銘柄研究:2025/1/27(月)エクサウィザーズについて

日本国内ではAI(人工知能)を活用したサービスやソリューションが、多種多様な業界・業務領域で導入され始めています。少子高齢化や人手不足、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れなど、構造的な社会課題が顕在化するなかで「AI×社会課題解決」を掲げるスタートアップが次々と登場してきました。

こうした流れの中で2016年に創業し、2021年12月に東京証券取引所グロース市場(旧マザーズ市場)へ上場したのが「株式会社エクサウィザーズ(ExaWizards Inc.)」です。同社は、自治体や大手企業と連携した幅広いAIソリューションを提供しており、特に日本が抱える大きな課題である高齢化社会へのアプローチを強みとしています。

目次

.エクサウィザーズの概要とビジネスモデル

1-1.企業概要

  • 会社名:株式会社エクサウィザーズ (ExaWizards Inc.)
  • 設立:2016年2月
  • 上場市場:東京証券取引所 グロース市場
  • 代表者:石山 洸(いしやま こう)氏
  • ビジョン:AIを活用して社会課題の解決を目指す

エクサウィザーズは、「AI×社会課題解決」を掲げる日本発のベンチャー企業です。そのビジネス領域は幅広く、自社開発の汎用AIプラットフォーム「exaBase(エクサベース)」をコアとしながら、介護・福祉、人材、金融など多分野にわたるAIソリューションを展開しています。単にアルゴリズム開発やコンサルティングを行うだけでなく、「顧客企業や自治体が現場で使いこなせる」ことを重視したプロダクト・サービス提供が特徴的です。

1-2.ビジネスモデルの主軸

エクサウィザーズのビジネスモデルは、大きく以下の二軸に整理できます。

  1. AIプラットフォーム事業
    • 汎用AIプラットフォーム「exaBase」のライセンス提供
    • AIアルゴリズムやアプリケーションの開発・SaaS提供
    • データ分析やモデル構築、ノーコード/ローコード開発支援
  2. コンサルティング・ソリューション事業
    • AI導入コンサルティング、PoC(概念実証)支援
    • DX推進や業務フロー再構築、人材育成プログラムなどの包括支援

AIスタートアップの多くが技術力を武器にアルゴリズムの提供を行う一方、エクサウィザーズは「現場実装」や「組織変革」を見据えたトータルソリューションを強みとしています。自社プラットフォームであるexaBaseを、複数の業界ニーズに合わせてカスタマイズし提供できる汎用性がポイントです。また、介護領域などの社会課題分野で先行実績を築きつつ、そのノウハウを他の分野にも横展開する動きが顕著に見られます。

2.主要サービス・製品内容

2-1.exaBase(エクサベース)シリーズ

エクサウィザーズの基幹プラットフォームであり、AIの開発・導入・運用を一気通貫でサポートするサービス群です。

  • exaBase Studio:ノーコード/ローコードに近い環境でデータ分析や機械学習モデル構築を可能にする開発基盤。専門人材が少ない企業でもAI活用を進めやすいメリットがあります。
  • exaBase for HR / for Finance / for Care など:業種・領域別に最適化されたAIアプリケーション群。HR(人材管理)、Finance(金融リスク分析など)、Care(介護現場支援)など、目的に応じた機能を提供しています。

2-2.介護ソリューション

超高齢社会を迎えた日本では、介護人材不足やケアの質向上が喫緊の課題です。エクサウィザーズは要介護者の状態把握やケアプラン策定、人材配置の最適化などをAIで支援するソリューションを提供。大手介護施設や自治体と連携して実証実験を行い、サービスの実用性・効果検証を重ねています。

2-3.DXコンサルティング

単なるAI導入だけでなく、企業の経営戦略や業務プロセス、人材育成といった多角的な観点から支援するDXコンサルサービスを展開しています。自社でAI技術を保有しているため、PoC(概念実証)段階から実用化までをワンストップで伴走しやすいという特徴があります。

2-4.人材育成プログラム

AIやデータサイエンスの基礎知識を習得する研修プログラムを提供しています。特に社内でDX推進を担う人材が不足している企業や自治体に対し、経営層から現場担当者まで、それぞれの役割に応じた研修を設計・提供しています。

