NTT(9432)は、ドコモ・NTT東西・NTTデータグループなどを傘下に置く、国内通信最大手の持株会社です。固定電話と光回線で高いシェアを持ち、近年は法人向けIT・データセンター・次世代通信基盤「IOWN」へと事業の軸足を広げています。2026年3月期は増収を確保したものの、利益は横ばい圏にとどまりました。
NTTはどんな会社か
NTT(日本電信電話)は1985年に民営化され、1987年に上場した通信最大手の持株会社です。連結従業員はおよそ34万人で、財務大臣が約32%を保有する政府関与企業でもあります。2023年7月に1→25の株式分割を実施した結果、1株100円台で買える「お手頃な大型株」として個人投資家にも広く保有されています。
事業は、ドコモを中心とする「総合ICT」、海外法人IT・NTTデータを含む「グローバル・ソリューション」、NTT東西の「地域通信」、不動産・エネルギーなどの「その他」で構成されています。固定・モバイルの通信インフラを基盤に、法人向けITとデータセンターを成長領域に据えているのが特徴です。
💡 事業のポイント
NTTは安定したインフラ収益を土台に、予想配当利回り約3.7%・自己株保有率10%という株主還元の厚さが魅力の銘柄です。一方、主力ドコモは通信品質強化の費用負担で軟調が続いており、利益成長は緩やかです。成長株というより「高配当・ディフェンシブのインカム株」として捉えるのが実態に近いといえます。
最新決算(決算短信)の要点
NTTが2026年5月8日に発表した2026年3月期決算によると、売上高は14兆4,091億円(前期比+5.1%)、営業利益1兆7,062億円(同+3.4%)、純利益1兆370億円、EPS12.6円となりました。増収増益は確保したものの、利益の伸びは小幅にとどまり、年間配当は5.3円へと増配となっています。
NTTの財務面で特徴的なのは、自己資本比率が20.8%と低く、有利子負債が15兆円を超える点です。これは通信インフラへの巨額投資を借入で賄うビジネスモデルゆえですが、金利上昇局面では支払利息の増加が利益を圧迫しやすい構造でもあります。実際、四季報も「支払利息膨らむ」と指摘しています。
営業キャッシュフローは1兆4,851億円と潤沢で、年2兆円超の設備投資をこなしながら配当と自己株買いを続ける原資を生み出しています。
💡 決算のポイント
2026年3月期は増収増益を確保したものの、利益の伸びは小幅でした。データセンター譲渡益の縮小や、ドコモの通信品質強化費用が重しとなっています。自己資本比率20.8%・有利子負債15兆円超という財務構造から、金利上昇が支払利息を通じて利益を圧迫しやすい点も押さえておきたいポイントです。
中期経営戦略と成長戦略
NTTは2026年5月8日、中期経営戦略の一部見直しを発表しました。注目すべきは、連結EBITDA4兆円の達成目標時期を、従来の2027年度から2030年度へと先送りした点です。国内外の法人向けIT事業の拡大で巻き返しを図る構えですが、当初計画から後ずれした事実は冷静に受け止める必要があります。
中期経営戦略では「新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」を掲げ、お客さま体験(CX)と従業員体験(EX)の高度化を柱に据えています。技術面の中核は次世代通信基盤「IOWN」で、光技術を使った低消費電力・大容量のネットワークとして、データセンターやAI時代の通信を支えるゲームチェンジャーと位置づけられています。
株主還元では、2027年3月末までに最大14億株・2,000億円を上限とする自己株買いを進めています。発行株数の減少はEPSの下支え要因となるため、増配と並んで株価の支えになりやすい施策です。
💡 中計のポイント
EBITDA4兆円目標が2027年度から2030年度へ後ずれした点は、成長スピードの実態を映す重要な事実です。一方で、IOWNという中長期テーマ、最大2,000億円の自己株買い、継続増配は株価の下支え材料です。短期の急騰より、配当を受け取りながら中長期で構える銘柄性格といえます。
事業セグメントと収益構造
2026年3月期のセグメント別売上高と部門利益を整理すると、ドコモを含む総合ICT事業が収益の柱であることが分かります。
総合ICT事業(ドコモ中心)が利益の最大の柱ですが、通信品質強化に向けた費用負担で足元は軟調が続いています。一方、NTTデータを含むグローバル・ソリューション事業は国内SIが好調で、ここが成長の牽引役と位置づけられています。地域通信(NTT東西)は光サービスが堅調なほか、レガシーの銅線設備を「資産」として活用する余地も話題になっています。
最近の注目トピック・ニュース
直近の報道や会社の発信から、投資判断に関わりそうなトピックを整理します。
