スペースデブリ(宇宙ごみ)の増加は、宇宙開発の持続可能性を脅かす深刻な問題です。
人工衛星やロケットの残骸が地球周回軌道に漂い、現役の衛星や宇宙ステーションとの衝突リスクが高まっています。こうした課題に挑むのが**アストロスケールホールディングス(東証グロース:186A)です。
2024年6月に東証グロース市場へ上場した同社は、軌道上サービス(On-Orbit Servicing, OOS)専門の宇宙ベンチャーとして注目を集めました。
上場初値は公募価格を50%超上回る1,281円となり、一時1,581円まで急騰。これは2023年のispace(9348)、QPS研究所(5595)に続く国内3社目の宇宙スタートアップIPOとして関心が高かったためです。
宇宙関連事業は国策色が強く政府の資金支援も旺盛で、「人気テーマだが長期的には業績が伴うかが焦点」との声もあります。
この記事では、アストロスケールの事業内容・技術・受注実績から業績見通し・株価評価・将来性までを深掘りし、このディープテックスタートアップの実力と課題を探ってみます。
アストロスケールの事業内容:軌道上サービスの全貌
アストロスケールは軌道上サービスに専業で取り組む世界的リーディング企業です。同社のビジネスは大きく4つのサービス領域に分類できます。
- EOL(End-of-Life)サービス:寿命を迎えた人工衛星を安全に除去し、デブリ化を防止するサービスです。具体的には運用終了後の衛星を軌道離脱させ大気圏再突入させることで宇宙ゴミ化を防ぎます。
- ADR(Active Debris Removal)サービス:すでに存在する不要なデブリを積極的に除去するサービスです。大型ロケット部品や廃棄衛星など危険な宇宙ゴミを捕獲し、軌道から取り除きます。
- LEX(Life Extension)サービス:寿命が近い衛星に燃料補給や修理を行い、寿命延長させるサービスです。高価な静止衛星などを延命することで、衛星運用者の投資回収期間を伸ばします。
- ISSA(In-situ Space Situational Awareness)サービス:宇宙空間で他衛星やデブリを観測・点検し、その状態を診断するサービスです。搭載したセンサーで対象物に接近・撮影し、姿勢や損傷状況などを詳しく把握します。
アストロスケールは2013年の創業以来、これら「軌道上サービス」を実現するための技術開発を推進してきました。衛星運用終了時の除去(EOL)や既存デブリの除去(ADR)、寿命延長(LEX)、故障機や不明物体の観測(ISSA)など、多角的なサービスで宇宙の持続利用に貢献しようとしています。同社の事業内容には、宇宙機の安全な航行の確保を目指すビジョンが貫かれており、世界各国の宇宙機関・企業と協働しながら宇宙のアフターサービス市場を切り拓いています。
軌道上サービスを支える先端技術
宇宙空間で前述のサービスを提供するには極めて高度な技術力が要求されます。アストロスケールは以下のコア技術で競合をリードしています。
- RPO技術(Rendezvous and Proximity Operations)
ランデブー・近接運用技術。目標物に数十メートルまで接近し、相対速度や姿勢を精密に制御する技術です。有人宇宙船のドッキングなどでも使われる難度の高い技術ですが、アストロスケールは小型衛星によるRPOを実現しました。2021年に打ち上げた実証衛星「ELSA-d」では、模擬デブリとサービサー衛星の繰り返しランデブー・ドッキングに成功しています。このミッションでは航法・探知・姿勢制御ソフトといったRPOの中核技術の実証に加え、地上管制下での分離・再接近も含めた一連の操作を完遂しました。ELSA-dのサービサー・ターゲット両衛星は任務終了後に大気圏へ再突入し、デブリを残さずミッションを終えています。 - 磁気捕獲技術
