銘柄研究:2025/6/19(木)プラスゼロの株価ターゲットプライスに関して

半導体がトランプ関税砲以降順調に上昇し、データセンター銘柄も好調の昨今次来るのはAIを使ったサービスを展開している企業群だろうという予想が出始めています。実際、AI関連企業の決算資料の多くは、今後の見通しを強気で出しているところが多く、その通りに事業が拡大していけば今年後半は好決算ラッシュでAI関連企業祭りの様相に案る可能性もあるのではないでしょうか。

その中で個人的に注目しているのは、最新の四季報でも良さそうな内容だったプラスゼロです。

この記事ではプラスゼロの予測される今後の状況や、1年以内のターゲットプライスについてまとめてみました。

目次

主要AI事業とサービス内容

プラスゼロ(pluszero)はAI技術(特に自然言語処理:NLP)を核に、企業の課題抽出からAI開発、ITシステム構築・運用までを一括支援するワンストップ型のAIソリューション企業です。同社は**第4世代AI(Fourth AI)コンセプトに基づく独自技術「AEI(Artificial Elastic Intelligence)」を掲げ、人間のように言葉の意味を理解しタスク遂行できる「仮想人材」**の実現を目指しています。具体的な主力事業・サービスは以下のとおりです。

  • AIコンサルティング・開発(プロジェクト型)
    企業顧客の業務課題を分析し、最適なAIソリューションを提案・受託開発するサービスです。製造業や通信業をはじめ様々な業界で、AIを活用したDX支援プロジェクトを展開しています。実績例として、教材出版社とのAI学習アプリ開発や地方自治体ポータルでの検索エンジン高度化、メーカーとの画像解析AI研究など多彩な案件があります。このプロジェクト型収益は単価・利益率が高く業績を牽引してきましたが、一方で一過性である点が課題です。
  • 自社プロダクト(サービス型収益)
    近年はAEI技術を組み込んだプロダクトの商用化に注力しており、ストック型収益の拡大による収益源多様化が進んでいます。代表的なのがコールセンター向けAIエージェント「miraio(ミライオ)」で、2025年4月にアップセルテクノロジィーズ社との共同開発で販売開始されました。miraioは人間さながらの柔軟な対話と高精度応答を実現する次世代AIオペレーターで、特許技術により誤回答(ハルシネーション)のリスクを極限まで低減している点が強みです。この製品は24時間自動応対によるコールセンター業務の効率化ニーズに応えるもので、2025年以降の成長ドライバーとして期待されています。
  • その他のAIプロダクト・サービス
    社内業務の自動化・効率化に特化したプロダクト群も展開しています。例えば「シェパードHR」は求人票の内容をAIでチェックし、労働関連法規や社内規定違反を自動検知するサービスです。また「OWL」と呼ばれる匿名電子投票プラットフォームや、日本語音声テキストのアノテーション代行サービス「ねこのて」等の研究支援サービスも提供しています。これらはいずれもニッチ領域向けですが、将来的にコンプライアンスチェック(広告審査や契約書レビュー等)など他分野への応用ニーズも見込まれます。

以上のように、プラスゼロは受託開発(プロジェクト型)による確実な収益基盤と、自社AIプロダクト(サービス型)の育成による継続収益という二本柱で事業を展開しています。従来はプロジェクト収入が中心でしたが、2024年以降AEI技術を活用した製品売上が本格化し始めており、収益構造が変化しつつあります。特にmiraioを皮切りに仮想人材派遣(対話型AIエージェント)の事業化が進んでおり、今後の成長を下支えする見通しです。

最新決算の業績動向と背景

直近の通期および四半期業績は大幅な増収増益となっており、成長加速が鮮明です。以下に主要な業績指標をまとめます。

  • 2024年10月期(通期実績)
    売上高1,218百万円(前期比+36.2%)、営業利益250百万円(+53.9%)を計上しました。営業利益率は約20.5%で、対話AIやDX需要の拡大を追い風に2期連続の大幅増収増益となりました。
  • 2025年10月期 計画
    売上高1,650百万円(前期比+35.5%増)、営業利益550百万円(前期比2.2倍)と、引き続き高成長を見込んでいます。この計画に対して同社は順調に進捗しており、後述のとおり2025年上期時点で売上・利益とも約5割を達成しています。
  • 2025年10月期 第2四半期累計(2024年11月~2025年4月)
    売上高797百万円(前年同期比+37.0%)、営業利益290百万円(+105.4%)と前年同期の2倍超の利益成長を遂げています。営業利益率36.4%と非常に高い水準に達し、効率的な収益構造を実現しました。親会社四半期純利益も189百万円(+352%)と急拡大しています。