- IOWN関連の進展――次世代通信基盤IOWNが「通信のゲームチェンジャー」として関連銘柄とともに注目されています(会社四季報オンライン/2026年5月31日)。
- 高配当株としての評価――四季報最新号の解説で、NTTが「本当に買える高配当株」の文脈で取り上げられています(会社四季報オンライン/2026年6月10日)。
- 次期グループトップ人事――NTTの次期トップ候補に関する報道が出ており、経営体制の行方が注目されています(東洋経済オンライン/2026年5月15日)。
- NTT東西の銅線「埋蔵金」――固定電話網のレガシー銅線が、資産売却益などの形で価値を生む可能性が議論されています(東洋経済オンライン/2025年10月9日)。
これらのトピックは、NTTが「安定したインフラ収益+中長期のIOWNテーマ+手厚い株主還元」という三本立てで評価されていることを示しています。一方、ドコモのシェア縮小や品質問題といった懸念材料も並存しており、強気・弱気の材料が拮抗している点を踏まえる必要があります。
EPSの推移
NTTのEPSは、株式分割後の水準で12円前後の横ばい圏で推移しています。会社四季報および決算短信のデータをもとに整理します。
EPSは成長というより横ばい圏での推移で、2027年3月期は会社予想ベースで小幅な減益が見込まれています。NTTの投資妙味は利益成長よりも、配当利回りと自己株買いによる総還元にある点が、この表からも読み取れます。
期待されるターゲットプライスの試算
NTTは利益が横ばい圏のため、成長率を大きく置く試算はなじみません。ここでは横ばい〜小幅成長を前提に、PERの水準を変えた場合のターゲットプライスのレンジを当研究所が独自に整理します。株価は将来の業績を先取りして動くため、これは「いつの株価か」を当てるものではなく、前提次第で取り得る株価の幅を示すものと捉えてください。
出発点となるEPSを約12.6円と置き、利益の伸びとPERの組み合わせを3つのシナリオで想定しました。
保守シナリオ――利益が横ばいにとどまり、PERも現状並みに評価されるケースです
標準シナリオ――法人IT・IOWNが寄与して小幅増益となり、PERがやや切り上がるケースです
強気シナリオ――成長戦略が実を結び増益基調に転じ、PERが見直されるケースです
NTTの予想PERは足元で約13倍と、過去のレンジ(実績PER高値平均13.7倍・安値平均11.0倍)の範囲内にあります。KDDI(約15倍)やソフトバンク(約18倍)と比べると割安で、PBRも1.2倍と低めです。高配当・割安という評価が、株価の下支えになりやすい銘柄性格です。
⚠ ターゲットプライスはあくまで前提次第
上記はEPSの伸びと想定PERという前提を置いた独自のシミュレーションであり、特定の時期の株価を予測・保証するものではありません。NTTは利益が横ばい圏で金利上昇の影響も受けやすく、前提が崩れれば結果は変わります。1つの数字を信じ込まず、レンジ(幅)で捉えることをおすすめします。
同業他社比較と株価水準
NTTは通信大手の一角で、KDDI・ソフトバンク・楽天Gと比較されます。会社四季報オンラインのデータをもとに主要指標を並べます。
NTTは3社のなかでPER・PBRとも最も低く、バリュー寄りの位置づけです。配当利回りはソフトバンクに次ぐ水準で、KDDIを上回ります。安定したインフラ収益と割安感を重視するなら、通信3社のなかでNTTは検討に値する選択肢といえます。
株価指標と需給
NTTの株価は2026年に入って軟調で、年初来安値圏での推移となっています。主な株価指標を整理します。
投資する際に押さえておきたいリスク
NTTへの投資を検討するうえで、特に意識しておきたいリスクを整理します。
- 金利上昇――有利子負債が15兆円超と大きく、金利上昇は支払利息の増加を通じて利益を圧迫します。
- ドコモの競争激化――シェア縮小や通信品質問題への対応費用が、主力事業の利益を圧迫する可能性があります。
- 利益成長の鈍さ――EBITDA4兆円目標の後ずれが示すように、利益の伸びは緩やかで、株価上昇の勢いは限られやすい点に注意が必要です。
- 政策・規制リスク――政府が大株主であり、通信料金や事業運営が政策・規制の影響を受けやすい業態です。
- データセンター譲渡益などの一過性要因――前期に寄与した譲渡益が縮小すると、利益の押し下げ要因になります。
指標とニュースの読み方
NTTのような通信インフラ株を見るうえでは、目先の株価の上下より、配当の持続性と総還元(配当+自己株買い)の規模を確認することが大切です。決算では、ドコモの収益動向、法人IT(NTTデータ)の伸び、支払利息の水準などをチェックすると、業績のトレンドをつかみやすくなります。
高配当株は金利動向に株価が反応しやすいため、国内金利のニュースとあわせて見ておくと、値動きの背景を理解しやすくなります。