デブリ捕獲の世界初の実証技術です。従来、宇宙ゴミ除去のアイデアは多々あれど、実際に実証されたのはアストロスケールの磁石を使った捕獲のみです(2024年5月時点)。この方式では、あらかじめデブリ側に取り付けたドッキングプレート(磁性体の板)に対し、サービサー衛星側の電磁石で吸着・捕獲します。ELSA-dでは模擬デブリにドッキングプレートを搭載し、磁気的にドッキングすることに世界で初めて成功しました。磁石による非接触の簡易ドッキングは、相手にスラスタ噴射口など標準インターフェースが無くても捕まえられる利点があります。現在この磁気ドッキング方式は国際標準化も議論されており、将来は新規衛星へのプレート装着が普及する可能性があります。 - LEXI(Life Extension In-orbit)宇宙機
寿命延長サービスのために開発中の自律宇宙ロボットです。LEXIは静止軌道(GEO)で大型衛星にドッキングし、スラスタや電力を共有して衛星の機能を維持することを想定しています。アストロスケールUS拠点が中心となって開発しており、2026年までに初号機をGEOへ投入予定です。LEXIは4本のロボットアームを備え、クライアント衛星に掴まりながら最適な姿勢制御を行える設計となっています。すでに米国政府や商業通信衛星オペレーターとの間でLEXIの提供に向けた協議が進んでおり、予備契約ベースでは1件あたり100億円規模(約1億2千万ドル)のライフエクステンション案件もあります。LEXI実現により、静止衛星の寿命延長ビジネスという新市場で大きな収益が見込まれます。
実証衛星「ADRAS-J」によって近距離から撮影された大型デブリ(H-IIAロケット上段)の連続画像の一部。アストロスケールは2024年2月に打ち上げられたADRAS-Jで世界初となる宇宙ごみへの近接観測に成功し、50mの至近距離からデブリの詳細な画像を取得しました。
ADRAS-JはJAXAの商業デブリ除去実証プロジェクト(CRD2)フェーズIに採択された衛星であり、同年7月に上記の観測画像を公開。対象となったデブリは2009年打上げのH-IIAロケット上段(長さ約11m、重量約3トン)で、15年以上も軌道上を周回していたものです。
ADRAS-Jは安全に接近して周回観測を行い、デブリが緩やかに回転している様子などを把握しました。現在アストロスケールは、捕獲アームを備えた後継機「ADRAS-J2」でこのデブリを除去するフェーズIIミッションにも取り組んでおり、磁気捕獲技術とロボットアーム技術を組み合わせた世界初の本格的デブリ除去を目指しています。
文科省・防衛省からの受注実績と政府案件
宇宙の安全保障や持続利用は各国政府にとっても重要課題であり、アストロスケールは日本政府から大口案件を相次いで獲得しています。
まず、文部科学省関連では、令和5年度のSBIR(中小企業イノベーション創出制度)フェーズ3において同社の提案が採択されました。テーマは「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」で、大型衛星デブリに接近して撮像・診断を行うミッションを開発・実施するものです。
このプロジェクトでは2023年10月から最長2028年3月までの期間、文科省から段階的に補助金が交付されます。SBIRフェーズ3は大型の研究開発補助枠であり、総額最大120億円(1社当たり)という巨額の支援が特徴です。実際にアストロスケールにはフェーズ1として最大26.9億円、続くフェーズ2では最大63.1億円の補助金が交付される計画で、最終的にフェーズ3完了までに最大120億円の開発資金を得られる見込みです。
このミッション(通称「ISSA-J1」)では、宇宙空間で大型デブリに近接し高解像度で撮影・状態診断を行います。得られたデータは将来の本格的デブリ除去やサービス提供に役立つもので、日本政府としても宇宙領域の監視技術(Space Situational Awareness)の飛躍的向上につながる成果が期待されています。
次に、防衛省関連では、2025年3月に**「機動対応宇宙システム実証機」の試作案件を大型受注しました。これは有事などに機動的に対応できる宇宙衛星システムの実証機を開発する防衛省のプロジェクトで、将来的には静止軌道上での宇宙領域監視(SDA)などに活用することが想定されています。
