銘柄研究:2025/7/10(木)【完全出遅れ・個人的注目銘柄】「エアトリ」の上方修正から何を読み解くか?もはや単なるエアチケット売りではない同社の業績展望について!

エアトリで航空券を買ったことがある人は結構多いのではないでしょうか?私も先日旅行で北海道に行った際に、エアトリでチケットを購入させて頂きました。

そんなエアトリが、昨今単なるエアチケット販売の会社ではなくなっているという事実をどれほどの人が知っているでしょうか(結構知ってる人多そう)。

この記事では2025年7月1日(取引終了後)に発表された2025年9月期通期業績予想の上方修正の内容にはじまり、今の「エアトリ」がどんな会社で、今後の株価上昇(絶対すると思ってる)に関してどれほどの期待値があるのか?を改めて調べて考えてみました。

目次

1. 最近発表された上方修正の内容と発表日

エアトリは2025年7月1日(取引終了後)に2025年9月期通期業績予想の上方修正を発表しました。

この修正では、売上収益は据え置きのまま、利益面の予想値を大幅に引き上げています。具体的には、営業利益予想を従来の10億円から20億円へと倍増し、親会社株主に帰属する当期純利益(最終利益)予想は5億円から12億円へと2.4倍に上方修正されまし。

この結果、前期比の減益率は当初予想の-75.2%から-40.4%へ縮小する見通しとなっています。

発表日時と同時に公表された修正理由によれば、第2四半期まで業績が好調に推移したことや、当初計画していた成長投資・M&Aの進捗状況を踏まえ、通期予想を見直したとしています。

2. 今期(2025年9月期)業績予想

2025年9月期の最新業績予想(会社計画、IFRSベース)は以下のとおりです。

  • 売上収益: 280億円(前期比 +5.4%) – ※当初計画から変更なし
  • 営業利益: 20億円(前期比 -15.5%) – 従来予想10億円から倍増修正
  • 経常利益(税引前利益): 19億円(前期比ほぼ横ばい) – 従来予想9億円から2.1倍に修正
  • 当期純利益: 12億円(前期比 -40.3%) – 従来予想5億円から2.4倍に修正
  • 1株当たり当期利益(EPS): 53.58円 – 従来予想22.32円から大きく上方修正

※前期(2024年9月期)の実績は売上収益265.7億円、営業利益23.7億円、純利益20.1億円であり、今期は売上微増ながら利益は戦略投資などの影響で減益見通しです。

3. 来期(2026年9月期)業績見通し

2026年9月期の業績見通しについて、現時点で会社から正式な数値予想は公表されていません。今期が大幅な減益見込みとなった反動もあり、来期は増収増益への回帰が期待される局面です。特に、訪日外国人旅行(インバウンド)需要の本格回復や、新規事業の寄与により来期は利益成長が見込まれています。実際、エアトリは中長期戦略「エアトリ5000」の中でFY2025〜26にグループ取扱高1,500億円・営業利益50億円を目標として掲げており、来期に向けて業績を押し上げる意欲を示しています。この目標が示すとおり、来期(2026年9月期)は今期からの収益反転とさらなる成長が見通せる状況です。ただし具体的な数値レンジは不確定であり、会社側の正式発表や市場コンセンサスを待つ必要があります。

4. 今期および来期のEPS(1株当たり利益)

  • 今期EPS(2025年9月期)
    53.58円(会社予想)です。前述の純利益12億円予想を発行株数で割った数値で、大幅修正後の水準となっています。
  • 来期EPS(2026年9月期)
    現時点で公式な予想値は未定です。ただし、来期の利益回復が期待されることからEPSも増加する見込みです。参考までに、前期(2024年9月期)の純利益は約20.1億円で、この水準まで回復した場合EPSはおよそ90円前後になる計算です(※純利益20億円÷発行株数約2,240万株と仮定)。さらに中長期目標の営業利益50億円が達成されれば、その際のEPSは大幅に上振れする可能性があります。来期の具体的EPSは今後の業績次第ですが、今期の53.6円より増加する方向と考えられます。

5. 適正株価レンジの推定(PERによるシナリオ分析)

