日本触媒(4114)はどんな会社か
紙おむつに欠かせない「高吸水性樹脂(SAP)」で世界トップクラス――そう聞くと地味に思えるかもしれませんが、日本触媒(4114)は生活必需品から最先端の電池材料までを手がける、知る人ぞ知る総合化学メーカーです。
2026年3月期は売上高約4,000億円・最終利益168億円とおおむね高い収益水準を維持しています。一方で株価は2,103円、PBRは0.78倍と1倍を割れ、配当利回りも5%台と、資産・配当の面では「割安」に映る指標が並びます。
ただし、株探上のPER表記は「-」。これは会社が2027年3月期の業績予想を開示していないためで、利益が市況に大きく左右される同社の特徴とも関係します。本記事では、日本触媒の事業構造・業績推移・財務を一次情報で確認し、株価をどう捉えるかを整理します。
💡 まず押さえたいポイント
日本触媒(4114)は、アクリル酸と紙おむつ向け高吸水性樹脂(SAP)で世界トップクラスのシェアを持つ素材メーカーです。2026年3月期は売上高3,999億円・最終利益168億円とおおむね高水準を維持する一方、会社は2027年3月期の業績予想を「未定」としているため、株探上のPER表記は「-」となっています。株価2,103円に対しPBRは0.78倍と1倍を下回り、配当利回りも5%台と、資産・配当面の指標が割安に映る局面です。本記事では、SAP事業の市況依存という構造と、電池材料など新規分野への展開を、株価視点で整理します。 本記事では株価2,103円、時価総額3,155億円、PER-倍、PBR0.78倍(いずれも2026年6月19日時点・株探調べ)を起点に、業績トレンドと株価水準を整理します。数値は執筆時点のものであり、最新の株価・指標はご自身でご確認ください。
事業の深掘り――高吸水性樹脂(SAP)と電子材料を両輪とする総合化学
高吸水性樹脂(SAP)――紙おむつ需要を背景にした世界首位級事業
日本触媒の代名詞ともいえるのが、自重の数百倍の水分を吸収する高吸水性樹脂(SAP)です。主に紙おむつや生理用品に使われ、同社は世界でもトップクラスのシェアを持ちます。紙おむつは新興国の人口増や高齢化を背景に中長期で需要が伸びる一方、汎用素材としての側面も強く、生産能力の増減や原燃料価格、競合動向によって採算が変動しやすい事業でもあります。
アクリル酸・基礎化学品――世界シェア上位の素材基盤
SAPの原料でもあるアクリル酸は、塗料・接着剤・各種樹脂の基礎原料として幅広く使われ、日本触媒は世界有数の生産者です。この基礎化学品の競争力が、SAPを含む川下製品の安定供給と原価競争力を支えています。一方で、汎用化学品は世界の需給バランスと原燃料市況の影響を直接受けるため、利益のシクリカル性(市況連動)の源泉にもなっています。
電子材料・電池材料――ファインケミカルへの展開
同社は近年、化粧品材料、半導体・ディスプレイ向け電子材料、そしてリチウムイオン電池や全固体電池向けの部材といった、付加価値の高いファインケミカル分野に経営資源を振り向けています。これらは市況依存度の高い基礎化学品と比べ、利益率や成長性で収益構造を底上げする可能性を持つ領域であり、中期の成長ストーリーの中核に位置づけられます。
💡 ビジネスモデルの特徴
💡,SAPと電池材料の「二刀流」,日本触媒は、生活必需品である紙おむつ用SAPという安定基盤と、電池材料・電子材料といった成長分野の両方を持つ点が特徴です。前者が下値を支え、後者が利益の上振れ余地を担う構図として理解すると、業績の見方が整理しやすくなります。
最新決算(2026年3月期)の要点
2026年3月期は売上高3,999億円(前期比約2%減)、営業益175億円、最終益168億円と、前期(最終174億円)からやや減益で着地しました。主力のSAPは紙おむつ需要を背景に底堅い一方、市況や為替、原燃料価格の影響を受けやすく、四半期ごとの利益のブレが大きい点が特徴です。会社は2027年3月期の通期予想を本記事執筆時点で開示しておらず、PERは算出できません。
💡 決算のポイント
