銘柄研究:2025/1/4(土)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスについて

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、証券コード: 7532)は、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」などを展開する小売業界の大手企業です。

今では認知が広がっている「圧縮陳列」や、最近ではブルーノマーズが登場するTVCMをオンエアするなど、顧客を楽しませることに強いこだわりを持った、とても面白い企業だと思います。

目次

業績の展望

2025年6月期の業績予想について、会社側は以下の見通しを発表しています。

  • 売上高:2兆2,200億円(前年同期比6.0%増)
  • 営業利益:1,500億円(同7.0%増)
  • 経常利益:1,354億円(同8.9%減)
  • 当期純利益:865億円(同2.5%減)

一方、証券アナリストのコンセンサス予想では、経常利益は1,514億円(前年同期比1.9%増)と、会社予想を上回る増益を見込んでいます。

同社の沿革

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の歴史は、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を中心としたユニークな小売業としての成長の物語です。

知っている人も多いとは思いますが、改めて以下にまとめてみました。

創業と初期の展開

  • 1978年
    創業者の安田隆夫氏が東京都杉並区で雑貨店「泥棒市場」をオープン。この店舗がPPIHの原点です。
    独特の陳列方法や商品構成が注目を集め、徐々に顧客を増やしていきました。
  • 1980年
    「泥棒市場」を閉店し、新たに「ドン・キホーテ」の第1号店を東京都府中市にオープン。この頃から、深夜営業や圧縮陳列といった現在のドン・キホーテの特徴が形成されました。

事業拡大

  • 1989年
    法人として「ドン・キホーテ株式会社」を設立。事業の本格的な拡大が始まりました。
  • 1998年
    東京証券取引所第2部に株式を上場。これを機に全国展開を加速しました。
  • 2000年
    東京証券取引所第1部に指定替え。企業としての地位を一層強化。
  • 2001年
    海外進出を開始。アメリカ・ハワイに最初の店舗をオープンしました。

多角化と成長

  • 2007年
    「長崎屋」をグループ会社として買収し、総合スーパー業態にも進出しました。
  • 2013年
    持株会社制へ移行し、「ドン・キホーテホールディングス株式会社」に社名変更。事業の多角化と効率的な運営を目指しました。
  • 2017年
    アジア市場への本格進出をスタート。「DON DON DONKI」の名称でシンガポールに第1号店を出店。これをきっかけにアジアでの店舗展開が加速しました。

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスへの移行

  • 2019年
    社名を現在の「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス株式会社」に変更。グローバルな展開を念頭に置いた経営方針を明確化しました。
  • 2021年
    北米市場での事業拡大として、高級スーパーマーケット「Gelson’s Markets」を買収し、多様な業態を展開。

現在の事業規模と方向性

  • 2023年現在
    グループの総店舗数は700店舗を超え、国内外での売上高は2兆円以上に達しています。アジアや北米での出店が続いており、グローバルなブランドとしての地位を確立しつつあります。
  • 成長戦略
    • 国内では新業態の開発と効率的な店舗運営。
    • 海外ではアジアや北米を中心とした積極的な出店。
    • インバウンド需要の取り込みやEC事業の強化。

PPIHは「圧縮陳列」「深夜営業」といった独自の運営スタイルで小売業界に革新をもたらし、今もなお成長を続ける企業です。

海外展開について

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は現在、海外市場での成長に注力しています。以下に、最新の海外展開状況を詳しくご紹介します。

海外店舗数の推移

2023年6月末時点で、PPIHのグループ総店舗数は以下のとおりです:

  • 国内:617店舗(ディスカウントストア486店舗、総合スーパー131店舗)
  • 海外:101店舗(北米65店舗、アジア36店舗)

地域別の展開状況

  • 北米:米国ハワイ州に「ドン・キホーテUSA」として3店舗を展開し、現地住民や観光客に支持されています。また、カリフォルニア州ではプレミアムスーパーマーケットチェーン「Gelson’s Markets」を運営し、高品質な生鮮食品や豊富なワインの品ぞろえで知られています。
  • アジア:シンガポール、香港、タイ、マカオ、台湾、マレーシアなどに「DON DON DONKI」ブランドで店舗を展開し、日本産品を中心とした商品ラインナップで人気を博しています。

