AI・ビッグデータ関連銘柄として注目されているデータセクション(証券コード:3905)は、ここ数年で積極的な資本政策を実施しています。大手企業からの出資や、直近ではワラント(新株予約権)発行による約30億円の大型調達を発表し、AIインフラ事業を大きく加速させようとしています。今回は、
- ワラント発行の概要と目的
- 大手企業からの出資実績と狙い
- 最新決算を踏まえた今期業績見通し
- 配当・EPSの動向
- 適正株価の考え方と将来予測
これらのポイントを整理してみました。
1. ワラント発行の概要と目的
今回の発行内容と資金使途
- 発行先:ハヤテマネジメント社(第三者割当)
- 新株予約権数:44,000個(最大で440万株に相当)
- 調達金額(手取概算):約30.09億円
- 希薄化率:最大約24.85%
調達した約30億円は、主に以下の使い道が公表されています。
- DSクラウドスタック(GPU最大効率化アルゴリズム)の開発・構築(約10億円)
- AIデータセンター事業関連(合弁会社出資やAIファンド組成など)(約7.09億円)
- エンジニア採用・人件費など運転資金(約7億円)
- 既存借入金返済(約6億円)
AIインフラ領域への積極的な投資と財務基盤強化を狙った発行であり、短期的には株式の希薄化リスクが生じますが、中長期的には事業の飛躍的拡大に期待がかかります。
2. 大手企業からの出資実績と狙い
データセクションは新興企業ながら、これまでもKDDIや博報堂、日本生命など複数の大手企業から出資を受けています。出資の背景やシナジーを簡単に振り返ってみましょう。
KDDI(通信大手)との提携
- 出資比率:2018年に約18%取得との報道あり
- 目的:
- データ解析技術をKDDIの通信プラットフォームと組み合わせ、新しいAI/IoTサービスを創出
- 5G時代を見据えた画像解析・SNS分析の高度化
- 効果:大手顧客基盤との協業で新規案件獲得やサービス開発を加速
博報堂(広告大手)との提携
- 提携開始:2012年に資本業務提携
- 目的:
- ソーシャルメディアデータの解析を活かしたマーケティングソリューション共同開発
- 広告主への高度なデータドリブン施策を提供
- 効果:ソーシャルリスニングやブランド評判分析など、広告領域での収益機会拡大
日本生命(保険大手)・ジャフコ(VC大手)など
- 日本生命:IPO前後から数%~6%超保有。保険Tech・FinTech展開の布石にも?
- ジャフコ:IPO前に約7%を保有。ベンチャーキャピタル出資として、上場支援と企業価値向上を目的。
海外投資ファンドからの出資
- First Plus Financial Holdings:2024年に第三者割当増資を引き受け、約2,230,000株を取得(5%超大株主入り)。海外拠点展開やグローバル事業強化の一助となる可能性。
- ハヤテマネジメント:今回(2025年2月)のワラント割当先。最大約25%の希薄化リスクと引き換えに、約30億円の開発資金を調達。
このように、多数の大手企業・ファンドからの出資により、データセクションは資金面・信用面の後押しを得ています。KDDIや博報堂と協業することで事業基盤も拡大しており、特にAI・ビッグデータ解析領域の案件獲得や大規模プロジェクト進行に役立っています。
3. 最新決算を踏まえた今期業績見通し
第3四半期までの実績(2024年4月~12月)
- 売上高:前年同期比 +33%(約20.6億円)
- 営業損益:-2.8億円の赤字(前年同期 -1.8億円の赤字から赤字幅拡大)
AIデータセンター事業への先行投資が利益を圧迫。売上は伸びているものの、新規事業の初期費用がかさんで赤字となっています。
通期予想(2025年3月期)
- 経常利益:3.17億円(前年同期比 +234.9%増)
第3四半期までに約-3.81億円の経常損失があるため、期末までのV字回復が相当大きなハードルとなっています。会社予想を達成できるかどうかは今後の進捗次第ですが、やや強気な計画との見方も多いようです。
4. 配当・EPSの動向
配当方針
- 近年は無配継続(0円配当)
- 今期(2025年3月期)も配当予想は0円のまま
成長投資を優先する新興企業ではよくある方針で、データセクションも現在は内部留保を充実させる段階といえます。AI事業が軌道に乗り安定利益を出せるまでは、配当復活は期待しにくいで考えます。。
EPSの見通し
- 今期は前年赤字から黒字転換を見込み、EPS約12円超(会社計画ベース)
- 来期以降はAIインフラ事業(DSクラウドスタックやデータセンター)がどの程度軌道に乗るかがカギ
- 一方、ワラント行使による**発行株式数増加(最大25%)**がEPS希薄化リスク
投資コスト以上の利益成長を達成できれば、EPSの大幅向上も見込めますが、回収に時間がかかる場合はEPS停滞の懸念も残ります。
5. 適正株価の考え方と将来予測
現在の株価バリュエーション
- ワラント発表後にやや下落し、2025年2月時点で約591円
- 予想PER(株価収益率)は約47~55倍、PBRは4倍超とも言われ、高めのバリュエーション
AIテーマの盛り上がりで株価が急騰・急落するボラティリティの高さが特徴。以前は1,200円超(PER約100倍)まで一時上昇したこともあり、将来成長をどの程度織り込むかで評価が大きく変わります。
シナリオ別の株価イメージ
- ベースシナリオ
- 今期(2025年3月)黒字転換を達成し、来期以降は緩やかに増益(EPS15円程度)
- グロース企業としてPER30~40倍を適用 → 株価450~600円
- 今の株価はこの水準に近く、“やや強気な公正価値”付近か
- 強気シナリオ
- AIデータセンター・クラウドスタックが成功し、年率20~30%の高成長を数年継続
- 2~3年後のEPSが20~30円台に乗れば、PER40~50倍で株価800~1,500円も視野
- 一時1,200円超まで買われたのは、この“強気シナリオ先取り”の動きとも
- 弱気シナリオ
- 投資負担が利益を圧迫し、EPS一桁円台にとどまる
- グロース評価が剥落すればPER20倍以下に切り下がり、株価200~300円台もあり得る
- 新株予約権の行使による希薄化だけが先行し、業績が追いつかなければ失望売りも
要するに、現在の株価は「ワラント後の希薄化リスク」を織り込みながらも、「AI事業成功への期待」も反映された水準といえます。事業進捗が順調なら上昇、伸び悩めば下落という二極化が起きやすい点に注意が必要です。
まとめ:ワラント・大手出資がもたらす未来は?
- ワラント発行による約30億円の調達は、AIインフラ事業(特にGPU基盤やデータセンター)の大規模投資に充当される予定。
- KDDI、博報堂などからの出資・業務提携は、AI/ビッグデータ解析の共同プロジェクトや営業面のシナジーを生み、データセクションの信用力と成長チャンスを拡大。
- 短期的には先行投資負担で赤字継続リスクや目先の希薄化懸念がある一方、中長期ではAI関連需要の拡大を取り込み、EPS急伸が期待できる。
- 配当は当面0円が続く見通しのため、投資家はキャピタルゲイン(株価上昇)狙いのグロース投資として検討するケースが多い。
- 株価水準は現状「やや強気な公正価値」~「成長期待の先取り」感あり。将来的に業績が伴えば一段高も十分あり得るが、期待外れなら大きく下落する可能性も。
結論として、データセクション(3905)は「高リスク・高リターン」要素をはらむAI銘柄と言えます。いまやAI・クラウドインフラは世界的に追い風を受けており、同社が調達した巨額資金をうまく活かせば、数年後には大きく飛躍する可能性があります。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。