ビットコイントレジャリー企業とは?~米国の代表事例とメタプラネットなど国内企業を網羅~【2026年6月】

ビットコイントレジャリー企業とは|億り人研究所

「ビットコインを買うために株を発行し、調達した資金でひたすらビットコインを買い増す」――そんな一見すると風変わりな経営戦略を掲げる上場企業が、2024年から2026年にかけて世界中で急増しました。こうした企業は「ビットコイントレジャリー企業」、あるいは保有資産をデジタル資産まで広げて「DAT企業(Digital Asset Treasury=デジタル資産トレジャリー企業)」と呼ばれます。

その先駆けが米国のStrategy(旧MicroStrategy)であり、日本では東証スタンダード上場のメタプラネット(3350)が「日本初のビットコイン・トレジャリー企業」を名乗って一躍注目を集めました。本記事では、ビットコイントレジャリー企業とは何かという基本から、米国の代表的な事例の網羅的な整理、そして国内で同じ方針を取る企業の一覧までを、2026年6月時点の公開情報をもとにまとめます。

目次

ビットコイントレジャリー企業とは何か――「保有」と「戦略」の違い

ビットコイントレジャリー企業とは、ひとことで言えば「ビットコインをバランスシート(貸借対照表)の中核資産として保有し、その積み増し自体を経営戦略の柱に据えている上場企業」のことです。野村総合研究所(NRI)や日本経済新聞も、こうした企業群を「暗号資産トレジャリー企業(DAT企業)」と整理しています。

ここで重要なのは、「ただ暗号資産を少し持っている会社」と「トレジャリー企業」はまったく別物だという点です。CoinPostの解説によれば、DAT企業とは「デジタル資産を増やすこと自体を戦略の中心に据えている企業」であり、本業の余剰資金で少額のビットコインを保有しているだけの企業は該当しません。つまり、ビットコインの保有枚数を増やすこと(1株あたりのビットコイン保有量を高めること)を、株主価値向上の主目的に掲げているかどうかが分かれ目になります。

💡 「BTCイールド」という独自の経営指標

トレジャリー企業の多くは、売上高や利益だけでなく「1株あたりが何BTCに相当するか」「その値が前期比でどれだけ増えたか」を独自のKPIとして開示します。メタプラネットなどが用いる「BTCイールド」がその代表例で、増資で株式数が増えても、それ以上のペースでビットコインを買い増せれば「1株あたりBTC」は増加し、既存株主の持ち分価値が高まるという考え方です。

なぜ企業はビットコインを買い続けるのか――仕組みと狙い

トレジャリー企業がビットコインを買い増す背景には、いくつかの共通した狙いがあります。第一に、法定通貨の価値が中長期的に希薄化していくリスク(インフレ・通貨安)に対するヘッジです。供給量に上限のあるビットコインを「価値の保存手段(デジタルゴールド)」と位置づけ、現金で持つよりも長期的な購買力を守れるという考え方が根底にあります。

① 株式市場を「資金調達装置」として使う

トレジャリー企業の最大の特徴は、株式や転換社債(CB)、新株予約権などを発行して資金を調達し、その資金でビットコインを購入する点にあります。株価がビットコインの保有価値(ネット・アセット・バリュー)を上回って取引されている(プレミアムが付いている)うちは、株式を発行してビットコインを買うほど「1株あたりBTC」が増え、理論上は株主価値が高まります。この循環がうまく回ると、株価とビットコイン保有量が相互に押し上げ合う構造になります。

② 投資家にとっては「株を通じた間接的なBTC投資」

投資家側から見ると、トレジャリー企業の株式は「証券口座のまま、株式としてビットコインへ間接的に投資できる」手段になります。暗号資産取引所の口座を開かずに、NISAや特定口座で売買できる銘柄を通じてビットコインの値動きに連動した値上がり益を狙える点が、個人投資家に支持されてきました。ただし後述するように、株価はビットコイン価格そのものよりも大きく上下に振れやすく、プレミアムの剥落リスクを伴います。

⚠ レバレッジが効くということは、下落も増幅されるということ

株式発行や社債で調達した資金でビットコインを買う構造は、上昇局面では株主価値を大きく押し上げます。しかし、ビットコイン価格が下落すると含み損が膨らみ、株価のプレミアムが剥落して株価がビットコインの値下がり以上に下落することもあります。実際、複数のトレジャリー企業が決算で多額の評価損や純損失を計上した局面もありました。トレジャリー株は「ビットコインのレバレッジ版」になりやすい点を理解しておく必要があります。

米国の代表的なビットコイントレジャリー企業を網羅する

ビットコイントレジャリーという経営モデルは、米国企業が世界をリードしています。CoinGeckoの集計では、2026年時点でビットコインを財務保有する事業体は世界188、37か国に広がり、その保有総量は約190万BTC(ビットコイン総供給量の約9%)に達しています。ここでは、米国の主要なトレジャリー企業を整理します。

