銘柄研究:2025/6/6(金)KDDIによる堺データセンター構想の公式発表と計画概要。そして、データセクションの関り方。

データセクションがの株価がこの10日ほど急騰しています。なぜこの会社がいまフォーカスされているのか?その背景にはKDDIが進める堺データセンター事業構想が深くかかわっていると推察しています。

昨年6月に4社協議という形で始まったKDDIの堺データセンター構想は、昨年末に一旦クローズしましたが、シャープの堺工場跡地をKDDIが今年4月に購入するなど、事業自体は進捗しています。

この記事では、そのKDDI堺データセンター事業の概要と、見通し。またデータセクションがどのように関わっていく可能性があるのかについて調べてみました。

目次

KDDIによる堺データセンター構想の公式発表と計画概要

KDDIは2024年6月、「アジア最大規模のAIデータセンター」を大阪府堺市のシャープ堺工場跡地に構築するため、シャープや米Supermicro、そしてAI関連企業データセクションとの4社協議を開始することで合意したと発表しました。このデータセンター(仮称「大阪堺データセンター」)にはNVIDIA社の最新GPU基盤(例:「GB200 NVL72」)を約1000基規模で導入し、大規模生成AIモデルの高速開発を可能にする計画です。建設候補地にシャープ堺工場跡を選定したのは、十分な電力供給容量と広大な土地を確保できる見込みだからであり、早期の稼働開始を目指すとされています。KDDIは自社のネットワーク構築・運用力を提供して本AIデータセンターの実現を強力に支援し、生成AI開発や関連事業の基盤として活用する計画です。さらに将来的には、KDDIの次世代ビジネス基盤である「WAKONX(ワコンクロス)」を通じ、このデータセンター上で企業向けに最適化したAIサービスを提供していく構想も示されています。

2024年12月には、KDDIとシャープの間で基本合意書の締結が正式に発表され、KDDIが堺工場跡地の土地・建物・電源設備の一部を譲り受けてデータセンター転用工事に着手することが決まりました。KDDIは2024年度中(~2025年3月)に改装工事を開始し、2025年度中(~2026年3月)に本格稼働開始を目指すとしています。実際にKDDIは2025年4月4日付でシャープ堺工場跡地の一部を約100億円で取得する契約を締結し、データセンター建設に向けた資産取得を完了しました。この取得部分に「大阪堺データセンター」を設立し、電源技術では再生可能エネルギー100%の電力利用、冷却技術では液冷と空冷を組み合わせたハイブリッド冷却方式を採用するなど、環境負荷低減と最先端設備を両立させる計画です。以上の公式発表から、KDDIは自社主導で堺データセンター構想を具体的プロジェクトとして推進しつつあり、明確な工程表と技術計画が示されています。

KDDI経営陣の発言と実現への意欲

KDDI経営陣も堺データセンター構想に強い意欲を示しています。2025年4月に就任した松田浩路・新社長は記者会見で、生成AI時代の基盤整備として堺市の大規模データセンターに言及しました。同データセンターにおいてGoogleの最新AIモデル「Gemini」を国内インフラに組み込み、2025年度中の本格稼働を目指す方針を述べています。松田社長は「AIの普及で土台となるデータセンターも、堺市に建設する施設を活用して、あらゆるシーンで一人ひとりの最適解につなぐのがKDDIのAIだ」と語り、通信とAIの融合戦略の鍵として本データセンターを位置づけました。またKDDIは2025年2月、東京・渋谷にある自社データセンター内にGPU対応のAIデータセンター技術検証環境を開設していますが、これは堺AIデータセンターでの本格稼働を見据えたもので、電源・冷却など最新技術の実証をパートナー企業と行う場としています。このようにKDDI幹部の発言や取組からは、堺データセンター構想を単なる計画に留めず、自社のAI事業戦略の中核インフラとして実現させる強い意思が読み取れます。

業界メディア・経済紙による分析と報道

本構想について、業界メディアや経済紙も様々な視点から報じています。例えば東洋経済オンラインは、シャープが堺工場跡地の利活用策として打ち出したAIデータセンター構想に通信大手2社(ソフトバンクとKDDI)が関与する背景を分析しています。その中で、ソフトバンク案は「工場敷地の6割を買い取り受電容量150MW規模のデータセンターを建設するシンプルな内容」である一方、KDDIを含む案は「データセクションという東証グロース上場企業とシャープ・KDDIの3社で運営会社(JV)を設立し、KDDIの役割はネットワーク構築・運用支援にとどまる」と報じられました。つまり当初報道ベースでは、「シャープとKDDIが提携して進める」という単純な構図ではなく、KDDIはネットワーク面でサポートする位置づけに過ぎないとの指摘がなされていました。また同記事は、データセンター運営主体となるはずのデータセクション社に経営陣の退任や増資引受先不透明といった不可解な点があることにも触れ、構想の行方に一抹の不安を示唆しています。

一方、日本経済新聞やロイター通信なども本件を報道し、計画の進捗を客観的に伝えています。ロイターは2024年12月の基本合意発表時に「シャープとKDDIなど4社で進めてきた協議は終了したが、Supermicroとデータセクションとは引き続き構築・運用で連携する」とするシャープ発表を紹介するとともに、当初計画ではシャープ・KDDI・データセクションの3社でJVを設立し、SupermicroからAIサーバーを調達する計画だったことを明らかにしました。このように経済メディアの報道からは、初期構想から計画変更に至る経緯(JV方式からKDDI主体への転換)や各社の役割分担の変化が読み取れます。加えて日経クロステックやImpress Watchなどは、KDDIが堺工場跡地の取得代金は約100億円、ソフトバンクは約1000億円で敷地の6割を取得――といった規模感の対比も報じており、シャープ堺跡地は通信大手2社による西日本最大級のデータセンター拠点へと変貌しつつあるとの分析も見られます。