このような好業績の背景には市場環境と事業戦略の両面があります。

まず市場面では、企業のDX投資需要や生成AIブームを受けて製造業・通信業などでAI導入プロジェクトが増加しました。プラスゼロは自社の専門チームによる提案力でこれら案件を獲得し、売上拡大につなげています。加えて、今期よりmiraioに代表されるAEIベースの自社プロダクト売上が本格寄与し始めたことも成長を押し上げました。プロジェクト型収益は一時的な性質がありますが、新たに始まったAPI・SaaS・ライセンス収入といったサービス型収益はストック型ビジネスであり、売上の質を高めています。この収益構造の変化により、成長性と収益性が同時に向上している点は注目すべきポイントです。

また財務基盤も健全で、2025年4月時点の自己資本比率は80.4%、有利子負債ゼロ、現預金約10億円と潤沢です。営業キャッシュフローもプラスで、人件費や開発投資を行いながらフリーキャッシュフローを確保しています。売上増加に伴う売掛金の増加は見られるものの、与信リスクに問題はなく堅調です。

総じて足元の業績は計画以上のペースで推移しており、財務の健全性も高いことから、今後の積極投資による成長継続に十分耐えうる状況です。

業績見通し・市場動向・競合比較からの将来予測

業績見通しについて、会社側は前述のとおり2025年10月期に売上16.5億円・営業利益5.5億円という強気の計画を掲げています。

第2四半期時点で売上進捗48.3%、営業利益進捗52.8%と計画比で順調に推移しており、通期目標の達成は現時点で十分射程圏内です。むしろ営業利益は上期で目標の7割近くに達しており、下期も案件増加が続けば上振れの可能性もあります。特別損失計上の影響で純利益進捗は約50%ですが、本業の好調で十分カバー可能と見られます。以上を踏まえ、今後1年間(2025下期~2026年)の業績は引き続き高成長が期待できます。具体的には、以下の要因により売上・利益とも年率30~40%程度の成長を持続すると予測されます。

  • 市場規模の急拡大
    プラスゼロが属するAIソリューション市場自体が高成長トレンドです。総務省情報通信白書によれば、日本のAI市場規模は2023年に約6,858億円(前年比+34.5%)に達し、2028年には約2兆5,433億円まで拡大する見通しです。年平均20%以上の成長が見込まれており、ChatGPTなど生成AIの普及に伴いあらゆる産業でAI導入が加速すると予想されています。プラスゼロが強みを持つ対話型AI・業務自動化の領域はこの潮流の中心にあり、特に日本で深刻な人手不足が見込まれる事務・コールセンター・販売職などでAI代替ニーズが高まっています。例えば、国内コールセンター向けAI市場は2024年度に90億円規模(前年比+150%)に達するとの調査もあります。さらに世界全体でもAI市場は2030年まで年平均+36.6%成長し、2030年には約1.8兆ドル(約240兆円)規模に達すると予測されています。このような巨大市場の拡大期にあることから、同社の事業環境は今後1年も強い追い風が吹く見込みです。
  • 自社AEIプロダクトの本格展開
    2025年はプラスゼロにとってプロダクト事業元年とも言える年であり、下期以降に主要パートナー3社と開発したAEIサービスが順次商用運用開始予定です。具体的には前述のコールセンター型AEI(miraio)が既にエンドクライアントへの導入最終段階にあり、顧客システムとの接続調整を経て来期以降の一斉横展開を目指しています。同社はこの大量導入に備えて製造業でいうところの**「量産体制」を社内で整備しており、サービス提供のスケーラビリティを確保しつつあります。また人間とAIの協働プラットフォーム(AEIデスク)も丸紅グループとの実証を経て最終調整段階にあり、新たな商談が増加中です。近く良い知らせ(契約)が発表できる見込みとの言及もあり、こちらも次のフェーズ(事業化)に移行しつつあります。さらに製造業向け設計効率化ソリューションでは、昨年日経クロステック等に取り上げられた反響から国内外の名だたる製造企業との新規プロジェクトが複数始動しています。未公表案件も含め引き合いが殺到している状況で、同社AEI技術の競争力が評価されていることが窺えます。これら3本柱のAEI関連事業(コールセンター、協働プラットフォーム、設計自動化)が来年度にかけて本格収益化**し、売上高の上乗せ要因になると期待されます。
  • 競合比較・優位性
    競合としては、国内の他のAIスタートアップ(例:PKSHA Technologyやエクサウィザーズ等)や、大手IT企業のAIソリューション部門が挙げられます。しかしプラスゼロの強みは、課題の上流コンサルから自社開発の先端AI技術提供、システム実装まで一貫対応できるバリューチェーンと、第4世代AIに基づく「高い信頼性のAI」を実現する独自技術(AEI)にあります。昨今流行の汎用LLM(大規模言語モデル)をそのまま用いるだけでなく、ルールベースと機械学習のハイブリッドで精度向上や説明性確保を図っている点で差別化しています。またパートナー戦略**も奏功しており、コールセンター分野では専門企業アップセル社との提携で実用ノウハウを取り入れ、商用化を迅速に進めました。大手商社(丸紅)や有力メーカーとの協業も含め、オープンイノベーションによる開発加速が競合優位性を高めています。こうした技術・ビジネス両面での優位により、今後も高い成長ポテンシャルを維持できる見通しです。

