株式会社テクニスコ(証券コード: 2962)は、金属・ガラス・シリコン等の精密加工部品を製造するメーカーであり、光通信、産業用レーザー、AV/モバイル、車載・医用機器市場など多岐にわたる分野で事業を展開しています。
今日ストップ高になりましたが、特に材料があるわけではありませんでした。しかし、このことにより注目度が一気に高まったと思います。個人的にも気になったので、出来る範囲で調べてみました。
直近の業績
2024年6月期の連結決算では、売上高は46億8,318万円と前期比12.4%減少し、経常損益は3億1,863万円の赤字(前期は3億2,935万円の黒字)に転落しました。また、当期純利益も6億363万円の赤字(前期は2億2,234万円の黒字)となり、業績は大幅に悪化しています。
今後の業績の展望
2025年6月期の業績予想では、売上高は45億2,000万円と前期比3.5%減少、経常損益は6億2,000万円の赤字、当期純利益も6億3,000万円の赤字を見込んでいます。これにより、2期連続の赤字計上となる見通しです。
株価上昇のカタリストとなり得る要因
- 新製品の開発と市場投入: テクニスコは「クロスエッジ® Technology」を核に、精密加工技術を活用した新製品の開発を進めています。これらの新製品が市場で評価され、売上増加に寄与すれば、株価上昇の要因となる可能性があります。
- 主要市場の回復: 同社の主要な顧客業界である光通信や産業用レーザー、車載・医用機器市場が回復基調に乗れば、受注増加が期待できます。特に、5G通信の普及や自動車の電動化・自動運転技術の進展は、同社製品の需要拡大につながる可能性があります。
- コスト構造の改善: 業績悪化の一因としてコスト増加が挙げられます。生産効率の向上や固定費の削減など、コスト構造の見直しが進めば、収益性の改善が期待でき、株価にもプラスの影響を与えるでしょう。
適正株価について
現在、テクニスコの株価は本日ストップ高で426円(2025年1月21日時点)となりました。前述のように材料は特にありません。
ちなみに今日の終値でのPBR(株価純資産倍率)は0.93倍であり、PBRベースでは割安といえると思います。しかし、2期連続の赤字予想や業績の不透明感を考慮すると、投資家の慎重な姿勢が続く可能性があります。適正株価の判断には、今後の業績回復の兆しや市場環境の変化など、冷静な分析が必要です。
同社の沿革
調べてみるまで知らなかったのですが、同社はディスコともともと関係が深い会社でした。
以下に沿革を時系列でまとめてみました。
1970年2月:東京都港区芝に、株式会社精密切断研究所を個人出資により設立。
1971年9月:東京都品川区南品川に品川工場を新設し、株式会社テクニスコに商号変更。
1972年9月:株式会社ディスコの出資を受け、ディスコグループに参加。
1987年8月:広島県呉市に広島工場を新設。
1989年4月:株式会社ディスコの100%出資子会社となる。
1993年8月:品川工場を広島工場に移転し、加工部門を増強。
1999年10月:品質マネジメントシステムISO9002を取得。
2001年12月:東京都品川区南品川に新社屋を竣工。
2002年1月:新社屋に本店を移転。
2002年7月:広島工場にて環境マネジメントシステムISO14001を取得。
2005年9月:中国・蘇州市に現地法人「TECNISCO (SuZhou) CO.,Ltd.」を設立。
2005年11月:蘇州工場にて品質マネジメントシステムISO9001を取得。
2008年1月:蘇州工場にて品質マネジメントシステムISO9001を取得。
2009年2月:蘇州工場にて環境マネジメントシステムISO14001を取得。
2014年10月:MBO(マネジメント・バイアウト)により株式会社ディスコから独立。
2015年3月:蘇州工場にて自動車産業特化品質マネジメントシステムISO/TS16949を取得。
2017年8月:シンガポールに現地法人「TECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.」を設立。
2018年4月:TECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.にて、シルバーダイヤの製造を開始。
2018年8月:シルバーダイヤ製品のサンプル提供を開始。
2019年5月:ドイツにTECNISCO EUROPE GmbHを100%子会社として設立。
2022年4月:TECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.にて、品質マネジメントシステムISO9001を取得。
2023年7月:TECNISCO Advanced Materials Pte. Ltd.にて、環境マネジメントシステムISO14001を取得。
東京証券取引所スタンダード市場に上場。
MBOによって2014年にディスコから独立した会社ということです。
テクニスコの強み・特徴
株式会社テクニスコの強みは、精密加工技術に特化した製品とサービスを提供し、多岐にわたる産業分野で価値を創出している点にあります。以下にその主な強みをまとめます。
1. 独自の精密加工技術
- クロスエッジ®テクノロジー: 同社の代表的な技術で、異なる素材(ガラス、金属、セラミックなど)を高精度かつ複雑な形状で加工・接合できる技術。
- 光通信機器や産業用レーザー、医療機器などの分野で活用されています。
- 特に高出力化が進む半導体レーザー市場での需要が高まっています。
2. 多様な素材への対応力
- テクニスコは、ガラス、金属、セラミック、シリコンなど幅広い素材の加工に対応可能です。
- この多様性は、複数の市場ニーズに柔軟に対応できる強みとなっています。
3. 幅広い応用分野
- 同社の製品は、以下のような幅広い分野で利用されています。
- 光通信: 高精度の光学部品を製造。
- 産業用レーザー: 高出力機器向けの部品供給。
- 医療機器: 高精度が求められるパーツに対応。
- 自動車関連: 電動化や自動運転技術に対応した部品の提供。
4. カスタマイズ対応力
- 顧客ごとの特注仕様に応じて、柔軟な製品開発が可能。
- 特に、顧客の高度な要求を満たすカスタマイズ対応力は他社との差別化ポイントです。
5. グローバル市場対応
- 国内市場のみならず、アジアや欧米などの海外市場でも事業を展開しています。
- 特に、中国・蘇州工場を拠点とした生産体制により、海外顧客のニーズにも迅速に応えています。
6. 環境対応技術
- ISO14001を取得しており、環境に配慮した製造工程を構築。
- エネルギー効率を重視した製品や製造プロセスは、顧客企業の持続可能性目標の達成に貢献しています。
7. 特定分野でのニッチトップポジション
- 特に、光通信や医療機器向け部品などの分野では、競合他社が少なく、同社の製品が選ばれやすい状況です。
- 高度な技術力と専門性が要求される市場で強いプレゼンスを持っています。
このように、テクニスコの強みは、「多様な素材の高精度加工技術」と「カスタマイズ対応力」にあります。さらに、光通信や産業用レーザー、医療機器などの成長分野に特化している点が、安定した需要基盤を形成しています。これらの要素により、同社は特定の分野でニッチトップの地位を築いています。
まとめ
テクニスコは、精密加工技術を強みとする企業であり、多様な市場での需要拡大が期待されます。また元々ディスコグループだったということもあり、企業のガバナンスはしっかりしていると想像できます。
しかし、直近の業績悪化や2期連続の赤字予想など、課題も抱えています。
このような背景の中で、今日のストップ高は果たして需給面だけのことで起きたのでしょうか?明日以降何かしらの材料なりが出てくるのでしょうか?
今後注目していきたいと思います。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。