銘柄研究:2025/1/7(火)名村造船所と防衛省の深い関係

名村造船所の株価が年初からの2日で約14%上昇しています(1754➱1998※終値ベース)。

好調な滑り出しを見せている名村造船所。

造船業界の今後の好況は周知の事実であり、シナリオが大きく崩れる心配は、リーマンショック級のマーケットクラッシュが来ない限り今のところ心配無さそうです。

2025年3月期の予想EPSは317.1。今日の終値1,998円でもPERは6.3倍と、今のところ過熱感はありません。

そんな名村造船所ですが、個人的に関心があったのは、同社と防衛省の関係性です。

ちょっと調べてみました。

目次

佐世保重工業(SSK)について

名村造船所の子会社に「佐世保重工業株式会社(SSK)」という会社があります。
この会社は日本海軍「佐世保海軍工廠」が前身で、1946年に旧日本海軍の佐世保海軍工廠の設備を継承して設立されました。

設立当初は「佐世保船舶工業株式会社」として発足し、1961年に現在の社名に変更されました。設立当初、旧軍施設を利用していたため、新造船の建造は制約されていましたが、1952年にサンフランシスコ講和条約の発効により制約が解除され、新造船の建造を開始しました。

1954年には新造第1船「永邦丸」を完成させ、全従業員が感涙したと伝えられています。1962年には、当時世界最大のタンカー「日章丸(132,334DWT)」を竣工し、佐世保の基幹産業として地域経済を支えました。

その他、SSKが建造した主な軍艦を挙げます。

試験艦 くりはま
海上自衛隊の試験艦で、新技術や装備の試験・評価を目的として建造されました。

海上自衛隊 試験艦 ASE-6101 "くりはま" [水平線の彼方へ]

あつみ型輸送艦
海上自衛隊の輸送艦で、物資や人員の輸送を目的として建造されました。

海上自衛隊 輸送艦

ゆら型輸送艦
あつみ型の後継として建造された輸送艦で、より高い輸送能力を持っています。

輸送艦「ゆら」型 1番艦 LSU輸送艦ゆら LSU-4171 海上自衛隊 基地開放 - 観光列車から! 日々利用の乗り物まで

輸送艇1号型
海上自衛隊の輸送艇で、沿岸部での物資や人員の輸送に使用されます。

輸送艇「1号」型|艦艇|装備品|海上自衛隊 〔JMSDF〕 オフィシャルサイト

みずとり型駆潜艇
海上自衛隊の駆潜艇で、潜水艦の探知・攻撃を目的として建造されました。

みずとり型駆潜艇 - YouTube

これらの艦艇は、海上自衛隊の各種任務において重要な役割を果たしています。

しかし、1970年代には造船不況の影響で経営危機に直面し、再建の過程で大規模な人員整理などの困難を経験しました。2014年10月には、株式会社名村造船所と経営統合し、同社の完全子会社として再スタートを切りました。

その後、2022年1月、SSKは新造船事業を休止し、以降は海上自衛隊や在日米海軍の艦艇、LNG運搬船などの特殊船の修繕事業と、船舶用機械・部品等の製造事業を中心に事業を展開しています。

また、2017年には防衛省との艦船修理契約の一部において、原価の不適切な処理、具体的には工数の付け替えにより、過大請求を行っていた可能性があることを自発的に防衛省へ報告しました。

これを受けて、海上自衛隊が調査を実施した結果、工数の付け替えが事実であることが確認されました。しかし、その後の詳細な調査により、付け替えられた工数にかかる金額は、契約履行後に確定した契約代金には含まれておらず、実際に過払いが発生していなかったことが判明しました。

この結果を受け、防衛省はSSKに対し、再発防止策の徹底を要請しました。SSKの親会社である名村造船所は、同様の行為が再発しないよう、SSKに対して再発防止の徹底を指導する旨を公表しています。

戦前に建造した船

同社が戦前に建造した軍艦も調べてみたので、以下に列記してみます(写真はありません)。

巡洋艦:

  • 利根(初代): 1910年、佐世保工廠が初めて建造した軍艦。
  • 筑摩(初代): 筑摩型巡洋艦の1隻。
  • 龍田(2代): 天龍型軽巡洋艦の2番艦。
  • 球磨: 球磨型軽巡洋艦のネームシップ。
  • 北上: 球磨型軽巡洋艦の4番艦。
  • 長良: 長良型軽巡洋艦のネームシップ。
  • 由良: 長良型軽巡洋艦の5番艦。
  • 夕張: 単艦で建造された軽巡洋艦。
  • 阿賀野: 阿賀野型軽巡洋艦のネームシップ。
  • 矢矧(2代): 阿賀野型軽巡洋艦の3番艦。
  • 酒匂: 阿賀野型軽巡洋艦の4番艦で、佐世保工廠が最後に建造した軍艦。

