近年の急速な生成AIブームやビッグデータの活用増加に伴い、世界中でデータセンターへの投資が拡大していると言われます。特に大規模クラウド事業者やIT企業が、次世代のAI処理に対応するためにサーバーやネットワーク設備を強化しており、いわゆる“データセンターバブル”が加速しているのが現状です。
日本企業にもこの波は大きな追い風となっており、データセンター運営、光ファイバー・電線、半導体検査装置、サーバー向け部材など、さまざまな分野で需要が急伸しています。そこで本記事では、今期EPS成長率が前年から20%以上と予測されている日本企業の中から、特に“AI×データセンター特需”の恩恵を受けそうな10社を紹介します。
データセンターバブルの背景
- 生成AI需要の拡大
ChatGPTをはじめとする対話型AIの台頭を契機に、ビッグデータ解析、画像・音声認識、ロボティクスなど、AI活用の場面がますます広がっています。これら先端技術には膨大な演算能力が必要とされるため、大手クラウド事業者は新たなデータセンター建設や既存設備の拡張を急ピッチで進めています。 - クラウドサービスの普及
あらゆる業務がクラウド上に移行する流れは止まらず、ERP(基幹業務システム)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入も追い風に、国内外でデータセンターや関連インフラへの投資が続いています。5Gや次世代通信の展開も相まって、より大容量のデータを高速でやり取りできる環境が必要とされます。 - 半導体需要の回復
コロナ禍を経て自動車やスマート家電などの半導体需給が乱高下しましたが、今度はAI向け高性能チップ(GPUなど)への需要が大幅に拡大。メモリの超高速化やデバイスの微細化投資が進むことで、半導体関連企業への恩恵が期待されています。
EPS成長率が前期比20%以上見込みの注目10銘柄
ここからは、データセンター需要の恩恵を受ける可能性が高く、今期EPSが前年比で少なくとも+20%の伸びが見込まれる企業をセクターごとにリストアップしていきます。
1. さくらインターネット (3778)
- 事業概要: 自社データセンター運営、クラウドサービス提供
- 注目ポイント:
- 北海道石狩市に設立した大規模DC(データセンター)でGPU対応のAIクラウド環境を提供
- NVIDIAとの協業強化や、官公庁向けクラウド受注増により業績が急拡大
- 通期では純利益が前年同期比数倍に増加し、EPSも**約4倍(400%以上)**の可能性を示唆
2. 日本電子材料 (6855)
- 事業概要: 半導体検査用プローブカード国内大手
- 注目ポイント:
- メモリ向けの検査治具で世界トップクラスのシェア
- 生成AIサーバー向けに採用される超高速メモリ需要が急拡大
- 2025年3月期の経常利益は前期比3倍超との見通しが報じられており、EPS成長も大幅に上振れ予想
3. 山一電機 (6941)
- 事業概要: 高性能半導体用ICソケット・コネクタメーカー
- 注目ポイント:
- AIに必要なGPUや高性能CPU向けICソケットの需要増
- 通期の経常利益見通しを2.6倍に上方修正
- 前期比でEPSも数倍に急伸するとのアナリスト予想が相次ぎ、株価も堅調に推移
4. レーザーテック (6920)
- 事業概要: 半導体マスク欠陥検査装置で世界的独占状態
- 注目ポイント:
- EUVリソグラフィ投資を進める世界各国の半導体メーカーから受注が集中
- 生成AI需要による先端ロジック半導体の量産に必須のEUV技術拡大が追い風
- すでに四半期ベースで純利益が倍増しており、EPSも前年比100%以上の伸びを達成
5. アドバンテスト (6857)
- 事業概要: 半導体テスト装置の世界最大手
- 注目ポイント:
- AI向けチップやメモリ等、幅広い半導体テスト需要を独占的に担うポジション
- 2025年3月期は売上高+30%超、純利益+90%超の増益を想定
- テスター需要の拡大が止まらず、EPSは大幅成長を見込むアナリストが多い