⚠,「PER-」は赤字ではなく予想未開示が理由,株探でPERが「-」と表示されるのは、日本触媒が赤字だからではなく、2027年3月期の業績予想を会社が開示していないためです。直近実績は最終益168億円の黒字であり、「PER-=危険」と短絡しないよう注意が必要です。
業績トレンドの深掘り――長期と四半期
長期業績の推移(過去4期+会社予想)
長期の業績は、SAPやアクリル酸の市況、原燃料コスト、為替に大きく左右され、利益水準が年度ごとに上下しやすいのが日本触媒の特徴です。2023年3月期の最終194億円から2024年3月期は110億円へ落ち込み、2025年3月期に174億円へ回復、2026年3月期は168億円とおおむね150〜190億円台のレンジで推移しています。売上高はおおむね4,000億円前後で安定しており、景気・市況サイクルの中で利益が振れる「シクリカル(市況連動)」な収益構造として捉えるのが妥当です。
四半期業績の推移
四半期で見ると、2025年10-12月期は営業益62億円・最終益68億円と好調だった一方、直近の2026年1-3月期は営業益23億円・最終益24億円と利益が大きく落ち込みました。売上高は四半期1,000億円前後で安定しているものの、営業損益率が2%台〜6%台で振れており、製品市況やスポット要因で採算が大きく変動する点が読み取れます。単一四半期の数字だけで判断せず、通期ベースのレンジで捉えることが重要です。
⚠ 四半期の見方の注意
⚠,四半期利益の振れに注意,直近の2026年1-3月期は営業益23億円と、前の四半期(62億円)から大きく落ち込みました。売上高は安定しているため、これは市況やスポット要因による採算変動です。単一四半期で判断せず、通期レンジで捉えることが重要です。
財務とキャッシュフロー
2026年3月期の営業キャッシュフローは535億円と、最終利益168億円を上回る潤沢な水準を確保しています。一方で投資キャッシュフローは-483億円と大きく、設備投資や事業投資に積極的なフェーズにあることがうかがえます。結果としてフリーキャッシュフローは52億円とプラスを維持しており、自己資本比率68.4%・有利子負債倍率0.15倍と財務は健全です。手元現金は518億円で、市況下振れ局面でも一定の体力を持つ財務基盤といえます。
💡 キャッシュフローの読み方
💡,潤沢な営業CFと積極投資,2026年3月期は営業CF535億円を稼ぎつつ、投資CF-483億円と成長投資にも積極的です。フリーCFはプラスを維持し、自己資本比率68.4%・実質低レバレッジの健全財務が、市況下振れ局面の耐久力を支えています。
中期経営計画から読み解く現在地と未来予測
① 中期経営計画2027の数値目標
日本触媒は、2025年度から2027年度までを対象とする「中期経営計画2027」を策定しています。最終年度となる2027年度(2028年3月期)の財務目標として、営業利益+持分法投資損益350億円、ROE7%以上、ROA6%以上、ROIC8%以上を掲げています。これは2030年に向けた長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」の実現に向けた「変革加速」のステージと位置づけられており、企業理念「TechnoAmenity(人と環境にやさしい豊かさの創造)」を基盤としています。
この計画の柱は、ソリューションズ事業へのリソース集中による事業ポートフォリオの変革です。従来の高吸水性樹脂(SAP)やアクリル酸といった基礎化学品中心の構造から、電池材料・ライフサイエンス・環境関連などの高付加価値分野へ軸足を移す「選択と集中」を進めています。利益目標350億円は、直近の予想水準から2年間で約120億円の上積みが必要であり、ROEも過去実績や前計画目標からの改善が求められる、挑戦的な内容となっています。
② 今後の期待値はどこにあるか
期待の中心は、ソリューションズ事業(高機能材料)の利益拡大です。リチウムイオン電池用電解質「イオネル」をはじめとする電池材料は、EV・蓄電池市場の拡大とともに中長期的な成長が見込まれる分野で、ここが伸びれば収益構造の高度化とROIC8%以上という目標達成に直結します。SAP(紙おむつ向け高吸水性樹脂)で世界トップクラスのシェアを持つ安定収益基盤の上に、成長分野を積み上げられるかが焦点です。