駆逐艦:

  • 夕暮(初代): 初代神風型駆逐艦の1隻。
  • 夕立(初代): 初代神風型駆逐艦の1隻。
  • 三日月(初代): 初代神風型駆逐艦の1隻。
  • 野分(初代): 初代神風型駆逐艦の1隻。
  • 榊(初代): 樺型駆逐艦の1隻。
  • 桃(初代): 桃型駆逐艦のネームシップ。
  • 柳(初代): 桃型駆逐艦の2番艦。
  • 槇(初代): 楢型駆逐艦の5番艦。
  • 欅(初代): 楢型駆逐艦の6番艦。
  • 夕凪(2代): 2代神風型駆逐艦の1隻。
  • 睦月: 睦月型駆逐艦のネームシップ。
  • 三日月(2代): 睦月型駆逐艦の1隻。
  • 東雲(2代): 吹雪型駆逐艦の1隻。
  • 浦波(2代): 吹雪型駆逐艦の1隻。
  • 朝霧(2代): 吹雪型駆逐艦の1隻。
  • 朧(2代): 吹雪型駆逐艦の1隻。
  • 暁(3代): 吹雪型駆逐艦の1隻。
  • 初春(2代): 初春型駆逐艦のネームシップ。
  • 若葉(2代): 初春型駆逐艦の1隻。
  • 白露(2代): 白露型駆逐艦のネームシップ。
  • 夕立(2代): 白露型駆逐艦の1隻。
  • 朝潮(2代): 朝潮型駆逐艦のネームシップ。
  • 夏雲: 朝潮型駆逐艦の1隻。
  • 雪風: 陽炎型駆逐艦の1隻。
  • 磯風(2代): 陽炎型駆逐艦の1隻。
  • 春月: 秋月型駆逐艦の1隻。
  • 夏月: 秋月型駆逐艦の1隻。

潜水艦:

  • 伊号第十八潜水艦: 丙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第二十四潜水艦: 丙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第二十七潜水艦: 乙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第三十二潜水艦: 乙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第三十四潜水艦: 乙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第三十六潜水艦: 丙型潜水艦の1隻。
  • 伊号第五十八潜水艦: 回天搭載潜水艦としても知られる乙型改二潜水艦の1隻。
  • 伊号第五十二潜水艦: 艦隊潜水艦として建造された乙型潜水艦。

その他の艦艇:

  • 水雷艇 朝顔: 水雷艇として初期に建造された艦艇。
  • 水雷艇 時雨: 旧式の水雷艇の1隻。

これらの艦艇は、佐世保海軍工廠が日本海軍の主要工廠として機能していた時期に建造されたもので、艦艇の設計や建造技術の向上に大きく寄与しました。

佐世保海軍工廠は、戦艦や空母などの大型艦艇の建造は行いませんでしたが、主に巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、その他の小型艦艇の建造を得意とし、第二次世界大戦中の日本海軍の主力艦艇を多く建造しました。また、戦時中にはこれらの艦艇の修繕や改装も重要な役割を果たしました。

まとめ

このように、名村造船所には軍需対応が出来る歴史ある子会社があり、今後軍需が拡大される方向感の中では、名村造船所の事業ポートフォリオの中で、存在感のある重要なポジションになっていく可能性があります。

また2017年に起きた防衛省案件の相違についても既にクリアしていることから、防衛省案件が無くなるような心配もありませんね。

さて、視界良好な造船業界の中で、日本造船業はかつての輝きを取りもどしつつあるように感じます。



ニュースで散見される韓国造船や中国造船と言う競合はいるわけですが、「モノづくり日本」というブランドや、対中関税が確実視されるトランプワールドに世界が突入していく中、名村造船所は今後どのようになっていくのでしょうか。

経営目線だと、期間が限定される業界の活況に対する設備投資は難しくもあり、でも設備強化がなければ大きな売上向上には結びつかず、またコスト競争でも決め手に欠くなんてことになるわけで、どういった舵取りをするかによって名村造船所の業績は上昇基調の中ではありますが、左右される展開になるのだと思います。

などなど、風雲急を告げる名村造船所。2月、5月の決算や、中計など、2025年はますます注目の銘柄になりそうです。


★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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