契約金額は税込72.7億円にも上り、実施期間は2025年3月~2028年3月とされています。アストロスケールにとって、この契約は国内宇宙安全保障分野で初の大規模案件となりました。防衛省は2021年頃から軌道上サービス技術の調査研究を進めており、将来の宇宙作戦に民間技術を取り入れる動きを見せています。同社の高いRPO・捕獲技術が評価され、宇宙自衛隊向け機動衛星の試作という形で結実した格好です。
72.7億円という受注額は、直近の同社年間売上をはるかに超える規模であり、このプロジェクト進捗に伴い今後数年間で大幅な売上計上が見込まれます。加えて、英国防省国防科学研究所(Dstl)からのSDA小型衛星「Orpheus」案件(約515万ポンド=9億円弱)受注など、海外政府との協業実績もあり、世界的な官公庁マーケットで実績を積み上げつつあります。
以上のように、国内文科省・防衛省の大型案件取得は、アストロスケールの技術力と信頼性を裏付けるものです。政府との共同プロジェクトは採算面で必ずしも高利益率ではないものの、技術実証や市場開拓の観点で極めて重要です。
同社も「政府案件の中にはマージンがマイナスのものもあるが、今後改善見込み」と述べており、これら受注をテコに民間案件獲得や収益性向上へ繋げたい考えです。
業績動向:急成長する受注と赤字縮小の見通し
アストロスケールの業績は、研究開発型のディープテック企業らしく巨額赤字が続いていますが、受注の積み上がりにより着実に売上は伸びています。
2025年4月期(FY2025)の連結決算(IFRS)は、売上収益24.56億円(前期比△13.9%)と前年をやや下回ったものの、プロジェクト収益全体では60.88億円(+30.5%)と大きく伸びました。
【プロジェクト収益】とは受託開発の補助金収入等を含む独自指標で、同社の実態を表すために開示されています。一方、営業損失は187.55億円(前期は115.55億円の損失)、当期純損失は215.51億円(前期は91.81億円の損失)と赤字幅が拡大しました。1株当たり純利益(EPS)は△188.91円と前期(△101.45円)よりマイナス幅が拡大しています。
赤字増大の主因は、新規案件の収益認識遅延や研究開発投資の増加によるもので、2025年4月期途中には通期予想を下方修正する局面もありました。もっとも、受注残高は上場時点で約300億円規模に達しており、新規プロジェクトの積み上がりが成長をドライブしているとCEO岡田氏も強調しています。現在は将来の飛躍に向けた先行投資期間と割り切って、技術開発や実証ミッションに資金を投下している段階と言えます。
2026年4月期(今期)については、売上の大幅拡大と赤字縮小の見通しが示されています。
同社の業績予想によれば、プロジェクト収益110~130億円(前期比+80.7~+113.5%)、売上収益50~60億円(+103.5~+144.2%)と倍増ペースの成長を見込んでいます。一方で営業損失は△103~△93億円、親会社帰属当期損失も△107~△97億円と大きな赤字が続く予想です。しかし赤字額は前期(△215億)から半減する見込みで、損失幅の縮小傾向が明確になります。当期の予想EPSは△79.59~△72.15円で、中央値で見れば前期より損失幅が約6割ほど縮小する計算です。
この予想には現在受注済みの案件のみを織り込んでおり、新規受注分は含んでいないことも注記されています。実際、今期業績予想(プロジェクト収益約120億円)のうち半分の60億円程度は既存契約に基づく売上であり、上期実績も概ね想定線で推移しています。下期以降に追加で大型契約が決まれば、売上は更に上振れする可能性があります。
2027年4月期(来期)について、会社は具体的な数値予想を公表していませんが、現状のパイプラインの強さからさらなる成長が期待されています。受注残や商談中プロジェクトの状況を見ると、来期もプロジェクト収益の堅調な伸びが見込まれ、営業損益の改善トレンドが続く見通しです。