投資スタンスの整理
NTTは利益横ばい圏の一方、予想配当利回り約3.7%・PBR1.2倍と割安感があり、自己株買いも継続しています。したがって、短期の大きな値上がりを狙うより、配当を受け取りながら中長期で保有する「インカム重視」のスタンスが向いている銘柄といえます。1株100円台で買える点も、少額からの分散投資に適しています。
継続ウォッチのチェックポイント
- ドコモの契約数・解約率と通信品質強化費用の動向
- 法人IT・NTTデータの成長率
- 国内金利の動向と支払利息の水準
- 自己株買いの進捗(最大14億株・2,000億円)
- EBITDA4兆円目標(2030年度)に向けた進捗
- 配当の増配継続と総還元の規模
中期経営計画から読み解く現在地と未来予測
NTTの現在地は、2026年3月期に売上高14.41兆円・営業利益1.71兆円(前期比+3.4%)・最終利益1.04兆円を確保しました。増益基調を維持しており、事業が着実に利益を生み出している局面といえます。
会社が公表した2027年3月期予想は、売上高15.06兆円・営業利益1.71兆円(前期比+0.2%)・最終利益9,800億円(前期比−5.5%)という内容です。前期並みの利益水準を見込む、横ばい圏の計画です。
財務面では、2026年3月期末の自己資本比率20.8%、1株純資産(BPS)119.47円、有利子負債倍率0.58倍となっています。自己資本比率は低めの水準にあり、財務の安定性という観点では注意が必要です。配当は5.3円から5.4円への増配を計画しており、株主還元にも積極的な姿勢がうかがえます。
未来予測の観点では、現在の収益力を維持・拡大しながら、成長投資と株主還元のバランスをどう取っていくかが中期的な企業価値向上のポイントとなります。
四季報・専門メディアから見る現状と評価
株価指標で市場評価を確認すると、NTTはPER12.0倍・PBR1.21倍・配当利回り3.74%(株価144.4円時点、時価総額約13兆755億円)で取引されています。PBRは1倍を上回るものの過度な割高感はなく、市場は同社の収益力を相応に評価しているとみられます。
会社四季報や専門メディアでは、こうしたNTTの事業基盤・収益構造の強みと、競争環境や市況・コスト面の課題の両面が論点として取り上げられます。本記事の各章で整理してきた強みとリスクは、これら専門媒体の評価軸ともおおむね重なります。投資判断にあたっては、最新の四半期決算で示される利益動向と、会社が示す中期的な方針のアップデートを継続的に確認することが重要です。
総じて、現時点のNTTは、本業の収益力を土台に着実に企業価値を積み上げている局面にあり、株価指標も事業の実態を反映した水準にあると整理できます。指標の割安・割高だけでなく、事業の競争力と業績トレンドを合わせて見ていくことが、判断の精度を高めるうえで欠かせません。
※本記事の指標・数値は株探(かぶたん)等の公開情報をもとに執筆時点(2026年6月)で整理したものです。会社四季報オンラインおよびFACTA ONLINE等の専門メディアについては公開範囲の情報を参照しており、有料会員限定コンテンツの内容は含みません。最新の数値・評価は各社の最新開示・媒体で必ずご確認ください。
まとめ
NTTは、ドコモ・NTT東西・NTTデータを擁する通信最大手で、安定したインフラ収益と手厚い株主還元を兼ね備えた銘柄です。2026年3月期は小幅な増収増益にとどまり、中期経営戦略ではEBITDA4兆円目標が2030年度へ後ずれするなど、利益成長は緩やかです。
一方、予想配当利回り約3.7%・PBR1.2倍と割安感があり、自己株買いも継続しています。成長株というより、配当を軸に中長期で構えるインカム株として捉えるのが実態に近いといえます。
💡 この記事のポイント
NTTは2026年3月期にEPS12.6円・配当5.3円と小幅増益・増配を実現しました。利益は横ばい圏ですが、予想配当利回り約3.7%・PBR1.2倍と割安で、最大2,000億円の自己株買いも継続中です。EBITDA4兆円目標の後ずれは留意点ですが、インカム重視の中長期保有に向く銘柄といえます。
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📄 参考・出典
- NTT 2026年3月期 決算短信・決算補足資料(2026年5月8日発表)
- NTTグループ中期経営戦略・一部見直しに関するお知らせ(2026年5月8日)
- 会社四季報オンライン(2026年3集・夏号/2026年6月17日発売)
- 株探(kabutan.jp)業績・財務データ
- 東洋経済オンライン(2026年5月15日・2025年10月)ほか公開報道
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

