近年、地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO₂)の削減が世界的な課題となっています。
その中で注目を集めているのが、大気中から直接CO₂を回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」技術です。
ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、エネルギー分野への投資を強化しており、特にオクシデンタル・ペトロリウム(Occidental Petroleum)への投資を拡大しています。2024年12月には約890万株を追加購入し、同社の普通株式保有比率を28.2%に引き上げました。
オクシデンタル・ペトロリウムは、二酸化炭素の直接空気回収(DAC)技術の開発に積極的に取り組んでいます。同社は、テキサス州に世界最大規模のDAC施設を建設中であり、これにより大気中のCO₂を効率的に回収・貯留することを目指しています。
この投資は、エネルギー分野における持続可能な技術への関心と、長期的な価値創出を重視するバフェット氏の投資哲学を反映していると考えられます。
ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)は、世界の温暖化現象を食い止める可能性を持っていますが、その効果を最大限に発揮するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。以下に、DAC技術が温暖化防止に与える可能性とその課題を整理します。
DAC技術に関するまとめ
DAC技術がもたらす可能性
そもそもDACとはどんな技術でどんな課題があるのでしょうか?
- 二酸化炭素の直接削減
DACは、大気中から直接CO₂を吸収するため、排出量を減らすだけでなく、すでに蓄積されたCO₂を削減することができます。これは、従来の再生可能エネルギーや省エネ技術では対応しきれない部分を補完する重要な手段です。 - カーボンニュートラルの実現
DACによって回収されたCO₂は、地中に貯留(CCS: Carbon Capture and Storage)するか、燃料や素材の製造に再利用することで、カーボンニュートラルの目標達成に貢献します。 - 持続可能な社会の基盤作り
DACは、エネルギー供給や産業活動が依然として化石燃料に依存している地域においても、温室効果ガス削減の手段を提供します。
DAC技術の課題
- 高いコスト
現時点では、DACによるCO₂回収は非常に高コストで、1トンあたりのCO₂除去に数百ドルが必要とされています。コスト削減のためには、技術の進歩や規模の拡大が不可欠です。 - エネルギー消費量
DACのプロセスには多くのエネルギーが必要であり、そのエネルギーが化石燃料に由来する場合、全体の排出削減効果が低下する可能性があります。再生可能エネルギーと組み合わせることが重要です。 - 規模の課題
DACが地球規模のCO₂削減に寄与するには、数百から数千の大規模プラントが必要とされます。これには莫大な投資とインフラ整備が伴います。 - 社会的受容性
新しい技術に対する理解と支持が必要です。特に、大規模なプラント建設が地域住民や環境に与える影響を慎重に検討し、適切な対策を講じる必要があります。
DACの役割と期待
DACは単独で温暖化を食い止める解決策ではありませんが、他の削減技術や再生可能エネルギーと組み合わせることで、地球規模での気候変動対策の重要な要素となる可能性があります。特に、化石燃料からの脱却が困難な産業(例:航空、セメント製造など)や、過去の排出分を取り除く手段として期待されています。
国際エネルギー機関(IEA)や気候科学者たちは、DACを含む二酸化炭素除去技術が2050年までのカーボンニュートラル達成に重要であると指摘しています。しかし、同時に再生可能エネルギーの導入、省エネ、持続可能なライフスタイルへの移行などの努力と並行して進めることが求められます。
DACは、温暖化現象を食い止める一助となる可能性を秘めていますが、現在は「補完的な技術」としての役割が大きいです。その実用化と拡大には、政府、企業、研究者、そして私たち一人ひとりの協力が欠かせません。
DACに取り組む世界企業
アメリカでこの技術を開発・実用化している主な企業とその取り組みをご紹介します。
1. Climeworks
スイス発祥のClimeworksは、アメリカでも活動を展開しており、カリフォルニア州を中心にDAC施設の建設を進めています。この企業は、モジュール式のCO₂吸収装置を活用しており、大気中から回収したCO₂を地中に埋める技術で知られています。また、回収したCO₂を再利用して炭酸飲料や燃料の製造に活用するプロジェクトも進行中です。
2. Carbon Engineering
カナダを拠点とするCarbon Engineeringは、テキサス州で世界最大規模のDACプラントを建設中です。同社の技術は、回収したCO₂を合成燃料の原料として利用できる点が特徴です。また、アメリカの大手エネルギー企業と提携し、持続可能なエネルギー生産の一環としても注目されています。
3. Heirloom
Heirloomは、石灰石を利用してCO₂を吸収する革新的な技術を採用しています。この技術では、石灰石がスポンジのようにCO₂を吸収し、その後、加熱してCO₂を分離する仕組みを持っています。2023年には、アメリカ初の商業用DACプラントを稼働させ、カリフォルニア州で大気中のCO₂回収を開始しました。
4. ExxonMobil
アメリカの大手エネルギー企業ExxonMobilは、テキサス州でDAC技術を活用した大規模なCO₂回収プラントの建設を進めています。同社は、回収したCO₂を地下の貯留施設に安全に保管する「CCS(カーボンキャプチャー&ストレージ)」技術の分野でのリーダーシップを発揮しています。
DACに取り組む日本企業
日本でも、大気中の二酸化炭素(CO₂)を直接回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」技術の開発に取り組む企業が増えています。以下に主な企業とその取り組みを紹介します。
三菱重工業
三菱重工業は、DAC技術の研究開発を進めており、既存のCO₂回収技術を応用した新たなシステムの構築を目指しています。
川崎重工業
川崎重工業は、DAC技術の開発に注力しており、効率的なCO₂回収システムの実現を目指しています。
日立製作所
日立製作所も、DAC技術の研究に取り組んでおり、持続可能な社会の実現に向けた技術開発を進めています。
これらの企業は、DAC技術の実用化を通じて、地球温暖化対策やカーボンニュートラルの実現に貢献することを目指しています。
まだまだ日本では大きな取り組みになっていませんが、今後時間の経過とともに重要な取り組みに変わってくる可能性があると考えています。
その時、日本の民間企業でどのような企業が取り組んでいるのか?ウォッチしていくのも面白いかもしれません。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。