経営陣は2027年4月期にフリーキャッシュフローをプラス転換することを目標に掲げており、設備投資や開発費を差し引いてもキャッシュが増加に転じる状態を目指しています。これは裏を返せば、遅くとも2028年頃までにサービス事業の本格収益化や経費圧縮によりキャッシュ燃焼を止める計画と言えます。
「あまり長く赤字を垂れ流しては企業として成り立たない。スピード感を持って黒字化したい」とCFOも述べており、現時点で手元資金は潤沢に確保しつつも、必要あれば追加調達を検討する姿勢です。実際、同社は上場時の公募増資で約238億円を調達し(公募価格850円×新株発行数2,216.92万株)、研究開発やプロジェクト運転資金に充当しています。この資金と政府案件の補助などを組み合わせ、来期以降の黒字化に向けた基盤固めを進めている段階です。
株価の適正評価:PERモデルと競合比較から考察
現在のアストロスケール株は、PER(株価収益率)では評価困難な状況です。理由は単純で、同社が未だ営業・最終損益とも大幅な赤字であるため、予想PERは算出不能(マイナスEPS)だからです。では株価の適正水準をどう考えるべきでしょうか?ここでは競合他社との比較や将来収益シナリオを踏まえて検討します。
競合3社とのビジネス・指標比較
アストロスケールと同様に宇宙分野で活躍する国内スタートアップとして、Synspective(シンスペクティブ)、QPS研究所、ispaceの3社がよく引き合いに出されます。それぞれ事業ドメインや成長段階が異なるため一概比較は難しいものの、以下に主な特徴をまとめます。
- Synspective
小型SAR(合成開口レーダー)衛星による地球観測データサービスを展開。官民から累計約280億円超の資金調達実績があり、将来的に30機以上の衛星コンステレーション構築を計画しています。売上は政府向け災害対応やインフラモニタリング案件が中心。データ販売という比較的既存ビジネスモデルですが、衛星打上や運用コストが重く黒字化はまだ先と見られます。宇宙データ利活用ニーズの高まりを追い風に事業拡大中です。 - QPS研究所
こちらも小型SAR衛星の開発・画像販売を手掛けます。2023年12月上場時の公募価格390円に対し、現在株価は2,000円前後と大きく上昇し時価総額は600億円超となっています(2025年7月時点)。既に2機の実証衛星(「いざなぎ」「いざなみ」)を打ち上げ、高分解能SAR画像の提供を開始。直近決算も数億円規模の赤字ですが、政府受注や商社との提携で事業加速を図っています。Synspectiveとの違いは、創業地の九州にちなむ独自技術と小回りの利く開発力をアピールしている点です。 - ispace
月面着陸船を開発するスタートアップ。2023年4月にIPOし、月面探査という壮大なミッションで注目を浴びました。初号機及び先日の2号機の月面着陸は惜しくも失敗しましたが、NASAのCLPS計画への参画などにより事業継続中です。現在株価は500円台で、時価総額は約580億円程度です。売上は打上準備中のミッション受託金が中心で、開発費負担から巨額赤字が続いています。ispaceの評価は「成功すれば一発大きい」が、「技術・資金ハードルも極めて高い」ハイリスクハイリターン型といえます。
アストロスケールは以上3社と比較して、売上規模こそまだ小さいものの受注残高が大きく成長期待が高い点が特徴です。時価総額は現在約912億円(株価約673円×発行株数1.355億株)となっており、ispaceやQPSと比べても頭一つ抜けた評価になっています。これは宇宙デブリ除去・軌道上サービスという新市場の潜在性や、政府含む幅広い顧客層から既に300億円のバックログ(契約残)を抱えている点が市場に好感されているためでしょう。
「宇宙版インフラ・メンテナンス企業」とも言える独自ポジションは競合が少なく、技術的にも先行している点が評価材料です。一方で、収益化までに要する時間や不確実性は他のディープテック企業同様に大きく、リスクマネーが先行している状態とも言えます。
