銘柄研究:2025/1/27(月)データセンター需要拡大で高まる電力消費について

AIやクラウドサービスの普及に伴い、データセンターが大量の電力を消費するようになっています。日本の発電量はどの程度で、将来的にどれだけ増えると見込まれているのでしょうか。ここでは、できるだけ具体的な数値をもとに整理してみます。

目次

1. 日本の年間総発電量:近年の推移

日本の年間総発電量(発電端ベース)は、統計の年度や資料によって若干のズレはありますが、近年は概ね1,000〜1,100TWh前後 で推移しています。以下は参考となる年度別の概算値です(※主に経済産業省「総合エネルギー統計」やIEAのデータ等をもとにした近似値)。

年度総発電量(概算)
2010年約1,140TWh
2011年約1,065TWh
2012年約1,080〜1,090TWh
2013年約1,100TWh前後
2014年約1,100〜1,110TWh
2015年約1,065TWh
2016年約1,065TWh
2017年約1,065TWh
2018年約1,070〜1,080TWh
2019年約1,065TWh
2020年約1,050TWh前後
2021年約1,060〜1,070TWh
  • 2011年 に大きく下がっているのは東日本大震災の影響で原子力発電所が停止し、需給全体が変動したためです。
  • その後は火力発電の比率が高まり、再生可能エネルギーも徐々に増えてきています。
  • コロナ禍の影響などで経済活動が抑制され、一時的に需要が減った時期もありますが、近年は電化シフトやDXの進展もあり、年1,000TWh前後 で横ばいからやや増加の傾向にあります。

2. 電源構成の現状(2020年前後)

電源構成を大まかに見ると、下記のようなイメージです(2020年前後の概算)。

  • 火力発電(石炭・LNG・石油など):全体の約7割前後
    • LNG(液化天然ガス):30〜35%
    • 石炭:25〜30%
    • 石油:5%前後
  • 再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・バイオマスなど):合計で20%前後
    • 水力(大規模水力含む):8〜9%
    • 太陽光:8%前後
    • 風力・バイオマス・地熱など:数%
  • 原子力発電:稼働状況により変動するが、近年は5〜6%ほど

今後はカーボンニュートラル方針に従って再生可能エネルギーの割合を大幅に高めていく計画ですが、現状ではまだ火力発電が主力となっています。

3. 将来の電力需要見通し

3.1 2030年の目標:年間約930TWh

日本政府が2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の総発電電力量(需要ベース)を 約930TWh と想定しています。

  • 省エネ施策や産業構造の変化 を織り込んでおり、現状よりやや減少させる姿を描いています。
  • しかし実際には、EV(電気自動車)の普及AI・クラウド・データセンター需要の増加 によって電力使用量が増える可能性も指摘されており、定期的に見直されることが予想されます。

3.2 2050年カーボンニュートラル:1,000〜1,500TWhのシナリオ

日本は 2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロ とする目標を掲げています。

  • 交通(自動車など)の電化や、産業・家庭のさらなる電化が進めば、電力需要は増える方向に動きます。
  • 一方で、徹底した省エネや蓄電池、VPP(仮想発電所)技術の活用、需要のデジタル制御(デマンドレスポンス)などでピークカットを行い、効率的な運用ができれば、需要増をある程度抑制することも可能です。
  • そのため専門家や研究機関によると、2050年の電力需要は1,000TWh〜1,500TWh程度 と、幅を持って複数のシナリオが検討されています。

4. データセンター需要拡大とその影響

4.1 大量の電力を消費するデータセンター

データセンターは、サーバー・ストレージ機器の稼働 と、それらを 冷却する空調設備 への電力が大きな割合を占めます。特にAI用途で活用される GPUやTPU は高性能ゆえ消費電力が大きいため、今後のAI需要拡大が電力消費を押し上げる一因となります。

4.2 省エネ・高効率化の取り組み

電力消費の増加に伴いコストや環境負荷が懸念されるため、次のような省エネ・高効率化策も急速に進められています。

  • 液浸冷却外気冷房 などによるPUE(Power Usage Effectiveness)の改善
  • クラウド利用の最適化:必要以上にオンプレミスでサーバーを抱えないことで利用率を高め、省電力化
  • 地域分散型データセンター:冷涼な地域や再生可能エネルギー源に近いエリアに立地することで、冷却コスト削減や送電ロス低減を図る

5. 政府の対応策

政府は、電力需給の安定とカーボンニュートラルを両立するために、以下のような方針を示しています。

  1. エネルギーミックスの最適化
    • 再生可能エネルギー拡大(太陽光・風力・水力・バイオマスなど)
    • 火力発電の高効率化やCO₂回収技術(CCS)活用
    • 安全性を確保したうえでの原子力の活用
  2. 地域分散・再エネとの連携強化
    • 「デジタル田園都市国家構想」などで、データセンターの地方立地を推進
    • 送電網(系統)増強や蓄電設備導入支援で大規模再エネ発電の受け入れを拡大
  3. 省エネ技術・新冷却技術への支援
    • データセンターの空調効率を上げる技術開発を補助金・税制優遇で後押し
    • サーバールームの液浸冷却や廃熱利用などの実証事業を拡充

6. まとめ

今後、DXの進展や社会の電化がさらに進むなかで、どの程度発電量が必要となり、その電源をどう確保・分散していくか が大きな課題です。政府のエネルギー政策や産業界の技術革新が、経済成長と脱炭素の両立を目指して進んでいくことに注目が集まっています。

日本の年間総発電量 は近年 約1,000〜1,100TWh で推移しており、2030年には国の想定として 約930TWh という目標が示されています。

2050年カーボンニュートラル を見据えた場合、電化シフトで需要が増える一方、省エネ・効率化で抑制も見込まれ、1,000〜1,500TWh ほどの幅広いシナリオが検討されています。

データセンター需要拡大 により、AI処理やクラウドサービス運用のための電力消費が増大するのは確実視されていますが、同時に 高効率化・再エネ活用・地域分散化 など、多角的な対策も積極的に進められています。

★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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