エアトリ株の適正株価レンジを、予想EPSに対する株価収益率(PER)の観点からシミュレーションします。業界平均や同社過去のPER水準を踏まえ、複数のシナリオを検討しました。

現在株価(約947円)は今期予想EPSベースでPER約18倍程度となっており、これはサービス業セクター内では適度な水準と言えます(※エアトリは過去に成長期待からPER50倍前後で推移した時期もありました)。以下、PERを変動させた場合の株価目安を算出します

  • PER 15倍(業界平均的なバリュエーション): 今期EPS(53.6円)に適用すると株価約800円、来期EPSが仮に80円程度に拡大すれば約1,200円程度となります。
  • PER 20倍(成長期待を織り込む場合): 今期EPS基準で約1,070円、来期EPS80円想定なら約1,600円が目安です。
  • (参考)PER 10倍(保守的シナリオ): 今期EPS基準で約540円と算出され、現状株価から大幅割安な水準ですが、同社の成長性を鑑みると現実的ではない低評価シナリオです。

上記より、エアトリの適正株価レンジは概ね「800円〜1,600円」程度に分布すると推定できます(想定EPSやPERにより変動)。

なお、同業他社はコロナ後の業績変動が大きいため単純比較は難しいものの、PER15倍前後が一つの目安と考えられます。エアトリも中長期で安定成長を達成できれば、市場平均並み(15倍)から成長企業並み(20倍以上)の評価まで複数のシナリオが考えられ、その範囲内で株価レンジを想定しています。

エアトリのM&A成功事例と戦略

6.過去の代表的M&A成功事例(多面的な成功基準で評価)

エアトリが単なるエアチケット屋ではない・・・という背景には、積極的なM&Aを通じて事業拡大と企業価値向上を実現してきたという実績があります。

以下に、特に成功と評価できる過去のM&A事例を挙げ、多角的な観点(業績成長、上場達成、売却益、シナジー創出など)から整理します。

  • DeNAトラベルの買収(2018年5月):
    国内14位規模だったオンライン旅行代理店「DeNAトラベル」を約12億円という低価格で買収した事例です。DeNAトラベルは当時業績不振(2018年3月期に営業赤字19億円)でしたが、エアトリは買収直後から取引条件の改善や顧客相互送客、人材補完、システム投資効率化などの施策でわずか4ヶ月で同社を営業黒字化させました。この買収によりエアトリは国内OTA(オンライン旅行代理店)業界トップ3に躍進し、買い手・売り手双方にプラスとなるシナジーを創出しました。また知名度向上にも大きく貢献し、「小が大を飲む」買収劇としてメディア露出を増やす効果もありました。

  • らくだ倶楽部の買収(2016年7月)
    約1,500軒の宿泊施設を扱うホテル・旅館予約サイト「らくだ倶楽部」を100%株式取得した事例です。当時エアトリは航空券予約が主力で、国内宿泊分野を自社でカバーできていませんでした。しかし本買収によって「国内ホテル・旅館」予約事業を新たに獲得し、航空券(国内・海外)+宿泊(国内・海外)の主要4分野すべての予約サイトを保有する体制を整えました。これにより旅行商品ラインナップの拡充と「航空券+宿泊」を一括提供できる利便性向上が実現し、顧客ニーズへの対応力強化につながりました。業績面でも旅行取扱額の拡大に寄与し、OTA市場での競争力強化という観点で成功したM&Aと評価できます。
  • まぐまぐの子会社化(2017年10月)
    老舗のメールマガジン配信サービス「まぐまぐ」を約85.7%株式取得し子会社化した事例です。エアトリはオンライン旅行事業とIT開発事業が中心でしたが、本件により広告・メディア分野に進出しました。まぐまぐの広範なユーザ基盤に自社旅行サービス「AirTrip」を訴求できるようになり、両社の強みを掛け合わせて旅行特化型メディア運営や集客力向上のシナジーを創出しています。さらにまぐまぐ社はその後2020年9月に東証JASDAQに上場(証券コード4059)しており、エアトリにとってグループ企業の上場による評価益・資金調達機会という成果も得られました。買収時の取得額約8億円に対し、上場初値は公募価格を大きく上回り時価総額増加を達成しています。
  • 投資先ベンチャーのIPO成功(純投資の成功事例)
    エアトリはコーポレートベンチャーキャピタル「エアトリCVC」を通じ、2010年代後半から多数のスタートアップに投資してきました。その中で2018年3月に投資先の着物レンタル企業「和心」が東証マザーズ上場を果たしたのを皮切りに、累計23社のIPO実績(2023年時点)を誇ります。例えば和心のIPOでは出資利益を獲得し、その資金は広告費に充当され自社事業成長を下支えしました。他にもピアラ(2018年12月上場)サイバーセキュリティクラウド(2020年3月上場)など多数の投資先上場によってキャピタルゲインを得ており、投資事業の成功が本業のマーケティング投資原資となる好循環を築いています。このように「出資先の上場実現」や「売却益確保」という観点でもM&A・投資戦略が成果を上げた事例です。

