AI(人工知能)やデータ解析技術が社会や産業構造を大きく変えつつある昨今、国内外で多くのAI関連ベンチャーやIT企業が急成長を遂げています。その中でも注目を集める日本のAI企業の一つが「プラスゼロ」です。
1. プラスゼロとは
1.1 企業概要
プラスゼロは、2016年前後に設立されたAIスタートアップ企業です。創業当初から自然言語処理(NLP)や画像認識、需要予測などの分野に強みを持ち、AIモデルの研究開発とコンサルティングを組み合わせた総合的なサービスを展開してきました。
近年の生成AIブームや企業のDX推進の潮流を背景に、プラスゼロは受託開発から自社製品のライセンス提供まで幅広く手掛けることで成長を加速させています。同社の理念である「0(ゼロ)から新たな価値を創造する」のとおり、既存の常識にとらわれない発想力と技術力を武器に、国内外で存在感を高めつつある企業です。
1.2 経営ビジョン
プラスゼロの経営ビジョンは、「AIを通じて、人々の暮らしやビジネスをより創造的にする」ことです。AI導入による業務効率化やコスト削減だけでなく、社会課題の解決や新たな事業機会の創出といった高付加価値分野に積極的にアプローチしています。具体的には、製造業や物流、金融機関などの多様な業界での業務改革、さらには自治体・公共機関での行政サービス向上といった領域もターゲットに据えており、幅広い産業でのAI活用を推進しています。
2. ビジネスモデル
プラスゼロのビジネスモデルは、以下の3つの主要事業から構成されています。これらを複合的に展開することで、安定した収益基盤を確保している点が特徴です。
- AIソリューション受託開発事業
- クライアント企業からの要望に応じて、AIモデルのカスタム開発やシステム連携を行う事業。
- 金融機関の与信管理システム、製造業の検品プロセス自動化、小売業の需要予測など、多様なプロジェクトに対応。
- プロジェクトごとに契約金額が設定されるケースや、開発費+運用保守費の複合契約も存在。
- AIプラットフォーム・ライセンス販売事業
- 自社で開発したAIエンジンやアルゴリズムをクラウド型のサービスとして提供するサブスクリプションモデル。
- 需要予測や画像認識、自然言語処理など、特定の機能に特化したパッケージも用意。
- 利用企業数が増加すると、定期的にライセンス収入やサブスク収入が積み上がるため、収益の安定化と拡張性が期待できる。
- RPA・DXコンサルティング事業
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進のコンサルティングを提供。
- AIとRPAを組み合わせることで、定型的業務だけでなく、非定型の高度なタスクまで自動化を可能にする。
- 経営戦略や組織改革のアドバイザリーから、PoC(概念実証)プロジェクトの実施、さらに導入後の運用サポートまで一貫して対応。
これら3つの柱を強化しながら、プラスゼロは短期的なプロジェクト売上(受託開発)と中長期的な継続収益(ライセンス料)をバランスよく成長させています。さらに、コンサルティング事業を通じて顧客との関係性を長期的に築くことで、追加案件の受注や製品導入へと繋げる「クロスセル」戦略も功を奏しているようです。
3. サービス・製品内容
3.1 需要予測エンジン「PZ-Forecaster」
- 小売・物流・製造など、多岐にわたる業界で利用可能な需要予測AI。
- 月額ライセンス料は企業規模や利用頻度に応じて30万~150万円程度(※推定)と幅広い。
- 天候・気温・イベント情報・SNSトレンドを考慮することで予測精度を高めることが可能。
3.2 自然言語処理プラットフォーム「PZ-NLP」
- 独自開発の日本語処理エンジンをベースに、多言語対応も拡張中。
- カスタマーサポートの自動化、チャットボット、問い合わせ管理システムなどに組み込みやすい構成。
- 月額ライセンス料はユーザー数やAPIリクエスト数に応じて変動し、数十万円から数百万円程度のレンジ。
3.3 RPA統合サービス「PZ-RPA Suite」
- 既存RPAツール(UiPath、Automation Anywhereなど)との連携機能も充実。
- AI技術を付加することで、画像や文書の内容を自動判定しながら作業を実行できる高度な自動化が実現。
