双葉電子工業(6986)は、ラジコン用プロポ(無線送受信機)で世界的に知られる電子部品メーカーで、ドローン関連(無線制御技術)の文脈でも注目されます。ただし足元の本業は営業赤字が続いており、株価はPBR0.30倍前後と「解散価値」を大きく下回る水準にあります。本記事では、双葉電子の事業内容・最新決算・財務(資産価値)と、株価の考え方を整理します。
※株価・指標は2026年6月19日終値・株探ベース、業績は会社開示(決算短信)ベースです。本記事は情報整理を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
ここからは株価の水準を2つの角度から整理します。まず会社四季報の業績予想をもとに、将来の利益成長が続いた場合に株価がどこまで上がり得るか(成長ベースのターゲット株価)を見る。続いて、現在の予想EPSや純資産に標準的なPER/PBRを当てはめた現時点の適正株価(理論株価)を確認し、両者をあわせて総合的に判断します。
📌 この記事の結論(先に要点)
- 投資スタンス:中立〜やや慎重(蛍光表示管・電子部品メーカー、今期赤字予想でPBR0.30倍と解散価値を大きく下回る)
- 目標株価レンジ:490円〜890円(BPS1,975.55円/弱気PBR0.25倍〜強気PBR0.45倍)
- 中立シナリオ:約590円(現状株価596円・PBR0.30倍前後の水準)
- 最大リスク:今期最終赤字予想と本業の収益力低下、低PBRが長期間是正されないバリュートラップの可能性
※株価596円・今期はEPS予想がマイナスのためPERは算出不可・PBR0.30倍・配当利回り-・時価総額約253億円(執筆時点)。数値は株探等の公開情報を確認のうえ整理。目標株価は前提付きの参考値です。
| シナリオ | 想定PBR | 目標株価 | 現値596円との差 |
|---|---|---|---|
| 弱気 | 0.25倍 | 約490円 | −18% |
| 中立 | 0.30倍 | 約590円 | −1% |
| 強気 | 0.45倍 | 約890円 | +49% |
1. 双葉電子工業はどんな会社か
双葉電子工業は1948年創業の電子部品・デバイスメーカー。ラジコン用プロポーショナルシステム(無線送受信機=プロポ)で世界的なシェアを持つほか、蛍光表示管(VFD)や有機ELなどの表示デバイス、各種電子部品、金型・成形などを手がけています。ラジコン/ドローンの無線制御技術を背景に、「ドローン関連」のテーマでも取り上げられます。
2. ドローン事業の深掘り――「ラジコンのFutaba」が無人航空機へ
双葉電子工業(ブランド名Futaba)は、本セクションで取り上げる7銘柄のなかで最もドローンとの距離が近い会社です。ホビー用ラジコンの送信機(プロポ)で世界トップクラスのシェアを長年握り、その無線・制御技術を産業用ドローン(無人航空機)へと展開しています。ここでは公式情報や各種報道をもとに、同社のドローン事業の中身を整理します。
① 3つの柱と「ラジコン機器」の位置づけ
同社は「蛍光表示管」「金型用部品」「ラジコン機器」の3分野を専門とし、いずれもシェアトップクラスを掲げる専門メーカーです。このうちラジコン機器が、ドローン・無人航空機事業の母体にあたる。一般消費者には「ラジコン送信機ブランドFutaba」として馴染みが深く、ホビー用プロポでは世界トップクラスのシェアを誇る。この無線・サーボ・制御の蓄積が、産業用ドローンへの応用の土台になっています。
② 産業用ドローンへの応用――18チャンネル送信機「FMT-04」など
同社は産業用ドローンを遠隔操縦するための18チャンネル送信機「FMT-04」を開発・投入するなど、ホビーで培った無線技術を産業領域に応用しています。同社の産業用送信機は、長時間の定点監視・捜索・放送・医療物資の搬送といった過酷な用途でも安定した通信を実現することを訴求しており、機体メーカーに対し送信機・受信機・産業用サーボ・無線通信器をパッケージで供給する体制を整えつつある。
③ ソフトバンクとの協業と「無人航空機市場への部材供給」
