【銘柄研究】2025/11/27(木)”285A”キオクシア株は「買い」か?AIスーパーサイクルとベイン売却の狭間で読む、2026年の勝算

2024年12月のIPOから約1年。日本の半導体業界、そして株式市場において、キオクシアホールディングス(285A)ほど劇的な動きを見せている銘柄は他にないでしょう。

公開価格1,455円からスタートし、一時は14,000円台の高値を記録。しかし直近では、筆頭株主であるベインキャピタルによる大規模な株式売却報道を受け、株価は乱高下しています。

「AIバブルの崩壊か?」「いや、絶好の押し目買いチャンスか?」

市場の意見が割れる中、今回は単なる株価チャートの解説ではなく、「AIスーパーサイクル」「需給バランス」「業界再編」という3つのビジネス視点から、キオクシアの今後2年間のシナリオを深掘り推測します。

目次

1. なぜ株価は急落したのか?:構造的な売り圧力「オーバーハング」

まず、直近の株価下落(調整局面)は「大株主の出口戦略(Exit)」による需給イベントです。

2025年11月下旬、キオクシアの筆頭株主であるベインキャピタル主導のコンソーシアムが、約3,600万株(約20億ドル相当)の売却を行うと報じられました。 プライベート・エクイティ(PE)ファンドであるベインにとって、IPOから一定期間を経て利益を確定させるのは既定路線です。株価がIPO価格の6倍になった時点で一部を現金化するのは、投資ファンドとして極めて合理的な判断です。  

これは「オーバーハング(潜在的な売り圧力)」と呼ばれる現象です。

  • Bad News: ベインや東芝(約30%保有)はまだ大量の株を持っています。今後も断続的な売り出しが行われる可能性が高く、これが上値を抑える重石になります。
  • Good News: 今回の売却はブロックトレード(市場外取引)主体であり、株価崩壊を防ぐ配慮がなされています。また、この売り出しを消化することで、流動性が高まり、将来的にはTOPIXなどの主要指数への組み入れ比率が上がる(=パッシブファンドの買いが入る)というプラス側面もあります。

2. ファンダメンタルズ分析:AIデータセンターが求める「eSSD」

需給イベントによるノイズを取り除き、事業の本質(ファンダメンタルズ)に目を向けると、景色は全く違って見えます。キーワードは「AIスーパーサイクル」です。

HDDからSSDへの「大転換」

生成AIの学習・推論には、GPUの計算能力だけでなく、膨大なデータを高速に読み書きするストレージが必要です。従来のHDD(ハードディスク)ではこの速度に追いつけず、電力効率も悪いため、データセンターではエンタープライズSSD(eSSD)への置き換えが急速に進んでいます。  

2026年の供給不足(ショート)

現在、SamsungやSK Hynixなどの競合他社は、利益率が極めて高いAI用メモリ「HBM(High Bandwidth Memory)」の増産に全力を注いでいます。工場のリソースがHBMに割かれる結果、NANDフラッシュ(キオクシアの主力製品)への設備投資が抑制されています。 これにより、2026年には構造的なNAND供給不足が発生し、価格が二桁上昇するという予測が出ています。これはNAND専業であるキオクシアにとって、強烈な追い風となります。  

3. 決算の「数字」を読む:V字回復の予兆

直近の2025年度第2四半期(7-9月)決算を見て「期待外れ」と感じた方もいるかもしれません。

  • 営業利益: 872億円(市場予想を下回る)  
  • 要因: 大口顧客(Apple等)との固定価格契約により、市況上昇の恩恵をすぐに受けられなかったこと、スマホ向け比率が高かったこと。

しかし、第3四半期(10-12月)以降のガイダンスは強気です。

  • Q3見通し: 営業利益 1,000億〜1,400億円へ拡大予想  
  • 北上工場(Fab2): 2025年9月に稼働開始。ここでは最新鋭の「CBA(CMOS directly Bonded to Array)技術」が導入されています。  

CBA技術とは? メモリセルと制御回路(CMOS)を別々のウェハで作って貼り合わせる技術です。これにより、チップ面積を縮小し、一枚のウェハから取れる収量(チップ数)を増やせるため、劇的なコストダウンが可能になります。この効果がフルに出るのは2026年以降です。

4. 業界再編の「隠し玉」:Western Digitalとの統合

キオクシアへの投資妙味を語る上で外せないのが、Western Digital(WD)との合併シナリオです。

WDは現在、HDD事業とフラッシュメモリ事業の分社化(スピンオフ)を進めており、2025年後半〜2026年に完了予定です。 分社化された「新生SanDisk」とキオクシアは、すでに製造拠点を共有するパートナーです。両社が合併すれば、Samsungに匹敵する世界シェア30%超の「メモリ巨人」が誕生します。  

ここで鍵を握るのが、キオクシアの大株主であり競合でもある韓国SK Hynixです。彼らは過去に合併に反対しましたが、IPOによる含み益の拡大や、業界内でのパワーバランスの変化により、条件次第では軟化する可能性があります。 「合併」というカタリストが発動すれば、株価は現在のバリュエーションを大きく超えるプレミアムが付くでしょう。  

5. 結論:2026年に向けた投資スタンス

現在(2025年11月下旬)の株価8,000円〜9,000円台は、大和証券などのアナリストが目標とする14,000円に対して、まだアップサイドの余地を残しています。  

強気シナリオ(Bull Case):

  • AIサーバー需要によるeSSD爆買いが継続。
  • 2026年のNAND供給不足により販売単価が急騰。
  • WD分社化後の合併交渉再開。
  • ターゲット: 12,000円〜15,000円

リスクシナリオ(Bear Case):

  • ベインや東芝による拙速な株式売却(需給悪化)。
  • 世界的な景気後退によるスマホ・PC需要の減速。
  • 急激な円高(キオクシアは円安メリット銘柄)。
  • ターゲット: 6,000円〜7,000円(P/B 1倍割れ水準)

ご承知のように現在キオクシア株は、ボラティリティ(価格変動)が激しい銘柄です。しかし、その背景にあるのは「AIインフラへの構造転換」という確固たるトレンドです。 目先の需給イベント(ベインの売り)に惑わされず、「2026年のNAND供給不足」と「業界再編」という2つの大きな波を見据えるならば、現在は長期的な視点でのエントリーポイントとして魅力的な水準と言えるのではないでしょうか。

★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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