以上を総合すると、今後1年間の売上高は前期比3~4割増の22~23億円規模、営業利益は7~8億円程度まで拡大すると推測されます(現時点では会社から公式な翌期予想は未開示)。AEI関連サービスの寄与で売上構成はストック収入比率が上昇し、中長期的な安定成長基盤が強化されるでしょう。加えて高利益率のプロジェクト案件も堅調に積み上がっているため、営業利益率は30%台を維持あるいは更なる向上も可能です。もっとも人員拡充や研究開発投資に積極姿勢を見せているため、短期的には成長優先で利益は計画並みかやや上振れ程度にとどめる可能性もあります。しかし少なくとも年30%以上の利益成長は十分達成可能な状況と言えそうです。

バリュエーション指標と株価上限シナリオ(1年以内)

2025年6月19日現在、プラスゼロ株は株価約3,720円前後(時価総額約289億円)で取引されており、予想PERは約75倍と高水準です。予想PSR(株価売上高倍率)もおよそ17倍前後(時価総額289億円÷今期予想売上1650百万円)と、国内中小型株としてはかなり割高な水準に位置します。しかしこれは同社の年率30~50%に及ぶ高成長期待や、生成AI関連銘柄としてのテーマ性を織り込んだ結果と考えられます。実際、プラスゼロは2022年の上場以来業績を伸ばし続けており、今期も営業利益2.2倍増を計画するなど、投資家の成長期待が株価に反映されています。類似のAIスタートアップ企業も軒並み高いPER・PSRで評価されており、現在の株価水準には一定の合理性があるといえます。

1年以内の株価上限値について、仮に前述のように来期(2026年10月期)も売上+40%、営業利益+45%程度の成長を達成し、純利益が5~6億円規模に達するとします。この場合、予想EPS(1株利益)はおよそ70~80円となります(今期予想EPS49.2円に対して約1.5倍)。市場が引き続き同程度の高PER(70~80倍)を許容すると仮定すれば、理論株価は5,000円台後半まで上昇余地があります。例えばPER75倍を適用すると概算で5,250~6,000円水準です。あるいは売上高に着目し、来期売上22億円×PSR20~25倍で評価すると時価総額440~550億円となり、株価に換算すれば約5,700~7,100円程度となります。これらを総合すると、楽観シナリオでは株価6,000円前後が1年先の想定上限と推定できるかもしれません。

もちろん、この株価は将来予想に基づく理論的なものであり、実現にはいくつかの条件があります。まず同社が高成長シナリオどおりに業績目標を達成・上回ること、次にマーケット全体のセンチメントがAI関連株に対して強気であり続け、現在のような高いバリュエーション倍率が維持されること、が必要です。成長鈍化や想定外の失速があればPERは急低下し株価は上振れどころか調整もあり得ます。一方で、もし市場がグローバルAIブームを背景にさらなる投機的過熱局面を迎えれば、一時的にPER100倍超やPSR30倍超といった水準まで買われる可能性も否定できません。その場合は7,000円超まで急騰するシナリオも考えられます。

しかし現実的には、事業拡大に伴う追加の人件費・開発費も必要なため利益成長は漸進的になる公算が大きく、過熱感からの調整リスクも踏まえると、6,000円程度が当面の株価上限として妥当な目安ではないかと考えられます。これは現在の予想PER75倍前後が維持される前提であり、仮に来期業績が市場予想並みに着地すれば妥当性を持つ水準です。もちろん上限予想値に近づく過程では株価ボラティリティも高まる可能性がありますが、同社の技術優位と市場拡大トレンドを鑑みれば、1年以内に株価1万円程度まで上昇するシナリオは十分射程に入っているといえるでしょう。




★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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