以上のように、エアトリは本業シナジーを生む大型買収から将来の収益源となるベンチャー投資まで、多面的に成功事例を積み重ねています。特に「安値での買収・迅速なPMIによる業績改善」(DeNAトラベル)、「事業補完によるサービス拡充」(らくだ倶楽部)、「企業価値向上と上場」(まぐまぐ、投資先各社)といった点で顕著な成功を収めており、これらがエアトリ躍進の原動力となりました。

直近3年間(2022~2024年)のM&A実績と買収後の動向

直近3年間でエアトリが手掛けた主なM&A案件について買収対象企業名・時期・金額(判明している場合)をまとめ、各案件のその後の業績動向や戦略貢献を整理します。

最近の主要M&A一覧(2022-2024年)

以下の表に、直近の買収実績を一覧化します(※取得額は開示ベース。金額非公表の場合は「非公表」と記載)。

買収時期(発表日)買収対象(企業名)取得割合主な事業領域買収額買収後の動向・戦略貢献度
2022年(該当なし)※注: 2022年はコロナ禍からの業績回復と内部最適化に注力し、大型M&Aは実施せず。
一方で既存事業の再編・提携を推進(例:コールセンター事業をアップセルテクノロジィーズ社に譲渡し運営効率化)。
2023年12月21日ベストリザーブ
(株式会社ベストリザーブ)
株式取得(子会社化)国内ホテル予約サイト運営
「ベストリザーブ・宿ぷらざ」
非公表旅行事業への貢献: エアトリの宿泊予約基盤を強化し、国内ホテル分野の事業拡大を狙う買収。
約7,200の宿泊提携施設と幅広い顧客層を持つ同社の取り込みで航空券+宿泊の一体提供(エアトリプラス)を強化し、顧客利便性と取扱高向上に寄与。買収後間もないため具体的業績への寄与はこれからだが、旅行需要回復局面で宿泊領域拡大の足掛かりとして期待。
2024年3月26日ユナイテッドウィル(SES事業部門譲受)事業譲受
※子会社のエアトリエージェント社経由
システムエンジニアリングサービス(SES)事業非公表IT人材領域への多角化: エアトリ子会社のエージェント事業において、外部企業から技術者派遣サービス部門を取得。これによりITオフショア開発+人材派遣のシナジーを図り、グループの人材ソリューション事業を強化。今後はグループの開発力や知見を活かしSES事業を拡大予定。買収規模が小さいため業績影響は現時点で軽微ですが、中長期的には人材派遣ニーズを取り込み収益源の多様化に貢献すると見込まれます。
2024年4月30日GROWTH(株式会社GROWTH)株式取得(子会社化)マーケティング領域特化のジョブマッチングプラットフォーム事業・転職支援サービス非公表HRテック領域への参入: エアトリにとって17番目の新規事業となる人材マッチング事業への本格参入案件。GROWTHの持つマーケ領域の人材データベースやノウハウを**「エアトリ経済圏」の一部として活用し、新たな収益源育成**を図る。旅行以外の事業多角化を進める中で、将来的にGROWTH社のIPOも視野に入れており、中期的な企業価値向上を目指す戦略的買収と言えます。現在は買収直後につき業績寄与は限定的ですが、グループ内のHRコンサル・人材ソリューション事業の柱として成長が期待されます。
2024年12月23日ノックラーン(株式会社ノックラーン)株式取得(子会社化)スタートアップ・ベンチャー企業向け採用支援事業(人材紹介・HRコンサル)非公表地方創生・HRコンサル事業の拡充: 2022年設立のスタートアップで、急成長企業の即戦力人材紹介に強み。買収によりエアトリは「HRコンサルティング事業」を新設し(グループ第17の事業)、自社の投資先スタートアップ企業群や地方企業への人材支援サービスを提供開始。新興企業の採用難という社会課題に対応しつつ、グループの地方創生事業ともシナジーが期待されます。こちらも買収後まだ日が浅く収益貢献はこれからですが、人材領域でのプレゼンス拡大による中長期成長が見込まれます。