今後の展開計画

PPIHは中長期経営計画「Visionary2025/2030」において、海外事業の成長目標を以下のように設定しています:

  • 2025年6月期営業利益:270億円(2022年6月期比23.1%増)
    • 内訳:北米158億円、アジア112億円
  • 店舗数目標
    • 北米:2025年6月期までに78店舗体制(2022年6月期65店舗)
    • アジア:2025年6月期までに64店舗体制(2022年6月期30店舗)

これらの計画には、新業態の開発やプライベートブランド(PB)の強化も含まれており、海外市場でのさらなる成長を目指しています。

海外事業のコンセプト

PPIHの海外店舗は、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」として、日本製品や日本市場向けの商品にこだわった店づくりを行っています。これにより、現地の消費者に日本の食文化や商品を提供し、高い評価を得ています。

後継者問題について

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の創業者である安田隆夫氏(75歳)は、近年、後継者問題に取り組んでいます。2024年8月、長男の安田裕作氏(23歳)を取締役に選任し、9月の定時株主総会で正式に就任しました。

裕作氏は、スイスの観光・ホスピタリティ系の学校で学び、PPIHのグループ会社での経験を積んできました。取締役就任の理由として、若い感性とグローバルな視点を持つ人材が必要であるとされています。ただし、裕作氏は非常勤の取締役であり、現時点で社長就任の予定はないとされています。

ちなみに裕作氏が学んだ学校は、スイスの名門校である「EHL Swiss School of Tourism and Hospitality(SSTH)」で、きちんと卒業しているようです。この学校は、日本語で「EHLスイス観光ホスピタリティ学校」と呼ばれ、ホテルマネジメント分野で高い評価を受けています。SSTHでは、職業訓練や高等教育から理学士号まで、スイス連邦政府に認められた資格を取得することが可能です。30カ国以上から学生が集まり、寮生活を通じて世界基準のサービスやホスピタリティについて学ぶ環境が整っています。

このように、安田隆夫氏は、引退に向けた準備を進めており、2024年には自身の著書『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』を出版し、経営哲学や後継者に求める資質について語っています。また、同年11月にはニトリホールディングスの似鳥昭雄氏との対談で、後継者問題について胸中を明かしています。

2024年11月、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)創業会長の安田隆夫氏(75歳)と、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏(80歳)の対談内容サマリー

運の重要性
両氏は、経営において「運」が大きな役割を果たすと強調しました。安田氏は、運を「自らの行動によって変動するパラメータ」と捉え、経営者には運に向き合う感受性が必要であると述べました。また、個人の運(個運)だけでなく、従業員や顧客、取引先など集団の運(集団運)を良くすることが業績向上につながると指摘しました。
一方、似鳥氏も「ニトリの成功は運が7割、実力が3割」と述べ、運は偶然の産物ではなく、過去の人間関係や失敗から生まれるものであると強調しました。積極的にリスクを取る勇気が運を引き寄せるとも述べています。

後継者問題
後継者問題について、安田氏は長男の裕作氏(23歳)を取締役に選任したものの、次期社長は息子以外の適任者を考えていると明かしました。一方、似鳥氏は「いま息子には帝王学を学んでもらっています」と述べ、家族内での後継を視野に入れていることを示唆しました。

発達障害と経営
また、似鳥氏は自身が発達障害であることを告白し、普通の人ができることができないために起業を選んだと述べました。安田氏もこれに共感し、自身の特性がドン・キホーテの「圧縮陳列」の発想につながったと語りました。両氏は、発達障害という特性が独自の視点や工夫を生み出し、経営成功の一因となったと示唆しています。

ドン・キホーテという日本人ならほぼすべての人が知っている小売りブランドを一代で作り上げた独特の企業です。その創業会長は70代半ば。海外展開を積極的に進めるチャレンジングな姿勢は、思わず応援したくなるような気持ちになります。

後継者問題は決して軽くない問題だと思いますが、足下で同社の発展を阻む問題では無さそうです。

しかし、ユニクロ、ニトリ、ドンキなど、日本では凄い企業がたくさんありますよね。調べていくと、その凄さが改めて分かります。

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、今後の成長が楽しみな企業のひとつです。

★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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