Strategy(旧MicroStrategy/MSTR)――元祖にして世界最大

この分野の元祖が、マイケル・セイラー氏が率いるStrategy(旧MicroStrategy)です。2020年8月から本格的にビットコイン投資戦略を開始し、社名まで「Strategy」に変更してビットコイン中心の財務戦略を前面に押し出しました。CoinPostの2026年版ランキングによれば、同社の保有量は約84万BTC規模(平均取得単価は7万ドル台半ば)に達し、上場企業によるビットコイン保有総量のおよそ8割を一社で占めるとされます。まさに世界最大のビットコイン保有企業です。

Twenty One Capital(XXI)――トレジャリー特化の新興大手

Twenty One Capital(ティッカー:XXI)は、ステーブルコイン大手のTether、取引所のBitfinex、決済アプリStrikeのジャック・マラーズCEOらが支援する、ビットコイントレジャリーに特化した新興企業です。2025年以降に急速に保有を積み増し、約43,514BTCを保有して世界有数の規模となりました。CoinMarketCapの集計でも、上場企業の保有シェアでStrategyに次ぐ上位に位置づけられています。

その他の米国の主要DAT企業

このほか米国では、ビットコインマイニング大手のMARA Holdings(旧Marathon Digital)が自社採掘分を中心に大量のビットコインを保有しているほか、Strive、American Bitcoin、Nakamoto Inc、Bitcoin Standard Treasury Companyなど、トレジャリーを掲げる新興企業が相次いで上場・参入しています。また、本来は事業会社であるテスラも約11,509BTC(10-Q開示)を保有し、上場企業ランキングで世界10位台に位置しています。

企業名(ティッカー) 保有BTC(概数) 位置づけ
Strategy(旧MicroStrategy/MSTR) 米国 約84万BTC 世界最大・元祖。上場企業保有の約8割を占める
Twenty One Capital(XXI) 米国 約4.4万BTC トレジャリー特化の新興大手。Tether等が支援
MARA Holdings(MARA) 米国 数万BTC規模 マイニング大手。自社採掘分を保有
テスラ(TSLA) 米国 約1.15万BTC 事業会社。10-Qで保有を開示
Strive/American Bitcoin/Nakamoto 等 米国 各社で拡大中 トレジャリーを掲げる新興企業群

※保有BTCは各社の開示時点により変動します。本記事の数値は2026年6月時点で報じられた概数であり、最新の正確な枚数は各社のIR・開示資料をご確認ください。

世界の上場企業ビットコイン保有ランキング(2026年6月時点)

複数のメディアやデータサイトが、上場企業のビットコイン保有ランキングを公表しています。CoinPostやCoinMarketCap等の集計をもとに、2026年6月時点で報じられた上位の顔ぶれを整理すると、次のようになります。世界第1位は圧倒的な規模を誇るStrategy、第2位はTwenty One Capital、そして第3位に日本のメタプラネットが食い込んでいる点が大きな特徴です。

順位 企業名 保有BTC(概数)
1位 Strategy(旧MicroStrategy) 米国 約76万〜84万BTC
2位 Twenty One Capital(XXI) 米国 約4.4万BTC
3位 メタプラネット 日本 40,177BTC
(参考) MARA Holdings 米国 数万BTC規模
(参考) テスラ 米国 約1.15万BTC

日本のメタプラネットが世界第3位という上位に位置していることは、国内の個人投資家にとって特に注目すべきポイントです。アジアを代表するビットコイントレジャリー企業として、国内外のメディアで頻繁に取り上げられています。

国内で同じ方針を進める企業――筆頭はメタプラネット

米国発のトレジャリーモデルは、日本の上場企業にも急速に広がりました。NRIの整理によれば、メタプラネットが日本初のビットコイン・トレジャリー企業として名乗りを上げて以降、計30社程度の上場会社がビットコインの購入・保有を発表したとされます。ここでは、トレジャリー戦略を明確に掲げる国内の代表的な企業を紹介します。

メタプラネット(3350)――国内最大・世界第3位

国内のビットコイントレジャリー企業の筆頭が、東証スタンダード上場のメタプラネット(証券コード3350)です。もともとホテル運営などを手がけていた同社は、2024年4月にビットコインを軸とした財務戦略へと大きく舵を切り、「日本版マイクロストラテジー」とも呼ばれるようになりました。同社の開示によれば、2026年5月末時点でのビットコイン保有量は40,177BTC(保有純資産およそ4,576億円)に達し、世界第3位・日本第1位のビットコイン保有企業へと成長しています。

同社は「2025-2027 Bitcoin Plan」と呼ばれる中期計画を掲げ、2026年末までに10万BTC、2027年末までにさらなる積み増しを目指すという野心的な目標を公表しています。2026年第1四半期には5,075BTCを追加取得するなど、増資や新株予約権による資金調達を機動的に活用しながら保有量を拡大してきました。一方で、ビットコイン価格の下落局面では純損失を計上するなど、業績がビットコイン価格に大きく左右される点には注意が必要です。