※上記の他、2025年には海外ツアー予約サイト運営の「かもめ」(買収発表:2025年5月)や沖縄レンタカー事業の「ミナト」(同2月)といった買収も実施されており、エアトリはコロナ後の需要回復を見据えて旅行事業周辺へのM&Aを再加速しています。

買収後の企業動向・戦略への寄与

上記の各案件について、買収後の統合効果や最新の動向を補足します。

  • ベストリザーブ(ホテル予約)
    取得後、同社の予約サイト「宿ぷらざ」とエアトリ旅行サービスの連携が進められています。宿泊施設提携数の拡大によりエアトリ上での国内宿泊取扱が増加しつつあり、「AirTrip+(航空券+宿泊パッケージ)」の商品強化にもつながっています。ホテル予約サイト運営のノウハウは、自社の旅行プラットフォームUI/UX改善にも寄与すると期待されます。旅行需要の本格回復に伴い、宿泊分野が収益成長ドライバーの一つとなることが見込まれます。
  • ユナイテッドウィル(SES事業)
    エアトリグループのITオフショア開発事業(ベトナムの開発拠点)と、新たに取得した国内SES事業とのシナジーを模索中です。具体的には、自社開発リソース+外部エンジニア派遣を組み合わせたハイブリッド提供や、グループ内外のIT案件に対する人材供給力強化が進められています。現時点で業績への直接寄与は小さいものの、IT人材需要の高まりを背景に中長期で売上拡大余地があります。また、買収元ユナイテッドウィル社とは元々エアトリが出資関係にあったことから、友好的なPMIが可能であり、グループへの円滑な事業移管が実現しています。
  • GROWTH(ジョブマッチング)
    買収後、エアトリ内に「マッチングプラットフォーム事業」として位置づけられ、新体制で事業拡大中です。エアトリは旅行分野で培ったWebマーケティング力や会員基盤を活かし、GROWTHのサービス利用企業・求職者の増加を後押ししています。特にマーケティング業界特化の人材プラットフォームというニッチ領域でのNo.1獲得を狙っており、将来的なIPO準備**も開始されました。この動きは、エアトリCVCの投資先としてではなくグループ事業として育成する方針を示しており、グループ全体の収益多角化と企業価値向上に資するものと評価できます。
  • ノックラーン(スタートアップ向けHR支援)
    買収後、新設のHRコンサル事業部門の中核会社となり、エアトリグループのスタートアップ投資先企業や地方創生事業の取引先企業向けに人材紹介・採用代行サービスを提供しています。エアトリは全国各地の自治体・企業と観光やDXで連携する案件が増えており、ノックラーンの加入により地方企業への人材ソリューション提案も可能となりました。スタートアップ界隈では人材獲得競争が激化しているため、同社サービスへの引き合いも強く、グループ内外からの案件獲得により順調に事業拡大しています(具体的数値は非公表)。これによりエアトリは「旅行×IT×人材」の総合サービス企業へと進化しつつあり、経営戦略上も重要な位置を占め始めています。

以上のように、直近のM&Aは旅行事業の周辺強化(宿泊・ツアー・レンタカー等)と非旅行事業の開拓(IT人材・HR・メディア等)の両面で行われており、それぞれ着実にグループ成長へ貢献し始めています。特に旅行需要回復期に合わせた事業ポートフォリオ再構築という観点で適切なタイミングのM&Aを実行しており、エアトリの戦略的機動力がうかがえます。