将来の収益化シナリオと株価試算
現時点での適正株価を考える上では、将来の収益モデルを描き、それに基づき評価することが重要です。アストロスケールの場合、具体的には「いつ黒字転換し、どれくらいの利益を生み出せるか」がポイントになります。同社は黒字化時期の目安を公表していませんが、CFO発言などからは数年内の黒字転換を目指す姿勢が伺えます。ここで簡単なシナリオを仮定してみましょう。
仮に2028年4月期にアストロスケールが単年度黒字化を果たし、営業利益50億円・最終利益40億円を稼げるとします(大きな前提ですが、売上高200億円規模で20%営業利益率を達成するイメージです)。発行株数1.35億株として計算すると、この時のEPSは約29.5円になります。現在、宇宙関連サービス企業に適用できる適正PERを20倍程度と仮定すると、理論株価は約590円となります(29.5円×20倍=590円)。これは2025年7月時点の株価水準(~600円台)にほぼ一致します。
しかし、成長株に対しては将来の高成長を織り込んでより高いPERが適用される可能性もあります。仮にPER30倍を許容すると先の理論株価は885円となり、現在の株価より高めです。
また、黒字化後も毎年50%以上の利益成長が続くようなケースでは、PER50倍以上の評価もあり得ます。その場合、株価は1,500円超という計算にもなり、IPO直後につけた高値圏(1,581円)の再来は十分可能性があると考えます。
一方で、黒字化が大幅に遅れたり想定利益が達成できない場合、株価下振れリスクも存在します。例えば2028年時点でも赤字継続であれば、成長ストーリーは一旦崩れ株価は公開価格(850円)割れ水準へ沈む恐れもあります。実際、先行したispaceは初ミッション失敗後に株価が急落し、公開価格(254円)の2倍以上あった株価が一時公募割れ寸前まで下がりました(現在は持ち直し500円台)。ディープテック企業はプロジェクト単発の成功失敗が企業命運を左右し、株価も乱高下しやすいことを念頭に置く必要があります。
以上より、適正株価の算出には将来収益シナリオをどう描くか次第と言えます。現状のマーケットは、アストロスケールが遅くとも数年内には事業化に成功し、オンリーワン技術で収益を上げ始めるとの期待を込めて評価しているようです。その期待値通りに軌道に乗れば現在の水準でも割安となり得ますが、逆に開発遅延や需要想定外れで成長が滞れば割高との批判に晒されるでしょう。
ディープテックスタートアップとしての将来性と政策支援
アストロスケールは典型的なディープテック(Deep Tech)スタートアップとして、その存在意義や政策的支援との関係にも注目が集まります。
まず、ディープテック企業の特徴として、技術的ハードルが高く商業化に時間と資金を要する点が挙げられます。宇宙デブリ除去や軌道上サービスはまさに未開拓のフロンティアであり、ビジネスモデルの確立にも試行錯誤が必要です。投資家から見れば短期のリターンは望みにくいものの、実現すれば新市場を独占しうるポテンシャルがあります。そのため、上場前から大型の資金調達が行われ、国家プロジェクト級の支援も投入されます。実際アストロスケールは創業以来シリーズEまで海外VCやコーポレートから数百億円規模の出資を受け、さらにIPOで200億超の資金を得ました。また国策の面でも注目度が高く、政府の資金援助や補助事業が旺盛です。宇宙は安全保障・経済両面で戦略分野と位置付けられ、内閣府宇宙開発戦略や経産省の事業にも「軌道上サービス」は盛り込まれています。こうした追い風を背景に、同社は世界に先駆けて事業化を進めているのです。
政策支援という観点では、前述のSBIR制度による最大120億円補助採択や、防衛省から72.7億円の契約など、日本政府から直接的な資金支援・発注が相次いでいます。加えて、経産省所管のNEDOプロジェクト(先進的宇宙技術の研究開発)でも助成採択の実績があるほか、JAXAとの共同実証(CRD2)でも契約額18億円規模の案件を獲得しています。