双葉電子は通信事業者との協業も進めてきました。携帯通信網(LTE)対応の通信モジュールを搭載し、遠隔地からでも飛行・制御できるドローンの共同開発に取り組むなど、携帯回線を使った長距離・広域運用(いわゆる「ドローン前提社会」構想)の一翼を担ってきました。さらに同社は、産業用サーボや無線通信器といった得意製品群を国内外の無人航空機関連企業へ供給し、機体そのものだけでなく「無人航空機市場全体」への部材供給で成長を図る方針を示しています。
④ ドローン関連株としての魅力と限界
「ドローンの操縦・制御」という分かりやすいコア技術を持つため、ドローンテーマが盛り上がる局面では資金が集まりやすい銘柄です。一方で、ドローン事業は会社全体から見ればまだ育成段階であり、足元の業績は蛍光表示管・金型といった既存事業の構造改革局面にあります。次の決算・株価のセクションで触れるとおり、業績面では赤字が続く見通しで、ドローン事業の成長がそれを補えるかが中期の焦点となります。
3. 最新決算(2026年3月期)の要点
2026年3月期は、本業の営業損益が赤字(▲22.8億円)となる一方、最終損益は特別要因などにより黒字(+25.2億円、EPS59.5円)に転換しました。ただし2027年3月期の会社予想は、売上こそ微増(450億円、+4.7%)を見込むものの、営業赤字が継続し、最終損益は再び赤字(▲39.0億円、EPS▲92.0円)となる計画です。
4. 今後の見通しと事業再構築
双葉電子は、不採算事業の見直しや構造改革を進めながら、プロポ(無線)・表示デバイス・電子部品といった事業ポートフォリオの再構築を図っている段階です。ドローン・ラジコンの無線制御技術は中長期のテーマ性がある一方、現時点では本業の黒字化が最大の課題であり、業績面の不確実性が高い状況です。
- ① ドローン・ラジコンの無線制御:プロポ技術を背景に、産業用ドローン等の制御領域での展開余地。
- ② 表示デバイス・電子部品:車載・産業向けなどの需要を取り込めるか。
- ③ 構造改革による黒字化:不採算事業の整理とコスト構造の改善が当面の最重要課題。
会社四季報で見る双葉電子工業――「PER法不成立」の現実とPBR0.3倍に映る再建シナリオ
会社四季報(2026年3集・夏号/2026年6月17日発売)で双葉電子工業を読むと、この銘柄が三菱重工のような「成長率を将来に延ばしてターゲット株価を出す」タイプとはまったく異なる局面にあることが分かります。以下は四季報の数値・コメントをそのまま転載したものではなく、開示された事実を当研究所が独自に整理し直したものです。
① なぜ単純なPER法でターゲット株価が出せないのか
四季報の業績欄を追うと、双葉電子は直近5期にわたり本業の営業損益が赤字で推移しています。今期(2027年3月期)の会社・四季報予想も営業赤字、純損益も大幅な赤字見通しとされ、来期(2028年3月期)の1株利益もほぼゼロ近辺の予想です。1株利益(EPS)がマイナスやゼロ近辺だと、「EPS×想定PER=株価」という計算式そのものが成り立ちません。実際、四季報の予想PER欄も算出不能(「―」)となっています。つまりこの銘柄は、利益成長を前提にしたターゲット株価の試算が現時点では機能しないのが実情です。
※2026年3月期はEPSがプラスに見えるが、これは政策保有株式の売却などに伴う一過性の特別利益で純利益が押し上げられたためで、本業(営業損益)は赤字のままである点に注意したいところです。営業利益ベースでは一貫して赤字が続いており、ここが回復しない限り「稼ぐ力」が戻ったとは評価しにくいといえます。
② 株価の拠り所は「資産価値」――PBR0.3倍をどう読むか
利益から株価を測れない以上、この銘柄を見るうえでの中心はバランスシート(資産価値)になります。四季報によれば、自己資本比率は約77%と非常に高く、有利子負債はゼロ、1株あたり純資産(BPS)は約1,976円。これに対して株価は600円前後で、実績PBRはおよそ0.30倍にとどまります。理論上は1株あたりの解散価値の3割程度しか株価がついていない計算で、典型的な「資産バリュー株(純資産に対して大幅に割安)」の様相です。四季報スコアでも規模は相対的に高評価の一方、収益性・割安度の評価は低く、「資産は厚いが稼げていない」という状態が数字に表れています。
③ 黒字化(ターンアラウンド)に必要な条件と、実現時の条件付き試算
したがって投資妙味の鍵は「いつ・どうやって営業黒字に戻るか」に尽きます。四季報のコメントから読み取れる再建の論点を当研究所なりに整理すると、おおむね次の3点になります。