もう一つの注目は、資本効率と株主還元の改善姿勢です。同社は「資本コストや株価を意識した経営」への対応を明確に打ち出し、ROE7%以上(2027年度)・2030年度の更なる引き上げを目標に掲げています。役員報酬を中計の営業利益・ROE目標の達成度に連動させるなど、計画達成への規律も導入しています。低PBR是正に向けた資本政策の進展が、株価の見直し材料になり得ます。
中計2027は「2027年度に営業利益+持分法350億円・ROE7%以上・ROIC8%以上」が軸です。利益目標は2年間で約120億円の上積みが必要なため、ソリューションズ事業(とくに電池材料)の伸びと、基礎化学品の収益安定が両立できているかを毎期の進捗で確認することが重要です。
最大のリスクは、基礎化学品(アクリル酸・SAP等)の市況変動と、電池材料事業の立ち上がりの不確実性です。EV市場の需要鈍化や競争激化が起これば、成長分野の利益貢献が想定を下回る可能性があります。原燃料価格・為替の影響を受けやすい構造も残り、利益目標350億円の達成にはハードルがある点に留意が必要です。
四季報・専門メディアから見る現状と評価
株価指標で市場評価を確認すると、日本触媒はPBR0.78倍(株価2,103円時点、時価総額約3,155億円)で取引されています。PBRが1倍を下回っており、利益や資産の水準に対して株価が割安に評価されている可能性がある一方、その割安さの背景(成長性や市況への警戒)を見極める必要があります。
会社四季報や専門メディアでは、こうした日本触媒の事業基盤・収益構造の強みと、競争環境や市況・コスト面の課題の両面が論点として取り上げられます。本記事の各章で整理してきた強みとリスクは、これら専門媒体の評価軸ともおおむね重なります。投資判断にあたっては、最新の四半期決算で示される利益動向と、会社が示す中期的な方針のアップデートを継続的に確認することが重要です。
総じて、現時点の日本触媒は、事業基盤を維持しながら利益が一服している調整局面にあり、市況や収益環境の回復が今後の評価を左右します。指標の割安・割高だけでなく、事業の競争力と業績トレンドを合わせて見ていくことが、判断の精度を高めるうえで欠かせません。
※本記事の指標・数値は株探(かぶたん)等の公開情報をもとに執筆時点(2026年6月)で整理したものです。会社四季報オンラインおよびFACTA ONLINE等の専門メディアについては公開範囲の情報を参照しており、有料会員限定コンテンツの内容は含みません。最新の数値・評価は各社の最新開示・媒体で必ずご確認ください。
株価指標と需給
株価2,103円に対し、PBRは0.78倍と解散価値とされる1倍を下回っています。会社が2027年3月期予想を未開示のためPERは「-」表記ですが、直近実績EPS112.2円で機械的に割り戻すと約18.7倍となり、過去3年の平均PER18.55倍とほぼ同水準です。配当利回りは年113円ベースで約5.4%と高く、資産・インカム面では割安感のある指標群といえます。
適正株価の試算――弱気・中立・強気の3シナリオ
ここからは、現在の株価2,103円に対して、いくつかの前提を置いた「参考値」としての株価レンジを試算します。あくまで一定の仮定に基づく目安であり、将来の株価を保証するものではありません。
方式①:EPS×想定PER法
会社予想が未開示のため直近実績EPS112.2円(2026年3月期)を便宜的な基準に、想定PERを変えて株価を試算します。過去3年の平均PERは約18.6倍です。
方式②:PBR法
1株純資産2,684.47円円を基準に、想定PBRを変えて試算した株価です。
⚠ 試算にあたっての注意
上記はいずれも「会社予想や過去平均が今後も維持される」と仮定した参考値です。EPSは会社予想を用いており、相場環境・業績動向次第で上下します。実際の株価はこのレンジを外れることもあります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
投資する際に押さえておきたいリスク
- SAP・アクリル酸などの製品市況や原燃料価格、為替の変動により、四半期・通期の利益が大きく振れるシクリカルな収益構造である点。