7.今後のM&A戦略の方向性と注力領域

エアトリは「エアトリ経済圏」と称する事業ポートフォリオ戦略を掲げ、毎年1つ以上の新規事業立ち上げを目標に掲げています。その達成に向け、今後も積極的にM&Aや事業提携を活用してグループの非連続成長を図る方針です。公式発表や中期経営計画、経営陣インタビューから読み取れる今後注力が予測されるM&A戦略領域と、その戦略意図・市場環境を以下に分析します。

ITオフショア開発領域

<注力領域としての位置付け>
エアトリは創業期からベトナムに開発拠点を置き(グループ会社Hybrid Technologies社、東証グロース上場)700名超のエンジニア陣容を有するなど、ITオフショア開発事業をグループの柱に据えています。この領域は今後もM&A戦略上重視される見込みです。

<市場環境>
DX人材不足が深刻な日本国内企業にとって、海外の優秀なIT人材リソース活用ニーズは高まる一方です。特にベトナムを中心としたアジア圏はITエンジニア供給市場として成長が著しく、オフショア開発需要の拡大が予測されます。

<戦略意図>
エアトリはこの潮流を捉え、オフショア開発体制の拡充受託開発分野の拡大を狙っています。具体的には、自社開発力の強化だけでなく関連IT企業のM&Aや提携によってサービス領域を広げる可能性があります。例えばシステム開発会社の買収や既存拠点の人員拡充などを通じ、国内外クライアントへのITソリューション提供規模を拡大し、旅行業に偏らない収益基盤強化を図る戦略です。実際、経営陣は「足元の旅行以外の領域で新規M&Aを検討している」と明言しており、その一つがまさにシステム開発・IT分野です。オフショア開発事業はエアトリ5000戦略でもコアと位置付けられており、引き続きアジア圏のIT人材活用ビジネスでリーディングポジションを固める狙いといえます。

訪日旅行(インバウンド)領域

<注力領域としての位置付け>
エアトリは訪日旅行事業をグループの成長エンジンの一つと位置づけ、既に子会社インバウンドプラットフォーム社(東証グロース上場)を中核にWi-Fiレンタル、訪日向けメディア、在留外国人サービス、キャンピングカーレンタル等を展開しています。このインバウンド領域は今後のM&A戦略でも重点領域になると考えられます。

<市場環境>
コロナ収束後の日本では訪日外国人(インバウンド)市場が急回復・拡大しています。日本政府も2030年に訪日客6,000万人目標を掲げており、観光立国に向けた施策が推進中です。足元でも訪日客数・消費額は中長期的に高成長トレンドが見込まれます。

<戦略意図>
エアトリはこの追い風を受け、訪日旅行サービスの拡充を積極化するでしょう。具体的なM&A戦略として、訪日旅行商品に強みを持つ企業やサービスプロバイダの買収が考えられます。事実、2025年5月には海外ツアーのホールセール事業者「かもめ」の買収を発表し、エアトリ経済圏の20番目の新規事業として海外ツアー事業を開始しています。今後も訪日客向け体験・予約プラットフォーム決済・消費サポートサービス観光メディアなどインバウンド関連企業とのM&A・提携によって、訪日旅行エコシステムの拡大を図るとみられます。

戦略的には、インバウンド市場は「小さいが成長著しいニッチ」であり「参入プレイヤーが限定的」な領域でもあります。経営陣も「ニッチで成長市場かつ参入によりNo.1を狙えるか」を新規事業選定基準に挙げており、訪日分野はまさにその条件に合致します。エアトリが持つ販売力・海外集客力を活かせば訪日サービスでトップシェアを取れる余地が大きく、そうした領域への果敢なM&Aは十分にあり得るでしょう。

現にインバウンドプラットフォーム社は上場後も絶好調で、2025年9月期中間決算で売上高前年比+30%、営業利益+108%増と成長しています。エアトリは引き続き訪日関連で有望な企業をグループに取り込み、旅行者の来日前~滞在中~帰国後までトータルにサービス提供する体制を強化していくと予想されます。

BPO・アウトソーシング領域

<注力領域としての位置付け>
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)について、エアトリは自社オペレーションを効率化する文脈で既に動きを見せています。2020年には旅行事業のコールセンター業務をアップセルテクノロジィーズ社に事業譲渡し、固定費だった人員を変動費化する施策を講じました。また譲渡対価として同社株式を取得し約14.5%を保有、同社IPO準備を支援するなど、BPO活用と投資収益の両面を追求しています。今後も自社業務の外部化やBPO事業者への出資・提携は戦略的に継続されるでしょう。