- 不振事業の縮小・最適化:主力市場である韓国の生産器材事業の規模を縮小し、北米やインドへ生産合理化機器の育成をシフトする構造改革を進めています。
- 固定費・開発費の重さ:電子機器は米国EMS向けが伸びる一方、開発費負担が重く赤字を消し切れていません。コスト構造の見直しが黒字化の前提になります。
- 基幹システム刷新と大型減損:経営基盤の再構築を狙った基幹システム刷新に伴い大型の減損計上が見込まれており、これは一過性の痛みですが、止血後の収益改善が出てくるかが分岐点になります。
仮にこれらの改革が奏功し、四季報が示す売上規模(450〜465億円程度)で営業利益率が5%程度まで回復したと「条件付き」で置くと、営業利益は20〜23億円規模となります。税負担などを考慮した純利益から1株利益を粗く見積もると概ね40〜50円程度になり得ます。そこに資産バリュー株として保守的なPER12〜15倍を当てると、株価の理論的な目安は500〜750円前後となります。さらに市場がPBRの是正(0.3倍→0.5倍程度への切り上がり)を織り込めば、純資産1,976円ベースで1,000円近辺も視野に入ります。ただしこれはあくまで「黒字化が実現したら」という前提条件付きの試算であり、現時点の実力を示すものではありません。
💡 ポイント
双葉電子は「成長率を将来に延ばして株価を出す」銘柄ではなく、厚い純資産(PBR0.3倍・無借金・自己資本比率77%)を背景にした資産バリュー株として見るのが筋です。投資判断の核心は業績そのものより「営業黒字へのターンが本当に起きるか」という一点に集約され、構造改革と減損後の収益改善が確認できるかどうかが株価の触媒になります。
⚠️ 投資目線での注意
上記の数値はいずれも四季報のコメントや予想数値をそのまま転載したものではなく、開示された事実をもとに当研究所が独自に整理・試算した参考値です。とりわけ黒字化シナリオの株価目安は「営業黒字への回復」という前提が満たされた場合の条件付き試算にすぎず、前提が崩れれば成立しません。赤字企業への投資は減損や追加損失のリスクを伴うため、最終的な投資判断は必ず最新の有価証券報告書・決算短信など一次情報を確認したうえで行ってください。
ここからは双葉電子工業の株価の考え方を整理します。同社は赤字基調でPER法が使いにくいため、会社四季報の業績・財務をもとに、資産価値(PBR)と黒字化(ターンアラウンド)シナリオを軸に見ていきます。
5. 株価の考え方――PER法は不成立、PBR(資産価値)で見る
2027年3月期が最終赤字予想のため、「会社予想EPS×PER」による理論株価の試算は成立しません。そこで、純資産(解散価値)に着目したPBR(株価純資産倍率)法で、参考レンジを整理します。現在のBPS(1株純資産)は約1,987円、PBRは約0.30倍で、株価は純資産を大きく下回っています。
PBRが1倍を大きく下回るのは、市場が「資産はあるが本業で利益を生めていない」と評価しているためです。黒字化や資本効率改善が進めばPBRの是正(株価上昇)余地がある一方、赤字が続けば純資産そのものが目減りするリスクもあります。
6. 投資する際に押さえておきたいリスク
- ① 本業赤字の継続:営業赤字が続いており、黒字化の時期が見通しにくいです。
- ② 純資産の毀損リスク:赤字が続けばBPS(純資産)自体が目減りし、PBRの「割安感」が崩れる可能性。
- ③ 時価総額が小さい:時価総額253億円規模の小型株で、流動性・値動きの振れに注意。
- ④ テーマと業績の乖離:ドローン無線のテーマ性はありますが、現時点で業績寄与は限定的です。
中期経営計画から読み解く現在地と未来予測
① 2024-2026年度 中期経営計画の数値目標
双葉電子工業は2024年5月に公表した「2024-2026年度 中期経営計画」で、構造改革の完遂とソリューション領域の拡大を掲げています。最終年度である2027年3月期(2026年度)の経営目標として、連結売上高575億円、営業利益15億円を設定。あわせて事業再生計画「Re-Futaba -考動-」を走らせ、長期的にはROE8%、PBR1倍以上、配当性向30%以上を目指す方針です。
