日本のテレビ業界は近年、大きな変革の波に直面しており、今後もその流れが加速する可能性が高いです。以下は、予想される主な動向とその背景です:
地上波テレビを取り巻く今後の環境について
1. 視聴スタイルの多様化と地上波の競争激化
- 背景: ストリーミングサービス(Netflix、Amazon Prime Video、Disney+など)の普及や、YouTubeの影響で、若年層を中心にテレビの視聴時間が減少。
- 影響: 地上波テレビは、特に視聴率の確保に苦戦。ニッチな視聴者層に向けた専門番組やリアルタイム視聴を促す生放送イベントなど、差別化が求められる。
2. デジタルプラットフォームへのシフト
- 動き: 各テレビ局が独自の配信サービス(TVer、FOD、Paraviなど)を強化。これにより、地上波放送の番組もネットでの視聴が一般的に。
- 課題: サービスの収益モデルが広告中心かサブスクリプション中心かで、局の戦略が異なる。競争の中で差別化が必要。
3. 地域テレビ局の存続問題
- 背景: 広告収入の減少と視聴率低迷が地方局に、より深刻に影響。
- 予想: 地域局の統廃合や、全国ネットとの連携強化が進む可能性。ローカルコンテンツ制作が鍵となる。
4. AI・データ活用の進化
- 動向: 視聴者データを基にした番組制作や広告配信が進化。AIを活用して個人の興味に合わせたコンテンツ提供が可能に。
- 課題: プライバシーの保護や、技術導入のコスト負担。
5. コンテンツの国際化
- 例: 韓国ドラマの成功を参考に、日本発のコンテンツをグローバル市場で展開する動きが加速。
- 影響: 日本国内市場の縮小を補うため、国際的な競争力を高める必要がある。
6. 広告モデルの変革
- 背景: 広告主がデジタル広告(Google、Facebookなど)にシフトする中、テレビ広告の価値を再定義。
- 方向性: ブランデッドコンテンツやスポンサーシップ型の広告が増加。
7. 技術革新(4K/8K・VR/AR)
- 動き: 高精細放送や没入型体験(VR/AR)を活用した新しい視聴体験の提供。
- 課題: 技術開発コストの高さと普及スピード。
日本のテレビ業界は、従来の「地上波中心」のモデルから脱却し、デジタル時代に適応するための改革が急務です。ストリーミングサービスやグローバル競争の影響を受けつつも、地域性や独自性を活かしたコンテンツ制作、デジタル技術を活用した新しい価値提供が成功の鍵となるでしょう。
テレビ広告に関する新しい取り組みについて
1. 放送と通信の融合による広告モデルの開発
フジテレビと博報堂DYメディアパートナーズは、地上波テレビとデジタル配信を統合した「Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー」を開発しました。これは、地上波とTVerを組み合わせ、特定のターゲット層へのインプレッション数を保証する新しい広告手法です。これにより、テレビをあまり視聴しない層にも効果的にリーチできると期待されています。
2. リアルタイムプログラマティック取引の導入
日本テレビは、「ARMプラットフォーム」という新たな広告プラットフォームを発表しました。これは、地上波テレビ広告にインターネット広告のようなリアルタイムのプログラマティック取引を導入する試みで、放送直前に広告素材を決定し、効率的な広告配信を目指すものです。これにより、テレビ広告の運用性が向上し、デジタル広告との統合的なバイイングが可能になるとされています。
3. データ活用による番組宣伝広告の最適化
博報堂DYグループは、次世代型広告モデル「AaaS(Advertising as a Service)」を活用し、テレビ番組の宣伝広告の効果測定と最適化に取り組んでいます。関西テレビとの協業では、視聴率向上のための広告配信手法やクリエイティブの最適化を進め、特に若年層へのリーチを強化するために音声広告など新たな媒体の活用も試みています。
これらの取り組みは、テレビ広告の効果を高め、視聴者の多様化するニーズに応えるための重要なステップとなっています。
NETFLIXの凄み
現状地上波テレビに最も脅威になっているのはNETFLIXだと思います。近年地上波テレビからNETFLIXへの制作者の転職も多数発生しているようです。