- 導入コンサル費用は数百万円から数千万円、ライセンス料は月額数十万円程度が中心。
3.4 DXコンサルティング/PoC支援
- AIやRPAの導入を検討する企業に対して、短期PoC(概念実証)から長期的なDX戦略立案・実装を支援。
- コンサルティング費用はプロジェクト規模や期間によって大きく異なるが、一般的には1件あたり数百万円から数千万円程度。
- 経営陣やIT部門との密接な連携により、導入効果の可視化やROI(投資対効果)分析を行い、効果検証を徹底。
4. プラスゼロの直近業績
直近の業績
2024年10月期の決算において、pluszeroは売上高12.1億円(前期比36%増)、営業利益2.5億円(前期比54%増)を達成しました。この増収増益は、AIソリューションの需要拡大や新規顧客の獲得、既存顧客との関係強化によるものと考えられます。
来期業績予想
2025年10月期の業績予想として、売上高は前期比35.4%増の16.5億円、営業利益は同2.2倍の5.5億円を見込んでいます。
この予想が達成されれば、4期連続で過去最高益を更新することになります。この成長は、AIソリューションの需要拡大や新規顧客の獲得、既存顧客との関係強化によるものと考えられます。
プラスゼロは、自社独自のAIアルゴリズム開発や新技術(生成AIや最新のディープラーニング手法など)に対して積極的に投資を行っているとみられます。R&D費用の売上比率は約10%前後で推移しており、AI関連のスタートアップとしては堅調かつバランスの取れた水準と言えるでしょう。
また、人材面ではAIエンジニア、データサイエンティスト、クラウド関連エンジニアの採用を強化中。2022年度末の従業員数は推定で300名前後であり、うち技術系職種が約200名、コンサルタント・営業職が約100名という構成です。
5. 株価上昇のカタリスト(可能性)
- 大型受注や政府案件の獲得
- 官公庁や自治体、インフラ系企業との大規模AI導入プロジェクトが発表されると株価にポジティブ材料。
- 特にDXに関する国の補助金や政策支援が後押しとなれば、一気に注目度が高まる。
- 海外進出の成功事例
- 東南アジアや北米で現地企業とのジョイントベンチャーや大手グローバル企業との協業が軌道に乗れば、海外市場での成長期待が高まり株価が上昇する可能性。
- 新製品のリリース
- 生成AIを活用した次世代サービスや、特定業種に特化した高付加価値ソリューションのローンチがあれば、先行者利益を確保して市場から高い評価を受けるかもしれない。
- M&Aや資本業務提携の実施
- 同業他社を買収して一気に開発力や顧客基盤を拡大する戦略。
- 大手IT企業やコンサルティングファームとの資本提携によるシナジーを発表すると、バリュエーションが一段と引き上げられる可能性。
- 決算サプライズ
- AI関連銘柄は市場の期待が高い一方で、実際に好調な決算を出せば株価が急上昇しやすい。
- 特に四半期ごとの受注動向やライセンス解約率の低さが確認できると、安定成長の確度が高まると判断される。
6. 適正株価の考え方
2025年1月24日時点でのpluszeroの株価は2,867円でした。予想EPS(1株当たり利益)は49.8円、BPS(1株当たり純資産)は147円となっています。これらの数値から計算されるPER(株価収益率)は約57.6倍、PBR(株価純資産倍率)は約19.51倍となります。
一般的に、PERが高い場合は成長期待が高いとされますが、業種や市場環境によって適正な水準は異なります。pluszeroのような成長企業の場合、高めのPERが許容されることもあります。一方、PBRが高いことは、投資家が企業の純資産以上の価値を見込んでいることを示しています。
これらの指標を踏まえると、pluszeroの現在の株価は成長期待を織り込んだ水準と考えられます。
8. まとめ
また、今後のAI市場のさらなる拡大やDX需要の高まりを踏まえると、プラスゼロの業績は中期的にも高成長が見込まれる可能性が高いと考えられます。一方で、AI技術のコモディティ化、人材確保の難しさ、新規参入企業との競合激化などのリスク要因も存在します。
AIマーケット拡大期に着実に進んでいる昨今、同社の業績は要注目だと考えます。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。