<市場環境>
コスト高や人手不足の中で、企業はコア業務以外をアウトソーシングする傾向が強まっています。特に旅行・サービス業界もコールセンター、バックオフィス、システム運用等でBPO需要が増大しています。ITの力で効率化を図るBPO企業は成長が期待され、市場再編も活発化しつつあります。

<戦略意図>
エアトリのM&A視点では、自社の非効率業務を補完・代替できるBPO企業や、グループ外にも展開可能なアウトソーシングサービスに注目すると考えられます。前述のアップセル社との資本業務提携のように、まず提携→出資→必要に応じ買収というステップも取り得ます。具体例として、旅行業界特化のBPOサービス(航空券予約発券代行、カスタマーサポート代行など)を展開する企業への関与や、人事・会計など汎用BPO企業の買収によるグループシナジー追求が挙げられます。

もっともエアトリの場合、自前で多角的事業を抱える方針ゆえ、むやみに外注するのではなくグループ内にBPO機能を取り込む選択肢もあり得ます。実際、SES事業やHR事業への参入は、他社のアウトソーシング需要を取り込むビジネスそのものであり、これはBPO領域への進出とも言えます。買収したユナイテッドウィルのSES事業は、クライアント企業のIT人材アウトソーシングニーズに応えるサービスですし、ノックラーンの採用支援は企業の人事業務アウトソーシング的側面があります。こうした「他社業務を肩代わりするサービス企業」の買収も、広義のBPO戦略と言えます。

総じて、エアトリは自社の効率化+他社の業務受託ビジネス拡大の双方を見据え、BPO領域でもWin-WinのM&A/提携を模索していくでしょう。これにより自社コスト構造を最適化しつつ、BPO事業そのものから収益を上げるという一石二鳥の成長モデルを目指すと考えられます。

地方創生・地域観光テック領域

<注力領域としての位置付け>
エアトリ経済圏の中には地方創生事業が組み込まれており、グループ会社エヌズ・エンタープライズ(観光DX事業「NiZの旅」等)や、宿泊施設向けクラウド事業のかんざしなどが存在します。両社は2023年7月に経営統合され、地方観光テック+宿泊DXの新会社として将来IPOを目指す計画が公表されています。このことからも地域創生・観光テック分野は今後もエアトリが力を入れる領域とわかります。

<市場環境>
日本政府は地方創生政策の一環で地域観光の振興デジタル田園都市国家構想を推進中です。観光客誘致や移住促進にテクノロジーを活用するスタートアップも各地で増えています。また、コロナ禍を経て人々の旅行志向が大都市集中から地方分散へシフトする動きもみられ、地方観光市場は新たな成長フェーズにあります。

<戦略意図>
エアトリはもともと「One Asia」の理念を掲げていますが、日本国内でも「One Japan」=地域の活性化に寄与する企業として存在感を高めたい考えです。M&A戦略的には、地域の旅行関連事業者や観光DX企業への投資・買収が想定されます。例えば、地方でユニークな旅行商品やメディアを持つ企業、地域特化の宿泊予約サイト、体験予約プラットフォームなどがターゲットになるでしょう。

エアトリは既にキャンピングカー事業(車中泊観光)や町家宿泊・文化体験事業外貨両替機事業など、ニッチな地域観光サービスも手掛けています。これらは多くがベンチャー企業との協業やM&Aで立ち上げたものです。今後も各地の有望な観光スタートアップを「仲間に増やす」方針です

柴田社長は「終わりなき成長を続けるため、複数事業を手掛けるコングロマリット型で経済圏を伸ばす」と述べており、地域分散型の事業ポートフォリオはその一環と考えられます。

また、地方公共団体との連携案件獲得のためにも、地域ネットワークや実績を持つ企業の傘下化は有効です。エアトリグループに入ることで営業力やIT力を付与され、地方企業側も規模拡大できるという相互メリットを打ち出せるため、地方企業から見てもエアトリへのM&A参加メリットが高い点も、この戦略領域の推進要因です。