リミックスポイント(3825)・ANAPホールディングス(3189)――国内2〜3番手

メタプラネットに続く国内勢として、エネルギー事業などを手がけるリミックスポイント(3825)と、アパレル発祥のANAPホールディングス(3189)が挙げられます。両社は2026年にかけてビットコインの追加購入を相次いで発表し、国内2〜3番手の保有量を競う展開となりました。報道によれば、リミックスポイントが追加購入でANAPを抜いて国内3位に浮上した局面もあるなど、国内勢のランキングは流動的です。

その他の国内トレジャリー関連企業

このほか、ネイルサロンなどを手がけるConvano(コンヴァノ)が763BTC規模を保有して世界ランキングの一角に入るなど、本業とは異なる領域からトレジャリー戦略へ参入する企業が増えています。前述のとおり国内では30社規模の上場企業がビットコインの保有・購入を表明しており、今後も顔ぶれは入れ替わっていくとみられます。

企業名(コード) 市場 保有BTC(概数) 備考
メタプラネット(3350) 東証スタンダード 40,177BTC 国内最大・世界第3位。日本初の上場BTCトレジャリー企業
リミックスポイント(3825) 東証スタンダード 拡大中 エネルギー事業等。国内上位を競う
ANAPホールディングス(3189) 東証スタンダード 1,400BTC超 アパレル発祥。子会社経由で買い増し
Convano(6574) 東証 763BTC規模 ネイルサロン等を運営
(参考) 国内で計30社規模が保有・購入を表明

※保有枚数・順位は各社の開示や報道時点により変動します。コード・市場区分を含め、最新情報は各社IRおよび証券会社の銘柄情報でご確認ください。

投資としてどう向き合うか――株を通じてBTCに投資する意味

ビットコイントレジャリー企業の株式は、「暗号資産そのものを直接保有せずに、株式としてビットコインの値動きに投資できる」点が魅力です。証券口座でなじみのある形で売買でき、銘柄によっては信用取引や各種口座の対象になる点も、暗号資産の現物購入とは異なる利便性です。

一方で、トレジャリー株の株価は「ビットコイン価格」と「企業が持つプレミアム(純資産に対する株価の上乗せ)」の掛け算で決まります。ビットコインが上昇し、かつプレミアムが維持・拡大している局面では株価は大きく上昇しますが、ビットコインが下落したり、増資による希薄化やプレミアム剥落が起きると、ビットコイン以上に株価が下落することもあります。「ビットコインに連動する安全な代替品」ではなく、「ビットコインに企業固有のリスクとレバレッジが上乗せされた商品」だと理解することが大切です。

💡 直接保有・ETF・トレジャリー株の使い分け

ビットコインへの投資手段は、(1)取引所での現物購入、(2)ビットコイン現物ETF、(3)トレジャリー企業の株式、の大きく3つに整理できます。値動きへの素直な連動を重視するなら現物やETF、株式市場の枠内でレバレッジ的な値上がりも狙うならトレジャリー株、という使い分けが考えられます。どれが正解という話ではなく、それぞれのリスクとコスト構造の違いを理解したうえで選ぶことが重要です。

ビットコイントレジャリー企業の主なリスク

  • ビットコイン価格の変動リスク:保有資産の大半がビットコインのため、価格下落がそのまま純資産・業績の悪化に直結します。
  • プレミアム剥落リスク:株価が純資産を上回るプレミアムは、市況や信認の変化で急速に縮小することがあり、株価がBTC以上に下落する要因になります。
  • 希薄化リスク:増資や新株予約権でビットコインを買い増す構造のため、1株あたり価値が想定どおり増えなければ既存株主の持ち分が薄まります。
  • 財務・資金繰りリスク:社債やレバレッジを用いる企業では、価格急落時に返済・担保の負担が重くなる可能性があります。
  • 規制・上場制度リスク:暗号資産トレジャリーに対する会計基準や上場維持基準の取り扱いは各国で議論が続いており、制度変更が株価に影響する可能性があります。
  • 一過性の損益:ビットコインの評価損益や売却損益により、本業の実力とは離れた純損益が計上される点に注意が必要です。

まとめ――新しい資金調達モデルとして注視を

ビットコイントレジャリー企業(DAT企業)は、ビットコインの保有量を増やすこと自体を経営戦略の核に据え、株式市場を資金調達装置として活用する新しいタイプの上場企業です。米国ではStrategyを筆頭にTwenty One Capitalなどが世界をリードし、日本ではメタプラネット(3350)が世界第3位・日本第1位の規模まで成長し、国内勢の筆頭格となっています。

株式を通じてビットコインに間接投資できる利便性がある一方で、価格変動・プレミアム剥落・希薄化といったリスクが重なり、株価はビットコイン以上に大きく振れやすいのが実態です。トレジャリー株に向き合う際は、各社のビットコイン保有量や1株あたりBTC、調達手段、財務の健全性を継続的に確認し、「ビットコインのレバレッジ商品」であることを踏まえて、自分のリスク許容度の範囲で位置づけることが重要です。

⚠ 免責事項

本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

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