AIデータセンターの次のボトルネックとして、電力と並んで重要になっているのが「熱」です。GPUの演算性能が上がるほど消費電力が増え、その電力のほぼ全てが最終的に熱になります。従来のCPUサーバーなら空気を大量に流して冷やせましたが、AIラックが100kW、さらにそれ以上へ高密度化すると、空冷だけでは限界が近づきます。
株探でも2026年6月、7月に「サーバー冷却」が注目テーマとして取り上げられました。7月には三菱重工業とNVIDIAが次世代AIデータセンター技術で提携し、三菱重工の冷却システムやエネルギー管理技術をNVIDIAの次世代拠点へ導入検討すると報じられています。冷却は「AIデータセンター周辺株」から、GPU性能を実際に使い切るための必須インフラへ格上げされつつあります。
✅ 結論
- 大型システム:三菱重工。NVIDIA連携と冷熱・エネルギー管理を一体化
- サーバー直近の冷却:山洋電気。冷却ファン需要が既に1Q利益2.8倍へ寄与
- データセンター空調工事:高砂熱学。受注高・繰越工事高が過去最高圏
- 空調技術:ダイキン。冷媒・チラー・グローバルサービス網が強い
- 省電力冷却:富士電機。エジェクタ冷却機などパワエレとの統合余地
- 今後は「空冷→液冷」という一方向ではなく、ラック密度に応じたハイブリッド冷却が主流になる
なぜAIサーバーは水で冷やす必要があるのか
空気は扱いやすい一方、熱容量が小さく、同じ熱を運ぶために大量の風量が必要です。GPUラックの発熱密度が上がると、巨大ファンを回してもチップ表面から熱を取り切れなくなります。水などの液体は空気より熱容量が大きく、チップ付近へ冷却プレートを置いて直接熱を回収できます。
代表方式は、GPUへ冷却プレートを接触させるDirect-to-Chip液冷、サーバーごと絶縁液へ浸す液浸冷却、従来空調と液冷を組み合わせるハイブリッド方式です。液冷ではCDU(Coolant Distribution Unit)、ポンプ、熱交換器、配管、漏水検知、施設側チラーまで新しい設備が必要になります。つまり「ファンが不要になる」のではなく、冷却バリューチェーン全体が作り替わります。
三菱重工業(7011)――NVIDIA連携で「冷却+電力管理」へ
2026年7月、NVIDIAと三菱重工がAIデータセンター技術で提携すると報じられました。NVIDIAが整備する次世代拠点で、三菱重工の冷却システムとエネルギー管理技術の導入を検討します。
三菱重工の強みは空調機だけではありません。大型冷凍機、ターボ冷凍機、発電設備、エネルギーマネジメントまで持つため、AIデータセンターの「電気を作る→冷やす→最適運転する」を大きなシステムとして提案できます。米国でVertivやSchneider Electricが電源・冷却を統合して価値を高めている構造に近い日本企業です。
ただし三菱重工は防衛、航空、ガスタービン、原子力など巨大事業を持つため、冷却事業だけで株価を評価する企業ではありません。AIデータセンターは既存のエネルギー事業へ追加される成長オプションと見るのが適切です。
山洋電気(6516)――冷却ファン需要が既に利益へ出ている
山洋電気は「San Ace」ブランドの冷却ファン、サーボ、UPSなどを展開します。AIサーバーが液冷化しても、ネットワーク機器、電源、ラック周辺、液冷設備の熱交換器などファンが必要な場所は残ります。
2027年3月期1Qは売上高322.37億円、前年同期比33.5%増、最終利益29.94億円で2.8倍。売上営業利益率は7.3%から13.1%へ急改善しました。会社説明では、冷却ファンを扱うサンエースカンパニーで生成AI関連機器・ネットワーク機器向け需要が好調。データセンター向けサーバーやサーボにもAI設備投資の追い風が出ています。
テーマ株としての魅力は「将来の液冷」ではなく、現在のAI設備投資が既に決算へ出ていることです。ファンが完全に液冷へ置き換わるリスクはありますが、電源・モーターまで事業が分散しています。
高砂熱学工業(1969)――冷却機器より「設計施工」で稼ぐ
データセンター冷却では、どんな高性能機器を買っても施設全体の気流・配管・熱源が適切に設計されなければ効率が出ません。高砂熱学は大型空調工事の大手で、半導体工場・データセンター案件を多数手掛けます。