メディア・デジタル広告領域

<注力領域としての位置付け>
エアトリは前述のとおり2017年にまぐまぐ社(メールマガジン・Webメディア運営)を傘下に収め、同社を2020年に上場させるまで育成しました。現在も同社はグループ内でメディア事業を担い、メール配信やニュースサイト「MAG2ニュース」等を運営しています。エアトリ自身も旅行予約サイトの集客にデジタルマーケティングを駆使しており、このメディア・広告領域でのノウハウと資産を重視しています。

<市場環境>
デジタルシフトが加速する中、自社サービスの広告宣伝費効率を高めるためには自前メディアの保有顧客データの蓄積が重要になっています。他方で純粋媒体企業にとっては大手プラットフォームとの競争が厳しく、事業売却や統合を模索する動きもあります。そのため、異業種からのメディア企業買収も起こりやすい土壌です。

<戦略意図>
エアトリは今後も「安価にユーザー流入を得る仕組み」としてメディア戦略を講じるでしょう。その一環で、旅行・ライフスタイル分野の媒体やアフィリエイトサービスの買収・提携が考えられます。実際、まぐまぐ買収も「広いユーザ基盤へのAirTrip訴求」が目的でした。今後も例えば訪日観光メディア旅行口コミサイト、SNS上の旅行コミュニティなどに対してM&Aを仕掛け、自社商材とのクロスセルを図る可能性があります。

またデジタル広告関連では、エアトリはDSP/アドテク系スタートアップにも投資実績があります(2019年上場のログリーや、2023年2月上場のプライム・ストラテジーなどへの出資)。広告効率を高めるテクノロジーを取り込むため、マーケティングテック企業のM&Aも視野に入れていると思われます。

経営思想としても「IT×旅行」で培ったテクノロジーと販売ノウハウを他分野にも展開すると公言しています。メディア事業はその延長線上にあり、データマーケティング力の強化やエアトリブランド浸透を目的に、引き続き戦略的投資対象となるでしょう。

海外進出(アジア市場)領域

<注力領域としての位置付け>
エアトリの企業理念には「One Asia」すなわち「アジア黄金期のリーディングカンパニーになる」という高い目標が掲げられています。現状、事業の主要圏域は日本国内および訪日・海外旅行取扱ですが、将来的な海外市場への本格進出も視野に入れているとみられます。

<市場環境>
アジアではオンライン旅行市場が拡大を続け、中国のCtrip(Trip.com)やインドネシア発Travelokaなど有力OTAがしのぎを削っています。しかし日本発のOTAがアジア全域で存在感を示す例はまだ限られています。アジア新興国の経済成長とともに旅行需要は増大し、市場としての魅力は大きいものの、各国ごとに異なる消費者ニーズや競争環境があるため、現地企業との連携が重要です。

<戦略意図>
エアトリが海外M&A/提携を行う場合、ターゲットはアジア地域の旅行関連企業が有力です。例えば東南アジアのOTAや現地ツアー予約サイトとの資本業務提携、あるいは現地法人設立・買収を通じて、日本発の旅行サービスをアジア各国に展開する可能性があります。また、訪日旅行強化の一環で海外現地の送客パートナー企業への出資も考えられます。すでに2022年時点でエアトリは東アジア・東南アジアの約140社に累計87億円を投資しており、そのネットワークを活かして海外展開を図ると述べています。

ただし、海外進出はリスクも伴うため段階的でしょう。まずは日本国内で盤石な経済圏を築き、収益力を高めた上で、成長余力としてアジア市場を狙う戦略と考えられます。

柴田社長も「アジアを代表する会社になりたい」と述べており、中長期的には海外企業のM&Aも辞さない構えです。その際には日本で成功したビジネスモデル(例:AirTripプラットフォームやAirTrip Plusなど)を現地版にローカライズして展開することになるでしょう。例えば以前買収したハワイ専門旅行会社(747エンタープライズ)のケースでは、日本からハワイへの送客ビジネスを取り込みました。