実施主体・土地確保・行政連携など進捗状況

実施主体については、上述の通り当初はシャープ・KDDI・データセクションの合弁会社による運営が検討されていました。しかし基本合意以降は計画が再構成され、KDDI自身が土地・建物を取得して主体的に建設を進める形に切り替わっています。実際、KDDIは2025年4月に堺工場跡地の一部を正式取得済みであり、これにより施設改装工事や設備導入の土台が整ったといえます。取得した敷地はシャープ堺工場の約4割に相当するエリアとみられ、残る6割は前述のようにソフトバンクが取得し別途データセンター化を進めています。行政との連携について特筆すべき公式発表はありませんが、堺市・大阪府にとっても大規模投資案件であり、廃工場の再開発による地域活性化や雇用創出に繋がる計画として歓迎されている可能性が高いと推測されます。既にシャープとKDDIの基本合意発表時には、シャープ側が「当売却を通じてアセットライト化を図りつつ、KDDIによる速やかなデータセンター構築に協力する」とコメントしており、地元企業であるシャープや関係当局も含めたオール堺・大阪での協力体制が整いつつあることが示唆されています。

進捗面では、KDDIは技術検証・開発環境の整備パートナー企業との提携など着実に準備を進めています。前述の渋谷での検証環境開設や、Google CloudとのAI分野での戦略提携(2025年、堺データセンターにおける生成AI基盤Geminiの導入協力)はその一環です。さらに冷却設備や電力設備についても、シャープ工場時代のインフラを活かしつつ最新仕様への転換を図る計画で、例えば受電容量は初期で数百MW級(ソフトバンク側150MW+KDDI側推定100MW前後)に上り、将来的には増強も見据えています。この規模は国内有数であり、関西圏におけるハイパースケール・データセンター集積地として堺を位置付けるものです。以上のように、土地の確保から設備投資、技術検証、人材・ノウハウの準備まで着実に前進しており、計画進捗は概ね順調と考えられます。

データセクションとの関係性・役割

データセクション株式会社(東証グロース上場)は、堺AIデータセンター構想において鍵を握るパートナー企業の一つです。当初の協議段階では、データセクションはシャープ・KDDIとともに運営主体となる合弁会社を設立し、実際のデータセンター運営を担う計画でした。KDDIの2024年6月発表でも、「本AIデータセンターの運営支援をデータセクションが実施する」ことが明記されています。これはデータセクション社が持つAI分野のデータ分析・運用ノウハウを活かし、施設の効率的な運営管理やAIソリューション提供面で協力する役割とみられます。

しかし前述のように、12月の基本合意時に4社協議は一旦終了となり、形式上データセクションは運営主体から外れる形になりました。とはいえシャープ発表によれば、「Supermicro、データセクションともAIデータセンターの構築・運用に向けて引き続き連携していく」とされており、データセクションはパートナー企業として引き続き関与します。具体的には、ハード提供のSupermicro社と同様に、データセクションはソフト面(AI運用基盤・データ利活用など)で協力し、KDDIによるデータセンター実現を支えるポジションに移行したと考えられます。実際、データセクション社の株価は「KDDI等とAIデータセンター構築へ」との報道後に急騰するなど市場から期待も寄せられており、同社自身も海外でのAIデータセンター展開(スペイン企業との協業)に乗り出すなど積極的な動きを見せています。もっとも東洋経済の指摘するように、データセクション社では直近で社長交代や増資引受先の不透明さが報じられており、その内部事情に不安材料があることも否めません。この点、KDDIが最終的に土地取得まで踏み切り主導権を握った背景には、こうした不確実性を排しプロジェクトを確実に推進する狙いもあったと推察されます。総じて、データセクションは当初の中核的役割こそ変化したものの、AI運用ノウハウ提供やソリューション面で不可欠な協力者として、引き続き堺データセンター構想を下支えしていく位置づけと言えるでしょう。

構想実現の可能性と見通し

以上収集した公式情報や報道・分析を踏まえると、KDDI堺データセンター構想の実現可能性は極めて高いと推定されます。まずKDDI自身が既に用地取得や設備投資に踏み切り、具体的な稼働目標(2025年度中)を明示している点は、単なる構想段階を超えて実行フェーズに入っている証左です。また、協業先だったシャープにとっても不振の液晶事業に代わる起死回生策であり、本構想は単独企業の思惑ではなく複数の大企業の利害が一致したプロジェクトとなっています。さらに、ソフトバンクによる同敷地の別部分での並行投資(150MW級DC建設)も進んでおり、堺は官民挙げてデータセンター集積拠点として発展する流れができています。そのため電力・インフラ面の整備も相乗効果で進むと見られ、大規模DC建設に不可欠な条件(電力確保・回線網整備・冷却技術など)はクリアされる見込みです。

リスク要因があるとすれば、データセンター需要や予算面の変動ですが、生成AIブームによる国内外の需要増は追い風です。KDDIはこの堺DCを通じてGoogleをはじめとする先端AIとの連携基盤を築こうとしており、既に顧客となり得るパートナーの存在が見えています。投資額もKDDIにとって手に余る規模ではなく(取得費100億円+設備投資、十分賄える範囲)、むしろこれを契機に新たな収益源開拓を図る狙いが強いでしょう。データセクションに関する懸念も、前述のようにKDDI主導に切り替えたことで影響は限定的になったと考えられます。総合すると、信頼性の高い情報源が示す事実関係(公式契約の締結、設備計画の具体性、トップのコミットメント)から判断して、堺データセンター構想は予定通り実現に至る可能性が大きいと言えます。その実現によって、関西圏ひいては日本全体のAIインフラ競争力が向上することが期待されます。

★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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