3.エクサウィザーズの業績動向

以下に、2024年度実績、2025年度見通しをまとめます。

3-1.2024年度実績

  • 売上高: 83.84億円(前年比 +20.0%)
  • 営業損失: 3.05億円(前年の営業損失3.78億円から改善)
  • 経常損失: 3.30億円(前年の経常損失3.75億円から改善)
  • 当期純損失: 6.10億円(前年の当期純損失1.41億円から悪化)

3-2.2025年度見通し

  • 売上高: 100.6億円(前年比 +20.0%)
  • 営業利益: 2.00億円(黒字転換予想)

この数値が達成された場合、エクサウィザーズにとって、この営業黒字転換は上場以来初めてとなります。

3-3.2025年3月期の方向感

日本企業の多くは直近の年度の業績予想までしか公式に公表しないケースが一般的で、エクサウィザーズも2025年3月期の具体的な数値予想は開示していません。ただ、同社が掲げる中期的なビジョンや成長率の推移から推察すると、年率30%前後の売上成長 を継続することが当面の目標とみられます。

仮に2024年3月期に売上高70億円規模を達成し、2025年3月期も同様の成長を続けるとすれば、単純計算で90億円超に近づく可能性があります。これはあくまで定量的な試算に過ぎず、実際の業績は受注状況や新規事業の進捗、競合動向、景気の影響などに左右されます。

一方、利益面については、2024年3月期よりもさらに投資負担の吸収が進み、黒字転換が視野に入るシナリオもあり得ます。同社のサービス形態の多くはSaaSモデルや長期契約型(ストック型)が増えており、ある程度の規模に達すると利益率が急改善する傾向があるからです。もっとも、競争環境が激化したり、新たな大型投資を実施したりする可能性もあるため、2025年3月期に確実に黒字化するという保証はありません。

4.今後の業績展望

4-1.高齢化社会と介護分野での需要拡大

日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進展しており、2040年にかけて75歳以上の人口が急増すると予測されています。介護人材不足や医療費・介護費の増加が深刻化する一方で、テクノロジーの導入による現場負担軽減やケアの質向上が求められています。

エクサウィザーズは創業初期から介護領域に注力し、ケアプラン策定支援やモニタリングツールなどの開発実績を積んできました。さらに自治体レベルの支援に踏み込み始めていることで、大規模案件の獲得やサブスクリプション収益の安定化が期待されます。長期的に見れば、少子高齢化という構造的問題へのソリューション提供は、継続的かつ拡大余地の大きい市場と言えるでしょう。

4-2.企業のDX推進ニーズの高まり

コロナ禍を機に多くの企業でリモートワークやオンラインツールが普及し、デジタル化が加速しました。しかし、本格的なAI導入やデータ駆動型の経営を実践できている企業はまだ限られています。政府によるDX推進施策や補助金制度なども相まって、企業のDX需要は今後も拡大する見込みです。

エクサウィザーズは、汎用AIプラットフォーム「exaBase」を軸に、製造業、金融業、小売・流通など幅広い分野でのAIソリューション提供を加速させています。1社1社の要望に合わせてカスタマイズが可能な柔軟性や、コンサルティング・人材育成まで踏み込む総合力が強みとなり、大手企業との継続的契約につながりやすいと考えられます。

4-3.海外展開やグローバル企業との協業

日本の介護・福祉テックは、超高齢社会を先行して経験していることから、アジアを中心に海外でも注目度が高まっています。エクサウィザーズの高齢者ケア分野でのノウハウは、将来的に海外へ展開できる可能性があり、海外企業や海外自治体との提携・協業が実現すれば、新たな収益源となるでしょう。

また、国内企業がグローバル市場でAI活用を進める際にも、エクサウィザーズの技術と現場知見が活かせるシーンが増えてくることが予想されます。海外拠点の整備やパートナー企業との連携が本格化すれば、事業規模の拡大ペースが一段と加速する可能性もあります。