2026年3月期は経常利益506億円で44.8%増、2027年3月期も520億円で4期連続最高益を計画。2026年3月期の受注高4,600億円、繰越工事高4,115億円はいずれも過去最高でした。2027年3月期受注高は5,200億円と初の5,000億円超を計画します。
1Q経常利益は前年同期比11.8%減の96.2億円でしたが、通期進捗18.5%は過去平均を上回ります。工事会社は四半期の検収時期で振れやすいため、単独1Qより受注残と採算を重視すべきです。AIデータセンターの建設ブームが続く限り、冷却方式が空冷から液冷へ変わっても「設計施工」の需要は消えません。
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ダイキンは世界最大級の空調企業で、冷媒、コンプレッサー、空調機器、サービス網を垂直統合しています。データセンターではチラー、精密空調、熱交換など巨大な冷熱需要が発生し、施設が世界各地へ分散するほどグローバル保守網の価値が高まります。
液冷が普及するとサーバールームへ直接冷風を送る比率は減りますが、GPUから吸収した熱を最終的に外気へ放出する熱源設備は必要です。むしろ水温を高く設計できれば、フリークーリングやヒートポンプなど施設全体のエネルギー最適化が重要になります。
ダイキンは企業規模が大きく住宅・商業空調の比率も高いため、データセンター専業株のような急騰性は低い一方、冷却市場が長期拡大した場合の安定受益企業です。
富士電機(6504)――冷却消費電力そのものを削る
株探のサーバー冷却テーマでは、富士電機が開発した「エジェクタ冷却機」が、冷却時消費電力を最大85%削減する技術として取り上げられています。AIデータセンターでは、サーバー消費電力だけでなく冷却設備が大きな電力を使うため、冷却効率改善はそのまま電力容量の有効利用につながります。
富士電機はパワー半導体、UPS、電源、冷熱を持つため、単独冷却機器より「施設の電力効率」を総合最適化できる点が強みです。AIデータセンターでPUE改善が重視されるほど、冷却と電源を分けずに提案できる企業が有利になります。
どの銘柄が最も投資妙味があるか
業績の直接性では山洋電気です。AI関連冷却需要が1Q33%増収・最終利益2.8倍という数字で確認できます。企業規模も三菱重工・ダイキンより小さく、需要増の利益インパクトが大きい。
受注の見通しでは高砂熱学。受注・繰越工事高が過去最高で、設備投資ブームが数年先の売上まで可視化されています。液冷設備の施工が増えても工事会社として恩恵を取りやすい。
大型テーマとしては三菱重工。NVIDIAとの技術連携が具体化し、発電・冷却・エネルギーマネジメントをセットで受注できれば、AIデータセンターを新たな事業柱へ育てる可能性があります。
ダイキンは安定型、富士電機は電源と冷却の統合型です。短期値幅だけなら小型企業が有利ですが、冷却市場は設備の安全・信頼性が重要であり、実績企業の参入障壁は高いと考えます。
今後5年の技術変化
- Direct-to-Chip液冷の標準化:GPUラック高密度化で採用増
- CDUの大型化・冗長化:ポンプ・熱交換器・制御の新市場
- 高温水冷却:外気冷却を使える時間が増え、チラー電力を削減
- 廃熱利用:データセンター排熱を地域暖房・温水へ利用
- AI制御:サーバー負荷予測と冷却設備運転を連動
この技術変化は既存空調会社を淘汰するのではなく、むしろ制御・配管・冷熱設計の難易度を上げます。「ファン会社は液冷で終わる」「空調工事は不要になる」という単純な見方ではなく、各社がどのレイヤーへ移れるかを見るべきです。
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冷却は電力と表裏一体です。当サイトでは三菱電機、富士電機、明電舎、SWCC、住友電工、ニチコンを比較した「AIデータセンター電力インフラ株」記事も下書きしています。
参考資料
まとめ
「AIデータセンター「液冷・サーバー冷却」関連株の本命は?三菱重工・山洋電気・高砂熱学・ダイキン・富士電機を徹底比較」を判断する際は、テーマ性だけで順位を決めず、各社の売上規模、利益率、受注、技術差、財務、評価倍率を同じ基準で比較することが重要です。今後の決算とIRで前提を更新します。
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本記事は公開情報を基にした比較分析で、投資助言ではありません。データセンター建設計画、GPU技術、冷却方式の変更により各社への恩恵は変動します。