政府がリードカスタマーとなって民間新興企業の技術実証を支援し、その成果を政策目的(宇宙安全保障や持続的宇宙利用)に役立てるという構図がここにはあります。宇宙スタートアップ支援は近年国際的な潮流でもあり、日本でも宇宙版SBIRの拡充や宇宙産業専門ファンドの創設など環境整備が進んでいます。アストロスケールはその成功モデルケースとして期待されており、官民から厚いサポートを受けているのです。
最後に、ディープテック企業としての評価ですが、技術そのものの社会的意義の高さが特筆されます。宇宙ごみ問題は各国の宇宙機関や国連でも議論され、「今後何もしなければ将来の宇宙利用は不可能になる」と危惧されています。アストロスケールの提供する軌道上サービスは、まさに「宇宙環境の持続利用に不可欠な鍵」だと位置付けられています。
事業が成功すれば環境ビジネスとしての評価も高まり、国際貢献・SDGsの文脈でも称賛されるでしょう。一方、民間企業として収益を上げ永続していかなければ、技術も社会実装に至りません。幸い同社は民間需要の開拓にも力を入れており、CEO岡田氏によれば政府のみならず民間からの需要も「成長のドライブ」になっているとのことです。例えば静止衛星の寿命延長(LEX)サービスは、通信衛星オペレーターにとって経済合理性が明確であり今後引き合いが強まると期待されます。また保険会社や衛星データ利用企業が連携してデブリ除去サービスに参加する動きも見られ、宇宙環境維持のコストを産業界で分担するモデルも模索されています。
総じて、アストロスケールは単なるベンチャー企業を超え、宇宙開発の将来像を担う存在です。技術・資金・政策の三位一体の支援を受けつつも、その先にあるのはグローバル市場での競争と持続的ビジネスモデルの構築です。同社は2030年までに軌道上サービスを日常的なサービス産業にし、2035年には宇宙の循環型経済を実現するという壮大なビジョンを掲げています。株式市場の視線も短期的な思惑から中長期の価値創造へと移っていく中で、アストロスケールが技術覇者として宇宙の新産業を開拓できるのか、引き続き注目していきたいと思います。
まとめ
現時点のアストロスケールの株を買う事は、ある意味夢を買っているようなものだとは思います。ただ、補助金や売上が確実に積みあがっていることから、完全なる「夢」ではなく、リアリティを持った形になりつつあることは間違いありません。
個人的には公募価格割れの今(2025年7月10日時点=株価673円)、アストロスケールHDの株は超お買い得だと思ってますし、シンスペクティブ、QPS、アイスペース含めた宇宙関連企業4社のうち数社は株価100倍(但し10年スパンのイメージ)なんて楽勝だと思っています。
株式マーケットはこれら4社をどのように評価していくのか大変楽しみではありますが、宇宙関連4社のうち、黒字化が恐らく最も近いうちの1社であるアストロは、事業内容も含めて株価10倍の先頭に立つのは時間の問題では無いかと期待しています。
また、シンスぺは衛生コンステレーションの文脈で防衛関連に位置付けられていますが、本質的な防衛では物理的な衛生接触にとらいしているアストロのほうが圧倒的にプレゼンスが高いと考えています。
事実アメリカ宇宙軍とのディールがあるなど、防衛銘柄としての頭角は表しつつあり、今後の展開には大いに期待しています。
ただ、株価を考えた時に、なにぶん前例も無いので、何がカタリストになって株価上昇が本格化するのかはわかりませんが、まずは年内4,250円(時価総額約5,000億円)を目指してくれたら嬉しいなーと期待しています。
最後に・・・少なくともこの2週間ほどアストロの板がおかしいように思います。1~2か月前と今の板の厚みが全く違うのです。一体何が起きているのか・・・?これは誰かが買い集めているのか?答えは近く出るのではないかと思います。
★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。