もっとも、足元は厳しい再建局面にあります。2025年3月期(FY2025)は売上高481億円(前期比▲14.6%)、営業利益▲13億円と5期連続の営業赤字、ROEは▲0.4%で着地しました。電子デバイス(VFD・有機EL)やラジコン・産業用通信機器など複数事業を抱える中、収益性の低い事業の整理と固定費削減が最優先課題となっています。
② 今後の期待値はどこにあるか
期待材料は「赤字からの脱却」という再建ストーリーそのものです。売上575億円・営業利益15億円という中計目標は、現状(赤字)からの黒字転換を意味し、構造改革が奏功して黒字化が見えてくれば、低PBR銘柄として見直し買いが入る余地があります。PBR1倍以上を長期目標に掲げている点も、資本効率改善への意思表示といえます。
事業面では、タッチパネル・面実装関連や産業用デバイス、無線通信モジュールなどがソリューション領域の柱です。これらが成長軌道に乗り、不採算事業の整理が進むかどうかが投資判断の分岐点になります。再生途上のため、まずは営業損益の黒字転換が実現するかを最優先で確認すべき局面です。
同社は「成長」よりも「事業再生・黒字転換」が現在地です。中計の売上575億円・営業利益15億円という数字は、まず黒字を取り戻すための通過点と捉えるのが妥当です。四半期ごとに営業損益が改善トレンドに乗っているか、構造改革費用が一巡したかを丁寧に確認するのが有効です。
5期連続営業赤字という実績があり、中計目標(営業利益15億円)の達成には不透明感が残ります。米国関税政策など外部環境の影響も受けやすく、黒字転換が後ろ倒しになれば再建シナリオへの失望につながりかねません。再生途上の銘柄として、業績の振れ幅が大きい点には十分な注意が必要です。
四季報・専門メディアから見る現状と評価
株価指標で市場評価を確認すると、双葉電子工業はPBR0.30倍(株価596円時点、時価総額約253億円)で取引されています。PBRが1倍を下回っており、利益や資産の水準に対して株価が割安に評価されている可能性がある一方、その割安さの背景(成長性や市況への警戒)を見極める必要があります。
会社四季報や専門メディアでは、こうした双葉電子工業の事業基盤・収益構造の強みと、競争環境や市況・コスト面の課題の両面が論点として取り上げられます。本記事の各章で整理してきた強みとリスクは、これら専門媒体の評価軸ともおおむね重なります。投資判断にあたっては、最新の四半期決算で示される利益動向と、会社が示す中期的な方針のアップデートを継続的に確認することが重要です。
総じて、現時点の双葉電子工業は、成長期待のある事業に取り組む一方で損益・財務面の課題を抱える先行投資フェーズにあり、黒字化と財務の持続可能性が株価評価の前提となります。指標の割安・割高だけでなく、事業の競争力と業績トレンドを合わせて見ていくことが、判断の精度を高めるうえで欠かせません。
※本記事の指標・数値は株探(かぶたん)等の公開情報をもとに執筆時点(2026年6月)で整理したものです。会社四季報オンラインおよびFACTA ONLINE等の専門メディアについては公開範囲の情報を参照しており、有料会員限定コンテンツの内容は含みません。最新の数値・評価は各社の最新開示・媒体で必ずご確認ください。
7. まとめ
双葉電子工業(6986)は、ラジコン/ドローン用プロポ(無線送受信機)で世界的に知られる電子部品メーカーで、ドローン関連テーマの一角です。ただし本業は営業赤字が続き、2027年3月期は最終赤字予想と業績の不確実性が高い状況です。株価はPBR0.30倍前後と解散価値を大きく下回り、資産価値(バリュー)面での妙味が意識される一方、赤字継続による純資産毀損リスクも併存します。収益力の回復(黒字化)が確認できるかが、株価評価の最大の分かれ目になります。
あわせて読みたい:本サイトの「ドローン関連株まとめ」セクター記事や、村田製作所・ソニーGなど電子部品系の個別銘柄記事もご参照ください。
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📄 参考・出典
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標・業績数値は執筆時点(2026年6月16日)のものです。適正株価の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

