆算する
IHIの予想PERは現在18〜23倍程度で、防衛・重工セクターとしては標準的な水準にあります。三菱重工(PER約35倍)と比べると相対的に控えめで、市場の期待が割安にとどまっている面もあります。将来EPSに、現状水準を中心としたPER15〜22倍を当てて3年後のターゲット株価を逆算しました。
IHIは三菱重工に比べPER評価が低めで、利益が一過性益に頼らず巡航ベースで伸びていくことを市場が確認できれば、PERの見直し(再評価)による上値余地が生まれやすい構図です。一方、今期の利益が売却益で膨らんでいる分、来期の減益が嫌気されて短期的に株価が伸び悩む可能性もあります。「一過性を除いた実力がどこまで伸びるか」を冷静に見ることが投資判断の軸になります。
💡 ポイント
IHIは航空エンジン・防衛・原子力という追い風セクターを抱える成長株ですが、今期(2027年3月期)の利益には約900億円の資産売却益という一過性要因が含まれる点に注意したいところです。実力ベース(売却益剥落後)のEPSを起点にすると、PER15〜22倍で3年後ターゲット株価はおおむね現値圏〜上値余地という試算になります。三菱重工よりPER評価が低い分、巡航利益の成長が確認されれば再評価(PER上昇)の余地があります。
⚠️ 投資目線での注意
上記のEPSシミュレーションやターゲット株価は、四季報の数値・コメントをそのまま転載したものではなく、開示された事実をもとに当研究所が独自に設定した前提(実力EPS・成長率・想定PER)で試算した参考値です。特にIHIは一過性損益や案件採算の変動が大きく、前提次第で結果は大きく変わります。最終的な投資判断は必ず最新の決算短信・有価証券報告書など一次情報を確認したうえで行ってください。
同業他社比較と適正株価の試算――割安か割高か
FA・ロボット・部品関連の主要銘柄と比較すると、IHIのPER約18.1倍・PBR約4.58倍という評価水準が見えてきます。航空エンジン需要の回復と防衛拡大で、2026年3月期に最終益が大きく改善。次のセクションで、より具体的に弱気・中立・強気の3シナリオで適正株価を試算します。
適正株価(理論株価)の試算――弱気・中立・強気の3シナリオ
ここではIHI(7013)の適正株価(理論株価)を、代表的な2方式で試算します。基準は2027年3月期会社予想EPS155.6円、1株純資産(BPS)は株価2,817円÷PBRから約615円と算出しています(いずれも2026年6月19日終値ベース)。
方式①:PER × 同業他社平均PER 法
予想EPSにPERを掛け合わせる方式です。同業他社やIHI自身の評価水準(PER約18.1倍・PBR約4.58倍)を踏まえ、中立を18倍とし、弱気〜強気でPER水準を振って試算します。
方式②:PBR(純資産)法
利益のブレを受けにくい純資産ベースの方式です。BPS約615円に、中立PBR4.6倍を基準として、シナリオ別のPBRを当てはめます。
総合:弱気・中立・強気の3パターン
上記2方式を平均(ブレンド)し、現在値2,817円に対する上昇余地(アップサイド)とあわせて整理すると、次のようになります。
総合すると、中立シナリオの理論株価は約2,815円で、現在値(2,817円)に対して-0.1%。市場はIHIを「ほぼ適正」に評価していると読めます。前提を弱気側に置けば約1,996円、強気側に置けば約3,712円がめやすとなります。
株価指標と需給
信用倍率は54.15倍で、買い長に傾いており、戻り売り圧力がやや重い状態です。
投資する際に押さえておきたいリスク
- 設備投資サイクル:世界の設備投資、とくに中国・半導体市況の変動を受けやすいです。
- 為替変動:輸出比率が高く、円高は利益の重しになります。
- 競争激化:中国勢の台頭などで価格競争が起きるリスク。
- 需給の重さ:信用倍率54.15倍と買い長で、短期的な戻り売りに注意。
指標とニュースの読み方――数字に振り回されないために
PERとPBRをどう見るか
PERは「利益の何年分まで買われているか」、PBRは「純資産の何倍で評価されているか」を示します。IHIのように景気循環の影響を受ける銘柄は、業績の谷でPERが高く、山で低く見えやすい点に注意が必要です。
この銘柄を継続ウォッチする際のチェックポイント
- 四半期ごとの受注・売上の前年同期比
- 中国・半導体関連の設備投資動向
- ヒューマノイド・ロボット向け新規受注のニュース
投資スタンスの整理
中立シナリオの理論株価は現在値に近く、IHIは「ほぼ適正」な水準と読めます。フィジカルAIという長期テーマの恩恵を取り込みつつ、設備投資サイクルの波を意識した中長期目線での観察が向いています。
中期経営計画から読み解く現在地と未来予測
① 中期経営計画(中長期ロードマップ)の数値目標