- 会社が2027年3月期の業績予想を未開示としているため、足元の予想ベースの収益力や成長率が外部から見えにくい点。
- 紙おむつ用SAPは生活必需品ながら汎用素材の側面もあり、新興国メーカーとの競争激化や供給過剰が採算を圧迫するリスクがある点。
- 電池材料など新規分野の収益貢献が想定より遅れた場合、市況依存からの脱却が進まず、利益水準が市況サイクルに振り回され続ける可能性がある点。
指標とニュースの読み方
PER・PBRの見方
日本触媒は会社予想が未開示のため、本記事ではPERは直近実績EPS112.2円を便宜的に用いた参考値として扱います。市況連動で利益が振れる銘柄であり、EPS×PERの一点像だけで株価の妥当性を測るのは適切ではありません。むしろPBR0.78倍という資産面の割安感と、約5.4%の配当利回りによるインカム妙味、そして電池材料など新規分野が利益を底上げできるかという成長期待の3点を組み合わせて評価するのが現実的です。
チェックすべきポイント
- 四半期決算で、SAP・基礎化学品の市況と採算(営業損益率)がどの方向に動いているか。
- 会社が2027年3月期の業績予想を開示した際の、利益水準と前期比の方向感。
- 電池材料・電子材料などファインケミカル分野の売上・利益が、全社業績にどの程度貢献し始めているか。
- PBR0.78倍・配当利回り約5.4%という資産・インカム指標と、株価水準の関係。
- 営業キャッシュフローと投資キャッシュフローのバランス、フリーキャッシュフローと配当の持続性。
💡 ニュースを読むときの視点
💡,電池材料テーマとの関連,日本触媒はリチウムイオン電池・全固体電池向け部材を手がけており、EV・蓄電池市場の拡大はファインケミカル分野の追い風になり得ます。市況依存の基礎化学品から、付加価値分野へ収益構造を転換できるかが注目点です。
投資スタンスの整理
💡 タイプ別の考え方
日本触媒は、SAP・アクリル酸という世界シェア上位の基盤事業を持ちながら、市況連動で利益が振れるシクリカル銘柄です。PBR0.78倍・配当利回り約5.4%という資産・インカム面の割安感が下値を支える一方、利益の上振れには市況回復や電池材料など新規分野の貢献が必要になります。短期の四半期業績に一喜一憂せず、市況サイクルと中期の事業ポートフォリオ転換を見ながら、配当を受け取りつつ腰を据えて見守るスタンスが合う銘柄といえます。
まとめ
日本触媒(4114)は、紙おむつ向け高吸水性樹脂(SAP)とアクリル酸で世界トップクラスのシェアを持つ総合化学メーカーです。2026年3月期は最終益168億円とおおむね高水準を維持しつつ、会社は2027年3月期予想を未開示としているためPER表記は「-」となっています。株価2,103円に対しPBR0.78倍・配当利回り約5.4%と資産・インカム面では割安に映る一方、SAP・アクリル酸の市況や原燃料コスト、為替に利益が左右されるシクリカルな収益構造には注意が必要です。電池材料・化粧品材料などファインケミカル分野の成長が、市況依存からの脱却と利益の底上げにつながるかが、中期の株価を左右する鍵になります。
⚠ 本記事のスタンス
本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した株価・指標は2026年6月19日時点(株探調べ)のものであり、適正株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値です。
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📄 参考・出典
⚠ 免責事項
本記事は公開情報をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。記載した株価・指標等は執筆時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。適正株価や目標株価に類する記述は一定の前提に基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