ではNETFLIXの何が凄いのか?以下にまとめてみました。
1. データ駆動型のコンテンツ開発
データ活用の実例
- Netflixは、2億3000万人以上の加入者(2023年時点)から得られる膨大な視聴データを分析。視聴者がどのタイミングで再生を止めたか、どのジャンルがどの地域で人気があるかなど、細かいデータを収集。
- 「ハウス・オブ・カード」:
- 政治ドラマが視聴者に好まれているデータ。
- ケヴィン・スペイシー主演作品の視聴率が高い傾向。
- デヴィッド・フィンチャー監督作品が人気だったという分析に基づき制作を決定。
- 初月視聴者数:2600万人(2013年)
インパクト
データによる企画の的中率が高まり、視聴者のニーズに応じた作品を効率的に投入。
2. グローバル戦略
グローバルコンテンツの成功事例
- 「イカゲーム」(韓国、2021年)
- 制作費:約200億ウォン(約20億円)
- 世界累計視聴世帯数:1億4200万世帯(初月)
- グローバル経済効果:約9000億円と試算。
- 「ペーパー・ハウス」(スペイン、2017年~)
- 制作当初はローカル向けだったが、Netflixが独占配信を始めてから世界的に大ヒット。
- 世界190か国で配信、視聴世帯は累計6500万以上。
投資額
- Netflixは2023年に175億ドル以上をコンテンツ制作に投資し、その約半分を国際コンテンツに割り当て。
3. 大胆な制作予算
高予算作品の例
- 「ストレンジャー・シングス」(アメリカ、2016年~)
- シーズン4の制作費:約3億ドル(1エピソードあたり約3000万ドル)。
- 初週視聴時間:10億時間超(Netflix史上初)。
- 「ウィッチャー」(アメリカ/ポーランド、2019年~)
- シーズン1制作費:約8000万ドル。
- 初月視聴世帯数:7600万世帯。
投資方針:
質の高いコンテンツへの大胆な投資が、視聴者を引きつける最大の要因と考えられます。
4. オリジナル作品への注力
成果、データ
- 2023年、Netflixのライブラリの50%以上がオリジナル作品。
- 「ザ・クラウン」や「ストレンジャー・シングス」はエミー賞を多数受賞し、Netflixのブランド価値を向上。
- 2021年の「アカデミー賞」では、Netflix作品が計36部門ノミネート、7部門で受賞。
メリット
- 独自の知的財産を確保することで、ライセンス料に依存せず、安定した収益を確保。
5. 新しい視聴体験の提供
ビンジ・ウォッチング文化の普及
- 全話一括配信モデルの採用により、視聴者が自分のペースでドラマを楽しめる文化を創出。
- Netflix加入者の61%が「少なくとも1つのシリーズを一気見する」と回答(2022年の調査)。
インタラクティブ作品の成功
- 「ブラック・ミラー: バンダースナッチ」
- 複数の結末を選択可能な構造を持つ。
- 視聴者の75%が「新しい視聴体験」と回答。
6. グローバルなクリエイターの起用
例
- 日本のアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を国際展開。
- 韓国の「キングダム」シリーズは、歴史ドラマとゾンビという斬新な組み合わせで話題に。
結果
Netflixは現在、45か国以上でオリジナル作品を制作。地元クリエイターを起用し、地域ごとに視聴者を惹きつける戦略を取っている。
7. 技術力とUXの優位性
パーソナライゼーションの効果
- レコメンドエンジンにより、視聴時間が**80%**以上向上(Netflix公式データ)。
- 「ブラック・ミラー」などで、カバー画像を視聴者ごとにカスタマイズする技術を採用。
技術的な優位性
- 動画圧縮技術により、インターネット環境が不安定な地域でも高画質配信を実現。
- ダウンロード機能の導入で、オフライン視聴が可能。
まとめ
Netflixの成功は、データ活用による精密なコンテンツ開発、高額な制作投資、グローバル展開、革新的な視聴体験の提供が複合的に寄与しています。この戦略は、視聴者の多様なニーズに応えると同時に、競合との差別化を実現する重要な要因となっています。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。