6. 東京エレクトロン (8035)
- 事業概要: 半導体製造装置の国内最大手
- 注目ポイント:
- 生成AI用GPUやCPUの製造に必要な先端ロジックライン設備投資が活況
- 2025年3月期は当期純利益が前年より44.5%増の予想で、EPSも同程度の伸びを見込む
- 中国顧客からの前倒し受注も上乗せ要因
7. フジクラ (5803)
- 事業概要: 光ファイバーや電線・ケーブルを手掛ける大手メーカー
- 注目ポイント:
- データセンター間を結ぶ大容量光通信網の需要増で売上が好調
- 2025年3月期の経常利益は前年比+47.7%で過去最高益見込み
- 光ファイバー事業の拡大と高機能ケーブルの高付加価値化でEPSも急伸
8. SWCCホールディングス (5805)
- 事業概要: 昭和電線ホールディングスから改称。電線・ケーブルやコネクタを製造
- 注目ポイント:
- データセンター向けの光ケーブル・コネクタ類や、高圧電力ケーブルの需要が高水準
- 2025年3月期は営業利益+60%増、EPSも大幅に上振れする見通し
- SICONEXなど、高圧送電分野の新製品も成長ドライバーに
9. システムサポート (4396)
- 事業概要: クラウド・ITソリューション企業で、システム開発や運用を手掛ける独立系
- 注目ポイント:
- データセンターの運用受託やAWS・Azureなどクラウド導入支援がメインビジネス
- サブスクリプション型で安定した収益基盤を築き、上場以来ほぼ毎期最高益を更新
- 2025年6月期は営業利益が前期比+27%増、EPSもそれ以上の伸びが期待される
10. 住友電設 (1949)
- 事業概要: 電力・通信工事分野で強みを持つ総合設備工事会社
- 注目ポイント:
- データセンター新設に伴う電力設備工事を多数受注
- 2024年4-9月期の営業利益が前年同期比で約2倍となり、通期も大幅上方修正
- 14期連続増配で財務基盤も安定、EPSも前期比で20%を大きく超える見通し
なぜこれらの銘柄が注目されるのか?
上記10社はいずれも、AI需要とデータセンター投資拡大が不可欠なトレンドの中核を担っています。
- 半導体検査装置/製造装置/ICソケット(アドバンテスト、レーザーテック、山一電機、東京エレクトロン、日本電子材料)
- AIサーバーに搭載されるGPUやCPU、超高速メモリが次々と生産される段階で、製造や検査、部材が必要不可欠。最先端のEUVリソグラフィに関わる企業も多く、長期的にも需要が見込まれます。
- 電線・ケーブル、光ファイバー(フジクラ、SWCCホールディングス)
- 世界規模でのデータセンター増設やネットワーク拡張には、膨大な光ファイバーやケーブルが必要。5Gや6Gなどの通信インフラの進展も追い風です。
- データセンター運営・ITサービス(さくらインターネット、システムサポート、住友電設)
- 実際にサーバーをホスティングする企業は、AI需要の増加によりサーバー台数・設備を拡充するため顧客からの引き合いが強い。加えて電力設備や運用管理、クラウドサービス導入支援もセットで伸びており、ストック型ビジネス化で業績の安定成長が期待されます。
まとめ
AI特需によるデータセンターバブルはまだ始まったばかりと見る専門家も多く、各社の大規模投資は今後も拡大していくと予測されています。日本企業の技術力やインフラ整備への強みは依然として高く評価されており、今回紹介した銘柄たちも、中長期的に業績拡大のチャンスをつかむ可能性があります。
一方で、株式投資にはリスクがつきものです。大きなテーマに沿った銘柄でも、市況の変動や地政学リスク、為替要因などで業績が落ち込むケースもあり得ます。投資を検討される際は、必ず最新のIR資料やアナリストレポートを確認し、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせた判断を行うようにしてください。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。