IHIは中期経営計画で、当初2025年度(2026年3月期)の経営目標として営業利益率7.5%、税引後ROIC8%以上、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)100日以下を掲げていました。2026年5月公表の最新方針では、今後3か年を「FY2029以降の営業利益・営業CF大幅拡大、FY2032以降のFCF大幅拡大を実現するための先行投資フェーズ」と位置づけ、売上収益CAGR4〜5%の成長を見込んでいます。
直近の業績は当初目標を大きく上回りました。2025年度(2026年3月期)は売上収益1兆6,268億円(前期比+23.0%)、営業利益1,435億円(営業利益率8.8%、説明会ベースでは10.1%)、純利益1,127億円、ROE23.4%と重工セクターでは突出した資本効率を記録。航空・宇宙・防衛セグメントのスペアパーツ販売が利益を押し上げ、当期利益は+42.8%の大幅増益となりました。
② 今後の期待値はどこにあるか
最大の成長ドライバーは、航空エンジン(民間・防衛)と防衛・宇宙分野です。世界的な航空需要の回復と、各国の防衛費増額を背景に、エンジンのスペアパーツ・アフターサービスという高採算ビジネスが利益を底上げしています。先行投資フェーズを経てFY2029以降に利益が大幅拡大するシナリオが描かれており、中長期の収益成長期待が株価を支えています。
加えて、アンモニア・水素など脱炭素関連の次世代エネルギー事業も将来の柱として位置づけられています。ROE23%という高水準の資本効率を維持しつつ、先行投資の成果がいつ利益として顕在化するかが、今後の評価を左右する分岐点になります。
IHIの中計は「FY2029以降の利益拡大に向けた先行投資」という時間軸が肝です。直近は防衛・航空エンジンのアフター需要で業績が上振れていますが、計画上は今が投資フェーズである点を踏まえ、営業利益率とROICが目標水準を維持できるかを確認するのが有効です。
防衛・航空エンジン需要は地政学・各国予算に左右され、スペアパーツ販売の好調が一巡すれば利益の伸びが鈍化する可能性があります。先行投資フェーズではコスト先行で利益が圧迫される局面もあり得ます。過去には民間航空エンジンの会計問題など個別リスクもあり、為替の影響も大きい点に注意が必要です。
四季報・専門メディアから見る現状と評価
株価指標で市場評価を確認すると、IHIはPER18.1倍・PBR4.58倍・配当利回り0.82%(株価2,817円時点、時価総額約3兆501億円)で取引されています。PBRは高めの水準にあり、市場が同社の収益性や成長性に対して一定のプレミアムを織り込んでいることを示します。
会社四季報や専門メディアでは、こうしたIHIの事業基盤・収益構造の強みと、競争環境や市況・コスト面の課題の両面が論点として取り上げられます。本記事の各章で整理してきた強みとリスクは、これら専門媒体の評価軸ともおおむね重なります。投資判断にあたっては、最新の四半期決算で示される利益動向と、会社が示す中期的な方針のアップデートを継続的に確認することが重要です。
総じて、現時点のIHIは、本業の収益力を土台に着実に企業価値を積み上げている局面にあり、株価指標も事業の実態を反映した水準にあると整理できます。指標の割安・割高だけでなく、事業の競争力と業績トレンドを合わせて見ていくことが、判断の精度を高めるうえで欠かせません。
※本記事の指標・数値は株探(かぶたん)等の公開情報をもとに執筆時点(2026年6月)で整理したものです。会社四季報オンラインおよびFACTA ONLINE等の専門メディアについては公開範囲の情報を参照しており、有料会員限定コンテンツの内容は含みません。最新の数値・評価は各社の最新開示・媒体で必ずご確認ください。
まとめ
- IHIは重工大手。航空エンジン(民間・防衛)・ガスタービン・ボイラ・物流機器・無人機関連を展開を主力とするフィジカルAI関連の「部品・要素技術」銘柄
- 直近決算は航空エンジン需要の回復と防衛拡大で、2026年3月期に最終益が大きく改善
- 中立シナリオの理論株価は約2,815円(現在値比-0.1%)
- 設備投資サイクル・為替・需給のリスクに留意
この銘柄を実際に取引するなら、手数料や取扱商品・ツールを比較して自分に合った証券口座を選びましょう。ネット証券は口座開設・維持費は無料で、少額から始められます。
📄 参考・出典
- 株探(kabutan.jp)――株価・業績・財務データ
- 株探(kabutan.jp):株価・業績・財務データ(2026年6月19日時点)
- 各社IR:決算短信・中期経営計画
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月19日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