5.株価上昇のカタリスト(材料)になり得る出来事

エクサウィザーズの株価が大きく上昇するきっかけ(カタリスト)として、以下のようなイベント・要因が想定されます。

  1. 大型案件の受注発表
    官公庁・自治体や大手企業との大口受注が公表されると、市場は同社の将来収益の安定性を高く評価しやすくなります。特に長期契約かつストック型収益となるプロジェクトであれば、株価へのポジティブインパクトは大きいでしょう。
  2. 新規事業・新サービスのローンチ
    既存領域(介護、人材、金融)に加え、今後AIニーズが急増する製造業、物流、小売などへの進出が具体化した際には、新たな成長エンジンとして注目されます。他社との協業やM&Aのニュースも株価材料になり得ます。
  3. 黒字転換または黒字化の見通し
    AIスタートアップは研究開発投資が先行するため、短期的に赤字計上となるケースが多いですが、ある時点で損益分岐点を超えると利益が急拡大する「レバレッジ効果」が生じやすいです。もし「黒字転換が近い」という見通しが示されれば、投資家の期待感が高まる可能性があります。
  4. 海外展開やグローバル提携の本格化
    介護・福祉分野のAIソリューションを海外に展開し、大手グローバル企業や政府機関との契約を結ぶようなニュースが出れば、成長余地が一段と広がると見なされるでしょう。
  5. 政府・自治体の政策後押し
    DX推進や高齢者福祉へのIT導入を支援する補助金・助成金が拡充されたり、エクサウィザーズが実証実験の中心的役割を担ったりする際には、導入ハードルが下がり案件が増加する可能性があります。こうした政策アナウンスメントは株価にもポジティブに作用すると考えられます。

6.適正株価についての考察

エクサウィザーズの株価を評価する際は、一般的なPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)だけでは測りづらい面があります。まだ研究開発費や先行投資が大きく、短期的には赤字が続いているからです。そのため、将来の売上成長率(特にSaaS型ストック収益の積み上げ) や、利益率の改善がいつどの程度進むか といった点が重要な評価要素になります。

6-1.SaaS型企業としての評価指標

AIプラットフォーム「exaBase」はサブスクリプション契約の拡大が見込まれ、安定的なストック収益を生み出す基盤となり得ます。SaaSビジネスでは、以下のような指標が重視されることが多いです。

  • ARR(Annual Recurring Revenue / 年間経常収益)
  • NRR(Net Revenue Retention / 既存顧客からの収益維持率)
  • CAC(Customer Acquisition Cost / 顧客獲得コスト)
  • LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)

これらが安定的に改善し続けるのであれば、時価総額=売上高の10~20倍 といった評価がSaaS初期成長企業で見られることも珍しくありません。エクサウィザーズも、介護・福祉やDX支援という継続性の高い需要を捉えているため、これらの指標が良好に推移すれば株価が大きく上振れる可能性があります。

6-2.競合他社との比較

国内にはPKSHA Technology、ABEJA、ブレインパッドなど、AIやデータサイエンスを手がける上場企業が複数存在します。エクサウィザーズは特に「高齢化社会」「社会課題の解決」という文脈での差別化を図っているため、単なるAIコンサル企業とは異なるポジションを築けるかがポイントになるでしょう。

6-3.黒字化のタイミングとレバレッジ効果

売上が増えれば増えるほど、固定費が一定範囲に収まっていれば営業損失が急速に圧縮され、やがては営業利益がプラスに転じる可能性があります。黒字化のタイミングが早まれば、バリエーション(企業価値)も見直されることが多いため、四半期ごとの売上推移や大型案件の着実な積み上げに注目が集まります。

6-4.2025年3月期以降の成長シナリオ

同社は2024年3月期で売上70億円超を目指す計画です。仮にそこから30%前後の成長率を継続できれば、2025年3月期は売上90~100億円規模に到達する可能性があります。

SaaS型企業の場合、売上100億円を超えてくると投資家からの注目度が一段と高まる傾向があり、株価にポジティブな影響が及ぶことが多いです。実際、海外のSaaS企業でも「ARR 1億ドル(約130億円)超え」は一つの大きなマイルストーンとされます。エクサウィザーズが今後さらにサービスラインナップを拡充し、高齢化社会を中心とする大きな社会課題に対して強力なソリューションを提供し続けられれば、時価総額1,000億円、あるいはそれ以上を目指すことも夢ではないでしょう。

7.まとめ

以上のように、エクサウィザーズは日本が抱える大きな課題――高齢者ケアや人材不足、企業DX――に対してAI技術を通じた実効性の高いソリューションを提供する“社会課題解決型AIベンチャー”として注目を集めています。短期的には研究開発費や人件費が先行し、赤字決算が続くものの、売上は右肩上がりで成長中という投資フェーズの真っ只中にあります。

投資家目線では、どの時点で黒字化・利益成長が本格化するか、またSaaS型ビジネスとしてのストック収益拡大がどの程度順調に進むか が重要な注目点となるでしょう。

★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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