今後もこうした特定国・地域向け旅行事業者の買収を通じて、海外市場に橋頭堡を築くシナリオが十分考えられます。

今後のM&A戦略を支える経営方針

以上の領域以外にも、エアトリは「ヘルスケア×旅行」(例: PCR検査サービスへの出資)、「AI・ロボット」「法人DX支援」など新機軸にも着手しています。これらも成長次第でスピンオフ上場や外部資本提携を進めるでしょう。

経営陣のインタビューによれば、新規参入事業を選定する3つのキーワードは「①現時点でニッチだがプレイヤーが少ない市場」「②市場全体が成長している/見込まれる」「③自社参入でナンバーワンを取れる可能性」だとされています。この基準に照らせば、上述したITオフショア、訪日旅行、地方観光、HR・メディアといった領域はまさに該当し、エアトリが「ここぞ」と思えば果敢にM&Aで踏み込むことが予想されます。

さらにエアトリは、上場子会社や投資先のIPOを継続的に輩出するモデルを確立しています。今後もグループ内新事業を成長させてはIPO・独立させることで資金循環を生み、その資金でまた新たなM&Aに投じるという好循環型の成長サイクルを回していくでしょう。

実際「毎年1事業立ち上げ」の目標を掲げていることからも、途切れないM&A・事業創出のパイプラインを経営戦略の中心に据えていることがわかります。

総括すると、エアトリの今後のM&A戦略は「ポートフォリオ経営の深化」に集約されます。旅行事業単体での成長に留まらず、IT・人材・地域・メディアなどあらゆる成長分野を事業機会と捉え、終わりなき成長を追求する姿勢です。

その背景には「景気や環境変化に対し、複数事業でリスク分散しつつ相乗効果を出す」という経営思想があります。M&Aはその実現手段として今後も積極的に活用され、エアトリ経済圏は更なる拡大が予測されます。そして、それらの領域選択においては、前述の3条件に合致するニッチかつ成長市場でリーダーシップを握れる分野が優先されるでしょう。その意味でITオフショア開発、訪日旅行、BPO/HRサービス、地方観光テック、メディア/DX、海外展開といった領域は、エアトリが次なるM&Aのターゲットとして十分注目していると考えられます。

まとめ

ここまで「今のエアトリ」を調べた内容をまとめてみましたが、これだけ多角的に事業領域を広げている同社の時価総額はたったの212億円(2025年7月10日現在)です(汗)

もちろんそれがマーケットの評価だという事は忘れていませんが、なぜ今回これだけエアトリに興味を持ったかと言うと、直近で起きた「コンヴァノ」の株価急騰がきっかけです。この会社に関する詳細調査はしていないのでこの記事では詳しくは書けませんが、ネイルサロン事業を主体とする会社が、M&A領域で大きな利益を上げ、株価が急騰しました。

ようは、本業の事業展開ばかりに気を取られていても、その会社の正しい評価はできないよねということです。

前述していますが、エアトリは中長期戦略「エアトリ5000」の中でFY2025〜26にグループ取扱高1,500億円・営業利益50億円を目標として掲げており、来期に向けて業績を押し上げる意欲を示しています。この目標が示すとおり、来期(2026年9月期)は今期からの収益反転とさらなる成長が見通せる状況です。

チャート的にも月足は底を打ったあるいは打ちつつある形になり、日足では上方修正以降明確な反転上昇が始まっています。

個人的にはDMMのような印象の企業グループだなと感じていることもあり、今後の成長と飛躍が大変楽しみになっています。

まずはコロナ後の株価4000円越えを早々に達成し、上場来高値更新を早々に目指してほしいなと期待しています。

営業利益ベースなので正確なEPSではないですが、中計の営利50億を達成すれば、EPS200円超は堅いわけで、それなら低く見積もっても株価2,000円はないとおかしいし、グループ全体売上目標の1500億円をPSRで考えれば、現在の212億円と言う時価総額はPSR=0.14です。あり得ない安さです。ここから10バガーあってもおかしくないくらいでは無いかと思うのです。

先日の上方修正以降、急騰はまだ起きていませんので、今からでも全然遅くない銘柄ではないでしょうか・・・。

などなど、ここは夢株と言うより、ある意味正当に評価されればあっという間に株価を戻す会社だと思っていますので、今後の展開と株価上昇に大変期待しています。




★この記事は個人の株取引のメモであり、登場する銘柄は売買を推奨するものではありません。

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